「呪われし城」で眠り続ける運命の妻を探し、古い城に入ったらガラスの棺で眠る美女と魔法使いに出会いました
私の名はレオノール・ヴァルフレイム・ルミエール。
光輝の名を持つルミエール王国の第一王子であり、同時に「月影の呪い」に囚われた宿命の担い手である。
それゆえに、私に近づく者は皆、不幸に見舞われ、時に命を落とすことさえあった。
だが、伝説は語る。
「呪われし城」に眠る姫こそ、この呪いを解き、私を救う運命の伴侶であると。
その希望を胸に、私は愛馬と共に、茨に覆われた古き城を目指し、果てなき旅を続けている。
何年もの探索の末、私はついに、それらしき城を見つけた。
古い石造りの城は野バラの茂みで覆われ、外からは全貌すら見えない。
地元の住人に話を聞くと、その城に近づいた者はいないという。
数百年前から、人の手が入らず放置されているらしい。
「よし、行くぞ」私は馬を降り、剣でいばらを掻き分けながら城へと踏み込んだ。
城の中は想像以上に荒れ果てていた。
埃まみれの床、崩れかけた天井、朽ちた家具――誰も住んでいないことが一目で分かる。だが、私の直感が囁いている。この奥に、必ず彼女がいる、と。
暗い廊下を進み、ついにたどり着いたのは広間だった。
そこで私は目を奪われた。広間の中央に置かれたガラスの棺。
その中に、金色の艶やかな長い髪とバラ色の唇を持つ娘が眠っていた。
思わず手を触れたくなるすべすべした白い肌と豊かな胸。
今にも目を覚ましそうなその美しい顔立ちは、私の想像を遥かに超えていた。
「間違いない。私の妻となる姫だ」私は呟き、棺へと歩み寄った。
その時だった。背後から低い声が響いた。
「そのガラスの箱に手を触れるな」
私は驚いて振り返った。そこには、一人の老婆が立っていた。
杖を手にした彼女の姿から、ただ者ではない気配を感じる。
「お前は何者だ?」私は剣に手をかけながら尋ねた。
「私はドーラ・エイマン。この城を守る魔法使いだ」
老婆は静かに答えた。その目は、私の行動を見透かすように鋭い。
「私はこの娘を目覚めさせ、結婚する」私は強い口調で宣言した。
「決して目を覚ますことはない。
万一、そんなことがあれば、その子はお前のものだ」
「まあ、そこで見ていろ」私は自信満々に棺の扉を開けた。
そして、棺の中の娘の唇に静かに接吻した。
しかし、娘は目を開かなかった。微動だにしない彼女の姿に、私は戸惑う。
「……おかしいな」思わず独り言を呟く私に、老婆は言った。
「決して目を覚ますことはない」
「なぜそのようなことが言える?」私は振り返り、声を荒げた。
「なぜなら、それは私が作ったラブドールだからだ」
「な、なんだと!?」耳を疑うような言葉に、私は目を見開いた。
「この城の当主の依頼で、数百年前に彼のために作った私の最高傑作だ。
どうだ、まるで生きているようだろう」
ドーラは杖を突きながらそう語った。その顔にはいやらしい笑みが浮かんでいる。
私は信じられない思いで棺の中の娘を見つめた。確かに、その美しさは人間を超えている。しかし、それが作り物だという事実に、私の胸は大きく波打った。
私は城を後にした。足取りは重いが、それでも前を向くしかない。
「私の妻となる姫は、どこかに必ずいる」
そう自分に言い聞かせながら、再び旅の道を進み始めた。
それまでは、ドーラに作ってもらった、この最新型のラーブドールでしのぐしかない。金貨 1000枚と金額は高かったが、それだけのことはある。
生きた人間以上の感触で、使わない時はカプセルに収納できる優れものなのだ。
私の旅はまだ終わらない。
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