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第32話:VS

 「とりあえず、学校に近づくのはやめよう」


 「え? 何で?」


 夏帆は学校をサボっているということを忘れているみたいだね。前遅刻したときにはどうにかなったけど、藤井と一緒に教室で大暴れしたあの恐い生活指導の教師がいるんですよ


 「でも、それもスリルがありますね」


 「春香? スリルを楽しむ場合ではないよ」


 「冗談です。とりあえず……買い物行く?」


 「途中に学校あるけど」


 「大丈夫よ、すーっと通り抜けちゃえば」


 そりゃまぁ、校舎の前を通ったくらいでばれるとは思わないけど。というかそんなの考えてるの僕だけ? 

 穂月さんは分からないけど、夏帆も春香も学生だよ


 「お? 冬貴サボり?」


 やばっ、学校関係の人か

 

 その真っ赤な頭は……


 「藤井も?」


 「当然だ、まぁ今日はいかさまヤロー討伐じゃなく、怪我人捜しだけどな」


 「お兄ちゃんが検査すっぽかして逃げちゃいました」


 藤井の後ろに真っ黄色の髪のレモンちゃんが隠れていた。隠れようとも思っていなかったとは思うけど、見事に隠れていた


 「武仁さんが?」


 「うん。あんなヤブ医者お断りだーって叫んで逃げた」


 あまり想像つかないな、でもヤブ医者って


 「俺としちゃどうでも良いんだが……レモン1人で捜させるのもな……というわけで、良いところにお前がいた。暇だろ、暇だな、暇だと言え」


 「えぇー……また強引な」


 というか女の子3人といる僕が暇に見えるのだろうか? というか実質は秋馬である穂月さんは、女の子に見えているのだろうか……


 「別に捜さなくて良いから、こいつのお守りしててくれ! な!」


 「郁弥、それちょっと子供扱いしすぎ。怒るよ」


 「ごめんごめん、じゃな冬貴、俺はあのいかさまヤローをぶっ殺してくるから!」


 「わ、分かった。ほどほどにがんばれ」


 いかさまヤローこと、曳汐流星さん。一体あの人は何人の人を敵に回しているのだろう……何したのか知らないけど……


 藤井は、乱暴なところもある、というかほぼ乱暴だけど、友達想い、というかレモンちゃんにはすごく優しいというか思いやりがあるというか

 まぁ、藤井は葉山家に居候しているわけだから当然そうなるといえばそうなるものか


 「郁弥がついて来るって言ったのに……勝手だなぁ」


 「はは……確かに勝手だね、それでどうしよう。一緒にどっか行く?」


 「うん、良いでしょうか! ……あれ? 他校の子?」


 レモンちゃんが穂月さんを見て言った。どうやらレモンちゃんには完全に女の子だと思われているらしい、やっぱりそうそう気付く人なんていないな


 「そうだよ」


 なんて言おうかと思ったけど、とりあえずレモンちゃんの質問通りにしておこう


 「私は葉山レモン、よろしく!」


 「穂月です、こちらこそよろしく」


 ごくごく普通に挨拶は終了した。なんだか秋馬が失われていくようで妙な感じがする。だけど僕は穂月さんを信用することにしたんだ、友達だから

 まぁ状況は変わってるけど、どうも秋馬から抜けたくても抜けれないらしいし


 「はぁー……」


 「どうしたの冬貴?」


 「色々考えると疲れた」


 「あはは、良いってそんなのほっといて。大丈夫よ」


 「そうだね、夏帆の言うとおりだね。考えるのは後で良い」

 

 きっと大丈夫だ。秋馬はまた僕たちの所に帰ってくる。だけどその時には、穂月さんはどうなるのだろう……

 ダメだ、考えて分かることでもない。今はそれは置いておいて、新しい友達と今を見ていよう


 「おや? これはこれは幸せそうですね……成る程、こうすることこそが解決策、いえ君の答えですね。素晴らしいと思いますよ」 


 曳汐流星さんだ、どうして捜している藤井とは全く出会わないのに、別に用がない僕の前によく現れるのだろう

 

 「僕の知り合いがまた捜してますよ」


 「そうですか、ではこちらからも捜してみるとしましょう」


 それはオススメしないけどね

 なんせ藤井はあなたのことを倒す気で捜してるんですし


 それに、僕の答えって何だろう……

 聞いてみよう、と思ったらまた居ない。神出鬼没、そして突然になくなる。なんというか人間離れした人、という感じだな


 「じゃあ、どこ行く?」


 「あ、あの……」


 「穂月さん、どうしたの? 行きたいところある?」


 「行きたいところというか……なんだか体がムズムズして……体を動かしたくなるんですよ」


 ……やっぱり秋馬の体なんだな

 でも体を動かすと言ってもなぁ……この辺に運動ができるような所あったかなぁ


 「あ! だったら1つ良い場所がありますよ」


 レモンちゃんが挙手して言う。別にわざわざ手を挙げることもないけど……


 「近くにバスケットボールのコートがあります。ちょうど5人ですし、この時間なら多分相手になってくれるチームも居ますよ」


 「へぇ、どうする?」


 レモンちゃんの交友関係からきてるとしたら……もしかしたらヤンキーのたまり場だったり。大丈夫か、そんなことはないだろう


 「オッケー、面白そう!」


 「私もバスケならできますよ」


 夏帆と春香も結構乗り気みたいだ

 僕も反対する理由もないし、行ってみることにしよう





 「やほー! 遊びに来たよー!」


 レモンちゃんが元気よく建物の中に入っていく。僕たちもその後ろについて中に入った

 中々広い建物だ。中にはバスケットボールのコートが2面あって、片方は今まさにゲームをしている真っ最中だ


 その中でも目立っている長身のプレイヤーがダンクシュートを決めた。大きな音が建物に響いた


 「おぉ……すごい。ん? あれ武仁さん?」


 「あー! 本当だ! お兄ちゃん何やってるのよ−!」


 レモンちゃんがプレイ中のコートに容赦なく踏み込んでいった


 ここからでは会話が聞こえないが、武仁さんはどうも苦笑いをしているように見える。そして他のプレイヤーは大笑いをしている


 少しして、レモンちゃんが大股歩きで戻ってきた


 「信じられないわ……」


 「どうしたのレモンちゃん?」


 「お兄ちゃんのチームと私たちが試合して、勝ったら病院に行くだって」


 「へぇー、じゃあやってみる?」


 「ちょっ、良いの? お兄ちゃんバスケは全国レベルだよ? チームの人もここで結構バスケやってる人たちだし」


 「やるだけやってみても良いでしょ、ね? みんな」


 まぁ、負けて元々、それに武仁さんは複雑骨折してるらしいし、病院には行ってもらわないと。本当なら今すぐ行ってもらいたいけど……


 「ま、まさか冬貴がそんなことを言うとは」


 「ねぇ、昔はすぐに無理だよー、って夏帆に泣きついてたのにねー」


 うっ……それを言われると

 だけど僕は変わったのかも知れないな。諦め癖は抜けたかも知れない


 「よしっ、じゃあやっちゃおう。私だって負けるつもりはないし」


 僕たちはコートに向かった。シューズは結構置いてあるらしく借りることができた。穂月さん以外は動きやすい服だったので服装は問題ない

 服を貸そうかと聞かれた穂月さんはほどほどにしておくのでいいと断っていた


 ほどほど、秋馬のほどほどならかなりの戦力だ


 「マジでやるの? ひょろい男に女の子が4人じゃん! 怪我しちゃダメだし、優しくしてやるよ」


 ブチン! と何かがブチ切れる音がした気がした

 上から目線なあのプレイヤーの発言には、多分夏帆はイラッときたはずだ。これでかなりの戦力になるはず


 「真人、油断は禁物だ。彼は決してひょろくはない、そして俺の妹を甘く見ていては本当に負けるぞ……俺は病院に行きたくない、レモンのマークは緩めるなよ」


 全国レベルという評価を受ける武仁さんが、油断するなというレモンちゃんははたしてどれほどの実力者なのだろう。とりあえずこの中で経験者は彼女だけだ、確かにレモンちゃんにはがんばってもらうことになるだろうな


 「とりあえずゲームキャップは私がつとめます。ポイントガードは私がやります、そして穂月さんと春香ちゃんはフォワードを頼みます。外からゴールの方へディフェンスをかわして走り込んでください! そして冬貴くんと夏帆さんは、中でボールをもらってシュートを決めてください! 外からの3Pシュートは私に任せてください、じゃあがんばりましょう!」


 パパッとレモンちゃんがアバウトに作戦を伝えた。とりあえず僕の仕事はゴールの近くでボールをもらってシュートをすればいいらしい


 「ゲームは1クオーターで10分間、そっちは何度タイムを取っても良い。こっちは一切必要ない。俺は病院に行きたくない、手加減はできないが問題ないな?」


 「問題なし! お兄ちゃんが怪我してるからって容赦はしない!」





 コートの中央で審判によりジャンプボールが上げられる

 とりあえず僕が思いっきり飛んでみたが、高さではかなわない


 ボールは相手のプレイヤーにわたり、ドリブルで直接ゴールを狙ってくる


 「冬貴くん、相手のゴールの方に上がってて」


 レモンちゃんが僕のすぐ横を通り過ぎるときに小声で言った。本当ならディフェンスだけど……とりあえず相手のゴールへ走る


 すると後ろから直線で僕にパスがきた


 「えぇ? っと、シュートだ」 


 ゴールの真下でボールを整えて、リングに放り込んだ。これで2対0


 「真人! 油断するなと言ったろう。1人で攻めるからそうなる」


 どうなったのかは見ていなかったけど、どうやら真人というプレイヤーがドリブルで突っ込んでいったところを、味方の誰かにボールを奪われた、という感じだ


 ゴールをこっちが決めたので、相手からまた始まる


 「冬貴くん、お兄ちゃんは右手を骨折してるから、左からしかこない。だから左しか守らなくていい、だから春香ちゃんが抜かれたら、助けにいってあげて」


 「分かった」


 ディフェンスに戻ると、武仁さんが左側からドリブルで攻めてきた

 左側だけを抑えに行く


 「ちっ、レモンの入れ知恵か……」


 武仁さんはスピードを落として、左手だけで別のプレイヤーにパスを出す

 そのパスをうけたプレイヤーがシュートを打とうとする、そこに春香が止めに行くが、シュートはフェイクで、春香は抜かれてしまった。そこに僕がカバーに行く

 ボールを持ったプレイヤーの動きを2人で止めるとパスがまた武仁さんに出されたが、そのパスは穂月さんがカットした


 「ナイスカット! 穂月さんパス!」


 穂月さんがレモンちゃんの方にパスを出した

 そしてそこから僕にパスが通る

 

 前に攻めれるか見てみるが、僕には武仁さんがディフェンスにきているのでそれは無理そうだ

 もう一度レモンちゃんにパスを返す。コートの真ん中ぐらいからもう一度攻め直す


 「真人! レモンだ! フロントコートからは常に全力でディフェンスしろ!」


 武仁さんに言われて1人のプレイヤーがレモンちゃんの方に走っていったが、その前にレモンちゃんはシュートを打っていた


 「遠くない……?」


 「いや、レモンはあれが入る」


 ぱすん、と綺麗な音を立てて、ボールはゴールをくぐった



 

 もうよく分からないけど、恐るべし葉山兄妹、ホントに勝てそうだ

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