5-1.森の探索(5日目)
遂に独り身から1匹の仲間を得た結城。 狐の紅葉との生活が始まり、独身+ペットと言う結婚からどんどんかけ離れ・・・って話が逸れました。 えーっと、まぁ朝の幕開けです!
窓から朝陽が射し込み始める。
窓際のベッドにも陽が当たり始め、俺は目を覚ました。 ベッド脇に置いていた時計を確認すると7時だった。
胸の重みに安心感を懐きながら、同じく寝ている紅葉を起こしに掛かる。
こいつは、昨日から俺と一緒に暮らし始めたこの地で初めて出来た仲間だ。 薄黄色の狐で言葉を理解できるほどの賢さを持ち、パートナーとも思えるような支え合いが出来そうだと俺は昨日過ごした中で感じている。 しかし、朝は困った事になる。 この子はとても朝に弱い。 今までの寝起きでだいぶ苦労させられた。
苦労と言うか、正直可愛さに俺が敗北しただけだが。 今日も同じく揺すっても、撫でても起きようとはせず、持ち上げて退けようとするとペチペチと尻尾で応戦してくる。 目は閉じたままで、絶対に起きないよっ!と主張してくるのだ。
甘やかしたいが、今日はそんな事を言っていられる時ではない。 仲間が増えて、今まで以上に食料調達を急がねば食料が底をつく。 そんな危機感を知ってか、遂に紅葉を持ち上げる事に成功した。
両足をバタバタともがいているが容赦しない。(でも可愛い)
「おはよう、紅葉 今日はやる事いっぱいあるから早く起きて欲しいな。 俺は先に準備してるから、朝ごはんが出来る頃には起きておいで」
俺の上からベッドに置き直し、一声掛けておいた。 耳が反応しているようだったので聞いているとは思う。 ただし、まだ温かさの残る布団の中に一目散に潜って行くのが見えて少々この先が不安になる。
俺は昨日の洗面器でタオルを濡らし、顔と体を拭いて久々に鏡で自分と向き合った。 今までは1人だったが、これからは紅葉も居る。 身だしなみも気にするべきかもな・・・。
伸びていた髭を手早く処理し、頭を洗いたいのを我慢して身支度を整えた。
まずは玄関外に作ったコンロで火を起こし、鍋にポリタンクから水を入れた。 今日は即席味噌汁と菓子パンを食べる事にする。 今日は森を歩き回る事になるだろう、しっかり食べておかなくては。
紅葉と自分用に肉ブロックを切り分けて、それぞれ焼いていく。 少し目を放した隙に少々焚き火に近かった肉は火が通り過ぎてしまっていたが、紅葉用の肉はレアで焼けていたので良かった。 うまく出来ている方をあいつに食べさせてやりたい。 俺はウェルダンでも気にならないからだ。
肉が焼けた所で、紅葉を起こそうと玄関に近寄ったら開けたままの玄関から走ってきた。
お腹が空いているのかな?と思ったが、こちらの胸に飛びついてきたので寂しかったのかも知れない。
服にしがみ付いてくるので、抱きかかえて頭と背中を撫でていく。
「可愛い紅葉の事を俺は置いてったりしないから大丈夫だよ。 寂しくなるくらいなら、朝ちゃんと起きようね?」
最後に少々苦言を付けといたが、効果があるかは明日分かるだろう。
まずは朝食だ。
「紅葉の分は、そのトレーに置いてあるよ。 それじゃあ、いただきます」
朝から肉を頬張り、沸騰したお湯に即席味噌汁を溶いて飲み込む。 具は無いが久しぶりの味噌汁は旨かった。 やっぱ味噌汁はいいわ・・・。
紅葉は黙々と肉を食べており、こちらを気にする素振りはなかった。 元々味噌汁を飲ませて大丈夫か分からなかったので助かっている。(求められたら上げてしまうし、それで体調を崩したら悲しすぎる)
更にあんぱんを頬張りながら今日の目的を整理していく・・・。
<5日目の目標>
①野菜、果物の調達 ⇒ 森の探索範囲拡大
②肉類の調達 ⇒ 動物や魚類
③水の入手性改善の模索
特に野菜や果物の入手を狙いたい、肉の在庫も心許ないが肉類の調達目処はある。 問題なのは野菜や果物であり、今までの探索で見つかっておらず、もしかするとこちらもモンスター討伐が必要かもしれない。 水については川へ行けば良いが今のままでは、入手性が悪すぎる。 水は必須な為、家を離れてでも水場に近い方が良さそうだとさえ思う。 まぁ敷地境界の見えない壁があるという大きなアドバンテージがある状況だからこそ、簡単には家を離れられず悩んでいるのだ。
それと・・・
④身だしなみ
・お風呂に入りたい、体を洗いたい。
食料調達が出来れば十分だが、身だしなみに関してはただの希望的なもので生きる上では今のタオル方式でも何とかなる。 ただ自分が気持ち悪いのだ。 綺麗好きと言う訳ではないが、すでに4日間もシャワーすら浴びれず森の中歩いていたのだ。 汚れていない訳が無い。
そう言えば、紅葉にとって俺は臭くないのだろうか? 俺の嗅覚ですら気になるのに、あいつにとってはもっと酷いのではないだろうか・・・。 少々身だしなみについての優先度を上げざるを得ないかもしれない。
朝食を食べ終え、俺はバックパックと石槍を準備した。 紅葉は玄関から出てくる俺をお座りの状態で待っていた。
俺が出てくると、尻尾を振りながら立ち上がって森へと紅葉は顔を向けた。
俺が踏み出さず、足を止めた事を不思議に感じたのか俺の方を向いて首をかしげている。 「どうしたの? 行かないの?」と言わんばかりの雰囲気だ。
ふと紅葉を見た時にひらめいた事があり、一度話し合ってから森に入るべきと考えたのだ。
「今日は、果物や食べられる植物を探したいと思う。 それと紅葉が食べられる肉も調達したいかな」
紅葉は頭を縦に振りながら頷いているように見える。 続けてここからが本題だ。
「そこで、紅葉は果物や食べられる植物の在り処を知らないかな? 知ってたら教えて欲しいんだ」
紅葉は大きく頷き、一際尻尾を激しく振っていた。
(これは、もしかするかも知れない・・・)
動物に頼ると言うのも何だが、現地で生きてきただろう紅葉の方がこの世界は先輩だ。 それに今までの状況から、紅葉は俺の言葉をかなりの精度で理解している。 果物という言葉を理解しているかは分からないが何らかの食べ物の在り処を知っている可能性は高い。 闇雲に探索するより、俺が着いて行く方が入手確立があがるだろう。
そんなこんなで、時計を確認し、間もなく9時となる頃に紅葉を先頭に俺達は森へと踏み入った。
イノシシ(?)に襲われる危険もあり、石槍を構えながら進むため足取りは遅い。 紅葉もチラチラとこちらとの距離を気にしているようで、申し訳ないばかりである。
今日はもう一部書けるかな・・・ 一度休憩します。