初詣パニック事件~先輩どこ行ったの!?~
お正月も過ぎたある日のこと。
「今日は初詣に行きますよー!」
先輩職員が明るく声をかけると、利用者さんたちも穏やかな表情でうなずいた。
今回の初詣には、杉本さんと先輩職員、そして利用者さん2人の4人で近所の神社へ行くことになっていた。
先輩職員は車いすの利用者さんを押しながら、杉本さんは歩行が不安定な利用者さんと腕を組んで、一緒にゆっくり歩いていた。
「大丈夫ですか?ゆっくりでいいですよ。」
杉本さんは優しく声をかけながら、利用者さんのペースに合わせて歩いていた。
しかし、神社へ向かう途中、歩行が不安定な利用者さんが急にしゃがみ込みそうになった。
「あっ、ちょっと待ってください!」
杉本さんは思わず体重を支えようと踏ん張るが、バランスを崩しそうになり、ドキッとした。
利用者さんがしゃがみかけたことで、杉本さんの心臓はバクバク。
(どうしよう、どうしよう!支えなきゃ…でもこのままだと…)
なんとか踏みとどまったものの、その瞬間――
「えっ!?先輩どこ!?」
周囲を見回しても、先輩職員の姿が見えない。
利用者さんの体重を支えながら、焦った杉本さんは視線を必死に巡らせた。
(先輩…先輩…!どこ行っちゃったの!?)
心の中で叫びながらも、つい声に出してしまう杉本さん。
「せ、先輩…?置いてかないで…どこ行ったんですか…?」
その時――
「ここにいますよ、杉本さん。」
ふと、すぐ横から落ち着いた先輩の声が聞こえた。
「えっ?」
杉本さんが顔を上げると、先輩職員はすぐ隣で、車いすの利用者さんと一緒にいた。
「杉本さん、どうしたんですか?さっきからずっと一緒にいますよ?」
「え、えぇ!?あれ…?」
杉本さんは目をパチパチさせながら、ようやく冷静になって周りを見渡す。どうやらパニックになって視野が狭くなっていたようだ。
(落ち着け、落ち着け…先輩はずっとここにいたんだ…私、勝手に焦ってただけ…)
「す、すみません…ちょっと焦っちゃって…」
「大丈夫ですよ。外出だから緊張しちゃいますよね。」
先輩は優しく微笑みながら、杉本さんの肩をポンと叩いた。
杉本さんもホッとしたのも束の間――
「…あれ?」
何かが違う。よく見ると腕を組んでいた利用者さんが、いつの間にか小さなぬいぐるみを手に持っている。
「あれ?そのぬいぐるみ…どこから?」
利用者さんは満面の笑みでぬいぐるみを掲げていた。
「え、ちょっと待って…そんなの持ってきてましたっけ?」
「いや、持ってきてませんね…」
先輩職員も首をかしげる。
「まさか…途中でどこかの屋台から…?」
杉本さんは顔面蒼白。
まさかの“謎のぬいぐるみ事件”発生。
(え、これって…もしかして…)
さらに悪い予感は続く――
「杉本さん、これ見て!」
先輩が指さした方向を見ると、杉本さんの足元には――
なぜかお賽銭用の5円玉がバラバラと散らばっている!
「え!?5円玉!?なんでここに!?私、落とした!?」
杉本さんが慌てて拾おうとした瞬間、後ろから通りがかった参拝客の視線が集中。
「あ、えっと…違うんです…これ、その…!」
冷や汗をかきながら拾い集める杉本さん。
「えーっと…ご縁がありますように、ってことで…ハハハ…」
笑顔でごまかすも、周囲の空気は微妙に静まり返っていた。
結局、ぬいぐるみは後で落とし物として届け出ることに。
その後、なんとか無事に神社へ到着した一行。
「無事に着いてよかったですね…」
「ホントに…今日は色々ありましたけど…」
参拝を終えた後、利用者さんも穏やかな表情で手を合わせていた。
(でも、もう二度とパニックにならないようにしなきゃ…)
杉本さんは新年早々、心の中で強く誓うのだった――。
利用者さんとの外出時は要注意ですね!




