20-2.豪華(?)な夕飯(20日目)
石臼は出来たが、紅葉は晩御飯前に眠ってしまった。
アリアとの時間が・・・始まる?
「紅葉ちゃんどうかしたの?」
外に出ると、すぐさまアリアが声を掛けてきた。
「う~ん・・・魔法を使わせちゃったからっぽいけど、そんなに難しい魔法じゃないはずなんだけどなぁ・・・」
「村に居る間にいっぱい使ってたし、回復が間に合って無かったんじゃないかしら?」
「そう言えば、クイナ達に色々やってたよな・・・」
爆発音や振動が記憶から蘇る。 魔法の酷使が起きていたのだろう、使うのは一瞬でも回復は大変という事か。
回復手段として、完熟のペアーチをもっと探さなきゃな。 普通のペアーチは大量に集めたが、あの時手に入れた物と同じような物は一つとして残っていなかった。
「服あったみたいだね。 やっぱりアリアはそれが似合うよ」
2日ぶりに見たアリアが纏う水色のセーラー服は、輝いて見えた。 やっぱりスレンダーな見た目は良い。 主張の少ない胸は、幼さを感じさせる見た目と合っている。 透き通るような白い肌と薄い水色やプラチナブロンドは淡い儚さを持ちつつも、キラキラと輝き不思議と優雅さも感じる。 丈の短いスカートから覗く太股もスラリと伸びた足の曲線も、すべてが芸術作品のようだ。 眺め続けていたフィギュアやMMDモデルが存在しているようだ。
この世界は、オタクの楽園だ・・・俺は妄想全開だった。
「そう? ありがと。 置き忘れた野菜は残ってなかったけど、また取り直してきたわよ♪」
「・・・お、色々あるね! 遅くなったわけか・・・一度帰ってこればよかったのに。 心配したぞ?」
妄想から戻って来て、アリアから袋へと目を向けた。
「戻ってからじゃ、遠いから効率悪いのよ?」
「なら今度は一緒に行こう。 心配だよ・・・」
「もう・・・過保護なんだから・・・」
アリアには呆れられているようだが、心配だし寂しい。 紅葉もアリアも居る事が今の生活だし、どちらも失いたくなかった。
「すまない・・・」
「い、嫌がってる訳じゃないからね? 一緒に行けるのは嬉しいから! そんな顔しないでよっ・・・もぅ」
「・・・表情に出てたか・・・?」
「思いっきり出てるわね・・・。 ほんと、サトシはもの好きよね?」
「そうか? アリアは可愛いし綺麗だと思うぞ?」
アリアは謙遜しているようなので、本心のまま伝えた。
「クイナ姉よりも私を選んだ時は、ちょっと信じられなかったけどね。 でも、私を選んでくれて本当に嬉しいわ・・・ありがとう」
「な、なんだよ、改まって・・・これでお別れとか・・・無いよな?」
「そんな訳ないでしょ! ねぇ、サトシの好みは私?」
「あぁ、アリアは俺の好みの中心って感じだな。 だから倒れてるの見つけた時、その時点で一目惚れだったと思うよ」
「傷だらけの私を見て、そう思ったなら・・・素直に喜べない感じだわ。。。」
「ちょっ!? アリアを傷つけたい趣味は無いからな?」
「そんなの分かってるわよっ♪ ふふっ」
悪戯っぽくアリアは笑っていた。 それを見た俺も笑顔になっている。
心が温かくなって、気心が知れた仲を築けているのが良く分かる。
居心地がいい。
自然体で居られる・・・互いにいじり合う事もあるけど、嫌な感情ではなく温かい物が後に残る。 一緒に居られる事が宝とそう思える存在・・・これが求めていた結婚相手なのかな・・・。
愛称で無く、名前を呼んだ時に覚悟はしている。 その選択は間違っていない、このまま幸せになれるはずだ。
アリア・・・
キュゥゥ―――・・・
・・・
アリアが顔を真っ赤にしている。 視線が合ったところで、さらに赤くなっていく。。。
俺がどうしようかあたふたしていると。
「な、何か言いなさいよ。。。」
ぷるぷると震えながら消え入りそうな声で、アリアが言ってきた。
「か、可愛い音だったね」
「その事はもう忘れてよ・・・」
恥ずかしがっているアリアは可愛いが、正直腹の音なんて気にする事ないと思っていた。 何もなかった事として、話を変えれば正解だったのだろう。 難しい・・・そして少し面倒臭く感じてしまった。
「何があるかな~・・・?」
アリアを置いて、袋の中を確認した。
じゃがいも20個、玉ねぎ15個、ニンジン10本、大根2本、白菜2株・・・中々の収穫だった。
「ん? 袋の中にまだ何かあったか・・・?」
袋を持ち上げると、中にはもう一つ小さな袋が入っていて、茶色っぽい物が若干透けて見えていた。
「白菜と大根以外にも、新しい食材見つけてきたのよ♪」
取り出してみるとそれは・・・
「立派なしいたけだな・・・!」
一つ手に取ると、しっとりとしていて瑞々しく採れたての証拠だろう。
そして香りもすごい・・・木々の中に居るような芳醇な香りが鼻腔をくすぐる・・・
しっかりとした太い軸に、開ききっていない分厚い傘・・・そんなしいたけが7つ入っていた。
「アリア・・・早速食べても良いか?」
「私にも分けてよね・・・?」
焼きしいたけしかない! 幼少期には苦手だったが、今では好物の一つとなった焼きしいたけ。 こんなにも新鮮で上等なしいたけは中々食べられない。 乾燥してしまう前に、美味しく頂こう・・・
かまどに火をおこし、熾火になるのを待つ。
その間にしいたけの石突を切っておく。 ここだけは硬くて食べづらいし、木の皮もくっ付いていたりする。 軸は傘とは違った食感を楽しめるので、しっかり残している。
「アリア、俺の好きな食べ方で作っちゃって良いよな・・・?」
「準備してからそれ言うの? 良いわよ、サトシの好きな物食べ方なら楽しみだし、期待してるわ」
「ありがとな」
「美味しく無かったら怒るわよ?」
アリアからはプレッシャーを受けたが、どうもアリア達もしいたけを焼いて食べているようなので、抵抗は全く無いらしい。 ただ、棒に刺して焼いているようだが・・・
かまどの火が弱くなり、熾火になってきたので金網を置いて、傘を下にしてしいたけをあぶっていく・・・。
香ばしい匂いが広がって、食欲をそそられる。
少し待っていると、1つのしいたけのヒダから汗をかいた様に雫が出てきた。
次第に他のしいたけからも、雫が生まれてきた。 一滴・・・二滴・・・そろそろ食べごろだろうか。
ヒダに醤油を垂らすと、雫と醤油が踊るようにヒダの上を転がっていく。
「アリア、そろそろ食べごろだ」
「もう? どうやって食べればいいの?」
「それじゃ、先に食べるところを見てて」
網の上からしいたけの軸を持って、雫をヒダから溢さない様に口に運ぶ。
カプッ
プリプリとした肉厚の傘は、咀嚼の度に口の中に旨味と醤油の香ばしさが広がっていく・・・
軸は傘と違い、シャキシャキとした歯切れの良い繊維質をしている。
そのどちらも、しっかりと熱が通っていて、瑞々しさの中に旨味が閉じ込められていた。
「アリアも食べてみて。 すごくおいしいよ」
「うん、頂くわ・・・。 ・・・っ!?」
恐る恐るしいたけを口に運ぶアリアの表情にパッと花が咲いた。
「口に合ったみたいだな。 良かった良かった♪」
「焼いただけなのにどうしてかしら・・・。 もぐもぐ・・・」
そう言いつつ、アリアは2個目に手を伸ばして・・・って、一口で頬張っている。
「俺も貰うぞ?」
このままだと俺の分が無くなりそうだったので、2個目を頬張った。
キノコもあるのなら、干しシイタケも作れそうだな・・・だが、こんなにも新鮮で美味しいなら干すのを躊躇ってしまいそうだが・・・。
寝ている紅葉には悪いが、焼きしいたけはアリアと二人で食べきってしまった。
「ふ~ 美味しかったわ♪ また取って来なきゃね」
「半数以上、アリアが食べちゃったけどね・・・」
ちょっとしょんぼりしつつも、アリアの幸せそうな顔が見れたなら、その方が俺には幸せだった。
「さて、今日の晩御飯は何を作ろうかな。 アリアはまだまだお腹空いてるよね?」
「えぇ、しいたけ美味しかったけど、お腹が満たされる程では無いわね」
キノコはヘルシーだし、そりゃそうか。 ポトフ以外の料理を作ってみるべきか。
「アリアはじゃがいも好き? ポトフですごく気に入っていたみたいだけど」
「そんなに好きって程じゃなかったのだけど、ポトフは美味しかったわ♪ また作ってくれるの?」
待ってました!とばかりに、目を輝かせている・・・ポトフを作るべきだろうか?
「ん~ ポトフも良いんだけど、肉じゃがを作ってみようかとね」
「お肉とじゃがいもなの?」
「うん、肉とじゃがいも、玉ねぎをメインに、にんじん入れて・・・まぁ、作ってみるよ。 もしもの為にポトフも準備しておこうかな」
野菜メインでとてもヘルシーな食事なのは致し方ない。 早く穀物を確保したいところだ・・・。
「私にも手伝える事ある?」
「それじゃ、じゃがいもとにんじん洗ってきて、準備にちょっと時間がかかるから待たせちゃうけどね」
「はーい。 水はタンクの中の使えば良いのかしら?」
「あー・・・ちょっと待ってて、バケツに水組んでくるよ」
紅葉が浴槽に貯めた水がたくさんあるが、飲み水として使うのは抵抗があったから洗い様に活用させてもらう事に・・・。
浴槽からバケツで水を汲み、アリアへ渡しておいた。
「さて・・・肉の準備からするか」
薄切りの肉を作るべく、包丁を使ってみたが・・・ボロボロの肉が生まれた。
比較的薄くは出来たが、一つ一つが小さく、これは火を通したらシーチキンの様になるのでは?と思えてきたので、後半は厚くなってしまっても、細切れ肉レベルのサイズ感を目指した。
薄切り肉は半冷凍できない現状は不可能だった。 ステーキか、スライスした焼肉か、ミンチが現状の加工方法かな・・・
ボールにボロボロの肉を入れて、酒をかけて軽く揉んで漬け込んでおく。 焼肉の時点で臭みが無かったから大丈夫だとは思うが、念のために・・・だ。 あまり使って無かったから料理用の日本酒が残っているが、1.5Lしかないので、この使い方はもうできないな・・・。 肉の臭み消しも考えねば。。
ポトフは前回同様に、まるごとのじゃがいもや、1/4に切った程度の玉ねぎと乱切りのニンジンをダッチオーブンに入れて、少量の水で蒸し焼きにしておく。 電子レンジが使えれば時短調理もできるが、すでに日は傾いているので日中しか使えない事を考えると厳しい。
煮込み続けられるポトフと違って、肉じゃがにはすこし下ごしらえをしておくか。
鍋にじゃがいもを8個入れ浸かるまで水を入れ、かまどに置いておく。 煮崩れしにくいとかメリットもあるが、自分が丸ごとのゴロゴロとしたじゃがいもが好きだからって意味合いが強い作業をこなす。
直火で使うのでメンテしやすい中華鍋を使って、酒に漬け込んだ肉を軽く炒める。 ジュッと音共に、アルコールが蒸発していく・・・うむ、吸い込み続けたら酔いそうだ。 漬け込んだ酒はもちろん捨てた。
肉は一旦皿に退けて、続いて玉ねぎとニンジンを中華鍋で炒めていく。 中華鍋だと鍋を振って具材を踊らせていると料理人な感じがしてきて面白くなって、無暗に振り続けてしまい・・・。
「面白い調理なのね。 火から離して混ぜてどんな意味があるのかしら・・・?」
「き、均一に熱を通す為だったり、くっ付いた野菜が離れるように空気を含ませるって感じかな・・・ あはは・・・」
調子に乗って鍋を振る事に集中してしまったようだ。 完全に火から離れていた・・・。 アリアは気にする事無く、感嘆を上げていたが、内心は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
沸騰しているじゃがいも鍋のお湯を捨てて、鍋に炒めた野菜を軽く敷き詰め、その上に改めて茹でたじゃがいもその隙間を埋めるように野菜を入れて、更に生の追い玉ねぎを乗せておく。 玉ねぎの甘さも大切だが、食感が少し残った玉ねぎも重要だと思っているからの追い玉だ。
砂糖とみりん、酒を計量カップ内で適当に混ぜる・・・指で舐めつつ薄いかな?と思える程度の味付けにしておく。 鍋の中に注ぐと液面は見えてこないがべちゃべちゃなのも嫌なのでこの程度で良いだろう。
落し蓋をして、更に鍋の蓋もして遠火に置いておく・・・
「ポトフの方は大丈夫かな・・・?」
ダッチオーブンの持ち手は熱くなっていたので、タオルで掴んで持ち上げると、真っ白な熱い蒸気が立ち上った。 焦げ付きは・・・無さそうだった。 鍋底には僅かな水分が残っており、焦げるのを防いでいた。
もう少し遅かったら玉ねぎが黒くなっていたかもな・・・水をたっぷりと入れると香ばしい玉ねぎの香りが広がった。 水面に茶色くなった玉ねぎが浮かんできたので、やはりギリギリだったようだ。
コンソメを溶かして、こちらにも焼いたブロック肉を入れておく。
後は煮立ったら一度火から離して冷ませば味が染みるだろう。
「ねぇ、まだかかるのかしら?」
「ご飯のこと? う~ん、もう30分くらいはかかるかな。 ごめんな」
「ううん、大丈夫よ。 ちょっと紅葉ちゃんの事見て来るわね」
「あ、そうだ。 ペアーチ摩り下ろして紅葉に食べさせてくれないか?」
「えぇ、まかせて」
その後、アリアはおろし金を持って来たので使い方をレクチャーしておいた。 これでアリアに頼める仕事が一つ増えた。
肉じゃが用の鍋の蓋を取ると、ぐつぐつと煮汁が煮立っていた。
醤油を回し入れて、煮汁の味を確認しながら量を調整し、ひと煮立ちしたところで、蓋と落し蓋を外して煮汁を蒸発させていく・・・
甘辛い醤油の香りが広がっていく。
じゃがいもの表面は、醤油で僅かに茶色く染まっている。 味の染みたじゃがいもを頬張るのが楽しみだ。
煮汁が減ってきたのを確認し、下味が回るように改めて鍋を揺すって一度冷ます。
アリアが戻って来る頃に温め直せば味が更に染みるだろう。
煮込み続けたポトフも味見しつつ、塩加減を調整し完成だ。
「アリアは、まだ紅葉を見てるのかな・・・? 呼びに行くか」
玄関を開けて、部屋に入るとアリアと紅葉が驚いていた。
紅葉に至っては飛び上がっているほどだ。
「サ、サトシおはよう!」
「あ、あら・・・どうしたのかしら?」
「ん? あぁ、ご飯の準備が出来たから呼びに来たんだよ。 紅葉体は大丈夫?」
「もう大丈夫だよっ! さっきの続きも手伝えるよ」
「う~ん、今日はゆっくり休んでて。 明日も元気そうだったら、その時にね?」
「はーい。 それより、今日の晩御飯は何? いつもと違う!」
「ふふふ・・・紅葉とアリアの口に合えばいいけどね」
三人で揃って部屋を出てかまどへ向かった。
鍋が無くなっているとかそんな問題は無かったが、エイシャさんは一向に姿を見せてはいなかった。 鍋を温め直しつつ会話をふった。
「エイシャさん、まだ戻って来てないみたいだな・・・」
「だねー」
「ママは、村にまだ居ると思うわ。 あぁ見えて、種族の繁栄を願ってる人だから・・・キウィ様が姿を隠されてからは特に顕著だったわ・・・」
「そうだったのか・・・」
エイシャさんがクイナ達と何かあるような気配はしたが、そんな願いを持っている人だったとは・・・。 自由奔放に見えても、違う側面を持っていたんだな。。。
「まぁ、エイシャさんはひとまず置いといて、今日の晩御飯を紹介しようかな」
温まった肉じゃがを取り皿に分けていく・・・。
大きなじゃがいもがそれぞれの皿の上にドーンと乗っていて、煮溶け味の染みた玉ねぎと、形を留めた玉ねぎとニンジン、不揃いな肉達で取り囲むように盛っていく。 見た目はあれだが・・・
「わぁー・・・♪」
「良いにおいっ!」
アリアも紅葉も一先ずは喜んでいるようだった。
アリアは俺と同じようにじゃがいもが好きなのだろう。 ひと際大きなじゃがいもの乗った皿を取っている。 紅葉は肉の多めの皿を、俺は残った皿を手にした。
「それじゃ、食べようか」
「いただきまーすっ♪」
「いただきます」
まずは玉ねぎを口に入れると、とろりとした甘辛さが広がった。 砂糖と醤油の甘さの中に玉ねぎの甘さも感じられる。 後入れの玉ねぎも半透明で茶色く染まり、食感を残していて味の違いが出ている。 ニンジンも柔らかく癖のない味で、肉の獣臭さも感じない。 酒に漬けたのが効いたのか元々臭くないだけなのかは置いといて、肉の旨味も野菜に馴染んでコクを出していた。
メインは・・・じゃがいもだ。 箸で割ると表面はしっかり味が染みているが、まだ中までは浸透していない。 何度か温めて冷ますを繰り返す必要がありそうだった。 だが・・・ホクホクしたじゃがいもに野菜や肉の旨味が絡まっており、玉ねぎや肉を絡めて食べると旨い・・・!
米が・・・米が欲しい・・・。
冷静になったところで、二人に目を向けた。
アリアは大きなじゃがいもを食べきってしまったようだ。 まだ容器に肉じゃが(じゃがいも無し)は残っているが、物欲しそうにこちらを見ている・・・。
紅葉は肉を食べきっているようだ。 まだ、じゃがいもは半分以上残っているようだが嬉しそうに食べている。
「二人とも味はどう・・・?」
「美味しいよっ♪ 今回のお肉は甘くて、しょっぱくて美味しいっ もう無くなっちゃったけど・・・」
「ポトフとは違った、美味しさだわ。 薄味が多かったからかしら・・・こういうのも良いわね」
「そっか。 作った甲斐があったよ♪ それはそうと、二人の好きな物違うみたいだし、交換し合ったら?」
「っ!」
紅葉達が顔を見合わせて、すぐにじゃがいもと肉を交換し合っていた。 全部美味しく食べてもらいたいけど、お互いがより幸せになれるならこういうのも良いだろう。 二人ともペロリと食べきってしまった。
「ポトフもあるけど、もっと味が染みてからの方が美味しいかもな。 肉じゃがも染みたらもっと美味しいと思うよ?」
・・・
「お肉焼いて食べたいな。 ねっ? アリス!」
「そうね、もっと美味しいって言われたら我慢ね!」
アリアに紅葉が飛びついていた。 二人とも味が染みた状態を期待してくれているなら、冷めたら小まめに温めようと決めた。
食欲がまだまだ有り余っている二人の為に、肉を追加して焼肉開始だ!
「いつものお肉もやっぱり美味しい~♪」
「お肉も良いけど、私はお野菜の方が好きだわ♪」
「なら、アリスはもうお肉要らないねっ サトシ、私にもっと頂戴!」
紅葉が身を乗り出して、焼いている肉を急かしてきた。
アリアは身から出た錆と言うか、自分で言ってしまった事に後悔しているのだろう、地面に手をついて肩を落としている・・・が、ちょいちょいこちらに目線を向けてくる・・・言わなきゃよかっただろうに。
「紅葉、肉も良いけどペアーチもいっぱい取って来てるし、デザートもどうだ?」
「うんっ! 食べたーい」
「なら、ペアーチ持ってくるね」
「私も行くよっ」
「おっと・・・」
部屋に向かおうとすると、紅葉が肩に乗って来てよろめいた。 焼肉は二の次なのだろうか?
「アリア、焼けすぎると困るから、焼けたら食べてて」
「分かったわ♪」
満面の笑みであった・・・。
網に乗っている肉だけじゃなく、新たにトングで肉を乗せようとしていたので食べる気満々のようだ。
紅葉を連れて部屋に入ると真っ暗だ。 玄関に置いている懐中電灯を使って、ペアーチを置いているクローゼットに向かった。
「減ってきたペアーチがすごく増えてるから、きっと驚くぞ?」
「ほんと? 2つ食べても良い?」
「あはは、いつも我慢してたのか? 2つでも良いよ。 足りなくなる前に、明日追加で取りに行こうかな」
「やったー♪ う~・・・私はアニメ見てたいな・・・」
珍しく着いては来ないようだったが、アニメにはまっているのだろう。 電力不足で強制的に視聴を止められるのは苦しいはずだと思う。
「大丈夫だよ。 ペアーチは俺一人で取りに行けるしね」
「サトシ、ありがとう♪」
頬に顔を擦り付けてくる紅葉が可愛くてたまらなかった。
ペアーチを見に来たはずなのに、しばしじゃれ合った。
クローゼットの扉を開けると200個を超えるペアーチを前に、紅葉が固まった。
「すごいだろ?」
「・・・3つでも良いよね?」
冷静に数を増やしてくるとは、アリアに負けず劣らず食いしん坊だった。
5つペアーチを持って、かまどに戻るとアリアが残っていた肉の半数を食べて満足気な顔をしていた。
紅葉は特に気にする事も無く、自分の皿に盛られていた肉を食べきると、俺の太股に乗ってきて、ペアーチを要求してくる・・・俺の食事は中々進ませてくれないようだ。
2つペアーチを摩り下ろすと、喜んで舐め始めたので俺の食事再開となった。
「サトシもお肉食べるわよね?」
「あぁ、焼いてくれるのか? 助かるよ」
「・・・たまにはね?」
今日は気分がいいという事だろうか? アリアが焼いてくれた肉を塩で味わった。
その後3つのペアーチをくし切りにして3人で分け合って、いつもより豪華な夕食は幕を閉じたのだった。
雲の無い夜空を、満天の星と月が照らしていた。
資格試験も仕事とは言うけど・・・orz
中々業務中に出来ませんよねぇ…




