勇者ー食堂にて
部屋に戻り槍を立て掛ける。今は自由行動だ。今後の事について考えなければならない。まずは今後の活動方針だ。このグループの中でも彼に今後敵対するような人たちは要らない。たとえそれが勇者としての使命だろうとも、そんなチンケなものよりも彼に従う方が何倍も正しい。よく周りに『なぜそこまで彼に心酔するのか』と聞かれるが心の底から好きになった相手に心酔するのは当たり前なのでは無いのだろうか?
私は机にあった紙(女神の力で作り出したらしい)に今後のことを書いていく。
まずは全員の戦力の確認。その後まずは体力作り。ある程度の体力が付いてきたら素振り。後はどれだけ勇者とやらの自然回復速度が速いのかによって変わってくる事だが体をあえて壊しつつ型を染み込ませる。もちろん紫幻ではなく、表の世界にちゃんと存在するものを。まぁ三国志の呂布の技だったり『史上最強の敗者』と呼ばれた佐々木小次郎の型だったりするが。そしてその後模擬戦をある程度こなしたら各自で実地訓練。これが一番最短かなと思っている。何も出来ないうちから外に出ても周りの迷惑になるだけだ。
すると私の担当のメイドが(A級以上の勇者には一人ずつメイドが充てられている。私に当てられたのはマリナという名前のメイドだった。)扉を叩き、夕食の時間が来たことを告げる。私は短剣を暗器のように忍ばせて部屋を出る。食堂(某有名魔法映画、短仗を振るやつに出てくる食堂に似ている。)にはすでに何人かの人達がいた。
まず一人目。三條奏。私と同じS級の勇者。地球ではクラス委員をやっていた。報告したスキル名は
【環境守護者】。どうやら結界系の能力のようだ。今は水を飲んでいるように見える。
そして二人目。笹山商斗。A級勇者で商人の家系。地球では『笹山商会』と言う商会を経営している一族だ。スキルは【価値鑑定】よくある鑑定系の能力のようだ。どうやら一定以上のレベルが離れていると機能しないようだが。
三人目は竹田魁星。A級で医者の子だ。本人も進路として医者を選んでいたはず。それ故かスキルは【完全回復】。と言っても現状ではレベル一では一割しか回復しないとのこと。クールタイムが二時間あるのが欠点か。だが女神によれば普通の回復魔法は時間もかかり精度も低いらしい。まぁ理由は考えられるが。彼には回復魔法を使ってもらいたいものだ。
四人目は石田翔玄。A級で武士の子。というか江戸時代から続く武士の一族。廃刀令の出た明治時代に政府から帯刀を許された三家のうちの一つ。血統流の紫幻である。スキルは【決闘】。一対一の戦闘に限りお互い逃げられない。更に白魔法や黒魔法のバフデバフ全てを弾く。
そして最後に阿部真。A級の勇者だがその行動はナンパのそれであり私に言い寄って来るから無理なのだ。どこかの機会に消しておきたい。スキルは【武器作成】。そのままではあるが、一回で作れる重さと材質はレベルが上がらないと良くならないらしい。正直に言って要らない能力だ。武器はきちんと扱っていれば壊れない。きちんと研ぎ、たまに鍛治士に任せれば壊れる事はない。
私のスキルは【逆境の主】。相手とのレベル差でステータスが変わる。相手が大きいとステータス上昇、小さいとステータス減少。
さて、私は自らに当てられた席に座る。そして翔玄に話しかける。
「この後模擬戦いいかしら?スキルの確認をしておきたいの。」
それに対して反応したのは阿部だった。
「おいおい、そんな古臭い奴よりも俺とやろうぜ。楽しませてやるよ、なぁ?」
すると笑い声が聞こえる。案外ガチの大笑いだ。
声が聞こえた方をみるとそこには天道誠二がいた。
彼は涙を拭きながら語る。
「あはは、あー、待って、むっちゃおもろ。やべーんだけど。え?なに?お前みたいなやつがかの『風鳴』に勝てると思ってるの?いい?彼女に勝てるのはこの部屋だと・・・現状では誰もいないからね?そんなのも分からないのは滑稽だよー」
それを聞いて私と翔玄、笹山は笑ってしまう。そして本音を漏らしてしまう。
「ええそうね。それでも全力だったら私に勝てるのでは?天道?」
そして口に出して初めて気付く。やってしまった、と。確かにS級だから強いのは納得だが、向こうもA級。地力に差がないと仮定するなら確かに相手をできるかもと考えるのも納得だ。天道は私に返す。
「んー、確かに全力なら勝てるかもだけどどっちか死ぬよ?それだけやばいんだから。ついこの間初めて父さんの力を暴走させないで使えたんだからさ。これから暴走しないって言いたいけどそんな確証無いからねぇ。」
そんなことを話していると女神がやってきた。
「皆さん、集まってくれてありがとうございます。それでは、今後のことについて話し合いましょうか。」
覚醒出来ませんでした。ちなみにここまでで決闘すると強いのは冬仙>天道(全力、暴走込み)>愛知>=天道(暴走の危険性を無くした場合)>翔玄>>>その他って感じです。