表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/109

28-1.朝食の準備(28日目)

 「お、重いわよ・・・」


 んにゃ・・・?

 苦しそうな声と揺れに気付いて目が覚める。


 「・・・アリアか?おはよう・・・ふぁぁぁ〜・・・」

 まだ眠い目を擦りながらゆっくり目を開ける。


 「あれ?」

 視界にアリアは居なかった。


 「こ、こっちよ。 う、後ろだってば!」


 「ふあ?」


 「い、いつもだったら・・・可愛いで済ますんだけど・・・早く目覚めてっ! うぅ〜・・・・」


 苦しそうなアリアの声が聞こえるがどこにも居ない?

 ・・・

 「いてっ!?」

 痛覚で目が一気に冴えてくる。 そして現状が飲み込めてきた・・・

 アリアを背中で押し潰していたようだ。。


 気が付いて、サッと仰向けから横を向く。

 ハァハァと息を切らしているアリアに叩かれて朝を迎えることとなった。


 「助けられて以来、初めて一緒に寝るの辞めようかと思ったわよ・・・」


 「ご、ごめん・・・まさか夜寝てない・・・?」


 「そこは大丈夫だけど、起きようと思ったらいきなり寝返りしてこのままだったわ・・・、朝から疲れたわよ。。 今日は私のこと構ってよね?」


 根には持っていても、一緒に寝るのは辞めないようだった。

 「あぁ、今日はアリアの日にしよう」


 「やった♪ 約束よ?」


 「分かったよ、それでもう起きる?」

 まだ外は暗く、日の出まで時間はありそうだった。

 「目も覚めたし、そうするわ。 サトシはまだ寝てる?」


 「あぁ、まだ寝ていたい・・・ごめんな」


 「そんなのいいわよ。 今日はいつもより早いくらいだし、それじゃ行ってくるわね」


 いつもの日課だろう。 アリアは布団を捲って部屋を出て行った。

 捲られた事でとてつもなく布団が冷えたので、起きる気力はみるみる失われて再び意識が遠退いていくのだった。



 ・・・



 あなたは何なの?

 ここなら神に等しい存在なのに、何でこんな生活をしているの?


 あなたじゃないの?

 あなたはここの住人なの?

 あなたは・・・



 ・・・


 「んあ・・・? 朝か・・・」

 部屋に陽が射しているようだった。

 眩しさから薄目を開けると、声が掛かる。


 「おはよう、今日はしっかり寝てたわね」


 「おはようアリア。 ずいぶん陽が昇ったみたいだな・・・ごめんな」


 「急にどうしたの?」


 「いや、子供たちもいっぱい増えたし、食材探しや色々しなきゃだったなと。。」

 俺、紅葉(もみじ)、アリアの3人生活から、体は小さくても5人も子供が増えた。 衣食住の事をまた考えなきゃいけない。 飢えるような環境にはしたくないんだ。。 たとえ、自分の量を減らしてでも。


 「ふふっ、保護者になろうって思ってたのね?」


 なろうとしても、その自覚がまだ俺には足りなかった。 アリアに笑われても仕方ない。 

 「中々に、辛辣だな・・・これでも子供好きなんだよ。 それにエイシャさんにも任されたしな」

 これから頑張っていこう。 これからを変えていけばいい。 まだ始まったばかりなのだから!


 「ママの選択は間違ってなかったって事ね♪ 悪く思ってる訳じゃないわ。 予想通りで嬉しかっただけよ?」


 幻滅された訳では無かったようだ。 微笑み返してくれるアリアに俺は心が軽くなる。 気持ちの良い朝を迎えることが出来たのだった。


 紅葉(もみじ)を起こさないよう静かにベッドから出て、伸びをする。 あ〜・・・特に疲れは残ってないし、目も覚めたところで、ふと気がついた。

 「それはそうと、リンちゃんの姿が見えないけど・・・」

 周囲を見渡すと、人気(ひとけ)の無い子供用ベッドが目に入った。

 2階建ての上下とも、もぬけの殻。


 「リンの方がしっかりしてるかもね?」


 「どういうことだ?」


 「外見れば分かるわよ。 支度したら、外へ行くわよ」


 アリアは律儀に俺が着替えるのを・・・いや、顔洗うまで洗面台に付いて来なくても良いんだが・・・?

 「ど、どうかしたのか・・・?」


 アリアの行動がよく分からなかったが、納得できるような答えは得られないままはぐらかされてしまった。

 まぁ、外に出てみれば分かるってことか?


 ガチャッ


 さて、何が待っているやら・・・


 「おっ! サトシ、起きるのおせーよ! 腹減ったよ・・・」

 「あら? 私達より遅いなんて驚いたわ。 おはよう」

 「あっ、あっ・・・おはよう御座います!」

 「おはよう御座います。 サトシさんは、僕たちとは種族が違うんだから生活リズムもきっと違うんだよ」


 皆、色々なことをいっぺんに話してきた。

 ただ、起きるのが遅いのを咎められていることはよく分かった。

 ん? 種族の話なんか俺したか・・・?


 疑問に思っていると助け舟が。


 「勝手にサトシのこと説明しちゃったけど、ダメだったかしら?」


 なるほど、そういう事か。

 アリアが包み隠さず話したってことか。。


 少女2人がアリアに耳打ちをしている。 時折こちらを見てはまた耳打ち・・・

 向けられる視線は、あまり良い印象では無さそうだ。。。

 おぅ・・・一応、エルフの村にとっては英雄だったはずたが、とてもとても冷たい視線だった。


 「アリア・・・一体何を話したんだ?」


 「私の好きなありのままのサトシの事を話しただけよ♪」


 「そ、そうか・・・」

 人前でこうもはっきり言われると、言われたこっちの方が何か恥ずかしくなってきたぞ。。

 少女たちは顔を赤らめながら、アリアに熱い眼差しを向けていた。


 あー・・・なるほど。

 色恋沙汰の話は、エルフの少女たちだって人間と変わらないのか。

 少年連中は特に気にする素振りはない。 異性を意識し始めるのはまだまだ先なのだろう。 おっさんとして、純粋なシンたちを微笑ましく眺めていた。


 「それはそうと、この食材は・・・」

 子供たちの足元にはたくさんの野菜が並べられていた。 外に出ればすぐ分かるとはこういう事か? 俺は腕時計を確認していた。


 うむ、まだ遅いと言うほどの時間じゃない。

 再び腕時計を確認してもやはりまだ9時前だった。


 「アリアさんには負けましたが、私たちは採集を済ませてきたの。 朝ごはん・・・これで期待できるかしら?」


 ふむ、腹減ったーと煩いシンを置いといても、アンちゃんも同じか。

 昨日はたくさん食べたと言っても果物だけだものな・・・


 「それじゃあ、みんなが取ってきてくれた材料でご飯を作るよ」


 「よっしゃー!」「やった♪」「楽しみ〜♪」


 みな喜んでいるが、プレッシャーが半端なかった。。。

 「ア、アリア・・・肉は、」

 「流石にこんな短時間じゃ無理ね」


 すべてを言い終える前に答えが返ってきた。 ですよねー。。。

 腹ペコの子供たちにはしっかり食べさせたいところだが、材料は野菜のみ。

 少量の肉はバックパックに入れてあるが、所詮3人分の一食程度。。 ペアーチも食べきってしまったしな。。


 「どうすっかなぁ・・・」

 改めて足元を見る。


 じゃがいもや玉ねぎを主体に、ニンジンか。。

 今ある材料だと・・・っと。

 「みんな、泥だらけだから露天風呂できれいに洗っておいでー」

 子供たちは、手足を泥だらけにしている。 朝から森に入って土を掘り起こしたのだ。 汚れない訳がない。

 料理には時間が掛かりそうなので入浴を勧めた。


 「私も・・・温泉見てくるわね。。。」


 「よ、よろしくな? って大丈夫か?」

 酷くぐったりした言葉を残し、アリアは子供たちと共に露天風呂へ向かうのだった。

 機会があれば、今度は俺が入れるべきと次回に誓う。



 「さて、少ない肉とたくさんの野菜・・・」

 煮込み料理が定番だが、大鍋が無いので子供たちを満たせるような量は作れない。 紅葉(もみじ)に頼めばあるいは・・・。


 「いや、久々にサバイバルするか」

 森の中に視線を向けていたら、丁度良さそうな葉っぱが目に入ったのだ。



 俺はずっしりと重い石を集めて、手頃な石で凹地を作って焚き火を開始した。

 かまどを作るのではなく、今回は焼き石だ。


 これを鉄板代わりして楽しむ方法もあるが、今回は大人数の料理を作るために、土中で蒸し焼きにするオーブン料理を目指す。


 「冬の焚き火は良いよなぁ・・・」

 冷たい風が頬を撫でても、今の俺には爽やかな朝を彩るものだ。

 パチパチと燃えていく木々の中に石も入れて・・・更に薪を焚べた。


 「おはよぉ〜」


 不意に後ろから声がかかったので振り返ると・・・

 「おはよう、紅葉(もみじ)。今日は早いね」


 「焚き火してるなら、起きてもいいかな?ってねっ♪ ぽかぽか〜」


 焚き火の前に腰掛けていた俺の膝上に飛び乗って丸まってしまった。

 「あはは、また寝ちゃうのか?」


 「うーん、どうしよう?」


 「これから、朝ごはんの準備だったけど、まだこのまま待たなきゃいけないから、寝てても良いよ」


 「焚き火見てるだけなのに準備なの?」


 「今日はいつもと違う作り方で野菜を焼こうと思ってね」

 そっかぁと一言残して、あまり興味を引かなかったのか上げていた頭を下ろしてしまった。

 (野菜主体だもんな・・・)


 焚き火もあるが、紅葉(もみじ)のフカフカな毛で太ももが温かい。

 小動物らしく人よりも早い鼓動も伝わってくる。

 こんなに小さくてもちゃんと生きているんだな・・・それに人と同じように話せて・・・


 俺はフワフワな紅葉(もみじ)の頭をいつの間にか撫でている。

 騒がしかった今朝が嘘のように静かな時が流れていた。

 「静かなだな・・・」

 秋も冬もセンチメンタルな気分になっていたが、最近はそんな気分も久々だと当たり前だったはずの自分の生活が変わっている事に、くすりと笑いが漏れた。


 「何か楽しいことあったのー?」


 「ん? 最近は騒がしくなって楽しいなってね? それより、寝てなかったんだね」


 「堪能しなきゃだしねっ!」


 何を堪能?とは聞かなくても分かる。 互いに今の時間が心地良いって事だろう。

 「そうだな。 おっと、焚き火が落ち着く前に次の準備をしなきゃだ。 紅葉(もみじ)も手伝ってくれるか?」


 「は〜いっ!」


 紅葉(もみじ)に魔法でちゃっちゃと、葉っぱを採取して一応水洗いをしてもらった。 その大きな葉っぱの上に、櫛切りの玉ねぎと刻み肉に、じゃがいもとニンジンも切って乗せると、そのまま包んでいく。

 「紅葉(もみじ)ー、蔓とかないかなー?」

 結ぶ為の蔓が欲しかったので、声をかけてみると。


 「だすよー、どれくらい?」


 出すよ、の一言に【?】が浮かんだが、そのままの意味だった。

 俺の俺のすぐ横から細い蔓がにょきにょきと生えてきて・・・おぉ、くねくねしていらっしゃる・・・


 「も、紅葉(もみじ)、これ切って使えばいいのか・・・?」

 こうも目の前で元気に動かれては、正直殺傷するようで中々に思うところがある。。 何だ?活きの良い蔓って、と思うがそれ以外の言葉では表せそうにない。


 「使って、使ってー」


 「そ、そうか。。 なら、切るからな・・・?」

 目の前での元気に踊っている蔓を切ることを改めて宣言し、ナイフを向けた。


 くいっ・・・

 ・・・・・・

 蔓にナイフを当てたら避けられたんだが!?

 ナイフを当てようとした所だけ、器用にU字型に交わしてきた。 既に3回ナイフを当てようとしてもこの有様だ。


 「あー、サトシだめだよっ! ちゃんと優しくしなきゃっ」


 紅葉(もみじ)何を言っているのか俺には理解できなかった。

6/19!

本日帰る予定!

うおー! 待ってろ、俺のフィギュアたちっ!


大雨?な感じなので道路事情に注意しながら運転しなきゃ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ