28-?.----(2)
私達は、経過観察を続けている。
あれからも何度も何度も新たな世界を作り続けた。
基本的に経過観察というよりは、今までの方法で世界が作り出せる事が実証されたので、検体を増やしたい一心でやり続けたのだ。
だが、結果は芳しくなかった。
「神様ー。 やっぱり、この前のは奇跡ですよー・・・失敗繰り返してるより、もっと面白そうな観察に注力しましょうよー。。。」
彼女はかなりやる気を失っているようだ。
一日中椅子に座って、世界の種を撒いて枯れゆく世界を眺めるだけの無意味な作業ばかり。 そりゃ私だって気が滅入っておかしくなりそうだった。。
「たまには息抜きでもするか。。」
んーっと伸びをしてから座席を立ち、午後から予定していた世界の種まきは中断とばかりに全てを凍結させる。
「神様っ!? もうやらなくて良いんですか? 明日からもやらなくていいんですよねっ!」
椅子から飛び上がり、キャッキャッと喜ぶ彼女を見て頭が痛くなった。 私も疲れていたのだろう。。
「違う、今日だけだ。 明日からはまた種を撒いてその観察をするぞ」
「えぇー。。。 もう飽きましたよぉ。。 それに全然ダメじゃないですかぁ。 せめてやり方変えましょうよ。。。」
一理あるか・・・。
2つも出来た事で、やり方に間違いは無いのだと思い込んでいた。 あれから何度失敗したか定かではない。 彼女が言うように奇跡が同時に起きただけなのかも知れないと。
明日の議題としよう。 今は、久々に観察といこうか。
私達は、2つの【生きた世界】へと向かった。
外観から見てもすぐ分かる。 未だに崩壊していないようだ。
灰色の世界と緑の世界。
貴重な成功例として、まだ手を加えてはいない。 膨大な映像データは残しているが、それをチェックするだけの時間は私達には無い。 だからこうして直接現在を確認するのが手っ取り早いのだ。
まずは緑の世界を見てみた。
あの日と変わらず、緑色の森が続いている。
先の世界も・・・少し増えているようだ。 成長が遅いながらも着実に営みが垣間見えたので良しとする。
「この世界は順調そうだな」
「えー。 そうですけど、ぜっんっぜっっん変わって無いですよねー?」
全然の部分にとてつもなく力が籠もっていたが、何かやらかさないかと不安になってきた。。
「よく見てみろ、研究者なら小さな変化でも見逃すな? 私達にはそれが求められている」
「気づかなかったんだから仕方ないじゃないですかー。 私は助手ですし、神様が気づいたなら結果オーライですー♪」
彼女の考え方は、私とは違うからこそ助手として違う視点での目を持ってくれているのは感謝している。 日頃言葉にしていないだけで、色々と助かっているのも事実。
だが、今は頭が痛い原因でしかなかった。
「それでは、本命を見てみるか」
成長が早すぎる事で危険視するべきかと思ったが、彼女の言葉と共に、私自身成功例を消し去るのはためらったのだ。
吉と出るか凶と出るか・・・。
私達は灰色の世界を覗き込んだ。
その大地に、緑は極僅かしかない。
美しいほど区画整理され、舗装された通路。
立ち並ぶビル群に、一定間隔で理路整然と並び流れている交通網。 地下を覗けば、そこにもリニアだろうか? 浮上した列車が大衆を運んでいる。
ビル群の一角に、申し訳程度の公園があった。 コンクリートジャングルの中にわずかに残された土の見える部分であり、そこに木が植えてある。 ベンチには人影があるが・・・
「あの時のまま・・・だな」
ベンチに座っているのは人ではない。 人造人間・・・アンドロイド、ロボット・・・色々と言い方はあるだろうが。 この世界の人々は、全て機械であり、電気で生きていた。
私達とは大きく異なった世界だ。 さも、これが未来だとでも言うように。
パッと見ただけでは、現実世界との違いは少なく見える。
だが、例えばそこの通行人に的を絞ってみてみよう・・・異質に気づくはずだ。
ショッピング街を歩く女性は、衣料店へと入って行く。
そこにはいくつも個室があって、【空席】と表示された部屋へと入るようだ。
部屋の中には、テーブルと椅子、そして机の上には白い小さな箱のような物が。
彼女はその箱に手を置いた。
ブゥンッ!
彼女の目の前に大きな画面が浮かび上がる。 空間・・・ディスプレイだろう。
彼女は当然のように画面を操作し、気に入った物を見つけたのだろう、1つの商品を選択した。
すると、画面内に彼女の3Dモデルと共に試着した姿が表示されていた。
くるくると3Dモデルを回しながら、色や丈・・・、他の服に変えたりと人形遊びをするかのように服を選んでいた。
しばらくすると、再び白い端末に手を置いていた。
彼女の服装が一瞬で変わり、そしてさっきまで画面内の3Dモデルが着ていた衣装に切り替わっている。
彼女は立ち上がり、店を出て行った。
まず、衣服という概念が変わっているようだ。 ナノマテリアルとでもいうのか? 自在に色を、形を、そして質感も変わっている。 店なのに衣装を保管する必要が無いので、とても小さな店にまとまっている。
ここだけじゃない。
飲食店を見てみよう。
人で賑わう店の中も個室や、何人かで入れるような広間もあるが、どこにも食事は無い。 いや、語弊があったか。 料理のようなホログラム映像が各テーブルの上にはある。
白い湯気を出している熱々のラーメンや、その隣ではジャンクフードの王道とも言うべきハンバーガーとフライドポテトが。 あっちでは寿司も出ている。 何の食事処か分からないラインナップだ。 それを客は普通に食べている。 それはそれは美味しそうに。。
食べる(?)事で、ホログラムの料理はリアルに減っていく。 だが、現物は無い。 もちろん配膳する人も居なければ、料理をする人も居ない。 というか調理場も無い。 あるのは、テーブルと白い端末。
合理性を追求した世界か・・・
こんな状況なのでゴミの発生も少ないだろう。 当然生ごみなんて出ない。 他のゴミだって・・・。
普通の人間はいないのだろうか・・・。
「ねぇ、神様ー。。 この世界って、前回のままじゃないですかー? なーんにも変わって無く見えるんですけどー。。」
もっとよく見てみろ!とそう言いたくなるが、今回はそれが正しい。 表面的な部分も、地下も・・・何一つ変わっていない。 成長も無ければ崩壊も無い。 これで完成していると言って良いのだろう。
「今回は・・・君の判断通りだよ。 何もここは変わっていない・・・だからこそ不思議ではあるんだが。。。」
何かしらの変化があってもいいはずだ・・・。 ならば探すべき存在は一人。
「ここの創造主を探してくれ」
「神様も手伝ってくれるんですよねー?」
「当たり前だ。 私は南半球を調べるから君は北半球を頼む。」
「広すぎますよー・・・ 今日は残業確定じゃないですかー。。。」
ぶうたれつつも、手際よく彼女は仕事をしてくれる。 何か一言文句を言わないと作業できないタイプなのだ。。。
・・・
・・・・・・
「おかしいな・・・」
2周分探し回って、私はそう言葉を漏らした。
彼女が何故か笑っているが無視しよう。
隅々まで探し回った。 空も大地もその中も。 だが、どこにも居ないのだ。 助手が見落としたとばかりに思って、北半球も・・・そして2周した。
世界の停止でも、崩壊でも無い初めての事態だった。
ある意味、求めていた完成形とも言えるが。。
どうする・・・べきか。
「神様ー。 無視しないで下さいよー。 1人て笑ってたらバカみたいじゃないですかー。。」
私はされど無視した。 私の言葉につまらないギャグで返しているのが見え見えだったからだ。 ほんと、頭痛が。。
「むぅー。。 はぁー・・・切り離しちゃいますかー?」
やっと、本題に入る気になったようだ。 私の考えも同意見だったので、頷き世界の切り離しにかかる。
些か計画とは違うが、この世界は使える。
新たな物を追加せずとも、この世界は回り続けるだろう。
私達は次のステップに、灰色の世界を進めることにした。
その内に、緑の世界が私達の理想になるだろうと信じて。
これにて本話は、区切ります。
次話からサトシ達の生活へ戻ります。




