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24-?.----(1)

世界は停止しました。

 「神様―! こっちは準備できましたよ!」


 「その呼び名はやめてくれって言っているんだが・・・」


 「神様は神様だから仕方ないじゃないですかー」


 仕事もできるし良い子なのだが、呼び名だけは何度言っても聞き分けてはくれない。。

 延々と繰り返す事が目に見えていたので、今回も私が折れて先に進む事にした。


 私達の前にはいくつもの世界が浮かんでいる。


 茶色い砂に覆われた不毛な世界。

 青色に染まって水没した世界。

 真っ白に凍り付いた凍てついた世界。

 マグマが吹き上がる高温の世界。

 全てを焼き尽くしている灼熱の世界・・・。


 どれも見慣れたものが目につく。

 困難とは分かっているつもりだったが・・・こう何度も同じものを繰り返されると滅入ってくる。

 だが投げ出す事は出来ない。


 万に一つでも、目的の世界が生まれれば良い。 それさえ出来れば全てが変わるはずだ。

 私は、気分を切り替えて口にした。

 「それでは、1つずつ確認をしよう」


 「はいっ 神様!」


 その呼び名は何とかしたいんだがな。。。


 ひとつの世界を覗き込むと、そこは激しく燃え盛っている。 時間が止まっているので燃えているようだと言うべきだろうか? この世界の構成主は何を思ったのだろうか。。

 私は深く考える事無く、その世界を消した。


 いくつも・・・いくつも世界を消した。 こんな事をいつまで続ければ目的に達せるだろうか。

 悲観しながらも確認する手は止めない。 見ては消して、見ては消してを繰り返していく・・・


 おっ!?

 「お、おぃ! これを見てくれ! こいつをどう思う?」

 目的のベクトルとはちょっと違うが・・・いや、飛び越えているというべきだろうか? 彼女の意見も確認しようと呼びかけた。

 そして、目の前の鼠色に染まった世界を指さした。


 「神様ー 何かありました? その鼠色の汚い世界がどうしたんですか?」


 「まあ、見てから応えてくれ」

 私は彼女にそう進めると、こうなった経緯に思考を向けた。

 何故こうなってしまったのか。。 望むものを飛び越えすぎてこのまま進めていくのはマズいと、せっかく生まれた世界を消すべきか悩む。 私としては・・・聡すぎるこの世界は消すべきだという考えに至った。


 しばらく観察していた彼女は興奮しながら口を開いた。


 「か、神様!!! これ【生きている世界】じゃないですか! 遂にやりましたね!!!!!」


 私の手を掴み、ぴょんぴょんと跳ねる彼女に揺られるが意識ははっきりしている。

 「私は・・・消すべきじゃないか。 と考えているが。。。」


 「えっ!? どうしてです!? せっかく【生きている世界】が出来たじゃないですか! 何度も失敗して・・・きっと今回も駄目だと思ってたけど出来たんですよ!?」


 「だが・・・これは私の望む理想とは違う。 進み過ぎている・・・この世界の摂理に気づいているのではないか・・・?」


 「うっ・・・でも、でも・・・なら!! 操作しちゃえば良いんじゃないですか? 初めて出来た【生きている世界】ですよ? この後どうなるかなんてまだわかりません! 何度も失敗するでしょうけど、貴重な成功例です・・・操作するべきです!」


 私は・・・意識せず操作を否定していたようだ。

 それは正しい行いでは無いと・・・だが、世界の創造の種は私達が行っている。 それは操作と何が違うのか? 違わない・・・それに逸脱したのならその時に消せばいい。

 「そう・・・だな。 これは消さずに残しておこう」


 「それじゃ・・・続きの確認しましょう! どーせ駄目でしょうけど。。」


 「そう言うな・・・こっちまで気が滅入ってくる。。」


 「いつもの事じゃないですかー」


 愚痴を漏らしながらも、2人して世界を消していく。 そうポンポンと【生きている世界】は生まれてこない。 今まで失敗し続けた経験が物語っている。 どれもこれも崩壊し、消える事を待つだけの世界ばかりだ。


 さっきの鼠色の世界は成長を続けている。

 それは燃え盛る世界や凍てつく世界とは大きく違う。


 後者は、暴走し崩壊している事に他ならない。 それらから変わるかと始めの方は長期的な確認を行ったが、どれも崩壊していった。 途中経過は違えど、進んだ最後は同じだったのだ。


 前者は、落ち着いていると言って良いのか安定した状態を長期間保ち続けている特殊な例だ。 これから崩壊する可能性もあるが、ここまで安定し続けているだけでも評価できる世界だった。


 生まれながらも崩壊を待ち続けていた世界を消していく。 そんな静寂ばかりが続いていた。



 「か、神様!!!! あ、ありましたよ!!!!」


 静寂を破る彼女の呼び声が聞こえた。

 彼女はものすごく興奮しているようだった。 顔を真っ赤にしながら勢いよく走ってきて私の手をぐいぐいと引っ張ってくる。

 「い、痛っ 痛いって、お、おち、おちつk あー・・・わかった。。。」

 腕が抜けそうになるのに耐えるのも、落ち着かせることも諦めて私も彼女と共に走ってその世界へと向かった。


 「これ・・・か」

 息切れしながらも、彼女が見せた世界は緑と青に包まれていて目を奪われた。 種を撒いた直後の世界では無い。 あれからかなりの時間が経っているはずだ。 それでもこの状態を維持しているという事は、このままで安定しているのだ。


 「中を見てくださいよっ!」


 「・・・そうだな」

 私は促されるままに、緑と青の世界を覗いた。

 そこは・・・予想通りというか、森が深く自然が豊かな世界だった。 見た目だけでは判断が付かない。 詳細も確認していった。


 この世界も間違いなく【生きている世界】だった。

 だが、これも理想とは違う。 今度は遅すぎるのだ。。 そして、未知の力を使っている。

 「魔法・・・」

 その表現がピッタリと当てはまる。

 種を撒いた初期ならほとんどの世界で魔法や忍術が生まれる。 だが、そんな世界は崩壊が始まってすべて消してきた。

 この世界は不思議なことに安定している。


 鼠色の世界を聡いとするならば、緑と青の混ざり合った世界は疎いと言うべきだろう。 どちらも一長一短だった。


 「足して2で割れば丁度良さそうなんですけどねー。。」


 彼女の言葉は、衝撃的だった。

 どちらも足りないが、どちらも良い面がある。 望む部分を組み合わせれば、望む世界が生まれるかも知れない。 やってみるべきか・・・?

 大切な成功例を同時に失いかねない狂気的な考えだが。。

 「やってみる・・・余地はあるか」


 「崩壊する気がしません?」


 彼女も同じ事を考えていたようだ。

 今までの世界と同じように崩壊する可能性が高い。 これらの世界はまだ自立させる段階には至っていない。

 鼠色の世界は著しい成長で大きくなり始めているが、緑と青の世界は生まれたばかりと言っても良い。 まだ、時期尚早か・・・


 「これが最後の世界か・・・2つとも経過観察だ」

 今回確認した世界は、2つを除いてすべて消し終わっていた。 まだ手を加えるのは止めて、それぞれの成長を見守ることにした。


 私は再び刻を動かし始める。 これらの世界が目的に達する事を望んで。

THE WORLD! そして時は進みだす・・・

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