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28-3.ランと会話(28日目)

 「おっ! あれって小麦か!?」


 「ちょっと、シン落ち着けって!」


 あー・・・、見慣れない情景に子供達がはしゃぎまわってる・・・。

 サトシが倒れているので、家の敷地内に子供達を入れる事なんて出来ないと思っていた。 でも、現実は違った。 眠ったままのサトシに触れて一緒に入れてしまったのだ。

 入れてしまった・・・。


 「はぁ~・・・」

 ため息しか出てこない。 紅葉(もみじ)ちゃんが子供達と遊んでくれていたらもっと楽なのかしら。 当人は、サトシの横で丸くなって一緒に眠ってしまっている。

 今動けるのは私しか居ない。

 「やるしかないのよねぇ・・・」

 私の吐いた白いため息は、冬の空へ昇って散っていく。

 子供たちも麦畑、唐箕、石臼、ガチャガチャと家の扉を開けようとそこら中へ散らばっている・・・。

 子供・・・一人で十分だわ。。。

 私はそんな事を考えながら、重い足取りで麦畑で走り回るシンを捕まえに行くのだった。


――――――――――――――――――――――――――


 ・・・

 ・・・・・・


 声が・・・聞こえる? 俺では無い誰かの・・・


 「ねぇ、あなたって何なの? あり得ない・・・」


 すげー、馬鹿にされている事は分かった。 まぁこれくらいでイライラするような性格はしていないので聞き流す事に。


 「ほんとあり得ない・・・。 自我なんて生ませて、面倒事を自分から生み出してるなんて」


 ・・・


 「苦手ならワープでもすればいいのに。 あっ、そうか。 ワープなんて知らないのね。 どんな生活してたらそうなるのか不思議よ」


 ・・・


 「無駄ばかり・・・ほんと無駄ばっかり。 あり得ない・・・」

 「私のことも異物として排除しないなんて、お人よしね。 制限はされているみたいだけど、あなたよりは上手く使えてるわよ。」

 「誰が創造主なのかしらね。 あなたじゃない可能性の方が高いくらいよ」


 ・・・

 一貫して俺は馬鹿にされているようだった。

 好き勝手言われているが、何のことか分からない。 どうせ昔言われた事がフラッシュバックでもしているのだろう。 俺はこの世界でのんびり暮らすんだ。

 ほっといてくれ。


 俺の願いが聞き入れられたのか、声は聞こえなくなった。

 やっと静かになったな。

 これで・・・

 ・・・


――――――――――――――――――――


 「・・・ふぁ〜・・・寝ちまってたか。。」

 目を開けると眩しい光で目が眩んだ。

 というか、背中と腹が痛い。 アスファルトで直に寝てたのか・・・

 田植え時期とか休憩で舗装された農道で時々寝てたなー。

 アスファルトって、黒いし結構熱持つから意外と心地良いんだよな。

 ただし、あの小石の集合体みたいな物のせいで、腕枕で眠りこけて額に赤い跡が・・・なんてレベルじゃないしっかりと凹凸感じるような跡がしばらく残るんだよなぁー・・・それに顔がピリピリする。。

 目が慣れてきたので周囲を見渡すと家の敷地で寝かされていたようだ。

 紫外線は・・・見えない壁でも防げはしないか。


 火照った顔が突っ張っているようだ。

 「確実に日焼けしたな・・・ん?」


 隣で紅葉(もみじ)が眠っている。 俺と同じように温かいアスファルトを満喫しているのだろう、とても柔らかい表情で寝息を立てている。

 触れて起こしてはいけないか・・・


 あれ? リンちゃんまでか。

 俺の腹を枕にして、リンちゃんもアスファルトの上で眠っていた。

 俺は着込んでいるから足や背中の凸凹跡は表からは見えないだろう。

 だが、布切れ1枚を被っただけのその白い足をアスファルトから離したら、赤い凸凹がしっかりと転写されているだろう未来が見えた。

 かなり・・・しっかり型取り出来ているはずだ。。


 「リンちゃん、リンちゃん!」


 「・・・眠い。。」


 一言残して、また突っぷす。

 「俺起きるから、退いて。 ね?」


 「・・・いや、まくらー。」


 ヤバい、二人目の紅葉(もみじ)レベルが現れたようだ。 というかエルフは早起きだったよな? 今朝も野菜取って・・・ あれ? そう言えば?リンちゃんは何取って来てたんだ?


 そんな事は、今はどうでもいいか。 それよりも・・・俺のふわふわなお腹を枕代わりに、寝続けようとする少女との壮絶なバトルが始まるのだった。


 ゆっくりと上半身を起こそうとするも、明らかに力を入れてアスファルトに押さえつけようとしてくる始末。。

 せめて太ももくらいまで移動させようとずらしに掛かるが横っ腹を抓られた。

 「いってぇ・・・。 起きてるよね? 確実にリンちゃん目覚めてるよね!?」


 しかし、反応は返ってこない。 意地でも起きないつもりのようだ。


 さて、揺らし続ける方法もあるが、あれって結構気持ち悪いんだよな。。 ほぼ起きているだろうから、こんな時は・・・


 「・・・っ!? や、やめてっ! ちょっ・・・」


 俺はリンちゃんの横っ腹をくすぐりにかかった。

 効果は抜群のようだ。 これで飛び起きて逃げるだろう!

 「ふはは! 俺に勝てると思うなよ♪」


 「ね、ねぇ? サトシ・・・心配して来てみたら何してるのかしら・・・?」


 アリアのとてつもなく重い声が降り注いだ。。。 俺の手もピタリと止まった。

 「あっ・・・」

 「お、おはよう・・・アリア・・・」


 「よく寝れたみたいね? で、何してるのかしら?」

 アスファルトに後頭部を付けアリアの顔色を伺うが、とても機嫌が悪そうだ。。。

 “今日も縞パン可愛いねv”何て冗談を言おうものなら、命を狩られかねない。。。

 俺はありのまま、リンちゃんが起きようとしないからこうなった事を伝えた。


 「サトシ、ちょっと頭上げてみて?」


 「?」


 「いいから。」


 有無を言わせぬ圧力に屈して、言われるがままに頭を起こす。 腹の上でリンちゃんが突っ伏してるだけだろ?と・・・


 ・・・


 俺の目の前には、あられもない姿のリンちゃんがいた。 羽織っていたはずの布切れは纏っていない。

 それに俺はなんて所を触っていたのだろう・・・。 涙目で顔を真っ赤にしたリンちゃんがぐったりしていた。。。


 「サトシ、この状況見て弁明はあるかしら?」


 「・・・御座いません・・・」


 「そう。 私ちょっとリンの介抱してくるから」


 リンちゃんが布切れに包まれてアリアに担がれていった。

 赤ちゃんを抱きかかえるように、それはもう厳重に包み込んで。

 そうして、アリアは自分の部屋に入って行ったのだった。



 「お〜い・・・助けてくれぇ〜・・・」


 反響した声が聞こえてきた。 かなり近いし、聞き覚えが・・・

 足元のバケツから聞こえてくるようだ。

 ひっくり返ったバケツの中で、声が反響しているようだ。 そっと持ち上げると中にはシンが。


 ・・・埋められていた。


 「お、おいサトシっ! アリアねぇちゃん、おっかねーよ・・・」


 「シン!? どうしたんだその姿っ」

 俺は慌てたが、地面から顔だけでも元気そうなシンの生命力というか心の強さに感嘆した。


 「自業自得ですよ・・・」 


 顔を赤らめながら鼻を抑えているシュナイダーが現れた。 シュナイダーも何かあったのだろうか?

 「な、何があったんだ? 二人とも・・・」


 「シンは麦畑で走り回っていた時に何箇所か踏み潰しちゃったみたいで、それでアリアさんに・・・」


 「確かに・・・自業自得だな」

 俺の大切な麦畑を踏み荒らしたのだから当然の報いだと俺も思った。

 そんな事より、シュナイダーだった。

 「そっちそこ大丈夫か? 鼻血身体だが。。」


 「ぼ、僕ですかっ!? 大丈夫ですよ! ちょっとそこで転んだだけです・・・」


 「・・・」


 ん? アンが物陰からこっちを見ている。

 その後ろにはランも居るようだ。 と言うことで、生き埋めは自業自得のシンだけのようで一安心した。


 「ちょ、ちょっと待ってくれよっ!? 俺を置いていくなよーーーーっ!」



 シンの叫びを背中に浴びながら、俺達は前へと踏み出した。

 後で助けてやるから、今は反省しとけ! そう心の中でつぶやくのだった。



 「ちょ、ちょっと・・・私達には手を出さないでしょうね!?」


 アンが俺を警戒しているのか、怯えながらそんな事を言ってきた。

 ランはその後ろにしがみつくように隠れたまま顔を出しやしない。 警戒・・・されるわな。。。

 

 ため息をついた俺に、アンは意外な言葉を投げかけてきた。

 「わ、私は一応最初から見ていたから。 結果はアレだけど・・・事故だったとは思うから・・・あーっ、こんなの私じゃないっ! ようは、私達はサトシの事分かってるから、アリスさんに話し通してあげるからっ」


 「・・・ありがとな。。」

 幼女に慰められるおっさんという構図は中々に悲しかったが、そんなことよりもホッと胸を撫で下ろす自分がそこにはいた。 頭を撫でようとしたら、サッと神回避されてしまった。


 

 「勝手に触れようとしないで下さいなっ! それはそうと・・・取引なんだけど・・・」


 え・・・?

 アンが俺と取引だって? 俺が欲しがるような物をアンは持っている訳が・・・


 アンの春だとか、そんな物を狙っているんじゃない。 静かに余生を過ごしたいだけなんだ・・・

 まぁ、まぁ何か俺と取引するって事か。。 俺が欲しいもの・・・パッと思い付かないな。。 それよりも、アンは何を俺に頼みたいんだ? そっちが先か。

 「それで、俺は何をすれば良いのかな?」


 「話が早くて助かるわ。 えーっと、シュナイダーもシンと同じように埋めてもらえないかしら?」


 「・・・なんで?」

 シュナイダーは特に迷惑は掛けていないだろう。 短い付き合いだが、迷惑とは1番かけ離れた所にいる存在だと俺は思っている。 納得できるような答えが返ってくるとは思えなかった。


 「女の敵よっ!」


 アンは、キッとシュナイダーを睨んでそう叫んだ。 シュナイダーは、その剣幕に後退っていたが・・・あ、逃げた。。。


 「ちょ、ちょっと逃げたじゃないっ!? 追いかけて埋めて頂戴っ!」


 「ま、待て。 まずは落ち着いて、もう少し詳しい理由を・・・」


 「だから、女の敵だって! アイツはっ!」


 訳が分からないよ・・・

 アンが、激昂しているのは分かった。

 何か思うところがあるのだろう。 でも、そこまでしか分からない。

 感情的になって結論を言っているのだろうが、その過程がまるっと無いのだ。 伝わる訳が無い。

 ため息をつく代わりに、鼻から一気に息を吐く。 普通にため息なんてついたら俺に矛先が向きかねないと思ったからだ。


 「ラン、俺と少し話せるかな?」

 いつもアンの後ろに居るこの子は、感情的に怒ったりはしていないようだった。 アタフタしているが、アンを止めようとしている感じがしたのだ。 今はアンよりも、ランと直接話しが出来ればアンが、こうなった経緯を聞けるだろうと。


 「ぁ・・・ぇ・・・」


 あー・・・想像通りにアタフタしてるわ。。

 どうするかなー


 「・・・しょっと」

 俺は地面に腰掛けた。

 少しでも恐怖心を抑えるには、視線を合わせることだと思ったからだ。 大人と子供じゃ、否応無しに上から目線で威圧を感じてしまうだろう。 視線は同じ高さに、いやそれよりも低くする必要があるだろうと。


 「あ・・・の。。」


 効果はあったようだ。

 驚かさないように、ゆっくりと動いて楽な姿勢に切り替えた。

 きっと、これも長丁場だろうと。

 ランが慣れるのが先か、アンの怒りが静まるのが先か。。。それは神のみぞ知るってか?

今週水曜から日曜まで連休予定です!

せっかくの休みですが、雨予報でやりたい事が出来そうにありません。。

と言うことで、小説の続きを書く貴重な数日間になりそうです。

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