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22-7.夜明け(22日目?)

次々に仲間は倒れていく。 そんな中で残されたアリスは・・・

 ブシャッッッ!


 「グァアアアアアッッッ!」


 矢はホブゴブリンの手の甲を大きく抉り、深く刺さった矢は火を噴きその傷跡を焼いていた。 顔を隠していた手は大きく振られたけど、それでも火は消えず手を焼き続けている。


 「やったっ!? やったわっ!!」

 一矢報いる事が出来たが、ここで終わりじゃない! 気力も自信も体がはじけてしまうくらいに大きくなっている。 倒せる・・・私が倒す!


 痛みからなのか、その場にしゃがみ込みホブゴブリンは燃える矢を抜き取ろうとしていた。


 「させないっ!」

 すぐさま2射目を放つ・・・両手に燃える矢が刺さったが、ホブゴブリンは傷口から矢を抜き取る事に専念していた。


 隙を逃すようなクイナ姉達ではなかったわ。 残り2人となってしまっていたが、クイナ姉とリュウがしゃがみ込んだホブゴブリンを滅多切りにしていく・・・。

 毛が無くなったけど、深く剣で切り裂けないようで、浅い切り傷が腕や足に腹に増えていっても手に刺さった矢を抜き取っている。

 私は・・・次々に矢を放つが、狙っている頭や目は傷だらけの腕で防がれ続けた。


 すでに・・・ホブゴブリンは狩りの対象に見えている。 倒すのは時間の問題だろうけど、応戦しているクイナ姉やリュウが安全に戦える状況を作る事も私の役目なはず・・・。

 2射目を放つ前に、こちらを見据えていた事には気づいている。

 今は、動き回るクイナ姉達が結果的に足止めになってこちらに飛び込んできていないだけ・・・

 紅葉(もみじ)ちゃんの大穴を登ってきたり、棍棒を投げた力を考えればこちらに飛び込んでくる危険性は高いわ。 いくら弓が強くても・・・あれだけの巨体が向かってきたら私はひとたまりも無いわね・・・。

 ずっと指の隙間からずっとこちらを睨む眼光に、怯えは感じられない。


 (・・・脚ねっ!)

 動けなくするべきと考えて、守られた頭では無くクイナ姉達が狙っている脚を狙った。

 ホブゴブリンと対峙している状態から、走って横へと回り込んで速射ッッ!

 「これでどうよっ! ・・・はぁはぁ・・・」


 三か所に放った矢は、一本がホブゴブリンの脹脛(ふくらはぎ)に当たってその肉をそぎ落とし、吹き飛んだ肉を燃やしている。 二本目は太股に当たり、肉が抉れ骨に刺さった矢が火を噴き周囲を焼き始めている。 三本目は・・・腹を抉って、大量の血を吹き出させ、燃え盛る炎がジュウジュウと流れる血を蒸発させた。

 

 「アリスっ! お前がやったのか!?」


 火に包まれたホブゴブリンから離れ、クイナ姉が私の所へ走ってきた。

 「えぇ、私よっ! 驚いたでしょ!」

 魔法が使えたことや、村を襲った脅威を自分たちの手で撃退できた喜びで興奮している。


 「あぁ・・・これは弓の名手ってだけでは収まらないな・・・流石、エイシャ様が最強の弓使いだと言っていた訳が分かったぞ」


 「クインッ!!」


 リュウが叫んだ事で、ホブゴブリンへの警戒が解けていた事に気づいた。


 「えっ・・・?」

 クイナ姉と共に振り向くと、ホブゴブリンは決死の突撃をしてきたのではなく、川に向かって飛び込んでいた。


 大きな水飛沫を上げながら、燃えていたホブゴブリンが見えなくなった・・・


 数分間・・・誰も声を発せず、その場を動か無かったわ。

 ただ、地面に座り込んで呆然と時間が流れていた。


 空は白んできて、頭上に浮かぶ紅葉(もみじ)ちゃんの太陽がその役目を終えようとしている。


 「・・・や、やったのよね・・・?」

 最初に口を開いたのは私だったわ。 あと一歩で倒せそうだったけど、ホブゴブリンには逃げられてしまった。 誰もが追うことも、追撃を加えることも出来なかった。 自分も含めて・・・疲労困憊(ひろうこんぱい)で立っていることさえ出来なかったの。。。


 クイナ姉やリュウは、自分達が一番動いていたはずなのに、負傷した仲間の解放を子供達と行っている。 逃げずに・・・皆で村を守ったという証が輝く朝日と共に目に入った。


 「アリアちゃん、おつかれさま~♪」


 いつも通りの掴み所の無いママの声が聞こえてきた。

 振り向くと大きな葉っぱに包まれて、顔だけ出したままのサトシが目についたわ。

 「ママっ! サトシは大丈夫なのっ!?」


 「えぇ、大丈夫だと思うわ~。 紅葉(もみじ)ちゃんと一緒で寝てるだけよ~。 それより、アリアちゃんの方は眠かったりしないの~?」


 二人とも無事なようで、それを聞けて緊張がドッと解けていく・・・

 「私は、大丈夫よっ! ちょっと・・・まだ動けそうには無いけどね?」


 「運動不足よ~?」


 「ママまで、そんなこと言わないでよっ!?」

 疲れてはいる、でもそんなモノすべてを忘れられるくらい、憎かった相手に深手を負わせて先代の無念を晴らせたこと・・・先代が成し遂げられなかった事を、私達が乗り越えた・・・それらをやり遂げた満足感で胸がいっぱいだった。


 周囲に顔を向けると、幾人かは無念にも命を落としてしまったようだ・・・。 クイナ姉が、亡骸を一人ずつ葉で繰るんでいる・・・。 動ける者達で包まれた仲間を村の中へと運んでいる。 湖の畔に埋めるのだろう。。。 自然にと共に・・・。


 (ん? ・・・あの葉っぱってサトシの乗せられてたのと同じじゃ・・・?)


 葉っぱの一向に並んで行るママを慌てて引き留めて、一度家に戻るように言い聞かせた。。。

 (い、意外とまだ動けたようね・・・、でも・・・身体中が痛いわ。。。 今頃出てきたみたい・・・うぅ・・・)


 唸っていると、クイナ姉が肩を貸してくれた。

 「功労者がそんな風では示しがつかないな。 アリス、肩を貸すぞ」


 「ありがと、クイナ姉・・・私、落ちこぼれじゃないよね・・・?」


 「あぁ、村最強の弓使いだよ」


 「そっか・・・やった♪」

 仲間を失ってはいたが・・・皆、不思議と晴れ晴れとした顔をしている・・・。

 私も、ママの名前に恥じない自分に一歩近づけたんだと安堵したわ。

 そのままクイナ姉にママの家まで連れられ、帰宅となった。


 「ママ・・・ただいま。 疲れが急に出てきたみたい、お休みなさい・・・」


 「あらら、もう寝ちゃうの~? おやすみなさいアリアちゃん・・・本当に頑張ったわね・・・」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 所変わって、どこかの河原・・・



 「あれ? おねぇちゃん、あれって※※※じゃない?」


 「ん~・・・? 終わったのかな。 結構時間かかったのね」


 「なんかボロボロっぽいけど・・・?」


 「え? うわっ、何あれ・・・おっかしいなぁ・・・?」


 「ボロボロみたいだけど、どうするの?」


 「あ~・・・処分で良くない?」


 「そっか~」


 「※※※、行って来てくれる?」


 「しょうがないなぁ~・・・」



 グシャッ・・・



 「ただいま~・・・はやくからだあらいたいよ~・・・」


 「失敗したみたいだし、帰ろっか」


 「うんっ、かえろー!」



 再び河原には静寂が戻っていった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

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