表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/109

26-4.新しい食材(26日目)

 「・・・あれ、何かしら?」

 私は遅くなった事を反省しつつ、慌てて家に戻ってきたんだけど、サトシと紅葉(もみじ)ちゃんがグルグルと回って笑い続けている不思議な光景に出くわした。


 陽が落ちて、まだ月明かりが出ていないので暗闇のはずだったが、そこだけ煌々と輝いている。 紅葉(もみじ)ちゃんの光魔法が回転する2人を照らしているみたい。


 「ん? あんなの無かったわよね・・・?」

 気付くと二人の近くには、木製の何かが立っている。 意味不明な光景だったが、また何か作っただろう事に思い至ることが出来た。


 「あぁ・・・何やってるんだか。。。」

 急にサトシが地面に四つ這いになっていた。 さっきまでのバカ騒ぎの報いかしらね。

 慌てる紅葉(もみじ)ちゃんに遅れて、私もゆっくりと森から庭へと歩みを進めた。


 「ただいま、サトシ大丈夫?」


 「あっ、アリスおかえりなさい!」

 私が帰ってきた事には気づいてたであろう紅葉(もみじ)ちゃんからすぐに返事が返ってきた。 でもまぁ・・・すぐにサトシの心配に戻るあたり、私はおまけみたいなものかなって少し寂しく感じてしまった。

 「アリス・・・、サトシさっきまで元気だったのに大丈夫かな・・・?」


 一部始終を見ていたから分かるが、少し待てば大丈夫なのは明白ね

 「ぜ~ったいに大丈夫よ。 だから、少しだけ休ませてあげれば良いのよ」


 「ベッドに運ばなくてもいいの?」


 「ええ、ここで大丈夫よ。 安静にしてればすぐに治るはずよね?」


 「・・・あぁ、その通りだ。 少しだけこのままで居させてくれ。。。」


 やっと思考が回り出したのか、嘔吐いていたがサトシから反応が返ってきた。

 少し時間が掛かりそうだったので、私はカバンを降ろして、今日の成果を整理し始めた。

 遅くなってしまったけど、その甲斐は十分あったと思う。



 ---------------------------------------------


 あぁーー!! 頭が痛い! 気持ち悪い! 吐き気もあるし完全に浮かれてたな。。。 同じように回ってたはずの紅葉(もみじ)は無事みたいだし、三半規管強いなおい。。。 野性恐るべし。


 アリアも帰ってきたし晩御飯の準備をば・・・うぉっと。。

 立ち上がろうとしたが、上手く立てやしない。。 お風呂でのぼせた時もこんな感じか。。 あー、駄目だ。 諦めるっ!


 俺は潔く地面に寝転がって落ち着くのを待った。

 頭から遠くの方で、アリアと紅葉(もみじ)の話し声が聞こえてくるが、何か色々と持ち帰って来ているみたいだ。 すごく気になるが手足に力が入らないしどうする事も出来ない。。


 あー・・・紅葉(もみじ)がお肉!お肉!と興奮してるし、肉は手に入れて来たんだろうな。 それにしても気持ちが悪い・・・このまま休むか。

 目を閉じて仮眠を取ることにした。



 ・・・

 「起きて! サトシ、起きてってば!」


 「んあ・・・?」


 「まさか、あのまま寝るなんて思わなかったわよ・・・」


 アリアのため息と共に、隣の紅葉(もみじ)もうんうんと頭を上下に振っていた。 どうやらイビキをしだした俺に気付いて起こしに来たらしい。 せっかく寝付ける所だったのに・・・とは口が裂けても言えなかった。

 「ごめん、ごめん。 頭もスッキリしたし、アリアの成果を見せてもらっても良い?」


 「ご飯楽しみにしてる私達を置いて寝てるなんてねー」


 「ねー」


 アリアと紅葉(もみじ)が結託して、不服をアピールしてきた。 何かいつもと違うものを作らないと、鎮めることは叶わなそうだった。

 「ごめんな。。 どんな材料がある・・・? 思い付けば、新しい料理も作るよ。 それで許してもらえないかな。。」


 「紅葉(もみじ)ちゃん、どうしよっか?」


 「美味しいご飯じゃなきゃ、ダメかなー?」


 「そうね、それは重要だわ♪ サトシ分かったかしら?」


 「分かったよ。。。 それでアリアは何を持って帰ってきたのかな?」


 「これよ」


 アリアが指差したビニルシートの上には、いくつもの食材が広げられてた。

 まず、目に付いたのはひと目で分かる長ネギの存在だろう。 白い地中に埋まっている部分と、陽を浴びて緑色に染まった色鮮やかな野菜だ。

 次いで気になったのは、黄緑色をした丸い玉。 白菜ではなくこれはキャベツ。

 更に、黄土色をした棒のような存在も並べられている。 一瞬木の棒かとも思ったが、縮れた脛毛のような見た目の悪い根がひょろひょろと生えた野菜だった。 そう、長芋だ。 山で取れるならもっと根っこらしい自然薯じゃないのか?と言いたくなるが、使い勝手は長芋の方が便利だ。 とろろ・・・麦飯も作れば完璧か? 生でも焼いても美味いよな。。


 最後に薄いピンク色をした、肉の塊がいくつか・・・

 「新しい食材ばかりだ・・・これはすごいな」


 「頑張ったんだからね?」


 「アリア、ありがとう。 何を作ろうかな。。ぶつぶつ・・・」

 俺は目の前の食材を見ながら考え込んだ。


 長芋でとろろを作って、麦飯とか良いよな。。 出汁取れる材料残ってたか? 普通に焼いて醤油かけるだけでも美味いよなぁ チーズとか海苔も良いよな・・・

 キャベツやネギも煮込み料理に合うし、ポトフに念願のキャベツを追加できるのも楽しみだ。

 それに、今まで串焼きといったら肉オンリーだったけど、ネギを刺すことができる。 香ばしく焼けたネギに醤油やタレをかけて・・・あー、夢が広がるっ!


 ただ・・・せっかく新しい食材達だ。

 全部使えたら良いよな?


 キャベツに長芋に・・・何がいいかな。

 俺は部屋に戻り、床下収納を確認した。

 (未開封のやつあったような?)


 「お。 あった、あった!  乾燥桜えびと天かす、それと・・・」

 床下収納の中には比較的日持ちする食材等を入れていた。 他にも、面白そうで買ったがあまり使わなくなって・・・でも捨てるにも惜しい物が。


 賞味期限が1年もある乾燥卵パウダーを手に取ると、閉じていた封を開けるが匂いは問題なさそうだった。

 昼は社食を食べている一人暮らしには、中々生卵を10個使い切るのは困難だった。 生食期限が少々切れようが火を通せば十分食べられることは知っている。 だけど・・・何となく放置しちゃって1週間、2週間と時間は過ぎていく。 そうして、流石に捨てるべきだと思い至ることが多かった。

 そんな時に出会ったのが、この卵パウダーだ。


 海外の溶き卵パック何かより、更に斜め上に行く卵だ。 もちろん生食するようなものでは無いが、混ぜて使う分には悪くない。

 ただ、やっぱり生卵の方が美味しいので、床下収納へお蔵入りしていたのだ。


 (今がいつかは分からないけど、匂いが大丈夫なら問題は・・・無いよな?)

 これで食あたりになったらみっともないが、食べてみなきゃ分からない。 意を決して1kg表示の卵パウダーを持ち出し、料理へ取り掛かることにした。



-------------------------


 ぶつぶつと呟いていたサトシは、急に走り出して部屋へと戻ってしまった。 私も紅葉(もみじ)ちゃんもお腹ペコペコなのに。。 楽しそうな横顔だったから、何か思いついたみたいだけど、一言くらい欲しいわよね。。

 いつもの事ながら、気になり出すと周りが見えなくなるそんな人だ。 ママと本当に似てるなって思う。


 「サトシ行っちゃったね。 待てば良いの?」


 「ええ、諦めて逃げたのとは違うと思うわ。 でも・・・」

 私が言葉を詰まらせると、同じことを考えていた紅葉(もみじ)ちゃんが続けた。


 「完成は遠そうだよね。。。」


 きゅるる〜


 私達のお腹は揃って泣いていた。

 「紅葉(もみじ)ちゃんもそう思う? やっぱり絶対に時間かかる料理を作ってきそうよねぇ・・・」


 「ぅんぅん。。 でも美味しい物作ってくれるんだろうし、待つしかないよねー・・・」


 「ペアーチ1つくらい良いかしら?」


 「どうかな。。 余計にお腹空かない?」


 「あー・・・待つしかないわね・・・」

 私はかまどに火を付けて、紅葉(もみじ)ちゃんと暖を取ることに。 サトシのご飯に期待しつつ、がっかりさせない為にもこっちもお腹を空かせて待つことに決めたわ。

 次第にぽかぽかとしてくる顔や体・・・ちょっと歩けばお肉も野菜もあるし、焼けばすぐに食べられる・・・だ、だめよっ!? ガマンガマン・・・一人で考え事をしちゃ駄目ね。 食べ物のことばかり考えてしまいそうだわ。。。

 話をして気を紛らわそうかな。

 「紅葉(もみじ)ちゃん、最近は調子どうかしら?」

ぐふっ。。。

日曜も少し仕事です・・・(。•́︿•̀。;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ