26-7.夜(26日目)
「今日は昨日よりも冷え込むなー」
俺は寝室に居るであろうアリア達に向けて話した。
「サトシもおいでよー、ぽかぽか〜♪」
俺の声に合わせて、毛布からぴょこんと顔を出した紅葉が答えた。
おいおいそこは・・・
「2人とも、こたつじゃなくてベッドで寝なきゃだろ? アリアまでこたつに居るとは。。 もう寝る時間だぞ」
「こっちの方が温かいのよね・・・ほら、私と紅葉ちゃんなら体までしっかり温まるわ!」
アリアまで紅葉のように顔だけ出した姿で丸まっている。
2人とも、見事なこたつむりになってしまったようだ。
俺の入るスペースは無さそうだな。、
俺は冷え切ったベッドに入って、電気毛布を付けて温度を上げておく。
次第に起毛の敷布が温まってきた。
あー・・・これこれ! このままの設定で寝たら、熱くなって布団を蹴ってしまうだろうが、気持ちよくなってきたところで設定温度は下げておく。 少し寒いくらいが1番眠りやすいからだ。
あー、眠気は出てきたが、1人のベッドが妙に広く感じて寂しくなってきた。
「こっちのベッドも温かくなったぞ?」
俺は顔まで毛布に潜り込んで、髪の毛しか見えていないアリアへ声をかけた。 というか、紅葉の姿は完全に分からない状態だ。
「サトシ・・・寂しいの? ふふっ」
少しだけ頭を出して、こちらの状況を突いてきた。
「あぁ、寂しいよ」
なげやりに本心を話す。 アリアに俺の気持ちなんてお見通しみたいだった。
「本当に温かいのよね?」
「本当だよ、何なら電気毛布の温度も上げるよ」
「しょうがないわね・・・温めてよ?」
もぞもぞとこたつからアリアは出てきて、布団を捲られベッドで横になった。
「ちょっ、そんなにバサッと捲るなよ・・・一気に冷たくなっちまった。。」
「ほら、文句言わないっ。 温めてくれるんでしょ?」
「・・・そうだな。 ごめん」
「いいわよ、気にしてないわ」
俺は早速電気毛布の設定温度を最大にしたが・・・
「そっちじゃなくて・・・」
ぎゅっ・・・
電気毛布の操作でアリアに背中を向けていたが、後ろから抱きしめられることになった。 久々の密着に、シャツ越しに背中で感じる神経が鋭敏になっていく・・・
くっつけられた頬の柔らかさを。 寝間着代わりのジャージ越しだが密着して潰されたささやかな胸の弾力・・・じゃなくてこれはブラしてるな。。 ゴワゴワとした硬さが伝わっている。
(ど、どうしよう・・・)
「ァ、アリア・・・」
「このまま・・・温めてほしいの。。」
弱々しい声でアリアはそう答えた。 俺を抱きしめる手が僅かに震えている。
俺はアリアの手に、自分の手をそっと重ねた。
「・・・もう、我慢できないぞ?」
残り少ない理性を総動員させている。 俺の手は熱と共に汗で湿っているがそんな事をお構い無いしアリアは指を絡めてきた。
「我慢しないでよ・・・不安になるのよ。。。」
「アリア?」
嗚咽が聞こえ始める。 俺では無く、アリアの・・・
ここ最近、俺からアリアの事を避けるような事が多かったか。。
気丈に振る舞っていた・・・だけだったんだな。。 悲しい気持ちにさせちゃってたか。。。
「アリア・・・そっち向くからな? 少しだけ腕を緩めてくれ。」
「い、嫌よ・・・離れたくないの・・・」
あー・・・これはかなり傷つけていたようだ。。 ゆっくりと時間を掛ける必要がありそうだった。
「離れたりしないよ?」
「・・・何度も避けられたわ。」
根に持ってるな・・・そんなつもりじゃなかったのだけど、アリアの気持ちを踏みにじってたのは確かだもんな。。 落ち着くのを待つしかなさそうだった。
さっきまでの眠気は消え去り、長い夜が始まろうとしていた。
こたつの中の紅葉は、寝ているだろうか? 出来るなら寝ていて欲しいと祈るばかりだ。 子供をもつ家庭って、夜な夜などうしているんだ? そんな疑問が膨らむのだった。
・・・
時間の経過とともに、アリアのすすり泣く声も聞こえなくなる。
「俺もアリアを抱きしめたいんだが、向きを変えてもいいか?」
「っ! な、なら早く言ってよっ!」
「言っても聞かなそうだったがな」
「腕を離せって言うからよ。 ばか・・・。 あれだけじゃ分かんないわよ。。 また避けられるとしか思えなかったんだからっ」
「ごめん、俺が悪かった」
アリアと向き合う形になり抱きしめると、俺の胸に顔を埋め、摺りついてくる。
(ん? 胸が濡れた?)
舐めているとか、よだれではないようだ。
今は言葉よりも触れ合うことが正しいように感じる。
アリアの背中に回していた右腕の位置を変えて、アリアの枕代わりにさせる。 空いた右手は、その頭に添えて優しく撫でていく。
左腕はアリアを抱き寄せ、背中に回した。
何をするでもなく、ただ抱き合ったまま時間が流れていく。 言葉は交わさなくても、今は互いに伝わるような気がするんだ。
不足していた時間を取り戻すように・・・静かに2人の心は1つになっていく。
「ん・・・落ち着けたかな?」
「な、何か恥ずかしいところを見せちゃったわね・・・」
顔を真っ赤にしなかがらアリアが、再び俯く。 そんな姿も可愛いと俺は思った。
「可愛いと俺は思ったぞ? 中々時間が取れてなくて俺も悪かった・・・色々と考えちゃってたんだ。 だけど、アリアの事を嫌ってる訳じゃなかったんだ。 大好きだよ。 これからもそばに居て欲しい。 もっと、今日みたいに甘えてくれて良いからさ」
「甘えたら、また避けられるんでしょ? 私だって傷つくんだからねっ!」
言葉と表情は一致していないようだった。 アリアは笑顔でそんな事を言っている。 ただ・・・表情のまま今を受け入れては駄目なんだろうな。
泣かせた事・・・それを忘れてはいけないのだから。
「あぁ、良く分かったよ。 本当にごめん。」
「ぅん・・・」
その頬に触れて、軽く唇を重ねる。
嫌がる素振りは無いし、俺の首に腕を回してより強く密着してきた。 もちろん俺もそれに応える。
触れ合いから水音がしても、止めたりはしない。
息が続くまで・・・いや、息継ぎをしても追いかけるように再び重ね合う。
そんな暗闇に2人して溶けていく。
「アリア、暑くないか?」
「ちょっとだけ・・・暑いかも」
俺はアリアのジャージに指をかけ、はだけさせていく・・・。
汗ばんだ肌に触れ、その体を指でなぞっている。 片側でいい・・・肩に触れて腕を導くように袖から抜いた。
そのままの流れでジャージの下も、そして下着にも手を掛ける。
互いに乱れた服よりも、もっと・・・2人で乱れた夜を過ごした。
「・・・今日はこのままで良い?」
「もちろん。 このまま寝ようか」
「うんっ、おやすみなさいっ」
一糸纏わぬまま、その日は眠りについた。
激しく乱れたが、紅葉の反応は無かったようだ。
脱力の中に、温かくて幸せで・・・ほわほわしたやわらかな何かで心が満ちていた。 アリアも同じかな?
俺の腕の中には、幸せそうな寝顔のアリアが・・・って、もう寝てるんか!?
「ふふっ・・・おやすみ」
俺も目を閉じるとフッと意識が遠退いていく・・・体力の限界だったのかな…zzZZ




