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第1話:いつものメンバーの日常

 「冬貴とうき遅い! 5分遅刻!」


 「夏帆なつほは時間に厳しすぎるよー」


 僕は七曜冬貴しちようとうき。今年で高校2年生になった現役の高校生だ

 そして、僕の横で怒っているのは椎木夏帆しいのきなつほ。僕との関係は幼馴染で、幼稚園のころから一緒にいる

 僕たちは同じ高校の、同じ部活動に入部している。その部活動は空手部

 その朝練のために、僕らはかなり早くに、いつもの集合場所となっている僕らの家の間のちょうど真ん中くらいにある公園に来ていた


 「それにしても朝練っていっつも早いよね」


 「強くなるためよ。あんたもそんなままじゃ公式戦どころか、組み手でも一勝もできないわよ」


 「う、うるさいなぁ! 勝てるよ!」


 小学校に入ってすぐ始めた空手。僕自身憶えていないが、両親曰く『僕が夏帆を守るんだ』だとか何とか言ってはじめたらしい

 だが現状。どう見ても守られているのは僕だ

 全く、情けない話だ


 「じゃ、学校いこっか」

 

 「そうだね」


 何か意味のない話をしては歩き、少し黙って歩いてはまた話をする

 それを繰り返しながら、僕たちはまだほとんど生徒が登校してきていない学校までやって来た

 校舎は大きくわけると三つに分けることができる

 まず僕たち2年と1年の教室がある東棟。そして3年の教室と職員室がある西棟。そして主に部活動に使われるものが多い中央棟

 朝練に来た僕たちは、校舎の中央棟に向かった


 「冬貴、道場の鍵取ってきて」


 「……」


 『たまにはお前が行け!』と言ってもやりたいところだが、なぜか断れない、なぜか言うとおりにしてしまうのはなぜなんだろう?

 やっぱり僕が弱くて、夏帆が強いからなのかな? でもそんなのじゃない気がする

 なぜって、なんだか嫌な気もしないからだ


 


 「失礼しまーす」


 ドアをノックして入室する。ここは西棟にある職員室

 職員室には西棟と、中央棟の全ての部屋の鍵が保管されている。だから朝練をする場合は必ずこの部屋までやってくることになる


 「お? 冬貴。今日も朝練?」


 「あぁ秋馬しゅうま。お前も朝練来たの?」


 「そう。大会もあるしな。ホレ、鍵」


 そういって秋馬は僕に向けて鍵を投げた

 秋馬こと天草秋馬あまくさしゅうま。僕と同じ空手部員の2年の1人だが、本当に僕と同じ学年で、僕より遅く高校から空手を始めたのか疑ってしまうほどに強い

 男子の部で、2年以下で唯一大会出場が決まっている


 「夏帆は来てるんだろ? 春香はるかも来るかな?」


 「さぁー。来ないんじゃないかな? 春香は朝弱いだろ」


 会話に出てきた春香こと国友春香くにともはるか。この場にはいないが、同じく空手部の2年

 そこそこに強い。そもそも女子部員は多くはないので、夏帆と共に大会出場が決まっている

 そして、春香、夏帆、秋馬、そして僕、冬貴の4人は中学からずっと一緒にいたお馴染みのメンバーといった関係だ


 「じゃ、待たせるとあいつ怒るし、道場行くか」


 「そーだね」


 道場に向かって秋馬と一緒に歩いていく

 職員室から道場までは遠くはない。すぐに道場についた




 「おはよーございます」


 「あり? 春香来てたの?」


 「今来ましたー」


 道場の前には、僕に鍵を取りに行かせた夏帆、そしてもう1人、お馴染みのメンバー春香がいた

 春香の髪はまさにさっきまで寝ていましたといった状態で、まさにボサボサだった


 「ほら冬貴! 早く鍵開けて!」


 「はいはい……開いたよ」


 道場の鍵はスッと簡単に入って、簡単に回る。ここの鍵がひっかかった経験はない。常に油をさしてすぐのように滑りがよい


 「よぉーっし! やるわよー!!」


 それなりに広い道場、そこを現在4人で1人占めしている

 僕はそれほどでもないが、夏帆のテンションはかなり上がっている


 「じゃー着替えましょう」


 「「!!」」


 僕が何か言う前に、多分秋馬も同じことを言おうとしたのだろうが、それよりも早く、春香は上着に手を掛けまさに脱ごうとしている状態だった


 「バッカ! 春香! 周りの目ェ気にしろ!」


 秋馬が叫んだ。僕も同じようなことを言っていたのだろうが、秋馬がセリフをとってしまったので何も言わなかった

 だが僕たちのことは気にもしていないのか、春香は制服の上着を脱ぎ去った後だった

 だが、そこにはあられもない姿の春香がいたわけではなく、実に健康的なTシャツ姿の春香がいるだけだった


 「? どーしたの?」


 「……馬鹿どもが」


 「ヒデェ! 俺たちは正常な男子高校生だ! 目の前でそんなことされたら慌てるに決まってんじゃねぇか!」


 「そんなこと?」


 春香は意味が分からないと言いたげな表情だ

 それにしても、馬鹿ども? 僕も込みなのか……


 「もーいいじゃん! 冬貴! 組み手やろーぜ!」


 「夏帆とやってよ……」


 「あぁ!? 朝一は弱い奴をとりあえず瞬殺してぇんだよ!」


 「ヒッド!」


 そりゃ秋馬からすれば僕は弱い奴かもしれないけれど、コイツは全くオブラートに包まずにストレートに言ってくるから困る

 少しくらい優しく言えないものなのかな?


 「っしゃーっす!(お願いします)」


 「たー!」


 僕の上段蹴りを、見事な体さばきでかわす秋馬、うーん見事だ

 そしてその体勢から……


 「ぐあっ! 秋馬! 手加減!」


 「わり」


 「反省の色なしか!」


 高校生があんなえげつない浴びせ蹴りを組み手でかますのか? この親友に向けて。うっかり死んでしまうところだったじゃないか


 「つかどーだった!? 回転胴廻し蹴り!」


 「あんなのが!? ただの喧嘩技じゃね?」


 回転胴廻し蹴りは当然知っている。できないけどね……

 だけど、ここまでアクロバティックな蹴りは知らない、空中で二回も体をひねって顔面にかかと落とし。秋馬普通に体操でも上位だよ


 「まだまだー!」


 「てやぁー!」


 そして女子の部。夏帆対春香。こっちも凄い。というか夏帆が凄い……

 春香の全ての攻撃をかわした上で、夏帆の攻撃は全てすんどめ

 夏帆は優しいからな……女子には


 「ふぅー疲れたー!」


 「よっし。終わり! じゃあ冬貴!」


 ……悪夢だ

 なぜ僕? 秋馬じゃないの?


 「ふっふっふー行くわよ冬貴!」


 「……ぐハッ!」


 「下見ない!」


 「チョ……タイム!」


 「無し!」


 なぜ!? どうしてこんな目に!?

 助けてよ秋馬! そんな可哀相な人を見る目で見るな! 


 「タァーー!!」


 「ひやっ!」


 朝から……血を見ることになりました

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