24-1.二度寝(24日目)
ドカッ・・・
ぐにゅっ・・・
「っ!? はぁ、はぁ・・・」
衝撃の後、急に苦しくなってすぐさま目を開けて頭を引いた。
「朝・・・だよな?」
部屋の中にはカーテンの隙間から光が射し込んできていた。
昨日は・・・紅葉を寝かした後、アリアとすぐ寝たはず。。。
ベッドの上でゴロゴロと転がる緑色の芋虫・・・もとい紅葉と思われる物が暴れていた。
「・・・紅葉? ふぁ~・・・今朝は早起きだな」
「! サトシっ! これどういうこと!?」
緑色の芋虫は、裏返ってこちらに顔を向けてきた。
耳も葉っぱに包まれてしまっているので、突き出た鼻と口、そして目しか見えていない。 中々シュールな見た目だ。
まずは、朝の挨拶が先だろ? 俺の頭はまだ寝ぼけているようだ。
「紅葉、おはよう。 良かった、目が覚めたんだな」
葉っぱの上から、紅葉を俺は撫で始める。
「うん、おはよう。って、そうじゃなくて!! 動けないんだけどっ! どうしてこんな事になってるの!?」
「あー・・・」
段々と目が覚めてきたようだ。 紅葉の興奮が少しずつ伝わってきた。 俺も目覚めもこんな感じだったなぁとしみじみ思う。
ベッドにアリアの姿は無く、いつもの日課に行っているのだろう。
俺は聞いていた話を、紅葉に一つずつ伝えることにした。
「また、魔力を使い切って眠っちゃったのは分かるか?」
「うん、出し切ったら眠くなったのは覚えてるよ」
「あんまり無理するなよ? 心配したぞ」
今の結果を思えば、紅葉の行動は正しかった。 そうしなければ、全員が死んでいた可能性が高かった。 それでも・・・当たり前のように限界まで出し切るような戦い方はして欲しくなかったから。
「でも、私もサトシに無理して欲しくないよ・・・」
アリアと同じか。。
嬉しくもあり、悲しくもあり・・・複雑な感情で何も言えなくなる。
ただ、紅葉は寂しそうな顔を向けてくるが、その姿は緑色の芋虫である。 直視していると、真面目な話は出来そうに無いな。
「アリアも同じ事を言ってきたよ。 お互い様か。」
「うん♪」
「それはそうと、まずは葉っぱから出そうか。 ぷっ・・・あー、ダメだ! ごめんな、先に謝っておく。 あははっ、耳の存在はやっぱ重要だな・・・ふっ、ぷぷっ」
「うぅーっ!! 笑うなんてサトシ酷いよっ なりたくてこうなったんじゃ無いのにーっ!」
何度も笑った事を謝りながら、紅葉を包んでいる葉っぱを捲っていく。 はじめに耳がぴょこっと出てきた。 やはり狐耳あっての紅葉だ。 耳が無いとかなり間抜けに見えてしまっていた。 そう言えば、ペットに頭巾被せるような人も居たはずだが、あれは趣味かな?
苦戦しながら葉っぱを取り除いていると、アリアが戻ってきた。
「おはよ サトシ、紅葉ちゃんの容態は・・・あー。。。 また勿体無いことに。。」
「おかえり。 勿体無いってどういうこと?」
アリアの嘆きの意味が俺には分からなかった。 早く出たいと、紅葉も葉っぱを解こうと暴れている。
「話したと思うけど、その葉っぱには回復を早める効果があるのよね」
「あぁ、そう聞いていたな。 覚えているぞ?」
「でね? 葉っぱ自体に当然効果はあるんだけど、重要なのが葉っぱを編んでる魔法の方なのよ・・・」
「ただ編んであるだけでは無かったと?」
「ふー♪ やっと出れたー 二人ともどうしたの?」
俺たちの話を聞いていなかっただろう紅葉が、葉っぱを脱ぎ捨てて体をブルブルと振ってから、こちらの話に参加してきた。
「あー・・・」
アリアは俺と紅葉が解いて散らかした葉っぱを、慎重に持ち上げたが、葉っぱはバラバラになって床へ落ちてしまった。
「これももう駄目ね・・・」
肩を落とすアリアから、何か大切な物を失ったようだと察せるが、理解は追いつかない。
「これってアリアの大切な物?」
「ううん、私のじゃないわ。 あれば便利だったのにな。って思っただけだから、心配しないで?」
「そうなの?」
「サトシも、そんなに心配そうな顔で見ないでよ。 私が説明しておかなかったのも悪いんだから」
「そんな顔してたか? んー、誰の責任でも無いよ。 それで結局その葉っぱは何なんだ?」
アリアの表情は浮かないままだったが、諦めがついたのかゆっくりと口を開き始めた。
「回復が早まるのは葉っぱ自体の効果でもあるんだけど、生前・・・で良いのかしら? ママが魔法で編み込んでより扱いやすく、効能も向上させた物なのよ。。 昔は当たり前のように村の家々に配られてたんだけど、現存してるのは5枚・・・いや、これで残り3枚になっちゃったかしら。」
「なるほど。 効果が高くなってた事やエイシャさんの魔法の産物だと思うと確かに惜しいな。。 でも、使いやすさってどういうことだ?」
俺は話を聞きながら疑問を投げ返したが、紅葉は毛づくろいをしていて興味なさげである。
「んと、開放の言葉があるのよ。 聞いていなかったから、こうなっちゃったのよね。。」
「ん? 変だな。 俺が葉っぱから開放された時、エイシャさんに思いっきり捲られて出てきたぞ? それはもう乱暴に・・・」
作った本人が開放の言葉を忘れるとは考え難い。 エイシャさんは、特別な言葉も発していなかったはずだし、その後の葉っぱもバラバラになっていた。 そりゃ・・・目の前の無残な葉っぱ程では無いが。。
俺たちの会話を他所に、紅葉は解けた葉っぱや千切れた物も集めて敷物にしている。 毛づくろいは終わったようで、葉っぱの上で二度寝コースに突入していた。
「サトシ・・・ママに何かしたの?」
「記憶に無いんだが・・・」
「まあ、ママの事だから、『面白そうだったからよ〜。』とか言いそうね。 頭が痛くなるわ・・・」
アリアはこめかみを押さえながらため息をついた。
「・・・良く分からない人だよな。。 それよりこっち来て、紅葉を撫でてりゃ、少しは気分もやわらぐぞ?」
完全に二度寝してしまった紅葉の背中に、俺は手を置いて撫でながら提案した。 もふもふな感触が、黒い感情や悩みをどうでもいいや〜って気分にさせる。 良い精神安定剤である。
「そうするわ。 ・・・はぁぁぁぁ〜〜♪」
効果てきめんだったようだ。 アリアの表情が緩みきっている。
葉っぱやエイシャさんの話は置いといて、話題を変える事にした。
「今日もいつもの日課行ってたのか?」
「ええ、いつもだから日課なのよ? 当然じゃない。」
「そりゃそうか。 ただ、昨日は遅かったのにほんと早起きだな。」
「慣れよ、慣れ。 勝手に目が覚めるだけ。 サトシの寝顔見ながらというのも悪くは無いけどね?」
「・・・それはやめてくれ。。」
「ふふ。 そういえば、今朝はいつもより冷え込んでたわ。 部屋の中だと分かり辛いけど、そろそろ冬が来そうよ。 冬支度・・・間に合うかしら」
アリアが不吉な事を口にした。
「もうすぐとは聞いていたけど、分かるのか?」
「何となく・・・そう感じるのよ。 今朝は寒かったしね」
「冬支度って何をするんだ? 俺はこの世界での冬を知らないから、アリアの知識が頼みだぞ」
「丸投げは・・・しないでよ?」
呆れたようにアリアは呟いたが、その表情はどこか嬉しそうに見えた。
今の俺にほんとうに何ができるか不安でしかないが。。
「二人とも・・・これの話じゃなかったの?」
ボロボロの葉っぱを前足で突き出しながら、冷たい眼差しを紅葉が向けていた。
「・・・あはは・・・すまん。。」
「ごめんなさい。。」
聞いていないようで、紅葉はちゃんと話を聞いていたようだ。 冬支度も急ぐべきだけど、解放方法分からず終いだと後からモヤモヤしたり、次回があった時またボロボロにしちゃうしな。
「えっと、解放の方法は・・・『葉っぱさん、葉っぱさん、開いてね?』よ」
「・・・」
アリアの言った解放の言葉は聞こえたが、俺は意識せずかっこいい呪文を期待していたようだ。 猛烈にガッカリと言うか、脱力感が襲ってきた。
「それが解放の言葉なの? もしかして、包む時も似たようなこと言うの?」
隣の紅葉は解放の呪文(?)を聞いても冷静さを失っていないようだった。
「えっ? うん、そうよ。 包む時は、葉っぱの上に寝転がって『葉っぱさん、葉っぱさん、温めて♪』と言えば良いわ」
アリアも、俺と同様に紅葉がしっかり話を聞いていた事に驚いているようだった。 完全に眼中にないと思えたもんな・・・。
「サトシ、試してみる? アリス、一枚だけ葉っぱさん残ってたよね?」
「ええ、私の使ってたのが・・・あ、あったわ。 はい、どうぞ」
紅葉の勧めで、何故か俺が試してみる事に。。。 何故?
アリアに葉っぱを手渡されたので、釈然としないが床に広げて、葉っぱの上に寝転がった。
「やっぱり葉っぱだし、冷たいな・・・」
肌着の熱をみるみると奪うかのように、葉っぱに触れている面が冷えてくる。 独り言の呟きには、2人とも反応してくれなかった。 早く、やってみろと言わんばかりに・・・
え~っと・・・包む時は・・・
「葉っぱさん、温めて」
少し恥ずかしかった。
いや、すごく恥ずかしかった。
俺が寝ている葉っぱはピクリともせず、俺の体温を床へと逃がし続けている。
「あれ・・・? なんでだ?」
「サトシ、それじゃ駄目よ。 『葉っぱさん、葉っぱさん』と繰り返さないとダメなのよ。 それに、『温めて』じゃなくて、『温めて♪』よ」
何だそれ・・・繰り返すのは百歩譲って良しとしよう。 なんで、“温めて♪”なんだよ・・・? 誰がおっさんの語尾上げ聞きたいんだよ。。。というか、すげー恥ずかしいよ。 言いたくないぞ。。
白い目でアリアを見るが、表情は芳しくない。。
そのまま紅葉を見るが、こちらは視線すら合わなかった。 というか、言い出した紅葉は丸まってやがる!?
「サトシ、早く試してみてよ。 冬支度遅れちゃうわ」
何だこれ・・・? 俺が悪いみたいな状況に・・・orz
まぁー・・・悪いのか。
「・・・あー・・・『葉っぱさん、葉っぱさん、温めて♪』」
何故だか、両手を胸の前で組んでしまった。 もしこの一部始終を音声付きで録画されていたら、羞恥で崖から飛び降りれそうだ。
幸い、この世界にそんな物は無いので俺の脳内に新しい黒歴史が増えた程度で済んだ。
「・・・サトシ、体は動かさなくてよかったのよ?」
・・・黒歴史は、深く深く刻み込まれた。。
「・・・結構しっかり包まれるんだな? しかもさっきまで冷たかったのに、温かい・・・これ良いな」
忘れたかった。 忘れられないだろうけど、忘れたかった。 触れて欲しくなかったので話を逸らした。
「でしょ? それを二人してボロボロにしたのよ・・・? 残りの一枚は大切にしてよね?」
「ああ、もう呪文を分かったしな。 『葉っぱさん、葉っぱさん、開いて』」
葉っぱはまたしてもピクリとも動かず、温かくて柔らかな心地のままだった。
「わざとやってる・・・?」
「いや・・・すまない。 もう一度教えてくれ・・・」
呆れられながらも、何とか呪文を唱えて葉っぱから出ることが出来た。
次は、『ね?』の部分で、首を曲げてしまったが、再び精神を抉られるだけで済んだ。。。
もう葉っぱは使わないと、俺は心に刻むのだった。
「よし、それじゃあ冬支度は何からやればいいんだ?」
俺は、葉っぱをベッドに立て掛けると、アリアへ確認をとった。
「う~ん、まずは毛皮集めかしら? あれが無いと始まらないわ」
「確か、毛皮は家の方にいくつか置いてあったな。 どれくらい要るんだ?」
自分の分は、戦闘等しなければダウンジャケットでも良いだろう。 それに衣装ケースの中には、海外出張の時に−20℃になるぞと脅されて買った業務用のインナーもいくつかある。 それらを使えば、寒さに耐える事も出来るだろう。
「えっと・・・私3枚、サトシが4枚、紅葉ちゃんは、1枚いるかしら?」
「紅葉は要らないんじゃないか?」
既にもふもふの毛に覆われていて、野生動物なら自分の毛で耐えれるはずだ。 もしかすると冬毛とかもあるかも知れないし・・・
紅葉を撫でながら、たっぷりと空気を含んだ柔らかさを確かめてそう呟いた。
出会った頃が秋だったし、これ以上の冬毛は無いか。 白い毛に変わったりしても、中々良さそうなんだがなぁ。
スッと背中から毛の流れに手を滑らせて、尻尾を撫でていく。 あー、もふもふだ。
「寒いのは嫌だよっ もっと暖かくなるなら、私のもっ!」
「誰よりも暖かそうな姿してるのに・・・か?」
「紅葉ちゃんも、寒いよりも温かくなる方が絶対に良いわね」
「うんっ! アリスの言う通りだよっ サトシ冷たい・・・っ」
ぼふっ
紅葉には、野生味の欠片も無いようだった。 いつの間に布団に入り込んでいたのか、顔だけ出して会話に参加したかと思ったら、布団の中に再び潜ってしまった。。
「怒らせちゃったわね。 サトシが悪いのよ?」
「はぁ~・・・」
何となく思った事を口に出してしまった事が原因か・・・。 考え無しに口にするから駄目だと、昔の彼女に言われた事が思い浮かんで大きなため息が漏れた。
ご機嫌取りをすれば良いのだろうが、その場を切り抜けても本質的な改善が無ければまた繰り返す。 そして、小さな怒りだった物も、いつしか取り戻せなくなるのだ。
(上手くいかないな・・・)
何度も何度も繰り返してきたこと。 だから、結局面倒になって一人を選んできた。
そんな俺はどうするべきなんだろうか。
「紅葉ちゃん、サトシも悲しそうな顔してるし・・・今回は許してあげたら?」
(えっ?)
俺は悲しそうな顔をしていたのだろうか?
アリアの言葉に声を出して驚きそうだった。 アリアは俺に背中を向けたまま、紅葉の潜り込んだ布団を撫でている。 俺は・・・
「ごめんな、紅葉 皆で冬支度しよう」
「むー・・・」
紅葉の怒りは、まだ治まってはいないようだった。
それでも冬支度を急ぐべきだと判断したのか、布団から出てきてアリアに抱かれながらぼそぼそと声が聞こえた。
「・・・たし・・だって、おな・・うに・・・なれる・・ず・だもん・・・」
何か言ったか?そう・・・口に出してしまいそうだった。
それを漏らさなかったのは、アリアに抱かれた紅葉の表情が一瞬だけ見えたからだ。 怒っているのではなく、とても寂しそうだった。 一瞬だったその表情が頭から離れない・・・怒らせたこと以上に、悲しい顔をした紅葉を目にした事で胸が締め付けられた。
(面倒だ・・・何て思ってしまってごめんな・・・)
「紅葉、・・・ごめん。。」
胸が苦しくなって実感する。 大切だったことに。 すぐ忘れてしまうそんな自分が嫌いだった。
「・・・ほら」
アリアが抱きしめていた紅葉を俺に寄せてきた。
手を伸ばして良いのか・・・俺は悩んでしまう。
手の感覚が朧げになっていく・・・自分の手なのに、自分の物じゃないような。 微かに震える手は、紅葉に届く事は無く、空に触れるのみ・・・
紅葉は俺の方を向いてはいない。
ただ暴れる事は無く、アリアに持たれるままになっている。
アリアには・・・紅葉が今、どんな顔をしているのか見えているのだろう。
優し気に紅葉に視線を合わせてるようだ。
胸が苦しい・・・目の前に紅葉はいるのに、今はとても遠い・・・。
「ねぇサトシ 紅葉ちゃんの事、嫌い?」
「そんな訳ないっ!」
すぐに言葉が出ていた。
「なら、好き?」
「あぁ、好きだよ」
「そう・・・なら、抱いてあげて?」
アリアは笑顔で、俺に紅葉を押し付けると、部屋から出て行ってしまった。
「・・・行っちまったな」
「・・・」
紅葉は黙ったまま腕の中に顔を埋めている。
話しかける・・・べきだろうか?
申し訳ない。。。そう思った俺の心はこの一瞬だけで、また数日すればいつもの様に、そしてまた紅葉を傷付けるのではないか? 反省したような気分になって、熱が冷めたらまた忘れてしまうだろうと・・・ずっと、、繰り返してしまっていたから、悩む。
このまま一緒に居るべきだろうか?
俺が居ない方が、紅葉の為になるのではないだろうか?
悲しませて、怒らせて・・・そして嫌われてしまう前に・・・突き放すべきなのか?
それは紅葉だけではない。 アリアだって同じだ。
家族と暮らして成長し、一人暮らしを始めたばかりの頃は人恋しさや、会話を強く欲していた。 だが数年経つとどうだろうか? 彼女と別れ、異性との交流も減って自由気ままになってからはどうだったか?
面倒な人間関係は無い。
口うるさく言う人も、だらける時間を妨害される事も・・・
全てが自分に降りかかってくるが、その全てが自分の責任であり、それが自由だった。
今、あの頃に戻れるか?
俺は人との繋がりをゼロに出来たか?
寂しく無かったと言えるか?
新しく作った物を、見せて驚かれたり笑い合ったりできる事も無くす事が出来るか?
この世界はどれだけ広いか未知数だ。 今のところ、知り合いは見当たらない。
エルフの村との交流は行える可能性があるが、 彼女らを失った場合・・・所詮俺は紅葉やアリアのようには歓迎されない異質な者だ。
失えば、彼らとの交流も途切れるだろう。
そうすると、完全に孤立する。
そんな生活は・・・出来ないだろう。
繋がりをゼロには出来ない。 孤独になり切る事は出来ない。。。
「・・・一人は・・・嫌だ。。」
俺の目には大粒の涙が溜まっていて、漏れ出た言葉と共に頬を伝わって紅葉の頭に落ちた。
「サトシ・・・?」
紅葉が名前を呼ぶ声が聞こえた。 だけどその顔は歪んでいて見えない。
涙で視界が歪んでしまっていた。
「紅葉・・・自分勝手でごめん。。 でも、一人にはなりなくない。。一緒に居てくれ。。」
「ど、どうしたの!?」
やっぱり紅葉の表情は伺えない。 グニャグニャと揺れて歪む水の中で黄色や茶色、陽の光と思える白が混ざり合っている。 ただ、慌てた紅葉の声が耳に入った。
紅葉の声を聞いてというよりも、ぶちまけたかっただけだった。
溢れ出た寂しさと怖さで体が震える。 失って数か月後を想像してしまう。 理性を保てなくなるイメージが膨らんでしまった。
ただ泣きじゃくる子供の様に。
そこから先は・・・思い出せない。 気付いた時には、何故か布団の中に居た。
夢でも見ていたのか?
ガチャッ
「長いと思ったら・・・2人して寝てるなんて。 2人にさせた責任は私にもあるけど。。 ほら、サトシも起きてそろそろ冬支度手伝ってよね?」
開かれた扉からアリアが顔を出し、冬支度を催促してきた。
夢では・・・無かったようだ。
左目は涙が乾いたせいか、上下のまつ毛がくっ付いていた。 右目は・・・特に無いが頬にかけてベタベタしている。
右頬には紅葉が顔を寄せてくっ付いていた。
俺の涙を舐めていたのだろうか? 密着されている。 ベタベタはしても、嫌な気持ちは無い。 どこか清々しささえある。 もう少しこのまま・・・と言いたいところだが、起きるならこの清々しさのまま起きなければ二度寝(三度寝?)してしまうだろう。
「紅葉・・・ありがとう」
覚えてはいないけど、傍で寝ている紅葉をそっと撫でて俺もアリアを追って部屋を出た。
仕事が忙しくて中々時間が取れません、、、
そう言えば、落ちたと思っていた資格試験は合格してましたw
来期は出張も増えそうでガクブルです。。。
ホテル宿泊が増えたら逆に時間を持て余して、投稿頻度が増えるか?
いや、長期出張の場合、水槽の魚たちの餌やりどうしよう・・・自動餌やり機購入必須か!?




