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殿下の子飼いは無害なコリス  作者: アカツキユイ


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29 わるミリィでふろーらるぅ

ブックマーク・評価・ご感想ありがとうございます!


*いつもより短めです

 学園を後にし、街を歩きながら考えを巡らす。


『模擬演習』は数日以内に、という話になっている。私からは閣下にだけ告知する。家令や侍女長あたりには共有されるかもしれない。そちらの方々には手を出さない予定なので、問題ないとは思うが。

「あれだなぁ、使用人の人たちに出くわした時のために、別の嗅がせ薬(やつ)があった方がいいな」


 戦闘要員は一刻はお休みいただかなくてはならないが、使用人の方々はせいぜい四半刻で良い。二種類用意しておかないとなぁ。足りない材料買いに行かなきゃ。

 本番では悪者っぽく黒装束にしようかなぁ。やる時は徹底的にやる。え?いつも?

「ヒーロー役も悪役もいつだって全力!」

 まあ、だから今回のようにたまにやりすぎるわけだけど。


 わるミリィだぁ


「ふっふっふ、はっはっはっは!」

 精霊の言葉に悪ノリしていると、イヤーカフが誰かからの通信を受信した。



「ミリィです」

『……どうして連絡しないの、ミリィ(あんた)

「……うげっ、商会長(ディアマンタさん)


 しまった、すっかり忘れていた。この前メルシエ商会であった接客トラブルの報告ううう!!


『うげっ、じゃない!忘れてるだろうってイオルム殿下が連絡くれたのよ!』

「ひいいい、すみません……」

『メルセオンの支店長からも連絡がありました。報告が遅い!』

「わああん、ごめんなさあい」


 イヤーカフ越しに泣き真似をすると、向こうでふっと小さく笑ったのが聞こえた。

 いつもここまでがお約束なのだ。だいたい私の報告が遅くなり、ディアマンタさんが連絡をくれる。


『……元気?ミリィ』

「はい、元気です。ディアマンタさんも相変わらず飛び回ってますか」

『ぼちぼちねー、でもあんたほどじゃないわ』

「ふふ」


 ディアマンタさんは感覚としてお姉さんやお母さんに近い。

 私を()()()()()として扱ってくれる貴重な人だ。



『メルセオン支店は早急に本部から人を派遣することにしたわ。接客研修合宿、終わったばっかりなのよ』

「ああ、そうでしたか」

『ついでに魔力補充器も新型に差し替えるから、今後は声かけなしでも大丈夫よ』

「ありがとうございます。いつくらいですかね」

『明日か明後日かしら。大丈夫そう?』

「はい、それくらいならなんとか」


 ディアマンタさんとの通信はどうでもいい話題も含めて長くなりがちなのである。

 それもあるから、私からはあまりかけない。だって長く話したいもの!


「こちらのクラフトビールが結構美味しかったです」

『ありがとう。まずは味を見て、扱うに値するか確認するわね』



 ひとしきり色々と話をすると、ディアマンタさんが少し改まった声で話しかけてきた。

『スベリンゴの話、うちにも流れてきてるの』

「……本当ですか」

『うちは贈答品としてか扱ってないし、農家さんから直接仕入れてるから無視を決め込んでるけど』

「関わる商会、あると思いますか?」

『まともなところはやらない。ハイリスク・ローリターンだってわかりきってるから。ただ、切羽詰まっているところはやりかねないわね』

「差し支えなければ、どこから話が持ち込まれたか教えてもらえますか」


『……本当なら言わないとこだけど、見境なく色んな商会に声をかけてるみたいだから、あんたが知るのも時間の問題だし教えてあげる。革命派が出張ってる、あのエリアよ』

 今、君主制の廃止を唱える活動家たちが勢力を拡げている。世界中にシンパが増え、中心には元王族がいるのでは――などと囁かれている。

 世界でも有数にきな臭い地域、とされている。最近では我が国でも、渡航非推奨になった。


『まだ多くの国が睨みをきかせているから大胆な動きはできないはず。ただ、革命派の賛同者は増えてる』

「……」

 可能性はある。だが、それ自体が隠れ蓑になっていることだって考えられる。考え出したらキリがない。


『……かなりのやり手だって聞いてるから、気をつけてね』

「はい。ディアマンタさんも気をつけて」

『わたしには強い相方がいるから大丈夫。心配してくれてありがとう、ミリィ。

 じゃ、何かあればまた連絡するわね。あんたも遠慮せずに連絡よこしなさいよ。その時ダメならまた改めれば良いだけなんだからね』

「はぁい」


 ぷつん、と通信が切れる。

 ディアマンタさん、精霊とめちゃくちゃ仲良いからな。何より契約精霊(ドゥメル)が離れないから……。条件次第では私より強いんだよな、あの人。


 ディディげんきだったねー


「ディアマンタさんはいつも元気ね。さて」

 私も準備をしなければ。嗅がせ薬は実戦用が手元にある。これを希釈して演習に使うのだ。

「花の香りとか混ぜようかなぁ」


 ふろーらるぅ


「気を失うような刺激臭でも良いかもねぇ」


 すぱいしーぃ


「そうそう、スパイシーな……ちょっと待って」



 スパイス。

 急いで先生に連絡を入れる。そして、殿下にも。


『……わかった、すぐ連絡しよう』

「お願いします」


 確信はない。確信はないが、本能がこれを見逃すなと訴える。


 どしたのミリィ


「……ギルドに行くわ」

 急いで支度をして、冒険者ギルドへ向かった。

「お前よりも運命だ」第一部の主人公であるディアマンタさん登場しました。おまうめから20年は経過している設定なので素敵なお姉様になっていらっしゃるはず(たぶん)

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