異世界転移の特典ガチャで外れのノーマルキャラが出たから、のんびりスローライフをするお話
思い付いたお話です。
「え、私死んじゃったんですか!?」
私は、目の前の女神様に話しかけた。
「はい、残念ながら…。しかしあなたには、転生か転移を選ぶ権利と、特典のガチャを引く権利があります。」
「おぉ、ラノベみたいだ!じゃあ、異世界転移で、今のままの見た目でお願いします!」
「分かりました。それでは、特典ガチャを引いてください。」
私の目の前に、大きなガチャガチャが現れる。中には、何百ものカプセルが入っている。色も、白に金銀銅、赤や青に、虹色まで入っている。
「ふぅ…虹色出てきて!」
私は、願いを込めながら、ガチャガチャを引いた。
そして出てきたのは…。
「あらら…まさかノーマルキャラが出てしまうとは…。あなたの運はかなり悪いみたいですね。」
「やっぱり白色は外れだった~!!!」
私の手には、白色のカプセル。小さく、NCって刻まれている。
これって、ノーマルキャラって事ですよね!出てきた瞬間に終わったって思ったよ!
「ちなみに、このガチャには武器やキャラ、何かの才能など、1000個の特典が入っています。虹色のカプセルが出る確率は5%でした。」
「えっと…ノーマルキャラの確率って…?」
「まず、レアですらないノーマルが出る確率は1%ほどです。そして、ノーマルキャラの出る確率は、0.1%です。」
「それってつまり、このガチャの中には1つしか入ってないってことじゃないですか!なんて不運なんだ…!」
私はあまりのショックに、膝から崩れ落ちてしまった。
うぅ…せっかくの異世界転移が…。私のチート無双の夢がぁ…。
「あの、えっと…ドンマイです(*・ω・)」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!!」
女神さまがなんとも言えない顔で慰めてきた!
くそぅ、もう駄目だぁ…私の人生おしまいだぁ…。
というか既に終わってるよぉ…。
「わ、分かりました!もう一回だけ、ガチャを引くチャンスを与えます!ノーマルキャラに加え、もう1つだけ異世界転移の特典を差し上げます!だから泣き止んでください!」
「わぁぁぁぁぁ!!!!女神様に同情されたぁぁぁぁぁ!!!」
こんなに悲しいのも初めてだ…。
何とか泣き止んだ私は、ガチャをもう一回引いた。
「ふぅ、やっと泣き止んでもらえましたか…丸1日泣いてましたよ…。」
私には、女神さまが何を言ってるのか分からないです。
「ふぅ…次こそ虹色出てきて!」
さっき以上に願いを込めながら、ガチャガチャを引いた。
そして出てきたのは…。
「料理の才能…ノーマル才能ですね。ちなみに確率は0.1%です。」
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
また白色のカプセルが、私の手にあった。
もう泣きたい…あ、既に涙が出てきてるや…。
「まさか2回も0.1%を引くなんて…逆に運が良いですね!」
「慰めになってないです女神さまぁぁぁぁぁ…。」
もう無理だぁ…死にたい…誰か殺して…。あ、もう死んでるんだった。
「あはは、あはは、あははははははははははははははは…。」
「あわわ、壊れないでください!分かりました!特別サービスで、いくつか特別に特典を差し上げます!だから元に戻ってぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「それでは、異世界に送りますね。」
「はい、女神さま。色々ありがとうございました!」
なんか色々あったけど、ついに私の異世界生活が始まるのだった。
「あなたの行く異世界は、魔法のあるファンタジーのような世界です。幸い、あなたは元々魔法の才能があるようなので、練習をすれば使えるようになりますよ。」
「え、何それ、初耳なんですけど!?私って魔法が使えたんですか!?」
「生前でも使えたはずです。それでは、頑張ってくださいね!」
「ちょっと待ってください女神さまぁぁぁぁぁ!!!!!」
視界が光に埋め尽くされ、私は気を失った。
「あ…知らない天井だ。」
目を覚ますと、木の天井が見えた。
体を起こすと、小さな部屋だった。家具も揃ってるし、キッチンや冷蔵庫、電子レンジもある。
ここは、私に同情した女神さまがくれた、私だけの家だった。
異世界なのに家電があるのは、風情に欠けるかもしれない。
でも、現代っ子の私には、家電が無い生活は考えられないもんね。
私は、ふわっふわのキングベッドから降りた。これも特典の1つで、女神さまのお下がり。女神さまのいい匂いもオマケで付いている。
私は外に出た。周りには、広大な野原が広がっていた。
「おぉぉぉぉ!こんなに綺麗な自然は初めて見た!」
空には、見たこともないような綺麗な鳥が飛んでいるし、野原には、リスのような可愛らしい小動物が戯れていた。
「これから始まるんだ、私の新しい人生は!」
「よーし、開けるぞ~!」
私は部屋に戻り、早速特典のノーマルキャラを出すことにした。
一応これだけが、元々の私の異世界転移のお供だったわけだし、凄く気になる。
私は白いカプセルを地面に投げつけた。すると、白い煙が溢れ出した。
「わわっ、大丈夫だよね?急に爆発したりしないよね!?」
そして、ぴかーんっと目を開けられないぐらいに光った。
次に私が目を開くと、目の前に美少女メイドがいた。
「初めましてご主人様。これからよろしくお願いします。」
スカートを指でつまみ、優雅に挨拶してきた。
「あ、えっと…よろしくね?」
私は、そんな気の抜けた返事しか返せなかった。
美少女メイドさんは、キッチンで料理を作っていらっしゃる。
あのあと色々聞いてみた。
名前はメリーというらしい。ピンク色の髪に、膝下まである正統派のメイド服。整った顔立ちに、綺麗な黒色の瞳。
なんというか、凄くメイドっぽいメイドだった。
メリーが呼び出されるのは初めてらしく、凄く驚いていたけど、外に出れて嬉しそうにしていた。なんかごめんね、ノーマルキャラだからって悲しんじゃって。
「ご主人様、お食事の準備が終わりました。」
「あ、ありがとうございます。」
「ご主人様。私にはそのような言葉は使わなくて良いのです。」
「えっと、慣れなくて…。ちょっとずつ改善していくよ。」
相手は敬語なのに、私だけため口とか、ちょっと気になっちゃうよね。
とりあえず私は椅子に座り(メリーが椅子を引いてくれた)、机の上の料理を見てみた。
「これは…シチュー?」
「ポタージュでございます。野菜は外の畑から採ってきました。」
「あ、そういえば、女神さまが作ってくれたんだった。」
女神さまが、色々してくれたのを忘れていた。これからは忘れないようにして、毎朝空に向かって感謝の言葉でも言うようにしよう。
「ご主人様。冷める前にお召し上がりください。」
「あ、そうだね。せっかく作ってくれたんだし、頂きます。」
私はスプーンを持ち、ポタージュを掬う。既にとってもいい匂いがしてるし、見た目も良いから美味しいはず!
「あーむ。」
「どうですか?美味しく出来てますでしょうか?」
「…うえぇ。不味い…。」
「そんな!?」
なんでだぁ…。見た目も匂いも最高なのに、なぜ味だけこんなに悪いのぉ…。私が初めて作った料理より不味い…。
「途中まで美味しくできていたはずなのに…。」
「メリーも食べてみなよ…。」
私はスプーンでポタージュを掬い、メリーの口に突っ込んだ。
同じ不味さを味わえ!
「むぐっ!…あれ?美味しいじゃないですか。」
「嘘でしょ!?」
このくそ不味い料理をおいしいだと…!?こいつ…!
「メリーって味音痴なんだね!!!」
「そ、そんなことありません!ご主人様がおかしいだけです!」
「はぁ!?そんなわけないでしょ!?」
「とっても美味しいですのに…そんなに私の料理が食べたくないんですか!」
「そんなことないよ!メリーの料理を食べたくない訳じゃない!」
「それなら、このポタージュ全部食べてください!」
ドンッっと、メリーがポタージュの入った鍋を机に置いた。
「ちょ、あんたどれだけ作ってるの!?」
縦横30cmぐらいずつある大きな鍋一杯に、見た目と匂いだけは良いポタージュがたっぷり入っていた。
「ご主人様のために、いっぱい作ったんです!さあ、早く食べてください!」
「さすがにこんなに食べれないよ!」
「じゃあやっぱり、私の料理を食べたくないんですね!」
「あぁぁぁ、もう!めんどくさい彼女みたいなこと言わないでよ!!」
「そんなことありません!もういいです!ご主人様のバーーーカ!!!!」
「あ、ちょっと!」
メリーは玄関から外に出ていってしまった。
「はぁ…なんでこんなことに…。」
私はもう一回だけスプーンにポタージュを掬って、口に運んでみた。
「…やっぱり不味い。」
メリーは夜になっても帰ってこなかった。
さすがに心配になって、外に探しに行こうと玄関を開けると、玄関のすぐ隣で膝を抱えて座っていた。
泣き声と鼻をすする音が聞こえるし、泣いているみたいだった。
「あぁもう!バカメイドめ!立ちなさい!」
私が命令をすると、メリーは立って、私の方を向いた。
メリーの顔は、薄くしていた化粧が崩れて、せっかくの綺麗な顔が台無しだった。
「なんで夜になっても家に入ってこないのよ!」
「それは…ご主人様が私の料理を食べたくないって言ったから…。」
「そんなこと言ってないでしょ!
あー!!!イライラするなぁ!」
「うぅぅ…。」
メリーがまたメソメソし始めた。見た目は完璧系美少女メイドのくせに、料理は下手だし、すぐ泣くし…めんどくさいなぁ!
私はメリーの手を引いて、家に入った。
「あ…やめてくださいご主人様!私はもういらない子なんです!」
「うるさい!黙ってそこに立ってろ!」
私はメリーの手を離し、くそ不味いポタージュを温め始めた。
「ご主人様…何をしてるんですか…?」
「黙ってて!…このぐらいで良いか。」
私はぬるいぐらいに温めたポタージュの鍋を持って、メリーの前に立った。
「はぁ…よく見てろバカメイド!」
私は言葉を吐き捨て、鍋を顔の辺りまで持ち上げた。
そして…。
「ご、ご主人様!?なんでそんなことを!?」
鍋いっぱいに入ったポタージュを、そのまま鍋に口をつけて飲み始めた。
あー、くそ不味いなぁホントに!
私は10分ぐらいかけて、鍋いっぱいのポタージュを飲みきり、鍋を流し台に置いた。
「はぁ、はぁ…あー不味かった!」
「ご主人様、だ、大丈夫ですか!?」
酸欠になってたのか、ふらっとした私を、メリーがそばに来て支えた。
はぁ、私より背も高いし、胸も大きいし、本当にムカつくメイドだぁ…。
「おいバカメイド!よく聞け!!!」
「は、はい!」
「私はもう一生、お前の料理は食わん!!!」
「な…!うぅ…分かりました…。」
「その代わり!お前が!私の料理を食え!!!」
「え…?」
「私がこれからは料理を作る!だからお前は!私と一緒に!私の料理を食え!!!」
「…!…はい!ご主人様!」
「良い返事だ…!このバカ!もう一生家出とかするんじゃねぇ!!!」
「はい!申し訳ありませんでした!」
「はぁ、はぁ…それで良い…。うぐぅ…!」
ぎゅるるるるるるぅ!!!!
「ご主人様!大丈夫ですか!」
「はぁ、はぁ…おいメリー。」
「はい、どうしましたか!」
「…私をトイレに連れていってくれ…お腹痛い…。」
ぎゅるるるるるるるるる!!!!!!
「わ、分かりました!」
メリーが私をトイレに連れていき、ズボンと下着を脱がせて、座らせた。
その瞬間に、私の我慢は限界を迎えた…。
「…あ、知ってる天井だ。」
目を覚ますと、木の天井が見えた。
昨日と同じ天井だ。
「あ、メリーだ。」
隣を見ると、メリーが眠っていた。
ご主人様と同じベッドで寝るメイドってどうなんだ。
確か昨日は…トイレで色々垂れ流したあと、メリーがお風呂に入れてくれたんだっけ。
はぁ…人間として見られたくない姿を色々見られてしまった。
もうお嫁に行けないや…。
「ん…?あ、おはよーございますご主人しゃま…。」
「おはようメリー。昨日はありがとね。」
目を覚ましたメリーの頭を撫でておく。よく考えたら、原因はメリーだけど、この際気にしないことにした。
「むぅ…?どういたしまして…?」
こいつ、まだ寝ぼけてやがる。
はぁ、自由なメイドですねぇ。
「えへへ…ご主人しゃまだいしゅき…。」
メリーがギューっと抱き締めてきた。私の顔を、胸に押し付けないでほしい。苦しいじゃないか。
「はぁ…これからもよろしくね、メリー。」
異世界転移をして、1ヶ月ぐらいたったある日の夜。私は人生最大のピンチに襲われていた。
「えへへ、ご主人様ぁ…捕まえちゃいました。」
メリーが、寝転がっている私の上に馬乗りになり、両腕を魔法で捕まえてきた。
ノーマルキャラのメリーは、拘束魔法だけしか使えないらしい。
「ねぇメリー。あなたは何をしているのか分かってるの?」
「えっとー…ご主人様の夜のお世話をしようとしています。」
「何その意味深なお世話って!?ちょ、私たち女同士だよ!?」
「今まで襲ってもらえるのをずっと待っていましたのに…全然何もしてくださらないご主人様が悪いのです!」
メリーが私の服を触り始めた。
「ちょ、待って、ストップ!」
「もうここまで来て止まれません!覚悟してください!」
「命令を聞けよバカメイドぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
外が明るくなってきた頃、私は枕に顔を埋めて泣いていた。
「くそぅ…なんでこうなるんだよぉ…。」
「大変美味でした。ご主人様、ごちそうさまでした。」
「変態みたいなこと言うなよぉぉぉ…。」
うちのバカメイドは、まるでサキュバスのようだった。
あんなに命令に背くメイドもいないでしょ…。
枕にも私たちの匂いが染み付いていて、女神さまの良い匂いは残っていない。もう、この現実を忘れる手段は無いようだった。
「これから毎日お世話してあげますね。」
「嫌だぁぁぁぁ…もう許してよぉぉぉ…。」
「許すも何も、メイドとしてのお仕事をしているだけですよ?」
「こんなバカで変態なメイドはいらないぃぃぃぃ!!!!」
うちのノーマルキャラのはずのメイドは、アブノーマルなメイドだった。
私の新しい人生は、家から離れることなく、バカで変態なメイドと2人で過ぎていくのだった。
お読みいただきありがとうございました!
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