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第27話:旧倉庫の怪、美少女の呪い

 普通の生徒達が近づこうともしないのも納得、そんなオーラを醸し出す倉庫だ。そんな倉庫なのに、周りにほどよく木々が生い茂り、余計に薄暗い。なぜこんな設計にするんだろう

 岡辺の言う「連れて行かれた」とは、どうも体が勝手にとかそういうあれで、ようするに憑依されているとか心霊番組とかで言われたりする感じだったらしい

 動き出した「秋馬ゴーストバスターズ」は止まる気配もない。だんだん行きたくなくなってきたなぁ……


 秋馬の手が倉庫の取っ手にかけられた


 「むっ、開かないじゃねぇか」


 「鍵がかかってるのか?」


 秋馬と西が岡辺を睨む、僕は少し安心もしたが一応岡辺を見る


 「……おかしいな、鍵も借りれないし」


 「壊す」


 「「「え?」」」


 一瞬意味が分からなかった。まず「何を?」と聞こうとしたがやめた。そのかわりに「やめろ」と言おうとしたが間に合わなかった。ゴギャン、という何かがへし曲がる音と一緒に、扉が変形して隙間が空いた


 そこにどこから拾ってきたか、鉄の棒をねじ込みこじ開けた


 「何したの!?」


 まず鉄の扉が曲がるというのが信じられない……

 万が一、美少女の幽霊がいたとして、まさか扉を破壊されるとは思ってもいないだろうな


 だが、幽霊の方も冷静だったのか、どんな方法であれ開けられた倉庫の中からは冷たい空気が漏れてきた。少し開いてから間があったけど……幽霊も対応に困ったのかも知れない


 「涼しぃー」


 「この寒気は……!」


 「ただ単に日が当たらねぇからだろ?」


 岡辺が怖がってみせるが秋馬は問題でもないと鋭く突っ込む、だが岡辺は本気でびびっている


 「で、出やがった……」


 僕も倉庫の中を見る、確かに誰かいる。小柄な女の子のようだ

 美少女の……幽霊?


 「オラァァ!!」


 秋馬が持っていた鉄の棒を倉庫の中に投げ込んだ。そして立て続けに壊した扉から、倉庫の入り口付近に落ちていたものを投げまくる

 凄い音だ、多分なかのものも崩れただろうし、これで中の人が実は普通の人だなんてシャレにならないよな……


 それってやばくない?


   《う、うらめしやぁー》


 幽霊は普通に倉庫から出てきた、なんだか幽霊を見てホッとするなんてそうそう無いことだ


 「俺、今はむしろ秋馬の方が怖いわ」


 「僕的にはこの人が幽霊でよかったよ」


 「ふぅ、なんか明るいしな」


 「やっぱムードがねぇと、幽霊なんて人と変わりねぇな、むしろ人のが怖い」


 思い思いの感想を述べた

 もはや目の前にいる恐怖の対象であったものは、ただの人とさほど変わらない扱いを受けている


 《なに……怖くないの?》


 「ぶっちゃけ全然」


 《アハハハハ》


 狂ったように笑い出した、ある意味怖いが……

 すると、突然視界から消えた。なるほど幽霊のなせるワザだ


 《アハキャァ!》


 「もう一度死んでこい!」


 秋馬がまたどこから持ってきたのか鉄の棒を振り回して幽霊と戦っている。突然秋馬の目の前に現れてビックリさせようとしたのだろうが、逆に反応されて反撃をされている

 というか当たらないんじゃないの?


 「なぜ避けるんだ? 当たらないんじゃねぇの?」


 《防衛本能だ!》


 幽霊はまた倉庫の中に戻った


 《お前ら絶対呪い殺すからな……!》


 「やってみろ」


 倉庫の中に秋馬が鉄の棒を放り込んだ、ガシャンと音を立てて倉庫の中を鉄の棒が暴れ回る


 《くそー……覚悟しとけよ!》


 突然、視界が真っ暗に

 しまったな、冷静に考えて、幽霊と人間を同じラインで考えて良いはずがない。これは怒らせたのかも知れないな


 ――ホントに意識が……






 ――何か忘れている


 そんな違和感のある目覚め、僕は今まで何をしていたんだろう

 ……そうだった、朝練があるから早く……ヤバイ、ちょっと遅れそうだ。夏帆は時間にはうるさいからな


 朝の支度を即行で済ませて、集合場所である近所の公園へと走る




 「冬貴遅い! 5分遅刻!」


 「夏帆は時間に厳しすぎるよー」


 よくある、特に部活が始まってからはよくあった光景だ。たった5分の遅れも夏帆は厳しく注意してくる


 「でも朝練って早いよね」


 「強くなるためよ。あんたもそんなままじゃ公式戦どころか、組み手でも一勝もできないわよ」


 組み手で一勝もって……そんなの昔の、いや少し前の……

 少し前、なんだか同じようなことが、デジャブ? これがそれなのだろうか


 「じゃ、学校いこっか」


 「……そうだね」


 何かおかしい、だんだん景色が歪んできている

 この後僕たちは2人で、話ながら学校まで行くんだ。勉強のこと部活のこと、家のこと、趣味やら色々、たわいもない話が続くんだ


 「あ、秋馬」


 僕たちの進む方向にこっちを向いて秋馬が立っている、気がする。でも立っているのは……

 あれは、般若の面? 般若の面をつけた秋馬と同じような背丈で髪も似ていてうちの制服を着ている人が立っている、でもあれは秋馬ではないはずなんだ


 般若がどんどん近く……






 「うわぁ!」


 ――夢か、昔の夢を見るなんて年寄りみたいだ

 まぁ多少の改ざんはあったけど、しかしここはどこでなぜ寝ているんだ? 


 「眩しい……ここ倉庫の前だ」


 すぐ横で西と岡辺が寝ている、そういえば旧倉庫に幽霊が出るって話だったから見に来たんだった。秋馬はもう目を覚ましてるのかな


 倉庫の入り口に秋馬が立っている、まさかまだ幽霊が?


 「秋馬、大丈夫?」


 「……」


 ノーリアクション、聞こえてないのか無視か、無視なら少しショックだ


 「ねぇ秋馬? どうしたの?」


 秋馬がこちらに振り返った。見たことのない表情だ、不安で今にも崩れそうな……


 「あの、誰ですか?」


 「……は?」


 敬語? いやそこではない。これはまさか、記憶喪失というものなのだろうか

 だとしたら一大事だ、これも幽霊の仕業、つまり呪いなのか?


 「秋馬! 僕だよ!」


 「……?」


 本当に忘れてしまったのだろうか、冗談にしては質が悪い、それに嘘をついている顔には全く見えない。それに目の前にいるのは秋馬ではないようだ


 これは困ったことだなぁ


 「岡辺起きて、ちょっと大変だよ」


 岡辺を揺する、しかし起きる気配はない、まるで子供のように眠ったままだ

 だけど僕たちを連れてきた岡辺には起きてもらう


 ビンタを繰り出す、パチンと快音が響いた、我ながら良いビンタだ


 「イッてぇ……どうした? なるほど、ここが死後の世界か」


 「いや違うから、旧倉庫の前だから」


 どんな夢を見ていたんだろう、臨死体験の真っ最中だったのかな……


 「そんなことより秋馬が記憶喪失だよ!」


 「なんだって!? ようし、任せろ!」


 その自信はどこから? というか何を任せるんだ?

 まさか叩けば記憶が戻るなんて言うんじゃないだろうね? そんなことさせるわけにはいかない


 「お前の名前を教えてやろう!」


 「はい」


 「天草秋馬だ、そしてお前は俺の忠実な下部だ」


 うわぁ、質悪いなぁ。記憶喪失につけ込んで自分の都合の良い情報をすり込もうとするあれだ、こいつ最低だ、任せられないや


 止めようとしたが、岡辺が吹き飛んだ


 「いてぇ! なぜ殴った!?」


 「どうも違う気がした、逆じゃないですか?」


 やっぱり記憶が無くなってしまっても、元は秋馬なんだ……

 しゃべり方が丁寧な分、余計に恐いな


 「……はい、そうです」


 簡単に諦めた、全くあてにならないなぁ

 しかし、岡辺が秋馬の下部になったところで、事態は全く良い方には向かない。むしろ悪い、変な事実がすり込まれただけだ。と言っても、秋馬は元からそう思っていたのかも知れないけど……


 できることといえば……とりあえず脳外科? 精神科? どっちに行けばいいんだろう

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