転変:終章 おうちデート!?
「……」
俺はどうしていつもこうなのだろう。あの時も、今も……。女に誘われたらすぐについて行ってしまう自分が嫌になる。
そう。俺は今零の家にいる。さらに詳しく言うならば零の部屋にいる。
こ、ここが女の子の部屋……。お、思ってたより良い香りしないんだな……。生活感もあんまりないし。人生で初めて入った女の子の部屋をきょろきょろと見回しながら無意識に体全体で堪能する。
よく考えると、今の俺って相当気持ち悪いな。こんなことを考えているということは悟られないようにしないと……。
「もー、なに見てんの?あんまり見ないでよ……恥ずかしい……」
頬を赤らめながら恥ずかしそうに目線を逸らす零の仕草に、胸の鼓動が早まるのを抑えることが出来ない。
「ちょっと待っててね……。あ!恥ずかしいからこっち見ないでよ?」
零は俺の背面にあるタンスを開けようとしていた。ま、まさかあのタンスの中身って零の……なんてことがあったり?
いや、もしかしたら背後から襲われる可能性がある。うん。だからこれは仕方ないことなのだよ。うん。
ポケットからスマホを取り出し画面の角度を調整して背後の零の様子を見る。
……ッ!もう少しでタンスの中身が見えるのに!立ち上がれば見えそうだけどそれだと不自然で怪しまれる……。どうしたら……。
「まだ後ろ向いててね~」
やばい。ばれたらヤバイ!でもあと少し。もう少しで見えそう……!
あ!何か出すぞ!なんだ?あのタンスの中身は何なんだ……?
そこから出てきたのは見覚えのあるものだった。
20
見覚えのあるもの。忘れられないもの。
それは、ゾンビ化の注射器だった。
「……」
一瞬で浮かれていた気持ちが地に落ち、邪な考えは消え失せた。
そうか。結局こいつも金目当てなのか。どいつもこいつも俺を殺そうとするんだな。
わかったよ。お前らが、世界が、そうなら……俺ももう迷わない。容赦しない。
「あと少し待ってて~」
零がちらりとこちらを見たが、すぐに後ろを向いた。きっとただスマホを見ているだけだと思われたんだろう。
俺は右手を後ろに回す。スマホには振り返ろうとしていた零が映った。
すぐにスマホを置き、両手を腰に当てて体を伸ばす。
まだだ。まだ引き付けろ。もう少し……。
今だ!!
勢いよく振り返り、右手を一気に振り上げる。
ジャキン!と腰に差していた警棒が伸び、足りない間合いが補われ、零の顎を下から突き上げた。
「ッ!!」
零は声を出せなかった。そんな零を見下すように立つと、零の手から零れ落ちた注射器を踏み壊した。
零の顔を見ると、口から血が滴っていた。
心が痛むが、これから零がやろうとしたことを思い出すと残りの良心もすぐになくなった。
立ち上がろうとした零の右腕を思い切り踏みつける。
「ああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
痛みに叫び声を上げる零。それを無視して何度も何度も腕を踏みつけた。途中で、おそらく骨が折れたのだろう。感触が変わった。
そのまま残りの腕と足も全て踏みつけ骨を折る。それなりに時間がかかったと思う。声が枯れたのか精神が壊れたのか、零は虚ろな目をして、もう叫んではいなかった。
「死ね」
短くつぶやき零の頭に警棒を振り下ろす。何度も、何度も、何度も何度も何度も。
◉
警棒についた血を零の服でふき取り、俺は零の家を後にした。
俺はもう迷わない。容赦しない。
「—————!!—————!!」
そう決意した直後、街中に警報が響き渡った。
今回も読んでくださりありがとうございます。高評価、ブックマーク登録もありがとうございます。いつも励みになっています。
不定期投稿ですが、次回も読んでいただけると嬉しいです。




