23-1.英雄?(23日目)
また・・・簀巻か!?
ギギ・・・ ドンッ! ギギィ・・・
(ん・・・? 何か煩いな・・・)
手で顔を拭おうとすると、痛みが走った。
あぁ~・・・そう言えば戦闘してたんだったな。。。 というか・・・動けない・・・?
これってまたアレか・・・? 数日前の簀巻きを思い出したが、今回は周囲が騒がしいようだ。
ゆっくりと目を開くと・・・ここはどこだ・・・?
板間に寝かされていたようだが、首を曲げて自分の姿を確認すると緑色の葉っぱに包まていた。。。
「ぉ・・・おぃっ!? これって調理中かっ!?」
痛みに耐えながら転がると、紅葉やアリアも同じように葉っぱに包まれている・・・
このまま火にくべれば、美味しく蒸し焼きにされそうだ。。
「紅葉っ! アリア!」
2人とも息はあるようだから、早く起こして逃げるべきだ。 転がりながら何度もアリアにぶつかるが起きやしない・・・
紅葉の方は、ぶつかると言うか下手したら潰しかねないので、一旦アリアを優先することに。
あー・・・そう言えば、紅葉は魔法疲れになっているかもか・・・起きれないパターンが思い浮かんだ。
「おーい、アリアっ! 起きろって!」
何度も何度もぶつかっては話しかけたが・・・うっ・・・気持ち悪くなってきた。。
はぁはぁ・・・ちょっと、休憩するか。。
板間にうつ伏せになって、荒い呼吸を整え始めると周囲の物音が話し声だった事に気づいた。
息を潜めつつ外の声に耳を傾けた・・・
「・・・ねぇ! 今・・・聞こえなかった!?」
「なになに? 私にも見せ・・・っ」
「・・・ちょっと・・・おさ・・・よっ」
ギギィ・・・
「い、いたい・・・ってば!」
「順番だろっ 次は俺にも・・・せろって!」
板張りの隙間や節穴から入ってくる光が、チラチラと遮られて薄暗い室内を明滅させている。
何者かに囲まれているのは確かだ。
声色に悪意は感じられないが、調理されている感じからしてサイコパスなパターンもあり得る・・・
(どうしろっていうんだ。。)
両手、両足も上手く動かせずに、またも転がるくらいしかできない。。 今度は垂れ落ちる水も無さそうだった。
考え込んでいると、一段と外が騒がしくなってきた。
キャーキャーと黄色い声や、野太い叫びが・・・その中に、聞き慣れた名前が出てきた。
「エイシャさまー!」
エイシャ様・・・? エイシャさんの事だよな? アリアの母親の事だよな・・・?
ガッ・・・ガガッ・・ザザー・・・
光の筋が太く、部屋を明るくしていく扉をジッと見つめた。 多分、安全だ・・・簀巻き状態は謎だが、エイシャさん関係なら危険はないだろうと。
「あら~? サトシさん、早かったわね~?」
「エイシャ・・・さん?」
「わたし以外誰って言うのよ~?」
巨大な葉っぱしか見えおらず、声以外の確認法方は無い・・・。 俺が巻かれている物と同じようだが、こんな大きな葉っぱはどこに生えてたのだろうか?
「サトシ様も起きられたのですかっ!?」
エイシャさんの後ろで一際大きな声が聞こえてきたが・・・様?
俺が様付けで呼ばれているようだった。 聞き間違いでは無いようだ。 エイシャさんの背後からいくつも顔が出てきては、引っ込められる・・・
「はぃはぃ、英雄は療養中だから解散よ~!」
エイシャさんの一言で確信へと変わった。
「俺が英雄・・・ですか?」
「正確には・・・3人で、かな~? 思考はバッチリみたいね。 気分はどうかしら~?」
「牢屋での簀巻き経験者にそれ聞きますか・・・?」
数日前の忘れたい思い出を強制的に引っ張り出されてイラっとしたので、睨みながらエイシャさんに応えたが、のれんに腕押して終わった・・・
「それで、これはなんなんですか?」
諦めて床を行ったり来たりとゴロゴロ転がりながら、巨大な葉っぱについて確認することにした。
「あら? 気づかない? それって怪我の回復を早めるのよね~。 (・・・良く分からないけど)」
小声の最後の一言で、すごく不安になったが・・・、まだ昨夜から日が昇って間もないとのこと・・・疲れから来る眠気もあったろうが、それ以上に体力を失って意識が落ちたはずだった。 それが数時間で回復するのだろうか? 身体中痛いが、痛いと言える余裕がある痛みのみだ。 本当に酷い時は、痛いなどと言っている余裕はない・・・
「今が、いや・・・英雄と言うことは・・・ブゴブリンは倒せたって事ですか?」
「倒せ・・・は出来なかったかも~?」
「えらくボヤけた言い方ですね? 何があったんです?」
・・・・
俺が意識を失ってから、紅葉と共に特にアリアの活躍がすごかったようだ。
紅葉の活躍は、予定通りの域を出てはいない。 記憶の片隅に、水の虎と竜を見たが既に紅葉は何でもアリな状態だったので驚くような事に至らないのだ。
しかし、アリアの活躍は凄まじかった。
最大の驚異だった毛を失っても、ホブゴブリンの皮膚は固いようだった。
クイナ達の攻撃で、先ほどエイシャさんが語ったようなダメージが与えられるとは到底思えない。 紅葉の魔法よりも強いんではないかと・・・
それと、ずっと気になっていた事が判明した。
エルフ達は弓は持つが、矢は誰一人として持っていなかった。 それなのに、大量の矢がホブゴブリンには放たれていた。 ちょっと考えれば簡単な事だったろう・・・
だが、物理的な弓があって、まさか矢が無いとはな・・・盲点だ。
弓の大きなデメリットが完全に消えている・・・まぁ、すべてのエルフに使えて、俺にも使えるかは葉っぱを出てからの挑戦次第か。
魔法の矢は、思い描いていた弓というよりも鉄砲やミサイルのようだ。
アリアは火を放ったらしく、そこには松明も燃料も・・・飛ぶ速度で消える事も無く・・・遠距離から魔力の続く限り、いくらでも射れると。 アリアが寝てしまったのは、純粋に疲れかそれとも魔力切れか? 後者でなければ、俺達の戦力は相当に上がる。 変幻自在に魔法を操る紅葉と、遠距離から強烈な一撃を、大量に放てるアリア・・・遠距離特化のチームだが、中々だな・・・
ただし、俺はあまり必要無いのが明確だ。
今回の毛穴拡張魔法は大成功だが、こんな戦闘ばかりとは思えない。。。
むしろこの世界の人々はフサフサな髪の毛を除いて、多分無毛なのだから(n数不足)
「ホブゴブリンには・・・逃げられたと考えるべきですかね? かなりの深手を負ってたようですが・・・」
「どうかしらね~? もしかすると・・・でも・・・ん~・・まぁ、数十年は安心だと思うわ~」
「何かご存知みたいですね? ただ・・・“数十年は”ですか・・・」
また、エイシャさんは何かを知っているようだった。 煮え切らない・・・不確定要素が多いからと言われたらその通りだが、この人は町についても何か知っている。 町を・・・見に行くべきだろうか? と、その前に聞くべき事があったか。
「それで・・・この状態なんとかなりませんかね?」
「これだけ話して動けるなら、問題ないわね~。 取るわよ~」
「宜しくおねががっーーうわぁぁぁーーー!?」
帯を解いて“あーれー”な感じを、床で転がされ・・・と言うか完全に転がっているっ! 目に映る色彩が目まぐるしく変わっていく・・・
「ぐぇ・・・」
部屋の壁に激突して、回転は止まったが・・・何も考えられない。 激しい吐き気と目眩に襲われて、床に這いつくばるのが精一杯だった。
そのまま何分か休んでいると、次第に吐き気も目眩も治まってくる。
壁に打ち付けられた痛みが、対比するように強くなってきたが、目眩ほどの苦しさではなかった。
「エイシャさん・・・もうちょっと何とかならなかったんですかね・・・?」
家の入り口には、俺のナイフやバックが置いてあり、それを使えさえすればこんな事には・・・
「わたし、非力だからこれくらいしか思い付かなくて~・・・ごめんなさいね~」
蔓を解く時に、俺の体は浮いていた。 どう考えても十分以上の腕力が・・・と言うか引き千切る事すら出来たのでは?と思ったが口には出さない・・・どうせ口負けするのが分かっていたからだ。。
そんな事より・・・
葉っぱをひん剥かれて、裸で床に伏していたようだ。 一応アリアの母親と考えると、気恥ずかしさが湧いてくる。
「俺の服や装備は・・・」
「こっちに固めてあるわ~」
エイシャさんの指差す方を確認すると、戦闘後とは思えないくらい手入れがされた鎧が目に入った。 盾は・・・裏板が割れてしまっていた。 鎧はまだまだ使えそうだが、盾は壊れてしまっている。。 と言うことは・・・俺の身体能力は、平凡なモノに戻ったということ。 全装備によるオマケ補正が使えなくなってしまった。
これがあったから、今まで活躍してこれた・・・
これがあったから、採集も作業も捗っていた・・・
紅葉やアリアの成長と比べて、俺は・・・自身の成長が無い事を痛感した。
装備の効果を、自分の力のように思っていた。
ただの装備の効果で、誰にでも分け隔てなく効果があったかもしれない。 そんな物を偶然手に入れて・・・強くなったつもりになっていた。
ドッ・・・。
弱々しく、膝が砕けて床に座るように崩れた。
「サトシさん、どうかしたのかしら~? 割れちゃった物は直せないけど・・・出来る限りで綺麗にしておいたわ・・・」
エイシャさんを見ると、青白い程に白い指先が黒く汚れていた。 革を磨いてくれたのだろう。 綺麗になっていたのはそう言うことか・・・
感謝するべき事と気づいたのなら、その場ですぐに。 そう思い、言葉にしようとしたところで・・・
バタッン!
けたたましく閉じられていた扉が開かれた。
ノックと言う習慣は無いのだろうか・・・
「エイシャ様っ! サトシ殿が目覚めたと噂を聞いたがっ!」
「・・・こうして目覚めてるよ。 クイナも無事みたいだな?」
「おぉ! そのようだな! 他の二人は・・・まだ・・・か」
「二人とも疲れてるはずだから、ゆっくり寝かせてくれないか? 煩すぎて俺が起きたようなもんだし・・・」
「あら~? わたしは煩かった周りを追い払ったからもっと感謝しても良いのよ~?」
すごく感謝したくない気持ちが膨らんだ。。。 鎧のメンテナンスをしてくれたことで感謝するはずの気持ちも記憶の彼方に消えたようだ。
「クイナ、1つ質問いいか?」
「構わないぞ。 1つと言わず、いくつだろうと」
「そうか・・・」
スリーサイズはいくつだ?なんてお約束な事はしない。 まぁ、アリアやエイシャさんのなら心揺れそうだが・・・。 トコトン貧乳好きであった。
「聞きたかったのは、チラッと周囲の声が聞こえたからだけど、俺達・・・いや、俺も英雄扱いなのか・・・?」
紅葉はキウイ様似の神扱いだし、アリアは同胞な上、エイシャ様と崇められるような存在の1人娘だ・・・。
しかし、俺は事実無根とはいえ敵対扱いで、クイナを犯すタイミングを見計らっているような警戒される存在だったはず・・・
「勿論、サトシ殿も含めてだ。 紅葉様やアリスの取りまとめが貴方なのは全ての民が知っている。 戦闘に前線で参加した者達から、貴方が指示していたこと、それと起点を作ったのも紛れもなく貴方の魔法だ。 それらを知り、感謝する事はあっても咎めるような者はここには居ないぞ。 村を代表して言おう。 村を救ってくれて、ありがとう。」
「そうか・・・悪い気持ちでは無いな・・・」
結果村を助けた事で、感謝されている・・・“ありがとう”の一言で全てが救われるようだ。 痛む体も盾を失なった事も・・・今はその言葉で満たされた心に倣おう・・・悲しみや苦しみは、またきっと訪れる。 それを乗り越えるのは、過去の幸せや未来へ望む幸せのはずだから。
若干子供向け映画にありがちな、ガキ大将が映画でだけ少し友情をかもすシーンで、視聴者が騙されるような雰囲気も無くはないが・・・俺はあのガキ大将みたくはならないようにしなきゃなと、心に誓った。
「はぁはぁ・・・クイン・・急ぎすぎだ。。。」
「遅いぞ、リュウ! 鍛え方が足らないんじゃないか?」
「お前の魔法込みの能力と比較するのは反則だろ・・はぁ・・はぁ・・・」
リュウと呼ばれた男のエルフが家へと息を切らしながら入ってきた。 クイン・・・と呼んでいたと言うことは・・・。 まぁ、深入りする必要はないか。
「あ・・・」
リュウと呼ばれた男のエルフと目が合い、相手が声を漏らしていた。
そう言えば見たことあるぞ、その風貌・・・あー、クイナの後ろで地面に指がめり込んでた人だ・・・
俺は身構え・・・ん?
あ・・・俺服着てないじゃん!
「クイン! 着替え中に飛び込むとは何やってるんだっ!?」
今頃股間を隠す俺に、リュウと呼ばれていたエルフは何度も頭を下げながらクイナを引っ張り出し、部屋の中は静まり返った・・・。
「堂々としたものね~って、感心したけど違ったのかしら~? ふふっ」
静寂を破るようにエイシャさんが、俺に話しかけてきた。
これ、絶対煽ってきてるよな!? 完全に笑ってるしっ!?
中肉中背な自分の姿に、自信などあるわけがない・・・ 心折りにきているとしか思えなかった。
「・・・ちが・・いますからっ!」
羞恥心と苛立ち混じりで、言葉を投げつけた後はすぐさま下着や鎧を身に付けるのだった。
ゴト・・・
建付けの悪い引き戸を開いて、中から顔を出した。
「もう、大丈夫です・・・」
「失礼しました・・・」
まだ挨拶すら終わってないが、妙にクイナよりも親近感がわくエルフだった。
クイナの方は頭を押さえているが、教育的指導でも入ったのだろう。 どちらが族長なのか分からなくなる・・・善き参謀あってということか?
部屋の中では改めて感謝と、クイナの旦那であるリュウの紹介を受けた。 数日前の洞窟生活を掘り返すつもりはなかったが、何度も繰り返し謝罪されるのも面倒になっていた。
「・・・過去はもう気にしていませんから。 それよりも何故慌ててこちらへ?」
堂々巡りの話を終わらせたかったのと、小さな小屋の中で紅葉やアリアは眠っている。 そんな状況で更に4人も入って話をしている。 早々に本題を終わらせて、ゆっくり休める空間を取り戻したかった。
「そうだった! 今、ホブゴブリンを追い払った祝勝会をやっているんだ。 サトシ殿も来ないかっ?」
うーん・・・堅苦しい話し方は苦手だし、クイナの軽い物言いは好印象ではあるんだがなぁ・・・あまりにも急に態度が変わるのは、どうにも気持ち悪かった。 善意なんだろうがなぁ・・・って、祝勝会か。 腹減ってるし、どうするかな・・・
俺は、眠り続ける紅葉とアリアを確認して、応えを決めた。
「俺は2人を見ているから・・・」
俺が言い終える前に、エイシャさんが被せるように話してきた。
「サトシさん、行ってきたら~? 多分、貴方達が主賓なんじゃな~い? 私はご飯要らないし、2人を見てるわ~。 起きて動けるようなら、向かわせれば良いわよね~?」
「おぉ! 助かるぞっ♪ でわ、行くぞっ!」
クイナは早速立ち上がって、部屋を出て行った。
リュウが申し訳なさそうに、謝りつつも主賓として参加して欲しいと頼まれてしまった。 腹も減っているし、2人には悪いが宴へ行ってみるか・・・
「それじゃあ、行ってきます。 エイシャさん、2人のことお願いしますね」
「は~い、任せなさ~いっ」
うん、すごく不安が残る気の抜けた返事だった。
【AI※少女】・・・体験版はやってましたが、中々に気に入りました。
採集ゲーは、アトリエシリーズがメインですがエロゲにこういう要素を入れてくるとは。
建築も出来るので、何のゲームかだんだん分からなくなってきてます。
好みのキャラクリをして、ゲーム内とクリエイト時のイメージとのギャップを更に修正して・・・プレイする前から数時間(笑)
オート操作で流し見できる物と違って、常時付きっきりの操作が必要なので【AI※少女】に時間泥棒されてます。
ゲーム評価みたら、すごい低いですね・・・自作強要やら介護等々・・・。
あー・・・特定方面の人にはすごい刺さるタイプのゲームなのは確かですかね。 まさかエロゲの釣りでアクション要素が盛り込まれてるのも中々。




