表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交差する傷  作者: 輝久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

駿作の決意と遥のパニック

佐伯の言葉に動揺した遥は、次の日、駿作の保護を拒絶する。


「片桐さん。もう、私に関わらないでください。あなたの『守る』は、私をもっと怖がらせているだけです」


駿作の顔から、一瞬で表情が消えた。彼にとって、遥の拒絶は「母親と同じ裏切り」を意味した。


「ほう。私の優しさが、あなたを怖がらせる?…分かった。やはり、純粋さも、恐怖も、ただの裏切りの予備軍だ」


彼はそう言うと、遥の肩を掴み、静かだが、有無を言わせぬ力で壁に押し付けた。遥はパニックに陥り、体が激しく震えだす。


「見てみろ。これが、男の力だ。あなたは、私に触れられただけで、こんなにも震える。あなたの恐怖は、私を支配し、私の憎しみを正当化する!」


駿作は遥の恐怖を、自身の女性不信を肯定するための道具にしようとしていた。

遥は、恐怖で呼吸ができない中、彼の目を見た。そこに、憎しみと冷たさの奥に、泣き出しそうなほどの孤独を見つけた。

遥は、震える手で、駿作の頬にそっと触れた。それは、彼女にとって、トラウマと恐怖の境界線を、自ら乗り越えようとする、命がけの行動だった。


「…ちがう。あなたは、私の恐怖を…利用しないで。私を…ただの臆病者で終わらせないで」


その触れられた瞬間、駿作の全身の力が抜け、遥の肩を掴んでいた手が静かに離れた。彼の顔に浮かんだのは、長年隠し続けた、少年のように傷ついた表情だった。


「私は…私は、どう愛していいのか、分からないんだ。誰も、私を裏切らない方法を、教えてくれなかった…」


彼は、初めて遥に、そして自分自身に、心の奥底の弱さを晒したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ