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ブルーバックの空の下  作者: たちき けん
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プロローグ

真っ青な空の下で、私は愛用のリボルバーに弾丸を込める。

シルクの真っ白なレースの手袋越しにいつもの金属の冷たい感触を確認する。

今、私が着ているのは純白のウエディングドレス、昨日までの黒ずくめの動きやすい戦闘服とは違う。


でも、行うことは変わらない…『止める』ただそれだけだ。

相手が誰だろうと何だろうと変わらない。

目の前のものの活動を停止させる。

それが、機械でも生物でも……人でも…最愛でも最悪でも最良でも最高でも…

緊張のせいか指先が小刻みに震える。

こんな事初仕事以来だ。

終わったら、ハッカ煙草を吸おう。

きっと、落ち着くはずだ。


今日もどうしようもないくらい真っ青な空が頭上に広がっている。

その青い空に文句を言うように紫煙を吹き付けてやる。


いつか、青い空を突き抜けてブルーバックの向こう側、バックグラウンドで笑っている奴に平手を食らわせてやる。


『表層オペレーティングシステムからの認識を外れる。』

『存在をベーシックに固定』

「inorin」


『バグ修正完了ロードをお願い』

『オペレーター実行してください』

『54321…応答なしか』

『コマンドの実行をお願いします』

『ちっ、深すぎるか』

『こちらから直接指示を出す コマンド run…』

run

目の前の彼は私に口づけをしたまま、崩れる。

白いタキシードの胸元は赤黒く染まる。


この世界にいらない人なんていない。

それぞれの立場があり、役目がある。

ただ、ただ、…ただ 消す人と消される人もいる。


ただ、ただ、何も、今じゃなくてもいいと思う。

とくに、今日は私の結婚式だったのだから、輝く未来が待っていたはずだから


教会の中に悲鳴が響き渡る


私はただこの世界を守るだけだ。


幸も不幸もその後だ。


でも、出来たら幸せになりたいと思う。

役目を終えたリボルバーが大理石の床に落ち甲高い音を立てる。

両手で彼を抱きしめる。

この世界がどれだけ彼を否定しようと間違いなく私の最愛の人だから、…

このあと事はプログラムに丸投げしても罰は当たるまい。

ブルーバックが下りてくる。

全てを青色に染めていく。

『ERROR…DELETE』


呆気なく世界は補正されていく。

それが、正しいことなのか、間違ったことなのか、私は知らない。

そんなことはどうでもいい。

今は崩れるように消えてゆく彼の頬に口づけをしよう。

世界が更新されるその時まで、彼の姿が消えるまで、私の心が消えるまで


何処かの青空の下ハッカ煙草を吸う私に言ってやりたい。

私は愛する人がいたと…





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