表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/109

22-6.弓とアリス(22日目?)

強すぎるゴブリンの一撃は、空へと逃げる事で何とか乗りきったが・・・

 目を閉じていても肌に感じる風は凄まじい。 ビアンカさんの背中に乗って大木を飛び降りた時が如何に慈愛に満ちていたかを今頃になって感じている。

 (あの時は泣き言ばかりで、ごめんなさい・・・)

 あー・・・足が地面に付いてなくて、フラフラする・・・


 「もうすぐ着くよーっ!」


 暴風の中で、声がはっきりと聞こえた。

 紅葉(もみじ)の魔法に命運を託して、更に強く目を閉じた。


 ブワッ


 足が柔らかな何かに触れたと思ったら、下半身が包まれ急速に肌に感じていた下降風が弱くなり・・・


 「無事着地できたよっ♪」


 腕の中のモフモフが元気に声を上げた。

 足場はしっかりしている・・・ゆっくりと目を開くと、地面に立っている! 地面に無事に戻ってこれたっ!

 「紅葉(もみじ)、ありがとなっ! 本当に助かった!」


 「お、おかえり・・・でいいのかしら?」


 「お、おう! アリア、ただいまっ!」


 「やけに元気ね・・・まぁ、足プルプルしてるわよ?」


 近寄ってきたアリアと視線がどうも同じで不思議だったが、生まれたての小鹿のごとく足に力が入っていないようだった。


 「来たぞっ!」


 ドドドドドッ


 「っ!?」

 地響きのような振動と音が、落とし穴から響いて来た。

 「紅葉(もみじ)! すぐに落とし穴をふさいでくれっ!」


 落とし穴の真上に大きな岩が現れ、落ちていくが・・・


 ガンッ! ガラガラ・・・パラパラ・・・ ドンッ!


 拳1つで穴を塞ぐような大岩が砕かれ、そのまま穴からホブゴブリンが外に出てしまった。 その拳からはダラダラと血が流れているが、致命傷は与えられていないようだ。

 「・・・マ、マジかよ・・・。 どうやって倒せって言うんだよっ!?」


 「だから・・・逃げろと言ったんだ・・・。 奴に傷を負わせただけでも、称賛に値する。。 それほどの相手なんだ・・・」


 穴を警戒し続けていたクイナが、無念を漏らした。

 ホブゴブリンの棍棒は、地面に刺さったままだが素手であの驚異だ。 鬼に金棒とは良く言ったものだな・・・これは木製っぽいが。。


 「くそっ! 何か無いのかっ!」

 ここまで戦い始めてしまった俺に、今頃逃げるなんて考えられなかった。


 敵は血に濡れた拳を不気味にくねる長い舌で舐めている・・・俺達を殺すのなんて容易いと言わんばかりに、念入りに・・・ゆっくりと。

 そして、その目が俺の抱き続ける紅葉(もみじ)を見つけた時、空気感が変わった。 目には見えないが、オーラとでも言うのだろうか・・・強烈な威圧が俺を襲った。


 「紅葉(もみじ)・・・完全に俺達が標的になってるな・・・」


 「だよね・・・うーん、アリスッ! たすけてっ!」


 ヒュンッ!


 示し合わせていたかのように後方から、矢は放たれた。 1本ではなく、2本、3本と飛び交う数が増えていく。 他のエルフも応戦してくれているようだった。

 だが・・・予想通り全ての矢弾かれ・・・いや、1本だけ通っている!?

 胸や頭、足や腕に当たった矢はすべて弾かれたが、弓なりにヒョロヒョロと飛んでいった矢だけが、鼻先に刺さっていた。

 (どういうことだ・・・?)


 「紅葉(もみじ)、アリアッ! あいつの顔を狙ってくれ!」


 火の槍や矢が、ホブゴブリンの顔面へ向かっていったが・・・奴はそれを手で受け止めていた。

 (顔が弱点ってことか? あの防御力は顔だけ無いも言うこと・・・か?)


 「そのまま続けてくれっ!」

 俺はホブゴブリンの弱点を探るために正面から横へ回り込んで、穴が空くほど注視した。

 ほぼ全身が黒い毛で覆われたホブゴブリンには、火も矢もクイナ達の剣すらも弾いて攻撃が通らない。 むき出しの顔の一部を除いて・・・


 弱点は・・・毛の無いところかっ!


 「って、ほとんどねーじゃねーかっ!?」


 「ど、どうしたの? このまま続けてて良いの? だんだん・・・疲れてきたかも。。」

 俺の嘆きに腕の中の紅葉(もみじ)が反応したが、あまり時間は残されていないようだ。 攻撃の要の紅葉(もみじ)の魔力が尽きたら終わりだ・・・

 な、何か無いか!? 何か無いのかっ!?


 毛・・・毛・・・


 っ!? 毛根あるか!? 一か八かやるしかないっ!!

 「紅葉(もみじ)っ! 一旦魔法は止めて、俺が言うまで温存だっ! 俺に考えがある・・・ここで待っていてくれ」


 「うんっ、ちゃんと戻って来てよっ?」


 「あぁ! 他のエルフは攻撃を続けててくれっ!」


 紅葉(もみじ)にアリア、エイシャさんを置いて、最前線へ向かった。

 ホブゴブリンになぶり殺される覚悟のクイナに声を掛けておく。 成功させる可能性を上げるための支援を頼んだのだ。


 俺の魔法が通用するかは分からない・・・だが、紅葉(もみじ)の魔法が通用しない時点で俺達の攻撃はかすり傷すら与えられない・・・。

 毛の無い顔の一部を除いて・・・


 ホブゴブリンは俺を見てはいなかった。 その視線は、最大戦力の紅葉(もみじ)を捉えたままだ。


 「クイナ・・・俺が奴に触れて魔法を使う。 効果があるかは賭けだが、残された俺達で出来ることで唯一試す価値がある・・・」


 「盾になれば良いのか?」


 「いや、全員で生き残りたい。 俺が奴に触れる隙さえ作れればいい。 そのまま静かに構えていてくれ」

 それだけ伝えて俺は大回りでホブゴブリンの背後に回っていった。


 エルフ達の的確に顔を狙った矢の雨が、ホブゴブリンを抑えているがダメージは与えれていないようだ。 それ以上に、少しずつ奴は紅葉(もみじ)を目指して前に進んでいる。

 倣うようにエルフと紅葉(もみじ)も下がっているが、このまま下がり続ける訳にはいかない。 森の通路は狭く迎え撃つには最適だったが、襲われ追い詰められると逃げ場が無い。。 刻々と戦況は悪化していく。


 ザリ・・・ザリッ・・・


 極力足音を抑えつつ、背後に近づいていく。 俺の接近に合わせるかのように、クイナ達が紅葉(もみじ)とホブゴブリンの間に割り込んで、決死の号令を上げている。 自殺行為にも程があった。

 (くそっ、動くなと言ったのに・・・いや、チャンスか・・・)


 足音と怒号が飛び交い、戦場はめちゃくちゃになっていく。

 (行くしかないっ!)


 なりふり構わず、手でさえ触れればいい。

 棍棒を避けた時のように、ホブゴブリンに俺は飛び込んだ!


 毛の少ない(かかと)に触れた瞬間に魔法を発動させた。

 俺のムダ毛処理が簡単に出来たアレだ・・・

 今までは触れた所だけ毛穴拡張させていたが、今回は違う。 手が触れた相手の全身脱毛をイメージし、全身の毛穴と言う毛穴を拡張させるっ!

 「紅葉(もみじ)ッ! 今だッ!」


 俺の叫びに反応したホブゴブリンの踵が、目の前に迫って来たが右手を離す事は出来ない。 ギリギリまで、魔法を放ち続けて効果を高めなければ・・・


 背後のゴミを蹴り払うようにホブゴブリンは足を後ろに蹴り上げ、左手で構えた盾に激突したッッッ


 「ぐぁぁはッ!?」


 何の事は無い、ただの蹴り上げ・・・その衝撃で左腕が後方に飛ばされ、俺もそれにつられて宙を舞った。

 飛ばされて木に激突し、空中浮遊は終わったが背中から腰にかけて激痛が走る。 夕食の肉と共に口に溜まった血を吐き出すと、弾かれるように地面に叩きつけられた。

 (左腕は・・・まだあるか。。。)

 激痛と共に呼吸が出来ないくらいに、胸が苦しい・・・。 左腕はあっても、動かせるだけの余裕も無かった。 だが・・・まだ意識は保っていた。


 ボヤけた目を凝らして、地面に転がったまま前を見据えると・・・

 川からだろうか? 俺の後方から水の竜と虎がホブゴブリンに食らい付くようにぶつかり、その身を洗い流していた。 ホブゴブリンの黒く覆われていた姿は、ゴブリンらしい緑黒い肌へと変わっている。

 一瞬の事だったが雄々しい虎では無かった、あれは紛れもない手に乗るタイガーだった。 アニメから・・・色々学んだんだな・・・

 しばし、戦場の恐怖を忘れさせる可愛さもあったが、戦いは始まったばかりだ。


 応戦するクイナ達の攻撃も、ホブゴブリンには通っているようだ。 矢が刺さり、剣で切り裂かれ血を流している。 だが、奴の攻撃は尋常じゃなく、俺と同じように飛ばされて、倒れたままのエルフが次第に増えていた。


 俺はもう立ち上がれそうにはない。

 紅葉(もみじ)も川の水を利用して、効率化はしたようだが攻撃する余力は無いようだ。 遠くでエイシャさんと思われる姿がこちらに向かっていた。


 残されたのは、僅かな前衛とエルフの弓使い達・・・

 ギリギリで避け続けるクイナを筆頭に、付き人も懸命に攻撃を当てている。

 ホブゴブリンは身体中から血を流しているが、タフさも凄まじいようだ・・・。


 1手が・・・後、1手が足りなかった。

 俺の意識はここで遂に途切れてしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「サトシっ!?」

 吹き飛ばされて空を舞う彼を見て、私は駆け寄りたい気持ちに流されてしまいそうだった。

 いつもなら、ママの腕なんか払いのけてでも真っ先に駆けていくはずの紅葉(もみじ)ちゃんがホブゴブリンを睨み、魔法を使っている・・・

 サトシの狙い通りホブゴブリンの肌は晒されて、クイナ姉やリュウの脚を狙った攻撃もダメージを与えていた。 自分の放つ矢も、仲間の矢も敵に次々と刺さっていく・・・


 「アリスっ! わたしは・・・もう・・眠くなってきたの。。 お願いねっ!」


 紅葉(もみじ)ちゃんは、力強く私にそれだけ言うとペタンとママの腕の中で眠りについてしまった。

 ホブゴブリンに絡み付いていた荒々しい水は力を失ったように地面に降り注ぎ、クイナ姉達もろとも濡らしていたが、太陽のように輝き続ける明かりだけは浮かび続けている。

 考えながらも絶やさず放つ矢の数々はダメージを与えていてもかすり傷にしかなっていない。 進行を必死に止めているクイナ姉達の数も減り続けて、避けきれなくなってきている・・・。


 「ママ・・・どうしよう。。。」

 不死身だとしても、魔法の使えないママに相談したって・・・無駄だと頭で考えていても、生まれた頃からずっと村の最強であり続けたママのことを心が頼っていた。 ママ・・・怖いよ・・・っ


 「・・・アリアちゃん・・・、あなたは自分に魔法が使えないって泣いてたわよね・・・」


 「・・・そうよっ! それが今、どうだって言うのよっ!? サトシも紅葉(もみじ)ちゃんも倒れちゃったのっ! そんな私に何が出来るって言うのよっ! 守れないし・・・助けることも出来ないっ・・・」

 溢れ始めた涙は、やがて決壊してポロポロとこぼれて、止めることは出来そうになかった。 繋いでくれた二人に、私は何もできていないわ・・・私の矢は刺さっても、それだけ・・・

 ホブゴブリンの脚を止めることも出来やしない。。

 目や顔は狙ってるけど、手で守られ続けている。 ホブゴブリンの片手で、もう何人もの仲間が動けなくなっている。 追い詰めているのは私達じゃない・・・長引く程にこちらが不利になっていく・・・それが明白だった。


 「あなたに魔法はあるわっ!」


 感情的に怒鳴り散らす私を、ママの一言が打ち消した。

 「ど、どう言うことなのっ!?」

 打ち続けるべき矢さえ止めて、私はママの肩に掴みかかっていた。

 ここで死ぬかも知れない・・・それはもう受け入れているわ。 ただ・・・繋いでくれた想いに、自分でも応えられたと思えるだけの結果を・・・いいえ、自己満足が欲しいの!

 “役立たずじゃ無いわよ!”って、胸を張って散りたかった。 命尽きた後で会える何て思わないけど、それでも・・・


 「アリアちゃんは、知らなかっただけ。 それに弓を嫌ってただけ・・・今ならきっと」


 「だから、なんなのっ!?」

 急いでいる。

 いつも通りの回りくどい言葉なんて要らない。 結論だけを求めた。


 「矢は・・・魔法よ!」


 「・・・? 何を言っているの?」

 理解ができなかった。

 矢が魔法・・・?


 弓を引けば矢が放てる・・・それはエルフの誰一人として同じだった。 ママだって・・・パパだって・・・そして村の誰だって。 魔法が使えないから落ちこぼれだったわ。 うちは魔法が使えない家系だったから、狩りしか出来なかった。 誰でも出来ることを、仕事に選ぶしかなかったの・・・

 矢が魔法なら・・・私にも魔法が使えたって喜ぶ事なんて出来ない。 結局誰にも出きることが、唯一私に出来る魔法だったと。。。


 「それがどうしたって言うのよっ・・・! 誰だって使ってる! 誰にでも使える魔法があったって、今の状況なんて変えられないわっ!」

 冷静にはなれなかった。 希望は砕かれていたのだから。

 一瞬でも戦況を変えれるだけの奇跡が私にも・・・そう願い続けた自分がバカだった。。。


 「イメージが魔法よ・・・、代々ラピス家は弓を扱って来たわよね? 貴方だけよ、弓を嫌っていたのは。 パパは、弓を大切にしていたわ」


 「弓なんてっ! 獣を狩る道具でしか無いじゃないっ! クイナ姉のような力も出せない、ホブゴブリンを倒す力なんか弓にはないっ!」


 「私達は、外の世界を知らな過ぎただけ、矢は魔法よ! アリアちゃんは、誰の娘だと思っているの!? 私でしょ!? 村で最強だった私よっ! あなたに何も引き継いで無いなんて、考えられないわっ! 自分を信じなさいっ! もう一度・・・。 いいえ、弓に想いを託しなさいっ! 守りたいんでしょ!? 助けたいんでしょ!? なら・・・全力で魔法を使ってみなさい! 私はサトシさんを運ぶから、アリアちゃんは私の娘として信じて戦いなさいっ!」


 それだけ言うと、ママは大回りでサトシの方へ向かっていった。

 「好き放題言ってばっかり・・・もぅ・・なによっ!」

 ゴシゴシと涙で濡れた顔を拭いて、ホブゴブリンを見据えた。


 大きく息を吸って、左手で弓ホブゴブリンへ向けた。

 右手で(つる)をグッと引き絞る・・・。

 引き絞った弦と右手から、弓へと一筋の光が伸びていく。 これが矢だ。 弦を引けば現れる物・・・今までは、そんな風に特に悩むこと無く、狙いを定めて右手の弦を離すだけだった。

 (・・・ねぇ! あなたに何が出来るの? 紅葉(もみじ)ちゃんのような炎や水になれるの? お願い・・・ホブゴブリンに傷を与えれるだけの火に・・・!)


 矢から光の粒が一つ飛び出して、ふよふよと矢の先端に飛んでいったように見えた・・・。

 見えたと言うのは、今は何の変化も無く消えてしまったからだ。 こんな事は始めてだった。 無意識に使い続けていたから、もし出ていても気づかなかっただけかも。。

 (ねぇ! 私に力を貸してッッ!)

 右手を離す瞬間、矢が光った気がしたけど・・・


 いつも通り、矢はホブゴブリンに向かって一直線で飛んでいく・・・

 狙ったのは、その目。

 手の甲で堅牢にに守られていて、一矢もたどり着くことが出来なかった場所・・・そこに向かって、衰えること無く私の矢は飛んでいった。

そう言えば、Youtubeに最近UPされた動画で「千草はなでどぅーまいべすと!(1080pの方)」を見てたら、気分乗ってきますね! いやぁ、自分がロリコン以外の何者でもないのが良く分かりますね。ハイ

そして、どぅーまいべすと!は、ボカロの音街ウナ曲ですが、中の人(干妹うまるちゃんの人)が歌ってるverもあるので素晴らしい♪


こんにゃくさんの、MMDモデルは花騎士愛も感じる上、エノコログサも可愛くて良いですよね。

久々にMMD触ろうかと思ったら、新作の千草はなモデルは、著作権関係のトラブルが起きてて対応準備が整うまで、ダウンロード停止状態に・・・。 まぁ、待ちます。 可愛いですしねっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ