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第15話:担任の苦悩

 「ふぅ」


 気持ちの良い朝

 若干睡眠不足気味だが、カーテンの隙間から差し込むほどよい日差しの暖かさの中で目覚めた

 時計を見る。現在時刻は午前10時


 ……遅刻だ


 「やばい!」


 僕の無遅刻、無欠席記録は……もう手遅れだ

 しかし! 無欠席記録だけでもたたき出してみせる!


 即行で着替えて、鞄を持ち、蹴り開けるようなかんじで玄関から飛び出す


 「よぉ。おはよう冬貴」


 さも当然のように秋馬がいた。どうやら僕と同じく遅刻組になったらしい


 まぁ、秋馬が遅刻するのは珍しいといえば珍しいが、別に初めてでもない

 

 「なにやってんの!?」


 「登校だよ」


 「分かるよ! なんで平然と僕の家の前にいるのさ」


 「お前が出てこねぇから待ってたんだよ」


 「朝から!? ごめん!」


 な、なんて友情に熱い男なんだ……

 というかその情熱で僕を起こしてくれれば良かった


 「嘘だ。2分前にここに来た」


 「どのみち寝坊組か」


 「いや、家から出るのがだるかっただけ」


 「そう……」


 どうでもいいよ!




 僕たちは学校まで全力で走った

 だいたい距離は2キロメートルほどなのだが、秋馬は百メートル走を走るようなスピードで走っていってしまうので、ガンガンさがついていく


 ちなみに秋馬は百メートル11秒台……

 あんた陸上でもスターだ


 僕はというと、持久走(1500メートル)5分30秒くらいだ

 速いと思う人もいれば、遅いと思う人もいる。つまり微妙なタイムだ


 なんて考えている内に、世界記録ペースで秋馬は学校まで走っていってしまった




 「……お、遅かったじゃねぇか……冬貴」


 「……あぁ。秋馬もがんばれよ」


 ペース配分

 この器用な作業においては、僕のほうが一枚上手だったらしい


 初っ端から全速力だった秋馬は、500メートルほどの地点で力尽きていた

 でも、100メートル11秒ペースで、500メートル完走はマジ凄いよ


 「ちくしょう……まさかこんな坂が、お前は……倒れるな」


 「しっかりしろ! お前何年ここを通ってるんだ?」


 「……ぐふっ。この1年は……なんの役にも、たたねぇ」


 この1年、秋馬はなにをしてきたんだろう


 「おい。お前天草秋馬だよな? やったぜ! へばってやがル! こいつを殺して、俺も一躍有名に……」


 街の不良Aとでも銘打っておきましょうか


 「ごっつぁんです!」


 「おっふ!」


 起き上がり、秋馬の必殺のストレート

 結局ごっつぁんですの意味は不明だが、秋馬てきに感謝だったのだろう、と僕は思う


 「サイヤ人は、瀕死の状態から蘇ると、パワーアップするのだぁ!」


 意味が分からない

 けど、なんだか力尽きる前よりも速くなっているような気がする


 「てか待て! 待ってよ! 秋馬速すぎ!」


 うははははーと高笑いしながら秋馬爆走

 学校は授業中だろう。すごくへんな目で周りから見られている


 爆走する秋馬を追って、僕も1500メートル5分30秒というそこそこの速さで学校を目指す


 


 かなり秋馬からは遅れてのゴールだったけど、これでも僕的には全力疾走なので、学校に着く頃には汗だく、アンダーシャツは絞れるくらいだった




 「冬貴ぃーも遅刻ですねー……欠席もあわせて8人。どうなってんでしょうーねー」


 西がいない

 岡辺がいない

 藤井がいない

 ほかにもいない奴がいる


 今日はサボってもいい日だったか?

 いや担任であり、現在教壇にいる担任は怒っているから……


 「まぁ、いいんですけどねー」


 いや、そうでもないのか


 「結構ですよー。大いにサボってもらって。僕的にもねー、問題児はいない方が授業が進んで良いんですよー……」


 また教師がとんでもないことを言うものだ


 「別に授業に出ないからってねー、僕は減点はしません! 提出物も良いですよー、出さなくて、ただし進級したいならねーテストでは結果を出してくださいね」


 それをまじめに出ている生徒と、遅れてでもやってきた僕らに言ってもね……


 「それでいいならねー、僕は授業受けませんよ。ノートも取らないし、ワークブックも出しません。僕は優秀ですからね、かならず90点以上を取ってやりますよー。根性もありますしね」


 今日の担任はいつもにましてうざいな

 あまりに無断欠席、遅刻が多くて、もしかしてこれは怒っているのだろうか


 「もう授業態度とか、提出物とかは見ません。テストの点数だけで判断します。でもー、やっぱり、自信がない、点が取れない、そんな君たちにはノート提出、そして授業に出ることをお勧めしますよー」


 ん? 授業参加を売り込みしているのか?


 「それでも、授業を受けておこうと思える人はーここに残ってください、先生の授業が聞きたいぞーという人は残ってください。先生にノートを見てほしいーと思う人はノートを取ってください」


 いいかげん何が言いたいのだろう


 「さー、もうお前の授業は必要ないっていう人はーどうぞ! お帰りは向こうのドアから」


 誰が帰るのだろう

 これで帰る奴はあまりいないだろう


 「……よぅし! 授業を始めます」


 なんなんだ一体


 


 担任が黒板に向かったとき、後ろのドアが開いた




 「すまん、遅れた」


 西、遅刻でやってきた


 「……まぁ、いいんですけどねー」


 なんなんだこいつ!


 「結構ですよー……」


 もう一回今のをやるの!? ほんとこいつ怒ってるよな

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