48 だからコリスで売っていると
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「でっち上げ!?」
「ああ、すみません言い方が悪かったです。それっぽく見えるように体裁を整えましょう。調査の実態がなくても、調査結果がこれですって顔して捜査令状を作れる仕上がりに」
「どっちにしても言っていることがとんでもないが!?」
「……すみません、普段ならもう少しまろやかな言い方もできると思うんですけど、今は無理です」
思考回路を立案に全振りしている。そこに頭を使う余裕はない。
「しかし、令状を持って堂々と乗り込むに越したことはないな」
ラザリウス閣下にうなずき返す。
「はい。間に合うのであればそうしたいです。だから可能であれば調査を急いでいただきたいのです」
「わかった」
ただしこの場合は軍事的な不正ではないので王立騎士団が乗り込む形になる。いささか心許ない。
「確定するまでは軍は越権しない範囲で城を固めてください。ないとは思いますが、王城を狙われる可能性があります」
「それは、合成魔獣だろうか」
ラザリウス閣下が深刻そうに尋ねてきた。その心配はもっともだ。
「合成魔獣はないと思います。根拠が勘で申し訳ないんですが、今回失敗しているのでおそらく同じ手は使いません。
あと、合成魔獣はホイホイ作れるものではない上に、維持費もバカ高いし、何より生かし続けることそのものが難しいんです。今回使われたのも奇跡的に作れたものの、崩れかけを処分がてら使った感じだと思います」
あれは本当に、一国が扱うようなものではない。カイメル連邦の企業たちだって共同で研究しているくらいなのだ。普通の魔獣を手懐けて襲わせる方がまだ現実味がある。
「なるほど」
「ただし爆弾などの兵器を使われる可能性は皆無ではないので、そこは気をつけてください。どさくさに紛れて国王陛下を亡き者に……なんてことがあれば最悪です」
そんなことになってみろ、この国を差し上げますなんて言うようなものだ。
「……そうだな」
「ヴァレーヌ閣下も、そこはかとなく城内の警備を強化してください」
「わかった」
ひとつ思い出したことがあり、これは出して良い情報だろうか……と逡巡する。いや、やめておこう。今の私はただのミリィだ。
「ミリィ」
「はい、元帥閣下」
「今、何を考えていた」
「……装備についてですが、何か?」
にっこりと笑顔で返す。にっこり。
「……ふん、貴様もとんでもない狸だな」
ああやだ怖い怖い。ラザリウス閣下は本当に油断できないな。ヴァレーヌ閣下は隙だらけなのに。
なかなか、良いコンビなんだよな。
「だからコリスで売ってるので、先ほどの狐もそうですが狸もやめてください」
フンと鼻で笑うと、ふと思い出したようにラザリウス閣下が尋ねてきた。
「そういえばルイス=ソルヴィアンの懐刀は魔法が使えないと聞いているが」
「はい、使えません」
「どうやって戦っているんだ?」
あーまあ、気になるか。気になるよな。軍事機密ってほどじゃないけど、まあ差し障りのない範囲で。
「武器は魔道具ですが、私自身にほとんど魔力がないので魔力は外部供給です」
「外部供給?魔石か?」
「はい。私の武器は魔力がある方が持つと暴発します」
「暴発!?」
「生体認証がかかっているんです。技術的にも機能的にもやべえやつです」
ミリィおくちがみだれてるー
「やべえやつ、か。実戦を見てみたいものだな」
実戦、ね。
「……まあそれは、機会があれば」
いま決められるものはこんなところか。
「夜もかなり更けてきたので、今日は切り上げましょう。何か詰めておくことはありますか?」
ラザリウス閣下が首を横に振った。
「いいや、後はその時の状況で決めていくしかないだろうな」
「そうですね。ヴァレーヌ閣下は、何かありますか?」
「ああ、いや……」
少し俯いて黙り込んだ後に、閣下は静かに顔を上げた。
「ミリィ=セス殿。私たちに歩み寄る機会をくれたことに感謝する」
「ああ、それはそうだな。ありがとう、ミリィ」
おお、おじさんたち素直になれるじゃないか。
「とんでもないことでございます。正念場ですが、頑張りましょう。
では、ラザリウス閣下のお帰りについてですが」
「ああ、そうだすっかり忘れていた。あれはそもそも転移ではないよな?」
「はい。イオルム様は閣下を召喚なさいました。帰りは私の転移陣をお使いください」
「転移陣?持っているのか」
ヴァレーヌ閣下の問いにこくりとうなずく。
「人質が見つかった時、場合によってはこれを使うことになると思います。転移痕が発生しない転移陣です。……内密に、お願いしますね?」
二人の閣下が固まる。
そんな物騒なものを個人で持ち歩くな、というジトッと湿った視線を感じたが、気付かないふりをした。きゅるん。
ラザリウス閣下を転移で自邸に帰すと、ヴァレーヌ閣下が深い息を吐いた。
「……本当にありがとう、ミリィ嬢」
「お礼を言うのはまだ早いですよ、閣下」
今日最後の紅茶をお出しする。
「この局面、乗り切らなくては」
「ああ、そうだな」
そう閣下がつぶやき、そこから二人で会話なくお茶を飲んだ。
長い一日の疲れを、紅茶の香りで洗い流すように。
転移痕が発生しない転移陣、というフレーズを書きながら、煙が少ないお灸を思い出しました。身体ガチガチなので鍼受けたいです(師走、超忙しくないですか!?いつものことですかそうですか!)




