22 お手柔らかとは
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かくかく、しかじか、うんぬん、かんぬん。
『ああー……それはアウト。ちゃんとミリィからディアマンタに報告して』
「やっぱりそうなりますか……わかりました」
『三ヶ月の接客研修合宿あたりで手打ちにする可能性はあるかなぁ……。
名前を貸すと色々大変って、ディディもよくぼやいてるよ』
「客層も支店によって違うので、接客レベルも客層に合わせないとトラブルになりますもんね」
『ガラの悪いお客は、あんまり丁寧に接客すると舐めてくるしねぇ……わかる、難しい。
――あ、リリス。ミリィから通信』
リリス様が戻ってきたらしい。
『久しぶりねミリィ。今どこにいるの?』
「ご無沙汰していますリリス様。今はメルセオン王国にいます。
お風呂につられてしまって、こちらの国の宰相閣下のところでお世話になってるんですが、……こちらの女性陣が三代にわたってお二人の恋物語の信者でした」
『まあ!大丈夫なのミリィ』
「……なんとか……今までお会いしたお二人のファンの中でもトップクラスの火力です……」
『あらそう……あまりしつこいようだったら言ってちょうだいね、愛剣を持って殴り込みに行くから』
本当に、本当にやりかねないのがリリス様なんだよな……。思わず苦笑いしてしまった。
『ええー、殴り込んじゃダメだよぅリリス。僕たちの愛の歴史を余すことなく聞かせてあげなきゃぁ』
……それも、本当にやりかねないのが先生なんだよな……。
「お二人の言葉を伝えてしまうとさらに燃えるので控えておきますね。
メルセオン、まだ割と新しい国なので面白いと思います。
……あ、先生。真面目な質問をいいですか」
『良いよ。魔道具?』
「いいえ。……薬です、自白剤」
『おや、穏やかじゃないね?』
スベリンゴの話、怪しい商会の話、ファクトリアへの流通を目論んでいる可能性……。
こちらからの説明が終わると、先生が静かに言った。
『後でこっちから通信して良い?』
「構いません。あと、採りたての鮮度を保ったスベリンゴ、先生のために取ってあります。……作りますよね?」
作るとはもちろん、自白剤である。
『もちろん!いやああ楽しみだなぁ!凍らせたスベリンゴでもかなり効果あるから、生のスベリンゴだとどれだけペラペラしゃべってくれるのか、楽しみだねええ!!』
……そう、こういうところが、イオルム=セスないしイオルム=ウルフェルグ、もしくはイオルム師と呼ばれるこの人の、倫理観が欠如していると言われる所以なのである。
「そのうちお届けしますから、気長にお待ちくださいね」
『りょーかーい!楽しみに待ってるね!
じゃあさっきの話は考えをまとめて後で連絡する。商会の件はちゃんと報告、よろしくねー』
「わかりました、よろしくお願いします」
『ミリィ、無理はしないこと。ルイス殿下が泣くわよ』
「ありがとうございます、リリス様。心得てはいますが……改めて胸に刻みますね」
『ええ。わたくしたちの可愛い子。どうか健やかに』
「はい。リリス様もお元気で」
ぷつん、と通信が切れた。
イオルムげんきだねー
「……本当にね。いつまでも仲睦まじくて何よりだわ」
先生は争いには関わらない。魔女や魔法使いではないけれど、それに極力準じた振る舞いをなさる方だ。
なので、こういった相談ができる。
「……さてと。散策はまたにして、今日は公爵邸に戻りますか」
公爵邸に帰る。裏門を通り、使用人が使う勝手口から入ってゲストルームに向かう――と。
「ミリィ様!どちらへお出かけだったのですか!」
リュシア嬢がゲストルームの前で私を待っていた。
「宿のチェックアウトなど、こちらでお世話になるために必要なことをして参りました」
「終わりましたのよね!?これからはずっといてくださるんですよね!」
「……仕事が終わるまで、ですけどね」
「そんなこと言わずにずっといてくださいまし!たくさんリリス様とイオルム様のお話を伺いたいです!」
熱量が高い三人を毎日相手にする……できる?
お風呂で相殺できるうちは良い、でもこれ、いつまで相殺できるだろうか。
あまりしつこいようであれば、養親譲りのぶった斬りを披露しなくちゃいけないなあ……。
「お手柔らかにお願いしますね、リュシア様」
「全っっ然!お手柔らかじゃないっ!!」
夕食のお陰で強制終了になって助かった。質問攻めは本当に堪える……。
一度、部屋に戻ってベッドにダイブする。
ミリィのかみのけピリピリしてたー
「だよねーごめん、もうイライラしてきちゃって」
そう、本来の私は意外とイライラしやすいのだ。え、意外じゃないって?
ミリィはメラメラだもんねー
「メラメラ、ねえ」
メラメラならまだ可愛らしい方だと思うけど。
ミリィはどうぶつだからー
「動物、前も言ってたわよね。どんな動物?」
おおかみー
「えっ!?私リスで売ってるんだけど?」
しらなーい
そんな話をしていると、イヤーカフがほのかに熱を持った。通信の着信を報せるものだ。
「先生だわ。……はい、ミリィです」
『やっほーミリィ。君の大好きな先生だよぉ』
「先ほどぶりです。色々お手数をおかけします」
『……ちょっと疲れてるじゃん。もしかしてまた質問攻め?』
「まあ……そんなところです」
『メルセオンってそんなにお馬鹿な国だったっけ?』
「返答に困るのですが、若干の稚拙さは感じます」
『なるほどねえ……それは、狙われやすいだろうね』




