26-6.こなもん(26日目)
時間は少しだけ戻って、智司視点へ・・・
「よし、うまく焼けたな!」
最初に食べる2枚を焼き上げて、一息つく。
味付けは心許ないが、焼ける匂いからは美味しいよ!って声が聞こえてくるようだった。
「ずいぶん時間かかっちゃったな・・・」
時刻は21時を回っている・・・いつもならもう寝る時間と言っても良いくらいだ。 自分も含めてだが、2人もお腹を空かせているはず。 タネはいっぱい作ってあるから、大丈夫・・・だよな?
足りなくなったら、ポトフの余りにキャベツを追加しているのでそっちを食べても良いか。
ぐつぐつと煮えるポトフの鍋を火から遠ざけて、2人を呼びに部屋へと向かう。
歩きながら思い出したが、いつの間にかアリアと紅葉が寝室に来ていたようだ。 フィギュア棚を見ていたみたいだし、何か興味でも湧いたのだろうか? 食後にまた見たいようだったら、久々にライトアップするか・・・?
しっかし、紅葉は前からちょこちょこ見ていたけど、アリアが睡眠以外で部屋に来て何かするって初めてか? 俺の手伝いで外に出ている事が大半だし、アリアとエイシャさん用の部屋はあてがっているけど、俺のあげた服と毛布が置いてある程度で空き部屋とあまり変わらないもんなぁ。
部屋をもっと充実させてあげるべきなのか、冬だしシングルベッドの中で2人と紅葉で寝るのが良いのか・・・。
個人的には、欲望のまま進むなら同じベッドで寝る方が得策か。 無駄に忙しい仕事増やす必要も無いもんな・・・。
アリアはこのまま俺のベッドで寝かせることに決めた。 抱き心地良いもんな・・・
「おーい、晩御飯出来たぞー!」
二玄関から声を掛けると2人の声が聞こえてきたので俺は先にかまどへ向かう。
火から離していたフライパンを改めて火にかけなくては・・・
温かいご飯を食べさせてあげたいしな。
「晩御飯はどこかしら?」「ごはーん♪」
「フライパンの中にあるから、ちょっと待っててね」
皿に乗せて、プシュッとスプレータイプの醤油を掛ける。 ソースやマヨネーズ、花鰹や紅生姜に青海苔・・・不足しているものは多いけど、形にはなった。 こっそり1枚は試食したので味は問題ない。 後は二人の口に合うかどうか・・・
「さぁ、どうぞ!」
「これは何かしら? パンとは、違うわよね」
「お好み焼きって食べ物だよ。 まぁ、味付けが不足はしてるけど、美味しく出来てると思うよ」
「お肉カリカリで不思議っ! 何かふっくらしてるけど、美味しいよっ♪」
紅葉は話を聞く前から既にがっついていた。 表面には、今までとは違う豚肉のような肉を載せている。 薄いピンク色の肉から、もしやと思って味見をしたら豚肉その物だったので、お好み焼きに決定したのだった。
すべての食材を混ぜて焼くだけの簡単な料理・・・
個人的にお好み焼きといえば、広島風が好きだ。
ただ、広島風は今目の前にあるコレとはちょっと違う。 広島風は別種の料理と考えるべきだろう。
クレープ生地のようなタネを焼いて、これでもか!って程にキャベツやもやしを乗せて焼く。 蒸し焼きにされた野菜は甘みが増し、かさが小さくなっていく。 その状態でコテで押し潰すように圧縮して旨味を凝縮・・・野菜盛りが1つの塊となる不思議な状態が出来上がるのだ。 そこへ焼きそばと肉や卵を追加して、ソース等を掛けて完成させる。
焼く手間はかなりかかるし、鉄板が欲しくなる調理方法だが一度フライパン2つ使って試して以来、お好み焼きと言えば広島風で作る事が自分は多かった。
久々に食べた目の前のお好み焼きも悪くはないんだがなぁ・・・
材料不足という高い壁を俺は越えられなかった。
それでも美味しそうに食べている紅葉やアリアがいるので俺は黙っておく。 いつか二人にも食べさせてやりたいな。
「お味は・・・って聞くまでもないか」
「おかわりっ♪」
二人とも空にした皿をこちらに向けてきた。
「はいはい、ちょっと待っててねー」
既に焼き始めているお好み焼きをひっくり返して、両面しっかりと・・・特に豚肉はこんがりさせたやつが自分は好きなので、指摘が無いので同じように焼いていく。 焼けるまでに、1つ準備をしておく。
「サトシ、水もらえるかしら?」
さっそくきたか。 粉もの料理は水分が欲しくなる。 なので、準備していたコップにすりおろしたペアーチと水を混ぜて渡す。 ただの水でも良いけど、いつもより豪華にしたかったのでささやかな変化をもたせた。
濃い甘さのペアーチも水で薄めれば、口当たりの良い甘さになる。
紅葉にも、スープ皿で同じようにペアーチ水を渡した。
「あら? こういうのも良いわね。 でも、温かいともっと良いかしら? 体の中まで寒くなりそうよ」
「な、なるほど・・・お湯でも作ってみようか」
飲み物を温める概念が俺にはあまり無かった・・・。 味噌汁やポトフとかは温めてもちろん食べるが、年がら年中俺は冷たい飲み物を飲んでいたのだ。
夏はもちろんの事、冬でも冷製のコーンスープが好きで、冷蔵庫から出したまま飲んでいた。 レモネードも大好きだが、もちろん水道水そのままで作るので真冬だろうが冷たいまま。 年中ホットが好きなのは、コーヒーくらいだろう。
アリア一言で、家族からも冷たい物ばかり飲む事を指摘されていた事を思い出す。
そう言えば・・・家族はどうしてるだろうか?
居たら居たで面倒な事も多いが、やはり困った時に最後まで助けてくれる存在は家族だろう。 たった1ヶ月程度だが、再開できる見込みの無さそうな世界では、何だろうな・・・寂しいと感じるよ。
孝行と言えるようなこと・・・結局出来なかったな。。
少しだけ実家を懐かしみ、ホームシックになりかける。 ただ・・・今に悲観はしない。 新しい大切な相手を俺は見つけた。 何も伝える事が出来ないけど、それでも良い。 俺はここで楽しく生きている。 せめて・・・心配させずに居られたら良いなと考えた。
鍋に入れていた水が沸き出したところで、思考を切り替える。
熱々ではせっかくの果汁感が失われるので、ほっと一息つけるような50〜60℃近辺が良さそうか? 新しいグラスにお湯を注ぎ、次いで水とペアーチを混ぜ合わせた。
「新しい物も置いておくね」
二人分のホットペアーチ水を渡して、逆に冷たいものは受け取って俺が飲み干した。 アリアも紅葉も温かい方が好きみたいだった。
俺的には冷たくてサラッとのどごし(?)が良い方が旨く感じるんだがなぁ。 人の好みなので、特にそれ以上思う事はないが、やはり仲間は居ないようだった。
2枚3枚・・・お好み焼きのタネが尽きるまで焼き続け、アリアと紅葉だけで7枚も食べていた。 俺は最初にこっそり食べていた1枚と最後に残った小さな1枚を食べるのみだった。
「サトシ・・・それだけで大丈夫?」
アリアも紅葉も心配してきたが、御無用!
「残ってるポトフを少し食べるよ。 明日は2人も食べることになるけどね」
そう言いつつ、ポトフをお椀によそうとアリアが急に声を上げた。
「えっ!? 何か追加したの!?」
俺にとってのポトフと言えば、皮付き丸ごとジャガイモに玉ねぎ、キャベツ、にんじん、ソーセージが主要食材だった。 当たり前に思っていたが、そもそもアリアはキャベツを追加している事は、寝室に居たのだから知らなくて当たり前だった。
「そっちも・・・食べたかったわ。。」
小さくゲップをしながら、お腹をさするアリアは満腹でもう入らないようだった。
「明日食べれるんだから、楽しみにしとけばいいさ。 ちゃんと残ってるからさ」
「明日も楽しみだねっ♪」
新しい料理に満足したアリアと紅葉は、体が冷えてしまう前にと部屋に戻るようだ。
時刻は23時になろうとしていた。 冬の夜は、痛いほどに冷え込んできている。 かまどの前に座っていても、今までのように温まっては来ない。
(片付けは明日にするか・・・)
俺も2人を追いかけるように部屋へと戻る。
あー・・・寒いっ、寒いっ! さっさと布団に入って、電気毛布の設定温度を上げよう。。 今日は冷え込むぞこれは。。。
最近流行中のアレで、濃厚接触者の仲間入りを果たしました。
(対象者の診察はまだなので白判定の可能性もありますが)
会社からの懸念ありとのお達しで、急遽休む事に・・・!
最近連休が無かったので、のんびりと自宅待機となります。
忙しくて中々出来なかった部屋の大掃除や水槽のメンテナンス・・・合間で小説の続きも書けるかな?
家族の居ない一人暮らしってのは、隔離しやすい生活空間で良かったと思う今日この頃。
自分がかかっていない事を祈るばかりです・・・(ガクブル




