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北京

作者: フガフガ

 大変な期待を抱いて大きな祭りの本物の見世物小屋に行った。お化け屋敷風の体験型で表札には、

「人喰い!北京原人!!」

と、改造人間風に書かれてあるのを見て、僕は存分に寒けを震わせた。

 中国の硯に似せたコンクリートで一段高く床増ししてある敷地の隅に中華風原始時代の穴倉が盛ってあり、のちの中華文明に通じるような中華風の入り口がぽっかりと開けてある。

 順路が示してある。僕はその通りに歩き一歩、一歩、と目の前に近づく、そして穴倉が大きくなり僕の視界はいっぱいになりもう2つ歩みを進めると入り口の暗闇が視界の半ばになってすぐ、恐怖心への反抗から僕は5歩6歩と足早に、入口の内へ屈み入ったー「スッッ」鼻をすする音それと同時、

 石斧で僕の首筋はしたたか打ち据えられた。入口周囲足を止めたかどうかの途端だった。首が千切れるかと思ったが首の皮一枚でつなぎとめた、「危ない危ないっ」カバンの中の薬袋から消毒を取り出し擦り込んだ。

「さすが当時の中国大陸のリアル体験ってわけか!どこに危険があるか分からないってとこから最後にはとっておきがまってるわけだっ」

石斧を持った主はテント奥の闇深く走り去って行った。

 その後を追いかけて2、3歩なかにつんのめったところ、頬と耳とくちびるが冷気で突っ張る。すぐに引き返した。寒い。中国北方の冬をそのまま、、いや、氷河期そのままに再現している。

 髪に手を当てると、髪が霜柱の屑折れるごとく地面に落剥するのが目に入るなり恐怖心に踵を返した。

 このとき、心肺が半ば以上凍結していたので呼吸が苦しく、僕はカバンの中の袋に入ったドライヤーを取り出し口にあてがって熱風を吸い込み続けた。しばらくして胸が氷解したように呼吸が楽になった。そうしなければ助からないと直感した日頃の野性が幸いした。(この措置はまさに正解で、この症状で亡くなった者の中で早期にドライヤーを使っていれば8割が命をとりとめることができた、と呼吸器医療専門家は語った)

 僕は、少し休んで、それは再び潜入するためのひと呼吸分の休みのはずだった。

 このあとの家族に誇らしく思う考えが僕の決断を鈍らせた。勇者の事績を未遂に終らせる家庭の安逸とは次に述べることであるー

 勇気を示した後の自分はどれだけか成長しているだろうという目論見を披瀝するため、カバンの中から電話を取り出し家族に連絡した。その決意を伝えるとあまり心配されたので、まずは家を安んずるため家族を落ち着かせるため家に帰った。家に帰ると家のテレビではサザエさん。舟とサザエが「今晩のおかずは何にしようかね」と父さんとマスオさんの好物を用意するのをみるや身体の末端から中心に軋む音が聞こえた。勇気が手のひらに丸め込まれ折られる音だった。

 2枚の丸く大きな手のひらに頭から、足元から、にぎりと包まれる。

 見世物小屋での切迫した気分は、見世物小屋に行く気骨は、「ペキン」と折れた。

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