27-1.朝食前(27日目)
うぅ~・・・さむっ。。
「ふわぁ~・・・」
昨日は寝るのが遅かったけど、何だろうな?
疲れも特に残ってないし、スッキリした気持ちで不思議と清々しい目覚めだ。
(やっぱ久々に夜したのが効いてるのかな)
何度目かのあくびで俺は目を開き始めた。
(まだ暗いのか・・・)
いつも起きる時間より、かなり早く目が覚めたみたいだな?
そう言えばアリアは・・・
右腕に珍しく重さを感じて顔を横に向けると、アリアが眠っていた。
悪戯したくなる気持ちがムクムクと湧いてくる。。 昨日したばっかりなんだがな。。。
眠るアリアを刺激しないように俺は仰向けの体勢から体をアリアに向けて、その柔肌に触れる。
腕や敷布で隠れた側は諦めて、露出していた胸にそっと手のひらを当てると、小さく声を漏らしていた。
手汗が酷いな・・・すまないアリア・・・
と考えつつも、揉むのではなく撫でるような手つきで尖った先端も含めて触れていく・・・
満足したところで、次はお尻に触れた。
「・・・サトシ・・・?」
「あ・・・おはようアリア」
左手でガッツリお尻に触れたまま、何事も無いかのように挨拶を交わす。
「・・・」
が返事は返って来なかった。
「アリア。。。」
「・・・昨日のこと夢かと思ったわよ。。。」
「ダメか・・・?」
「・・・」
ぷぃっとそっぽを向かれたが、その態度とは裏腹にアリアはぎゅっと抱きしめ返してくれた。
OKって事で良いんだよな・・・?
・・・
・・・・・・
「今日は朝から元気ね?」
「いつも一応元気なんだけどな?」
「そんな報告要らないわよっ いつも私は朝居ないって事かしらね?」
「かもな?」
「そこは濁すの!?」
「あはは! さてと、ちょっと早いけど起きるか?」
「目も覚めちゃったし、そろそろ私はいつもの時間かしらね」
2人で温かかった布団を後にする・・・
「やっべー、めちゃくちゃ寒いっ!!」
「何も着てないんだから当たり前よ。 騒いでるくらいなら、さっさと着れば良いのに。。」
アリアの冷たい視線で、胸はドキドキ。 室温の寒さで下半身はキュッと縮こまった。
寒いのもそうだが、一日経って色々とパリパリしている。 アリアはさっさと服を着て外に出て行くようだが、俺以上にもっと厄介な事になってると思うんだが。。。
体を洗いたいし、お湯に浸かりたいな・・・。 已む無く今は服を着て俺も外に出る。
まだまだ陽が出始めて間もないようだ。
辺りは薄暗くて、何よりめちゃくちゃ寒い!! 日の出前ってほんと寒いよな・・・いつもならまだゆっくり寝てる時間だけど、今から布団に戻ったらもう出てこれなくなりそうだ。
アリアは日課かね・・・なら俺は朝ご飯の準備でもするか。
昨日の後片付けと思ったが、やはり寒い。。
それもそのはず、残っていたすりおろしペアーチが凍っているではないか。。。
あー・・・肉も凍ってるみたいだな。
コンコンっ
ん~・・・凍ってはいるけど、カッチカチって程でも無いか? という事は・・・!
急いで包丁を持って来て、肉のスライスを始める。 スライサーのようにはいかなくても、今までじゃできなかったレベルでカット出来ていく!
食べ慣れた肉は、分厚いステーキやサイコロ上の串焼きばかりだった。 今日遂に、焼き肉用と呼べるような肉が何枚も出来た。 楽しくなって在庫のイノシシ肉は1/3を薄切りにした。
(どこまで薄く出来るかな・・・!)
次は豚肉のような薄いピンク色の肉の一部を薄切りにしていく・・・途中でちぎれても良い。 薄く・・・薄くと切っていく。 見た目は、豚のロース・・・!
ロースで好きなのは、しゃぶしゃぶだ!
この世界に来たばかりの頃に、使ったポン酢はまだ残っている。 ごまだれだってある。 ただ、傷んでいないかは分からない。
野菜もねぎがあるし、白菜もあるから・・・あー! ミルフィーユ鍋も良いんじゃね!?
豚肉の塊を見ていくと、バラ肉っぽいものもあったので、こちらもスライスしていく。 全部やっちゃえば良いかな?
「ふぅ~・・・朝から頑張ったけど、壮観だな!」
キッチンから持ってきたステンレスバットへ、スライスした肉は種類ごとに山盛りに並べた。
これだけあれば色々と使えそうだな。
「サトシー! ポトフもう沸騰してるわよー!」
「うわっ!」
集中していたせいで完全にポトフの事を忘れていた。。 慌てて駆け寄ると・・・既に鍋は火から遠ざけてあった。
が、問題は水分が全部飛んで焦げている可能性が拭えない・・・。 焦げてしまったら、ほぼ食べられないレベルになってしまう。 経験あるので、あれはきつかった。。。
くっそ・・・どうだ?
鍋の蓋を開けると、、、白い湯気と共になみなみとスープが残っていた。
「あ・・・れ?」
「ふふっ 私が近くにいて焦がす訳ないじゃない。 沸いた頃に火から退けてるわよ?」
「あ、ありがとう・・・助かった」
「今朝食べる予定のご飯を焦がされちゃ困るわ。 気を付けてよね?」
アリアの嗅覚をもってすれば、焦げる前に気づけるようだった。
もし俺がその嗅覚持ってても、多分別事に集中したら同じ未来しか見えないな・・・
「サトシ、さっそく朝食にする?」
「あー、紅葉も一応呼んでくるよ。 ちょっと早く今日は行動したいしな」
「何か急ぎの用事あったかしら?」
「アリアが気にしていないのが嬉しいというか、気にして欲しいというか・・・まぁ、露天風呂に行きたいんだよ」
「・・・洗いたいなら水があるじゃない? 冷たいっていうなら沸かせば良いわよね?」
「・・・っ」
「露天風呂に行きたいって事に私をダシにしてないわよね? って冗談よ」
「・・・言われてしまうと、そうかもしれない・・・。 すまん。。」
「冗談よ、私も露天風呂行けるなら行きたいわ」
「そ、そうか!? なら紅葉呼んでくるよ!」
俺は部屋へと向けて走り出した。
「はぁ~・・・ 花が咲いたみたいにパッと笑顔になるんだから・・・怒れないのは私の甘さかしら。。」
「アリア何か言ったかー?」
しっかり聞こえてたが、甘やかしていて欲しいので聞こえなかったことに。 俺も聴力良くなったのかな? 地獄耳という能力を得てきたのかも知れないな。
(んなわけねーか)
部屋に入ると窓から光が差し込んいる。 俺のベッドはぺちゃんこで、電気毛布も消してあるので温かさの欠片もない。
まだ、紅葉はこたつむりのままかな?
驚かせないのように、こたつの毛布に頭を突っ込んで中を確認する。
微かにオレンジ色の光が中を照らしているが、紅葉が見当たらなかった。
「そんなバカな・・・?」
ダメ元でベッド布団をめくったが、当然のように居なかった。
つけっぱなしのこたつも無駄なので、電気を消しておくのとともにバサッと毛布を取り払う。
「やっぱり・・・見当たらないか」
紅葉が居ない。
まだ朝の7時だ。
紅葉が1人で起きる訳がない・・・こっちが起こす限界まで出てこないはずなのに。。 今までの経験から裏打ちされた情けない話だが。。
ならどこに?
ポトフの鍋に気づくように、アリアが玄関を出る紅葉を見落とす可能性は低いか。 とすれば、まだ家の中に居るはず?
「紅葉ー、朝ご飯食べるからおいでー!」
俺は部屋全体に届くように呼びかけた。
ガタッ
「?」
こたつを置いている寝室の奥には、物入れとなっている大きなウォークインクローゼットがある。 その中から物音がしたのだ。
「紅葉、クローゼットの中か? 珍しいな、こんな早くに」
ガタガタッ
「お、おい 大丈夫か?」
返事は帰って来ないままだが、俺は何気無くクローゼットの扉を開いた。




