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第20話:ボウズはハゲじゃない

 「おかえり」


 「ただいま」


 とりあえず親と挨拶

 そしてすぐに準備をして家を出る。どこに行くって学生は毎日学校に行かねばならない


 「いってきます」


 「……いってらっしゃい」


 家にいた時間は本当に短かった

 こんな生活が続けば不良と呼ばれることになるのだろう……


 家の前に出ると、丁度夏帆が通りかかった


 「おはよ」


 「おはよーって……冬貴疲れてない?」


 凄く疲れてるよ

 そうか、顔に出てるのか。しかし夏帆は元気そうで何よりだ


 「おーっす冬貴。そんでおはようございます! 夏帆さん!」


 えっと。バカが来た。岡辺こと岡辺太一おかべたいち

 なんか印象が違うなぁ……


 「岡辺散髪した?」


 見るからに……バリカンで思いっきりいった感じだな

 しかし、心境の変化か? 一体どうしたんだろう


 「気付いたか」


 だからボウズになってりゃそりゃ気付くよ。もともと長かったんだし


 「俺野球部なんだ」


 「……へぇ」


 「やっぱり知らなかったか……なぜか誰も知らないんだ」


 お気の毒に


 「夏帆は知ってた?」


 「つーか、誰?」


 岡辺の上に何かがのしかかったように見えた

 空耳だろうけど「がーん」って聞こえた気が……


 「がーん、がーん、がーん」


 お前が言ってたのか。なんか可哀相


 「ち、ちくしょう!」


 岡辺は体制を低くして、野球部顔負けのダッシュで走っていった

 

 ……そうだ。野球部だったな


 「俺は忘れられる運命なんだよぉー!!」


 「え? 知り合い?」


 「……今日にでも教室で会えるよ」


 夏帆は本気で忘れているらしかった

 昨日も見てるはずなのになぁ




 教室までやって来た

 いつもより少し遅めの登校なので、普段よりも教室に生徒が少し多かった


 教室の中央。丁度岡辺の席あたりに人だかりができている


 「あれ? なにやってるの?」


 「お! 冬貴! 大変だ。岡辺が動かない」


 本当に落ち込んでるなぁ可哀相に

 そんな岡辺に近づく夏帆。この状況から回復させてやれるのはお前だけだろう


 「このハゲだれ?」


 それはハゲじゃない! ボウズだ!

 じゃない、違う。そいつ岡辺だよ


 「俺ですよォ! 夏帆さぐふっ!」


 立ち上がった岡辺が、体を不自然にねじ曲げながら宙を舞った

 いくらなんでもやり過ぎ……


 どうやら手を下したのは夏帆ではないようだった


 「邪魔」


 河瀬純

 昨日転校してきた転校生だ。岡辺曰く武闘派女子の仲間。そして夏帆のライバルらしいな

 どれも岡辺が言ってるだけだけど


 「てか誰よ。このツルッパゲ」


 どの辺がツルッとしてるんだ? というのは置いておいて

 さすがは武闘派。言うこともやることも規格外だ。まぁそれは夏帆も同じ事だけど


 「あっ秋馬くーん」


 声のトーンが跳ね上がった……

 魔性……なのだろうか。そして他の女子の突き刺さるような視線を河瀬が受けているのが僕でも分かった


 呼ばれて秋馬が振り返る


 「あ? えーっと。河瀬だっけ?」


 「はい。河瀬純です」


 ぬあぁ。男ながら虫酸が走る。この豹変っぷりは

 多分このクラスの秋馬ファンは僕以上に苛ついていることだろう


 「おはよう」


 修羅場? 目に見えない修羅場だ

 秋馬を奪い合う冷戦がいま……始まらなかった


 少し遅れの時間で、春香が登校してきた


 「秋馬くん。おはよう」


 「あぁ、おはよう」


 突如、僕と夏帆の間を高速で何かが飛び交った。以心伝心だ、これは間違いない

 それからすぐにクラス全体にもこの信号は飛びまくった。だが河瀬だけは多分受信できていないだろう

 

 そして秋馬と春香の間には、他者には相容れないまた何かが流れていた

 バックにシャボン玉でもふわふわしてたり、華が咲いているように思わせるあれだ


 ようするに、あれみたいだ




 そして、かなり遅れてそれを悟った河瀬が遠くで崩れ落ちていた

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