第14話 過去
私が目をさましたのは、暗い昏い小さな部屋だった。
一瞬ここがどこだかわからずに、そしてやはり見知らぬその場所に私は大声を上げて母を呼びながら泣き出した。
やがて泣き疲れて眠ってしまった。
次に目をさました時、やはり真っ暗な中だった。
そして私はまた泣いた。
泣くのも疲れて、喉がひどく乾いていた。
暗い中やがて私は自分以外の気配を知った。
こわごわと目をこらすと、片隅に誰かがいるのがわかった。
私は「お母さんしらない?」と泣きそうになりながら声をかけた。
けれど答えはなかった。
私がまたどうしたらいいかグスグス泣いていると、急に部屋が明るくなった。
眩しくて一瞬何がおきたのかわからなかったが、次の瞬間私は誰かにわきの下を持たれて、ぶら下がっていた。
私は驚きのあまり泣く事もできなかった。
それは父より背が高く、父より若い男の人だった。
その人は私をぶらさげたまま、私をいろいろな方向から、じろじろ見ていた。
その後私を荷物のように投げ捨てると、片隅にいた、驚いた事に片隅ごとに何人かの子供達がうずくまっていた。
この小さい部屋のどこにこれだけの子供達がいたのか、私はきょとん、としてしまった。
男はざっと見渡して、大股に歩きだし、片隅の更に奥にいた私よりも大きい男の子を腕に抱えて出て行った。
そしてまた暗闇になった。
そうして初めてしくしくと泣く自分以外の声を聞いた。