第13話 まぬけな私
ただ今オンラインゲームにはまっているもので、更新はゆっくりと、になっています。
朝、いつものように起きた私は、布団に横たわったまま、自分のまぬけさに気が付いた。
あの男がこの日本で襲われたんだもの、例のあの人が日本にいるなんてバレバレじゃん、と。
どうやら自分では、自覚はなくとも、かなりグルグルしているみたいだ。
そんな子供でさえわかる事を、気が付かずにいたなんて。
突然、本当に突然、大声を出して泣きたくなった。
あの幼い日以降、周囲にわかるような無様に自分が声を出して泣くことなど思いもしなかったのに。
目をつぶり、掌をぎゅっと握り、過去に思いをはせる。
ほら、涙なんか一瞬で引っ込んだ、凄い魔法だ。
私は自分に問うてみた。
彼の人が生きていて、恐ろしいのか、嬉しいのか。
あの日々が異常だったのは今思っても確かな事だ。
けれど、ものすごくシンプルに、当たり前のように、そこに生と死があった。
戦場もまたそれをわかる一つだと思うけど、そこにいたのは鍛え抜かれた軍人ではなく、意志などないまま連れてこられた子供と、たった一人の狂った大人だった。
あの日の事は覚えている。
私は5才になったばかりだった。
母に連れられショッピングセンターに誕生日のお祝いを買いにいったんだっけ。
大きなウサギが子供たちに風船を配っていて、私はそれがどうしても欲しくなりわがままを言って、列に並んだ。
綺麗な赤色、黄色、青色の風船。
しかし私の順番でもらえたのは白い風船だった。
ひどくがっかりして母の元に戻り、その白い風船をそれでも手にして、買ってくれるというぬいぐるみを売り場を見ていた。
かわいい茶色の犬のぬいぐるみを買ってもらい、その首にリボン、確か赤色のリボンをかけてもらい、ご機嫌で駐車場に向かっていた。
母が車に大量の荷物を積みいれていた時、私の手から白い風船がはずれて飛んでいってしまった。
今でもあの青い空に飛んで行った白い風船は、脳裏に焼き付いている。
私があきらめきれずに風船を目で追っていた時、視界の隅に、あの風船をくれたウサギが目にとまった。
おいでおいでと私に手をふるウサギに、私は喜んでかけていった。
けれど近くによると、また少し離れてしまう、その繰り返し。
何度目かの時、そのウサギを追いかけるのを私は一瞬ちゅうちょし、いったん母の方を見て、まだまだ荷物を積んでいる姿を確認して、もうちょっと大丈夫そうと、そのヒラヒラと手を振るウサギの後をついていった。
そして、やっと風船をくれるだろうウサギに追いついた私が、手にしたものは、綺麗な色の風船ではなく、意識のなくなる暗黒だった。