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Pandemicafter  作者: 鈴花雪嶺
瓦解
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臨界:終章Ⅰ 交渉

 この状況をどう切り抜けようかと考えを巡らせていた時、ふと思った。これ、わざわざ隠れる必要なくないか?


 隠れているところを見つかると何かやましいことがあるのではないかと変に疑われてしまうだろう。実際やましいことはあるし。だが、堂々としていれば家に貴重品を急いで取りに戻っているように見えるだろう。


 さっきの話を聞いているとこの素芽野市全体にZ部隊が配置されているようだ。ならば変に隠れているよりも、家にある大事なものを取りに行こうとしている人間を演じた方が生き残る可能性は高いだろう。実際俺の家には父さんと母さんから譲り受けた大切なものがたくさんある。


 周囲の安全は確認済みだ。今なら、いける。


 俺はさっと路地を飛び出すと再び家に向かって全力で走り出した。すぐに目の前の角を曲がる。瞬間、表情が無意識に強張る。


 角の先には少人数のZ部隊の集団がいた。


 焦るな俺。顔に出すな。表情に出すな。悟られるな。


 Z部隊の横を走り抜ける。すれ違う直前、Z部隊の顔を見そうになるが、怪しまれそうなので必死にこらえる。


 「おい待て!今は避難警告が出ている!おい止まれ!お前たち、捕まえろ!」


 やはり声をかけられた。だが止まることは出来ない。単純に判断が遅くて止まるタイミングを掴めなかっただけだ。


 後ろから多人数がこちらに向かって走ってくる音が聞こえる。


 さっきまっでいた路地からここまであまり距離はないが、全力で走っているため、俺の体力は限界をとうに超えている。結局、あっさりと捕まってしまった。


 「お前、何をしていた?」


 Z部隊が問い詰めてくる。だが、これは想定済みだ。


 「家に、家に帰らせてください!まだ家に財布とか……大事なものがいろいろあるんです!」


 「気持ちはわかるがだめだ。命と金どっちが大事なんだ?死んだら元も子もないぞ」


 「はい……すみません……」


 ここまで言われて引き下がらなかったら怪しまれる。俺は多少命に危険があっても家に帰りたいんだ。でも、死んだら元も子もないというのにだけは同意する。父さんと母さんは何よりも俺に生きてほしいと言っていた。なら、こんなところで死ぬわけにはいかない。


 俺は避難経路を教えてもらうと、しぶしぶその方向へ向かった。

今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。次回も明日の10時に投稿します。次回も読んでいただけると嬉しいです。

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