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第14話 中山君と私の出会い


『おはようございます』

『おはよう田中さん』

『ねぇ、昨日のドラマ見た?』

『はい、見ましたよ。記憶喪失の主人公が犯人だったのは驚きでした』

『そうだよね〜』


 冷乃ちゃんから距離を取ってから一ヶ月が経つと、彼女の友人(おまけ)という私の価値が薄れ平穏な生活を送れるようになっていました。


『冬空さん、ちょっと良い?話したいことがあるんだけど』

『嫌。私汚物と話すつもりはないの。だから、早くあっち行って』

『いや、少しくらい話聞いてくれても』

『あ゛!?私の話が聞こえてなかったの?さっさとどっか行けクソ男!』

『ひっ!失礼しましたーー!』


 それとは対照に冷乃ちゃんの方は荒れていました。

 理由は私を含めた女友達がトラブルで離れたこと。

 ですが、冷乃ちゃんが悪いというわけではなく強いてあげるならば間が良くなかったのです。


 とある女友達が〇〇君が好きだと言う話をした翌日に冷乃ちゃんがたまたま〇〇君に告白された。

 密かに思いを寄せていた先生が実はセクハラの常習犯で冷乃ちゃんに何度も密かにセクハラを行っており、耐えきれなくなった彼女が告発し辞職へ追いやった。


 こんなことが立てた続きに起きて、今までの友人関係がギクシャクしてしまい続けることが出来なくなったのです。

 結果。

 冷乃ちゃんは孤立してしまい、自分をこんな目に遭わせた男子達を酷く嫌悪するようになりました。

 本当に巡り合わせが悪かった。

 でも、そう簡単に割り切れるほど私は薄情にはなりきれなくて。


『あの、冷乃ちゃん。今日一緒に帰りませんか?』

『えっ?』


 ある日、放課後の誰も居ないタイミングを見計らって私は冷乃ちゃんを誘いました。


『ううん、大丈夫。私のせいでまた純香に迷惑を掛けたくないから。……でも、ありがとう。私を気にかけてくれて。バイバイ』


 ですが、断られてしまいました。

 何故なら、冷乃ちゃんは優しいから。

 私達を傷つけてしまった経験がある彼女は罪悪感から私の手を取らなかったのです。

 本当に冷乃ちゃんは私と違ってお姫様に相応しい。


『……最低です』


 だって、私は心の奥底で何となくこうなることが分かっていて彼女を誘ったのです。

 自分が冷乃ちゃんに何もせず見捨ててしまったという自己嫌悪に苛まれないたくないがために。

 友人にあんなことを言わせてしまった最低の女。

 こんな醜い私はお姫様に相応しくない。

 改めて、格の違いを思い知らされた私はその日ベッドの上でひたすら寝転んでいることしか出来ませんでした。

 次の日から、私は今まで以上に人助けを積極的に行うようになりました。

 

『それ、持つよ』

『本当?田中さんありがとう!』


『やっば!』

『大変ですね。一緒に拾うの手伝います』

『サンキュー、田中さん』


『じゃあ、私これ持って行くから』

『あっ、すいません。まだ宿題が終わってなくて。後もう少しで終わるので置いておいてもらえませんか?代わりに、私が責任を持って運びますので』

『すみ──田中さん。分かったわ、じゃあ、お願いするわね』


 勿論、それは純粋な善意からではありません。

 ただ単に罪悪感を少しでも減らそうとしているだけの自己満足。

 でも、これが冷乃ちゃんにあんなことを言わせてしまった私なりの償いだったのです。

 そして、気が付けば時は流れて中学三年生になっていました。

 中学三年といえば高校選択をする時期です。

 

『……高校行きたくないなぁ』


  ですが、夢を失った私に目標はなくしたいことも無かった私は何処に行くか迷っていました。

 唯一頭の中にあったのは、冷乃ちゃんやお姉ちゃんがいる学校には行きたくないということだけ。

 けれど、私の学力はそこそこ高く、お姉ちゃんが通っていない近辺の高校を選ぶと不自然で。

 県外に出ることも考えましたが、大学生やスポーツの特待生ならいざ知らず、楽器が人並みに吹けるだけの普通な私が家を出るのも変に見えてしまうので却下。

 小心者な私は推薦受験当日に、体調を崩した嘘をついて受けないようにすることも、テストで手を抜くことも家族の期待を裏切ると思ってしまい、結局私はお姉ちゃんと同じ高校に通うことに決まりました。


『……あれ?誰も来ない』


 また一年間憂鬱な時間を過ごすことになると思っていたのですが、蓋を開けてみると高校生活は意外なことに静かなものとなりました。

 その理由は、冷乃ちゃんを含めた四季姫と呼ばれる美少女達の存在と姉に恋人が出来ていたことでした。

 男子生徒の殆どが大金持ちの御曹司で性格もいいイケメンな王子様に捕まった姉を仕方がないと諦め、姉に勝るとも劣らない三人の美少女達に関心が寄っていたのです。

 そのため、私の学校生活は想像以上に穏やかで、そして《《静か過ぎました》》。

 けれど、それも仕方のないことです。

 何故ならそれ程までにお姫様(メインヒロイン)は魅力的であまりに眩しかったから。

 彼女達を前にしながら、端役モブである私達に目を向ける道理がありません。

 皆んなそれを理解していました。

 勿論、私も。

 もしかしたら、自分のことを端役だと認めていただけに学校にいる誰よりも深く理解していたと思います。


 一生陽の目を浴びることのない存在。

 いてもいなくても変わらない空気な透明人間。

 

『おい、秋月先輩が隣の教室に来てるらしいぞ!』

『はっ!マジ?見に行こうぜ』

『きゃ!?……プリントが。……急いで集めないと』


 だから、誰に見てもらえないのは当たり前。

 私が困っていても気付いて貰えないのは仕方がない。



 ……。


 …………。




 ………………。





 ……………………。





 ……………………………………………………。



 




 でも、辛いなぁ。



 こんなことを思う資格は私には無いのかもしれませんが。

 それでも、誰からも見てもらえないのは寂しいんです。


 だから、どうかお願いします神様。


 一生に一度のお願いです。


 誰からにも好かれるお姫様になんてもう言いません。


 たった一人だけ。


 端役モブの私を見てくれる(お姫様にしてくれる)たった一人の人《王子様》に会いたいです。

 





『アイツらぶつかった癖にそのままとかマジありえねぇ。普通気付くだろ。ほらよ、災難だっ、た……な』

『え?』


 

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