爆撃援護作戦
DMM主催のWT大会に出場するその当日に投稿するというね...
aki726 という名前なんでよろしくです
格納庫の中には既に沢山の人がいた。
俺らと同じくスピットファイアだけでなく、ホーカー社のタイフーン、アブロ社の、第二次世界大戦中のイギリスを代表する爆撃機であるランカスターや、それと同時期に活躍したウェリントンといった爆撃機も顔を並べている。
格納庫のすぐ横にある軍港には、沢山の大型艦、そして魚雷艇などの小型艦やNPCの輸送船などが停泊している。
近くにある軍艦の演習場ではかなりの数の艦が射撃演習を行っていて、雷のような空気を切り裂く音が鳴り響いている。
大規模作戦開始前というのはここまで緊張感がある物なのだろうか...想像していたより遥かに気合が入っている気がする。
前から大柄なヨーロッパ人っぽい感じのお兄さんが近づいてきて、声をかけてきた。
「よう少年!ってなんだ?見ない顔だな...今回の作戦から前線入りか?」
「はい、アカウント名はアキ、階級は中尉であります!」
このゲーム、というか最近のゲームは便利なもので、少しラグがある時もあるが音声は同時通訳がデフォルト装備されている。
お陰でこのような会話も簡単だ。
「緊張しすぎだな...俺はスキッパー。階級は大尉だ。よろしく頼む!
で、機体は何になるんだ?」
「はい!機体はスピットファイアF.MK.IXになります!」
「スピットファイアか!
俺らはタイフーンで対艦攻撃を仕掛に行くんだ!
見てろよー...!この500ポンド爆弾で敵艦の一隻や二隻くらい簡単に撃沈してやる!」
「背中は俺たちにお任せください、スキッパー大尉」
「...言うじゃないか。いいぜ、好きだぜそういうのは!任せたぞ!アキ中尉!」
そう言った後に出撃命令が出されたらしく、タイフーンのコックピットに乗り込んでいった。
「ごめん、遅れた!」
そう声をかけてきたのは頭の上に「アキレス」と浮いているやつと「ファルコン」って浮いているやつがいる。
アカウント名は頭の上に表示されるシステムなのでこういう風に他人には見えているのだ。
というかまんま過ぎて引くが「ファルコン」は隼、至って普通なアキレスって名前の方は水月だ。
「集合時間には遅れてないから大丈夫だぞ!」
「んじゃあ4人揃った事だし、そろそろ慣らしに行くか!」
「オーケー」
「準備は出来てるわ」
各自、それぞれの愛機に乗り込んでいく。
さっきまで軍服を着ていた俺らは、ゲームの仕様により一瞬で対Gスーツに着替えていた。
コックピットに乗り込むと、視界の右上の端の方にマップが表示された。
その下には作戦目標。
照準器には撃破ポイント表。
これを撃破すればこれだけスコアを出せる、という表だ。
左上には速度、残弾、エンジンの温度などが縦に並んでいる。
一目で確認できるためこちらをメインで使うが、普通の計器類も問題なく使用できる。
「今回の作戦はドイツ海軍の超弩級戦艦であるビスマルクを撃沈するための作戦である。
戦闘機諸君は上空の制空権を確保するために離陸されたし。
攻撃機は既に空母「アークロイヤル」から発艦を完了している。
タイフーン装備部隊はこれを援護し、制空権を確保後対艦攻撃を実施せよ。
スピットファイア装備部隊は同様に攻撃機隊を援護せよ。ニードル、オータム隊はアメリカ陸軍航空隊とともにランカスター、ウェリントンの爆撃を援護する任務を与える。
くれぐれも仲間を撃ち落とす事がないように。
各員の健闘を祈る。」
淡々と告げるような口調だったが、その声には激励の意が込められている事まで俺は聞こえていた。
「ニードル隊、オータム隊、滑走路に出てください」
「...オータム隊?」
そういえばその名前、たくさん出てくるがまさか俺達のことじゃないよな...?
「ヘイ、アキ!」
さっきの人...ええと、スキッパー大尉だったかな?
その人が横につけたタイフーンから無線を通じて声をかけてきた。
「日本語の秋ってのは、英語にするとオータムで合ってるんだよな?」
「はい、あってます」
「よかった!オータムって名前は俺がつけたんだよ!
イカしてるだろ?まあ頑張ろうぜ!」
「ニードル隊、離陸準備を。オータム隊も続けて離陸する準備を」
「ああすみません。了解!」
エンジンを始動させる。
全開出力で1500馬力を発生させるロールスロイス製マーリンエンジンがスピットファイアの機体をゆっくり引っ張っていく。
隣のタイフーンもエンジン始動が完了したようだ。
「さあ、準備はいいか?いくぞ!」
「はい!」
出力を最大まで押し上げる。
スロットルレバーを押し上げると同時に襲ってきたのは異次元の加速。
そこら辺の車なんて目じゃない。
たった一瞬で200km/hまで到達する加速によって、俺はシートに押し付けられる。
「くっ...」
操縦桿をゆっくり引き、機首を緩やかに少しずつ上げ、先に離陸していた爆撃機を追いかける。
「君たちが新入りのオータム隊か?大変だな...
爆撃機護衛隊はあの部隊と戦う事になるんだからな」
「あの部隊?」
「史実にあるJg52みたいなトップエース部隊さ。総撃墜数は全部隊中トップ。
その中の一人は300機撃墜らしいぞ」
俺らなんて遠く及ばない異次元の数字が飛び出して来るなり、俺は震えが止まらなくなった。
心なしか口の端が持ち上がっていく感覚がする。
「楽しみだな、それだけの相手なら。
一回それくらいぶっ飛んだパイロットと戦ってみたかったんだ」
無線すら黙った。
管制官も僚機もみんなだ。
「くくく...ハハハハハッ!」
堪えきれない。というかのようにスキッパー大尉が笑い始めた。
「いいなお前!最高だよ!
気に入った!これが終わったらアメリカ陸軍航空隊に来ないか!?
俺はアメリカ陸軍の人間なんだ!今回は出張でここにいる!顔も通じるさ!」
「アメリカ陸軍...航空隊」
太平洋では日本陸海軍航空隊、ヨーロッパではイタリア、ドイツ空軍と戦い、最終的にはその全てに勝利した世界最強の空軍。
まさかオファーが飛んでくるとは。
「...少し考えさせてください」
「おう!」
すると気まずそうに無線に割り込んできた声があった。
「盛り上がっているところ申し訳ありません。
こちらB-17 「ブラックブレット」通信手、ガーランドです。基地からの通信、『レーダーに敵影あり。正面上方、距離3000』だそうで...」
その時だった。
「!」
風切り音多数。
たしかに上から。だが見えない。
ちょうどスピットファイアのファストバック式コックピットの死角である真後ろを通り過ぎたようだ。
「う、うおぁぁぁ‼︎‼︎」
水月、もといアキレスの悲鳴が聞こえるより早く旋回を開始していた俺は衝撃的なものを見た。
俺の動きにぴったりついて来る。
直線で逃げても、いかに機体を捻ろうとも離れない。
スピットファイアより軽く、より空気抵抗を少なく、より獲物を狩るのに効率的な戦術をもってかかって来る。
ーヨーロッパの覇者、Bf109ッー
フットペダルを思いっきり踏み込み、操縦桿を両腕で斜めに引き込む。
「ぁぁぁ...っ...!」
その非日常な重力加速度により、Gカウンターは8G、普段の8倍の重力が俺にかかっていることを示していた。
が、その急激な機動により強制的に減速が入る。
400km/h台から250km/hまで一気に減速する。
敵はその減速にはついて来ず、真っ直ぐ離脱していく。
セオリー通りの教科書のような一撃離脱だ。
「点呼!オータム1 OK!」
「オータム2 OK!」
「オータム4 OK...アキ...オータム3は...」
「わかってる」
爆撃機に向き直っても、ひどい状況だった。
「こちら『ブラックブレット』!もう持ち堪えられない!皆の健闘を...」
爆発と乱れる気流。
俺らの護衛対象は今の一瞬で半分まで減っていた。
「...奴らを落とす」
「...!?やるのか、アキ‼︎」
スキッパー大尉は乗り気だ。
ウチの僚機は...
「いいわよ、やってやろうじゃない」
「オーケー、行こう」
二つ返事で了承してくれた。
「よし!スロットル全開!緊急最大出力で奴らを追撃する!あの化け物を迎え撃つぞ!」
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「...不可能だ」
撃墜されて基地に強制的に戻された俺は、ブリーフィングルーム...まあ、打ち合わせ室的な場所で戦いの様子を見ている。
「一撃離脱に乗った以上、奴らからは逃れられない」
隣で別の人がそんなことをずっと言っている。
「あのメッサー、このゲームじゃ有名なプロゲーマーだ...
新人なんかじゃ落とせない...」
「問題ないですよ。」
不思議と考えるより先に口が出ていた。
「俺らのエースは強いですから。
...かけてもいいですよ?僕は1000ゴールドかけます」
随分と彼のことを買ってるんだな。と言って彼はこう告げた。
「賭けねえよ。信じるさ。そっちの信じるエースさんをよ」
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メッサーシュミット社製戦闘機『Bf109』
軽量な機体に強力なダイムラー・ベンツ製DB601、及びDB605エンジンを搭載し、速度性能では他の追随を許さなかった。
さらに軽量な機体である事から旋回性能も低くはないため、格闘戦もある程度こなせるという高性能な戦闘機だ。
実際、乗り方が分かっている人が扱うと手も足も出ない。
弱点としては航続距離が短い事、液冷エンジンのため被弾に弱い事、そしてコックピットの形状による後方視界の悪さが挙げられる。
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ドイツをヨーロッパの覇者まで押し上げたBf109。それに動きから見て上級者が乗っているらしい。
スピットファイアをもってしてどこまでついていけるか...面白そうじゃないか。
「!」
相手が急激に機首を上げた。
高い上昇力を活かして釣り上げるつもりだ。
「そうは行くかよ...!」
後方を映し出している鏡にも敵機が写っている。
そのまた後ろには僚機がついてくれているから暫くは弾が飛んでくることは...
...ガガガッ!
ー被弾音⁉︎ー
操縦桿を引いているこの状況で、Gで張り詰めた機体に無慈悲な弾丸が降り注ぐ。
ー姿勢が乱れていることはなし。胴体への被弾か...ー
この際だ。なりふり構っていられない。
速度を乗せきれていなかったのか、まだ相手のメッサーは近くで上昇中だ。
「機首を上げる!援護を頼んだ!」
「了解!」
「分かったわ!」
グググ...と機体に負荷が掛かっていく。
損傷があるためどこまでかけていいかわからないが、とりあえずこの速度域なら全力で操縦桿を引いても大丈夫そうだ。
「上昇力ならスピットだって負けねえよ...!」
マーリンエンジンとDB600系エンジンが雄叫びを上げ続ける。
失速速度はスピットファイアの方が低い!
メッサーはもう限界だと言わんばかりに機首を落とした。
それも目の前で。
「いただきッ!」
一瞬。相手が俺に機体の背部を見せた瞬間に一斉射。
メッサーは鋼が裂けていく断末魔と炎を曳きながら落ちていった。
爆撃機隊の数は残り4分の1程度。
そして俺は今速度がない状況で...もう1機のメッサーに追われている。
逃げられない状況に追い込まれピンチかと思いきや...まだ、諦めることもできない。
...堕とす。
爆撃機は頭の中に入っていない。
そんなものは既に頭の中から消え去っている。
互いにたった1人の相手を落とすことしか考えられない。
操縦桿を思いっきり引ききる。
メッサーではこの旋回にはついてこれないだろう...案の定離脱して上昇している。
「運任せだが...!」
照準を合わせ撃ちまくる。
損傷が入れば性能が落ちて追いつけるはずだと踏んだのだ。
「援護します!」
タイフーン隊が敵機を請け負ってくれたのか、僚機の2機が向かってきてくれた。
さっきの射撃で煙を吹き始めたメッサーでは逃げ切れまい。
「...!?」
様子がおかしい。
体当たりでもするかのような勢いでこちらに向かってくる。
味方機も射線の先に俺がいるため撃てない。
と、次の瞬間、相手は体当たりをするのではなく横にピッタリつけてきた。
「...!」
そこでパイロットの彼が俺に送ってきたのは、綺麗な敬礼だった。
にっこり笑って基地に帰っていく彼を見て、追撃する気も失せた俺は、真っ直ぐ爆撃を終えた爆撃機とその援護に回っている戦闘機隊と合流し、飛行場まで帰ることにした。
燃料タンクは撃ち抜かれていなかったようで、航続距離は足りていた。
「アイツ...只者じゃないな」
次こそは...絶対に撃墜してみせる。
コメントが欲しい...
というかどういう状況がカッコいいのかわからないんですよね...
何か航空機のかっこいいと思う機動みたいなのを送ってくださると幸いです