決着 指導
ガルガが倒れた事により、他の三人の気配も変わった。やっと本気を出してくれるようだ。ケティが前に出てくる。ケティは短剣二本の二刀流タイプ。確かに斥候として利にかなっている為俺の中では高得点だな。まぁ受け流しても良いが、それだと芸がない。美しくないのだ。なのでここは正面から受ける事にする。
「・・・なんで受けたの?」
ケティが初めて喋ってくれた。なんだかんだで初めて声を聞く。年相応の声というか、そんな感じだな。(ここまでで誰かが語ったかもしれないし誰も触れてない可能性もあるから言っておくが、容姿は本当に幼女に見える。十歳位の。黒髪黒目で猫耳をはやしている。)俺は正直に答える。
「何度も受け流すのは美しくないだろ?だから受け止めた。」
するとケティは下に沈む。上からギアンが振り下ろしてきているのだ。なるほどな。良い連携だ。(ギアンは黒目スキンヘッド。他に何を語れと?筋肉はとてもある。某戦闘漫画のMr.アンチェインよりもある。分かる人いるのかな?)
「良いなお前ら・・・!最高だよ!紫幻三刀---昇華ぁ!」
お互いの剣(こちらは牙だが。)がぶつかり合う。なんとこちらが押し負けているのだ。
「身体強化---四倍!」
身体強化の魔法は魔力十につき0.1倍引き上げる。今回は魔力四百を使用しているから四倍まで引き上げられるという事だ。
とまぁ説明しているが、現在は不利なんだよなぁ。あんまりやりたくないけど今回も逃げなきゃなぁ。
「はぁ---空縮地」
空に逃げた俺は(空というよりかは空中って感じがするが。)古龍に決めたコンボをする事にする。
「紫幻八刀---円神---併せて魅せよう、紫幻二刀---落月!」
回転することにより落月の威力を高める。
ちなみにではあるが、落月は輪廻の時に落滝月となるように、滝のようにとの意味が込められている。円神は縦か横に円運動する技だから空中では落月に繋げやすいのは俺達血統流では当たり前のことである。
そんなことは置いておいて、この技の結果だが、上手くいったと言えるだろう。何故ならギアンは倒れているからだ。ギアンは息が絶え絶えになりながらも呟く。
「テメェ・・・それは・・・ないだろ・・・」
俺はそれに返す。
「そう言われてもな、こっちだって勝ちたいんだ。その場から動かないだけで、空中には移動するぞ?まぁ輪廻は使わないと決めてたし、空中に逃げる時点でこっちの負けのようなもんだけど・・・な!」
危なかったな。ペティネが魔法を打ってきていた。水属性?使用できるのは風属性のはずなんだがな。森狩族としての特性か?お互い睨みあう。そして俺は牙を下ろす。
「終了だ。うん。俺の負けだな。俺は縦にしか動けないから攻めれないし。それに対してそっちはいくらでも攻めれる。こうなったら俺は負けなんだよなぁ。うん。良かったじゃないか。私が動かないという条件だったらからできたことではあるが、よくここまで攻めることができたと思う。全員直すべきところというか、反省点は理解しているだろうか?それを今から説明させてもらおう。明日から特訓だな。移動しつつ無理のない程度でやっていくぞ。」
俺は座る。そして斥候のケティを見る。
「まずはケティだな。斥候としての動きの速さは問題ない。だけど攻める時にせっかくの体格を活かせていない。良いか?人型っていうのは、低いところに力を向けづらいんだ。懐に入られたら尚更な。なのに相手の胸の高さまで飛ぶのはよろしくない。理想としてはだが、その速さを生かして相手の脚を切るんだ。そしたら相手の移動を遮ることが出来る。相手が雄なら睾丸を切るのもお勧めだぞ。ゴブリンとかオークとかで試してみると良い。」
そして次にガルガを見る。
「ガルガは単独行動が目立つな。周りとのコンビネーションとかを考えた方が良いぞ。動きも単調なのに遅いから簡単に捌ける。フェイントとかをもう少し複雑にするともっと戦いづらくなるな。」
そしてギアン。
「ギアンは言う事無いんだよなぁ。力がある分速度殺してるのかなって思ったけどその体格の割には速いし。気配の殺し方も十分。壁をあっさり切ったことから技術面もある。受けた側だからわかったことだけど、大剣使いって、どうしても「斬る」よりも「叩く」の方になりがちなんだよ。だけどあの重心移動を感じるにちゃんと斬ってるのが分かる。だけど上からの攻撃を受けきれなかったな。あれは重心移動を間違えたからだぞ。そこが今回のミスかな。他はほぼ完璧だった。俺の本気には勝てないけど、放出系魔法禁止の戦いで俺が輪廻封じたら五分五分か俺の負けだな多分。うん。普通に強いじゃん。」
そして最後にペティネ。
「ペティネってさ、他にできないの?確かに魔法の遠距離砲台は重要だけどそれって仲間いる前提だよね?もう少し魔法の応用性を高めなきゃ。後は簡単にで良いから武器を扱えるようにならないと。そうじゃなきゃすぐ死ぬよ?近づかれたら終わりだもん。知ってる?ペティネってこのパーティーで一番殺しやすいよ?二番目はガルガだけど。そこは覚えておいた方がいいからね?」
辛いことだろうが、言っておかなければならないことなのだ。遠距離砲台はすぐに狙われる。その対処法を身につけるのは最優先課題だと俺は思う。しかし何故俺がここまで気にかけるのだろうか?確かに今は契約相手だが、ここまで気にかけなくてもいいはずだ。まぁ、こんな異世界に飛ばされて誰か信用できる奴が必要だったんだろ。
「じゃ、今日はおしまい!本気で体を休めて明日から攻略に移ろうか!」
ついにこの魔窟の攻略が始まる。
次回は勇者側です。風鳴視点で異世界生活三日目までかければいいと思っています。もしかしたら次は更新できないかも。そうなったらごめんなさい。