アート活動事件~絵の具大爆発~
春の穏やかな日差しが窓から差し込み、ひだまり園のアート教室には和やかな空気が流れていた。
今日は、利用者さんたちと一緒に「春の風景を描こう!」というイベントの日だった。
「さぁ、みなさん!今日は春の絵を描きましょうね~!」
杉本さんは明るい声で呼びかけながら、テーブルに並べた絵の具や筆を見せた。
パチパチ…
手を叩いて喜ぶ利用者さん。目をキラキラさせながら、さっそく筆を手に取った。
嬉しそうにキャンバスに向かう車いすの利用者さんもいた。
職員がそっとサポートしながら、筆を持ちやすい位置に調整している。
「みんな、春らしい色をたくさん使ってくださいね!」
杉本さんの声に、利用者さんたちはそれぞれ自分の作品に集中し始めた。
中には、指で絵の具を触って感触を楽しんでいる利用者さんもいる。
その時だった。
ギュッ…ギュウウ…
利用者さんの一人が、興味津々の目で赤い絵の具のチューブをギュッと握りしめていた。
彼は絵の具の感触が好きで、いつも触ったり押したりするのが楽しみだった。
ムニュッ…
「うん?あ、ちょっと待って…!」
杉本さんが気づいた時には――
ブシュッッ!!
赤い絵の具が勢いよく飛び出し、見事に杉本さんの顔面を直撃。
ペタッ…
「……え?」
頬にべったりと赤い絵の具がついた杉本さんは、状況が飲み込めずに固まった。
手をバタバタさせながら、大喜びする利用者さん。
絵の具が飛び散る様子が楽しかったのか、体を前後に揺らしながらさらにテンションアップ!
「え、えっと…これは…春の…血染め…?」
杉本さんは絵の具を拭おうと手を伸ばしたが――
ツルッ!!
床に散らばった絵の具に足を滑らせて、さくらはバランスを崩した。
「きゃあああ!!」
ドサッ!!
パレットごと床にダイブしたさくらの周りには、カラフルな絵の具が飛び散り、まるで虹の池が広がっていた。
バタバタ…
手足をバタつかせながら大爆笑する利用者さんたち。
彼らにとっては、杉本さんの“絵の具スリップ”は最高のエンタメだったらしい。
ペチペチ…
絵の具を指で触りながら、無邪気にパレットの色を混ぜる利用者さんもいる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいね…落ち着いて…!」
杉本さんが立ち上がろうとした瞬間――
ブシュッ…バシャッ…
新たな絵の具爆発が勃発。
「……私、今日は完全にキャンバスですね…」
ようやく状況を落ち着かせたのは、ベテランの職員だった。
「杉本さん、大丈夫?ちょっと派手になっちゃったけど…まぁ、アートらしいってことで?」
杉本さんは、虹色に染まった自分のセーターを見つめながら、苦笑いした。
「うぅ…今日はもう、芸術の一部ってことにしますぅ…」
パチパチ…
満足そうに手を叩く利用者さんたち。
彼らにとっては、大惨事も楽しいイベントの一部になったようだ。
「次から…絵の具の量は私が調整します…絶対…」
杉本さんは静かに誓いながら、虹色に染まった自分のセーターをそっと撫でるのだった――。
重度障害がある方との関わりと非言語的なコミュニケーションが文字で伝わればいいなと思いました。
利用者さんはみんなハプニングが好きなようで、いつも笑顔を見せてくれます。




