23 そうあり続けるために
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先生の声に滲むニュアンスを感じ取る。
「……どうやら、穏やかではなさそうですね」
『うーんそうだね。あんまり良くはないかな。
もうすぐ晩御飯ができるってリリスが言ってるから手短に話すね』
「お願いします」
先生の家は公爵家でありながら、特殊な事情により住み込みの使用人を置かない。家のことは自分たちでやるのだ。もちろん魔道具や魔法はフル活用している。最新の生活魔道具を見すぎて目が肥えてしまうのが難点といえば難点か。
『まずファクトリアについて。あそこは基本的に変わらない国。ここにいる時に話したよね。賛否両論はあるし、相手にする国からしたら国交はやり辛い、だから割と閉じた国だ。
僕も結構行ってるけど、決して悪い国ではないんだよ。あの国のシステムはよくできてる、少し過激だけどね』
「はい」
『ファクトリアは他の国から見たら腫れ物だ。事件などにあの国を巻き込むとどんなイチャモンをつけられるかわからない。だから普段から関わりづらい。……それを利用するなら、ミリィはどう使う?時間は十秒』
「利用……」
利用、利用……。
「ああ!なるほど。エサをまいて自分たちの代わりに潰してもらいましょう、と」
『そう、ファクトリアを関わらせることによって、気に入らない国の国力を削ぐことができる。
次にスベリンゴの話だけど、青いままで何回か納めてるって言ってたね?』
「はい」
『ミリィ、僕が青いスベリンゴを手に入れたら、何に使うと思う?十五秒』
先生が青いスベリンゴを使うなら……?
「何かしらの治験とか新薬開発には使いますよね?あとは青いまま活用する方法を模索するか……」
『いい線いってるけど時間切れ。今ミリィが挙げてくれたこともやるだろうけど、もうひとつ。僕なら自分の魔法で赤く熟すところまで持っていけるか試す』
「ああ!確かに先生ならやりますね」
『そう、赤くして使うことだけが目的じゃない、赤くさせる方法や技術を確立させる、それだって立派な目的だ』
「盲点でした……精進します」
『向上心があるのは良いこと。でも反省は今じゃないよ。
今の話を頭に入れて、もう一度整理し直すこと。商会に関しても同じ。商会と名乗っていても実態はどうかな?
推測は外れても良い、あらゆる可能性を考えて、その上で該当しないものを潰していく。神様じゃないんだ。第一、神様だって全てわかっているわけじゃない』
「ふふ、先生が言うと説得力が違いますね」
『へへ、そうでしょう?……だから面白いんだよ、世界は。
あ、ご飯ができたみたいだからそろそろ終わり!またわからないことがあったら相談には乗るよ。
あと、さっきのフリークたちの件、締めるときは徹底的にやんなよ。夢を見るのは僕達も否定しない、でも君に負担を強いるのは僕もリリスも本意じゃない。
一番やり込められるカードを切れ。必要なら出る』
……ああ、これは先生もリリス様もかなりお怒りだ。その時が来たらお言葉に甘えよう。
「わかりました。ありがとうございます、先生」
イオルムーきょうのごはんなぁにー
『あれ?精霊がいるの?』
「そうなんです、スベリンゴを採りに行った時に一体ついて来ちゃって」
『ふふ、そっか。ミリィは気に入られるもんね』
「ああそうだ先生!この子が私のこと動物だって言うんです、意味わかりますか?」
『動物……?あーうん、精霊からしたら、確かにミリィは動物かもしれない』
「ええ!?なんでですか」
『本能……というか直感かな、精度と感度が野生動物並みに高いからね、ミリィは』
「えええ……」
『鋭敏だからこその生き辛さもあるのは、僕もリリスもよく知ってるよ。でも悪いことじゃない。ルイスの懐刀として隣に立ち続けるためには、君はそれを研ぎ続けなければならないよ。
その分、安心できる場所で、きちんと緩んでね』
「はい……わかりました」
『じゃあご飯冷めちゃうからそろそろ切るね!』
イオルムのごはん!なにー!!?
『ああごめんごめん、今日はウドンなの!早く行かなきゃ伸びちゃう。じゃあミリィ、またね』
「はい、ありがとうございました。リリス様にもよろしくお伝えください」
『はいはーい』
ぷつん、と通信が切れた。
ウドンってなにー
「小麦粉から作る東国の麺類よ。私は結構好き」
いいなー
「あれ?お肉や魚が好きなんじゃないの?」
おいしいものはなんでもすきー
この子は本当に食べるのが好きらしい。
「ウドンも美味しいけど、まずは今日のご飯を食べに行きましょう!」
おっけー
そう、ご飯も美味しいのだヴァレーヌ公爵家……質問攻めで消耗する分は、お風呂六割、食事四割で回復させている。……お酒も飲めるの、ほんとありがたい。
夕食はポトフだった。精霊はスープがかなり気に入ったらしい。気がついたらかなり減っていてびっくりした。
……ところで精霊たちが食べたものって、どこに行くんだろう。教えてもらってもわからないだろうから気にしないことにしよう。
今日のお風呂は一人でのんびりと入ることができた。邪魔者もなし。明日もそうだと良いなあ。




