日常
ストーリーが始まります。
目が覚める。
着替えて朝食を食べる。
庭に出る。
父親がいる。
ここで意識が覚醒する。
「おはよう、父さん。」
目の前にいるのは上半身裸で下に胴着を着ている俺の父親『岩樹龍玄』である。手には木刀を二本持っており、うちの一本をこちらに放り投げてくる。父さんは言う。
「始めるぞ。」
俺は木刀を受け取り構える
「分かった。」
そこからは高速戦闘が始まる。
自分自身では分からないが、周りから見ればそうなのだと言う。事実初めて父さんの練習を見た時目で追えなかった位だ。
腰だめに構えての擬似抜刀、逆手で受け止められるが、一歩外側から周り背中に発勁を打ち込む。それを回避され飛び込みながら切り、というのを繰り返して一時間ほどだろうか。父さんが
「やめだ」
と言った。俺はそれに従って木刀を下ろす。父さんは言った。
「お前は中々に強くなった。だから明日からより早く、より強く当たるようにする。宴は来週だが、お前に宝刀を継承する。よく頑張ったな。」
俺は一瞬理解できなかった。
ついに俺に伝承の宝刀が継承される!これがどれだけ凄いことか、俺には分かる。即ちそれは一人前だと認められた者の中で刀だと次代最強であると言う事なのだから。
「ありがとうございます。これからも精進させていただきます。そろそろ学業の場に行かなければならぬので失礼します。」
そう言って俺はその場を後にする。制服に着替え、高校へと向かう。俺の家はかなり特殊だと知っている。他の人よりも速く移動できるため、少しばかり遠くても間に合うのだ。
しかし今日は遅れてしまった。いつも俺に絡んでくるクラスメイトに見つかってしまった。面倒くさいと感じるが、ここは我慢である。父さんはいつもこう言っていた。
「力持つ者持たぬ者への暴力は外道である。」
だからこそ何があっても耐えなければならない。
一人が俺に声を掛ける。表で生きていられない私達がせめてもの抗いとして外道には堕ちてはならないのだ。それは初代からの絶対の律であると教わっている。
「よう!どうした?辛気臭いツラしやがって。ところでさ〜今お金持ってる?3万で良いんだ!貸してくんね?」
いつもこうだ。俺に金を集ろうとする。ああ嘆かわしい。金が無いなら我慢すれば良い。我慢を知らぬはただの阿呆、次の小遣いなり、親に嘆願するなりしてみれば良いのに。自らの行いに非が有り、金が貰えないと言うのならば、そもそもお金を使わなければ良いのだ。そうすれば減らないだろう?あと、辛気臭いツラは生まれつきだ。これは変えられない。
「お前如きに貸す金などない。バイトでもしたらどうだ?」
こいつらはたまにバイトしているから言ってやっているが、俺の通っている高校は通年バイト禁止だ。よっぽどの事情が無ければバイト出来ないが、本職としての前座なら許されている。
例えば俺は週一で剣術道場の師範をやっている。俺の幼馴染みは武術道場の師範だし、考古学者も居たりする。
俺のクラスには居なかったはずだが、親の仕事場が大企業の場合、系列店でのバイトは許されている。
ん?クラスメイトの・・・なんだっけな、名前。Aとしよう。Aは俺に殴りかかってくる。それもそうだ。Aの親は子がバイトを許されるような仕事をしていない筈だ。ああ、誤解はしないでやってほしい。何も裏の仕事や水商売をやっている訳じゃ無い。サラリーマンだった筈だ。まぁAは殴ってくる。当たるのは面倒くさいから俺はそれを全て避ける。当たりたくない。痛くないが面倒くさい。大事だから二度言わせてもらった。まぁ想像できると思うがAは激昂する。周りから見れば当たっているように見えるのだが気付いていないのか。
「テメエ、何避けてんだ!ウザいんだよ!」
ナイフを取り出してきた。はぁ・・・いいや、もう正当防衛でしょ。ナイフ取り出してきたら何もしないわけにはいかないでしょ。
俺はAに足掛けをする。だがそれだとつまらない。その際に足を上に飛ばす事で擬似ではあるが、ムーンサルトの完成である。
昔父さんに喰らってから必死に練習してマネキン相手に出来るようになったのが三年前。六年前に受けている為習得に三年かかった。因みにその直後はムーンサルト合戦になったのは良い思い出と言えるのだろうか。
まぁ、Aは呆けている。後はさっさと教室まで逃げよう。そうすれば大丈夫だろ。
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教室に入ると、俺の幼馴染みである風鳴愛知がいた。詳しく説明するのは少しばかり長くなるから今は省かせてもらうが、俺が、俺の自我が芽生えてからは案外ずっと一緒にいる。
余談ではあるが、愛知は二週間前に宝槍を継承している。勝率は五分五分。先週は勝った。
愛知は俺の許嫁みたいなものだ。あぁ、勘違いしないで欲しいが、子供同士の約束ってわけでは無い。それが裏の家のルールだ。『一番上に位置する家の嫡男に嫁ぐのは長女がいる家計で一番位の高い家計の娘である』と言うルールだ。このルールが破られたのは何回かあったそうだが、その全てが『全ての家に娘が生まれなかった』だそうだ。何故か男多めで産まれてくるらしい。その割には俺たちの代には長女多いけどな。
「あ、冬仙君、おはよ!」
さて、冬仙とは・・・分かってるか、そう。俺である!威張る事でもないがな。
「おう、おはよ、愛知」
軽く挨拶をするだけに留めておく。何故って?俺の家や愛知の『風鳴』の家は『裏世界』と呼ばれる家だ。他にも十三家存在する。だから、普段の話題が出しづらいのだ。想像して欲しい。唐突にクラスと言わず学校のアイドルとも言える女子が、プロ顔負けの槍の扱い方を物凄い暗い男子と語っていたらどう思う?なのでいつも愛知と話すのは天道だ。ちなみにそいつも裏世界の子。詳しくは省略。
時は五月、この二年一組に配属?されて一ヶ月程経つが、未だ慣れない。この騒がしい空間に。別に俗世と離れているわけでは無いが、ぱりぴ?の集団では無い。礼節を重んじ過去に習い未来に繋ぐ。それが俺達だからだ。俗世の流行はいつか廃れる物。さらに言えば廃れてもいい物だ。だから知らなくても良い。
教師が入ってくる。平澤武臣と言い、実は父さんの秘書もたまにやっている。今年は俺たちの監視だったか。父さん事務仕事苦手なのに大丈夫かなぁ
「席に座れーさっさとSHL始めるぞーじゃあ今から呼ばれた奴は体育館に来いよー・・・」
半分程が呼ばれた。大体俺に絡んできた奴らか。流石にナイフはダメだよなー。
「今日はこれから身体測定すっから女子は二組で着替えておけよー」
そういえばあったな身体測定。どうでもいいから無視してた。
時は流れて
そして女子達が教室に戻り、クラスの順番が来るのを待つ。すると、本当に突然の事なのだが、床が光り始めた。あぁこの光あれか。魔法陣。
父さんも経験したと言っていたな。『異世界召喚』。確か神を殺せば戻れるんだったか?
まぁ良い。どんな世界でも生き延びてやる。
作者は魔法陣と言われると『魔法陣グルグル』を思い出します。2でもキタキタでも無い完全原作のグルグルです。皆さんはどうでしょうか?
このクラスには岩樹、風鳴、天道がいます。他の家についてはかなり後の・・・それこそこの話のアフターストーリー位後にしか出てこない予定です。もしかしたら外伝で出るかも。
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