18-1.朝帰りと捜索(18日目)
朝帰り(?)の智司は二度寝するようです。
紅葉はいつになったら起きるのやら…
・・・お・は・・よう・・・サト・・シ・・・
俺を呼ぶ声が聴こえてきた。 まだ眠い。
布団は温かいし、心地よい重さと柔らかさが・・・。 何だろうか?
手を動かすと、しっとりと吸い付くような肌に触れた。 俺のような荒れた手で触れては傷つけてしまいそうなそんなデリケートな肌だ。
「ぁっ!・・・」
触れた瞬間、可愛らしく驚く声が聞こえた。 そう言えば、昨日はアリスの部屋で寝てたか。
手を動かした事で、感触からしてアリスのお尻を触っているようだ。
「サトシのエッチ・・・」
寝ていられる状況じゃないと目を開けると、アリスがこちらを向いて恥ずかしそうに顔を赤らめていた。 それでも離れようとはせず、俺の胸に顔を擦り付けている。
段々くすぐったくなってくるな。。。
「おはよう、アリス」
お尻を触り続けていると、朝から大変な事になりそうだったので頭を撫でる事に。
「うん、おはよう♪」
「朝から積極的だな」
「サトシのほうこそ・・・」
朝の生理現象は仕方ないとして、寝起きでお尻を揉んでしまったのは言い訳が付かなかった。
「柔らかくて気持ち良かったぞ・・・」
「・・・ばか。。 もう朝よ」
「もう起きる時間か?」
「そろそろね」
「それじゃ、起きようか。 俺も紅葉の様子見に行かなきゃな」
「・・・そうね、昨日はありがと」
「いいよ、俺のほうこそ」
二人で起き上がって、服を着てから外に出ると、間もなく陽が出るといったところだった。
周囲は暗く、緩やかに肌をかすめる風も冷たい。 布団の温かさが恋しい。
「俺はもう一眠りしてくるよ、朝ご飯は昨日の残り食べててもいいからね」
「えぇ、ちょっと変だけど、おやすみ」
「確かにな」
部屋に戻ると、紅葉が変わらず寝息を立てていた。
「紅葉・・・早く元気になって欲しいな。 魔法使わせすぎちゃってごめんな。 いっぱい話したい事もあるし、新しいご飯も作れるようになったんだよ。 紅葉にも早く食べさせてあげたい」
頭を撫でながら改めて布団に入ると、あっという間に眠気が訪れた。
「紅葉、おやすみなさい。 紅葉が居ないと寂しいよ・・・」
俺は二度目の眠りに落ちるのだった。
「んあぁ~・・・そろそろ起きるか」
時計を確認すると8時を回っており、結構寝てしまったようだ。
「紅葉は・・・変わらずか」
これで丸2日目に入るのか、無事でいてくれ…。 俺に出来る事は、朝食の準備をする事しか思い浮かばなかった。
「おはよう、紅葉・・・朝ご飯の準備したらまた来るね。 一緒に食べよう」
日課の頭を撫でて一声かけ、外に出るのだった。
「おはよう、アリス」
「おはよう、サトシ。 お鍋温めてもらってもいいかしら?」
アリスは、俺が起きるのを待っていたようだ。
「わざわざ待って無くても良かったぞ?」
「・・・火、起こせないのよ・・・」
「そ、そうだったか・・・村の生活ではどうしていたんだ・・・?」
「火は、村の中央に大きな焚火があって、それを皆で火種にしてたから・・・」
「なるほど」
魔法が使えれば問題は無いが、火が使えない者はキャンプファイヤーのように絶やさない炎を借りていたという事か。 詳しく聞くと、水についても井戸が枯れる場合もあるようで、水魔法を使える者が代用する場合もあったようだ。
エルフの村というのは、個々の能力を補って生活する自給自足の集団であり、アリスの知識からもあまり文明は進んでいないように思える。
この世界の文明レベルは、俺の居た現代文明よりもかなり遅れているのだろうか? それとも、エルフ自体が特別に孤立した文明という事だろうか?
「火のつけ方覚えてみるか?」
「遠慮しておくわ・・・」
「どうして?」
「お母さんが言ってたと思うけど、私あまりそういう事得意じゃないのよ。 壊してしまうのが怖いのよ」
「そっか、なら俺がやるね」
早々壊れる物ではないと思うが、メタルマッチが折れたりすると流石に凹む。。 これも段々と削れて細くなっていくし、紅葉が起きてくれる事が結構重要だったりする・・・。 薪は尽きないくらいにたくさんあるので、火を絶やさず燃やし続ける事を考えるべきだろうか。 まぁ、まだいいか。
慣れた手つきで火をおこし、薪をくべていく。
昨夜のダッチオーブンの蓋を開け、水気が減っていたので足し水して、かまどに乗せた。
「あまり残っていないわね。。」
「そうか? まだ半分もあるけど」
「美味しかったから、ちょっと寂しくなっちゃうなって」
「ん~、具材追加してかさ増ししようか。 スープが重要だろうし、野菜をいっぱい入れれば旨味も濃くなっていくだろうしね」
「お願いっ!」
「おーけー、任せろ」
アリスは手を合わせて懇願していた。 美味しいと喜んでもらえるのは本当にうれしい。
食べてくれる人の笑顔や、美味しいと言ってくれる言葉は、調理する者の冥利に尽きる。
ニンジン、玉ねぎ、じゃがいも、水を追加し塩コショウで下味を整えて煮込まれるのを待つ。
「アリス、肉の細切れがまだ余ってたはずだから、持って来てくれるか?」
「えぇ、分かったわ」
肉の下ごしらえを行って、鍋に追加して煮込み続ける・・・
1時間近く煮込んだ所で、俺は立ち上がった。
「紅葉連れて来るよ」
「やっと食べられるのかしら?」
「あぁ、朝食遅くなってごめんな。 もうお昼ご飯みたいなもんだが、あと少しだけ待っていてくれ」
部屋に戻ると、紅葉はやはり変わりなかった。
紅葉を抱きかかえてかまどに戻ると、アリスとくっつく様に並んで座り、朝食を取り始めた。
「味はどう?」
フーフーと冷まして、太股に乗った紅葉にスープや具を食べさせながら聞いてみた。
「美味しいわ。 このじゃがいもは昨日から煮込まれた物かしら。 すっごく味が染みてて・・・」
「おっ、それは当たりだな。 良かったね」
美味しい物を譲って上げようと、取り分ける時に選んでいたので気に入ってくれたようで、俺も嬉しくなった。
「そう? ・・・なら・・・はぃ」
「ん?」
アリスがじゃがいもの乗ったレンゲを差し出してきた。
これは・・・そういう事だよな。
ぱくっ・・・
味というよりも、恥ずかしさや甘い幸せの方が勝って、何か良くわからなかった。 だが、言う言葉は決まっていたので、笑顔で答えた。
「美味しいな」
「うん、もう一口いるかしら?」
「大丈夫だよ、アリスが食べちゃって良いよ」
「ありがと・・・ん~ 美味しいわ♪」
「あはは、その笑顔が見られるだけで俺は満たされるよ」
紅葉にも、煮溶けかけた玉ねぎを与えていく。 こっちもきっと美味しいはずだ。 アリスと同じように柔らかい表情をしているので、美味しい夢でも見ながら寝ているのだろうか。 今にも目を開けそうなんだがなー。。。
「そう言えば、エイシャさんがまた居ないな?」
「私が起きてからも見ていないわね」
「また、背後にいつの間にか居たりするのかも?」
二人でキョロキョロと周囲を見渡すが、居ないようだった。
「居ないわね・・・」
「そうだな・・・また野菜を探してもらいたかったんだけどな・・・」
「なら、私が探してくるわ」
「アリスも探せるの?」
「私だって、村での生活で採集してたんだからねっ!」
「そ、そうか・・・」
胸を張っているアリスは、何だか見た目以上に幼く見えた。 うむ、萌えるな。
「紅葉にもご飯食べさせてるから、多分大丈夫だろう。 ペアーチも後で食べさせるし、半日くらい時間空けても大丈夫と思う。 先に帰ってきた方で紅葉を見る事にしようか」
「サトシもどこか行くのかしら?」
「あぁ、またペアーチ拾おうかなと」
「いっぱい昨日拾ってきたんじゃないの?」
「そうだけど、もっと寒くなったら取れなくなるかもだしね」
「そうね・・・もうすぐ冬になるわね」
「やっぱ冬が来るのか・・・」
「? 冬になると野菜も取れなくなるし、冬は狩りが主体だったわね」
冬が存在する事が証明された。 備えが必要になるのは確実だ。
話によると後数日の事だろうが、ハッキリは分からないらしい。 村に居た頃には、季節を伝えるような事は神の遣いが行っていたらしい。
そうとなれば、善は急げだ。 野菜に関しては、採取が難しくエイシャさんにも頼みたいところだが。
「アリス、手分けして冬に備えよう。 エイシャさんに会ったら、野菜採集に参加するよう伝えてくれ」
「分かったわ、任せて」
俺は部屋のベッドに紅葉を寝かせ、擦りおろしペアーチを鼻先に置いておく。 お腹が空いたら舐め取るだろう。
「紅葉、行ってくるね」
プラBOXを3段重ねにしてロープで縛り、担いでペアーチの丘へ走って向かった。
ペアーチの丘は今日も晴れ晴れとしていた。 そこかしこに落ちている実を拾うだけの簡単な作業だ。 どんどんとペアーチを拾ってはBOXに入れていく・・・
「本当にたくさん落ちてるな・・・」
プラBOXもバックパックもいっぱいになって、休憩がてら手元に落ちているペアーチにかぶりついていた。
ボトッ・・・
ん? 視線の先で、たった今ペアーチが木から落ちた。 万有引力を発見・・・という訳では無いが、一瞬木が光ったように感じたが気のせいだろうか? 立ち上がり、落ちたばかりのペアーチを拾い上げる。
「赤いな・・・」
木になっている物をあまり気にしていなかったが、今まで採集していたものより色が濃い事に気が付いた。
落ちている物も十分赤く、食べたところかなりの甘さを持っていたので完熟している事を疑っていなかった。 だが、この果実はまだ完熟では無かったのかも知れない。
樹上完熟させる事が、まだ出来るのか・・・?
ナイフで切れ目を入れ、一かけら口に含む。
(これは・・・!)
旨い! まるでワープするかのように、意識が遠い所へ飛んでいくようだ・・・翼を与えられたように、今までの倦怠感が吹き飛ぶような感覚を得た。
甘味や旨味だけでは無い、何かを感じた。
もしかすると、この実を与えれば紅葉が目を覚ます可能性すら感じられる。 この前アリスを召喚して以来、消える事の無かった倦怠感が、この実を一口食べただけで消えたのだ。
エイシャさん曰く、魔力回復も個々の素質に依存するらしいから俺は適性が低いという事なのだろう。 そう考えると、今までのペアーチよりも、完熟してきたと思われるこの赤いペアーチは魔力回復に適しているという事は間違いなさそうだ。
木には同じような赤さの実がいくつもなっている。
周囲を見渡しても、同じような赤い実は落ちていない。 落果してから時間が経つと赤さを失うのか、はたまた今落ちたこの実が特別だったのか・・・?
丘に関する新しい謎が見えてきた。
「今は、この一つで十分か・・・ありがとうございます」
袋に切りかけの熟れたペアーチを仕舞いつつ、木に感謝をした。 実の効果が誠なら、やはり管理者は居るのだろう。 そして今までの実は、やはり不要な物だったという事だろうから。
偶然拾った熟れた実一つのみを頂き、俺は紅葉に与えるべく家に戻るのだった。
森の中は木漏れ日により所々が輝く様に光っているが、全体的には薄暗い。 ひんやりとした森を一人で進むのは中々慣れないものだ。
ガルルッ・・・
「っ!?」
足を止め、荷物を降ろして剣を構える・・・ 久々にモンスターに遭遇してしまったようだ。
今までのイノシシとは鳴き声が違う。 周囲を見渡しても、相手は見えない。
無風の中、周囲は無音に包まれる。 木の陰、低木や草の中、どこも怪しく見えてしまう。
・・・
来ない、一向に襲ってこない。 こちらを警戒しているのだろう。 今までのイノシシのように安易に突っ込んでこないようだ。 こちらとしても、周囲の物音を警戒していて下手に動けない。 相手の位置を掴めないまま動いても、同じタイミングで動かれたら位置を掴める自信がないのだ。
・・・
待てど、何の物音も無いまま時間だけが過ぎていく。 先ほど拾ったペアーチを早く紅葉に食べさせたいが、無駄に時間を浪費してしまっている。 来ないなら、退いて欲しい・・・
ガンッ!
「くっ!?」
左側から、何かが襲ってきたが運よく盾で退く事が出来た。
遂に、相手と対峙する事が叶った。
ウー・・・
狼だろうか?
イノシシがあれだったのもあるが、あまり恐怖心は得られない、比較的可愛さの残る見た目をしていた。 グレーの毛並みは長く、紅葉を彷彿とさせるがより顔がスマートで獣らしさをしている。 目は赤く鋭くこちらを睨んでいる。 手足は短いが、先ほど盾で受けた衝撃は、大イノシシに匹敵するレベルだろう。 それに、短い手足には不釣り合いな鋭い爪が見えていた。
剣と盾を構え、俺は話しかけてみる事にした。
「お前は何者だ? 何が目的だ?」
グルルッ
「引いてくれ、争うつもりはない」
紅葉のように話す事は出来ないようだった。 それでも、聞く事は出来るかもと淡い希望は捨てなかった。
ゥー・・・
低く唸る狼は、一向に引く気は無いようだった。 正直、森で遭遇するイノシシを狩っても、肉は得られず銅貨など無用な物が得られるのみで、狩る意味が無いとすら考えているのだ。 出来れば戦いたくないのが本心である。
ガウッ!
ドッ ザシュッ! ドサッ・・・
飛び掛かってきた狼を盾で受け流しつつ、剣で一刀両断した。 前後に分かれた胴が、地面に横たわり狼は動かなくなった。
剣に血は付かず、亡骸からも出ていない。
暫くすると、やはり光となって霧散していき、大きな牙と立派なグレーの皮が残されていた。
「これは・・・使えそうだな」
毛皮を拾い上げ確認してみると、既になめされていて遣い勝手が良さそうだ。
毛はふかふかで空気をしっかり溜め込んで温かそうである。 イノシシよりも狩る価値がありそうだ。 牙の方は使い道が思いつかないが、これも持って帰ろう。
時計を確認すると、14時を回っていた。
早く帰らなくちゃな。 荷物を担ぎ直し、再び家に向かうが・・・
ガルルルッ・・・
またも狼と対峙していた。
今回はすぐに居場所が分かったので毛皮狩りを行った。
「毛皮とったどー!」
森の中で声が響いていた。
・・・
「帰るか・・・」
虚しさが木霊していたが、アリスは大丈夫だろうかと、不安がよぎった。
今までイノシシばかりだったが、好戦的で知能も高そうな狼に、結局3度に渡り遭遇した。
ここまで頻繁に遭遇するようだと、アリスも出会っている可能性が高い。 大丈夫だろうか・・・
時計を確認すると、15時を回っていた。
毛皮3枚をバックパックに掛け、牙も2本と銀貨1枚を拾って、今度こそ家に帰えってきた。
外にはアリスもエイシャさんも居ないようだ。
ペアーチの詰まったプラBOXを外に並べ、毛皮と牙も出しておく。
毛皮については、椅子代わりに使っていた石の上にも掛けて使えるだろうし、アスファルトの上に敷いても座面としては良さそうである。 外に置いてある荷物も増えてきたし、木製の屋根やテーブルも欲しくなるな。
しかし、冬が来たら屋外で食べるのは寒いか。 何か打開策を考えなきゃな。。 薪もそうすると冬は警戒する必要性があるかも知れない。
いや・・・この世界に来て以来、雨を経験していないし、雪も積もらない可能性もあるか。
アリスが戻ってきたらこの辺りも確認しなきゃな、その状況次第か。
ガチャ・・・
「紅葉、ただいま」
玄関を開けて、部屋に入るが“おかえり”は返ってこなかった。
寝室のベッドでは、まだ紅葉が眠っていた。 ペアーチにも口は付けていないようで、そのまま残っていた。
「流石に、口まで持ってかないと食べれないか・・・そんな事より・・・」
俺は、袋から熟したペアーチを取り出して、紅葉が食べやすいように、すりおろした。 やはり今までのペアーチよりも強い香りを放っている。 シャクシャクとした歯切れの良かった食感も、今回の物は熟れた梨のように柔らかくなっている。 とろみが出たような、液状のペアーチを容器に移し、ベッドに向かった。
「紅葉、お昼ご飯食べてないだろ。 新しく見つけたペアーチだよ。 食べれるかな・・・?」
スプーンで掬って、少しずつ舐めさせていった。
「美味しいか・・・?」
紅葉が起きてくれる事を祈って。
「・・・ん・・・サト・・・シ?」
カランッ・・カチャ・・・
「っ! 紅葉・・・良かった。 紅葉・・・」
持っていたスプーンを落とし、震える手で紅葉を抱きしめた。
「サト・シ・・・どうしたの・・・?」
「良かった。。。目覚めてくれてよかった・・・魔力使い果たしてて、ずっと眠ったままだったんだよ・・・本当に良かった・・・」
「・・・サトシ・・・起きるの遅くなってごめんなさい。。。」
「良いんだよ、紅葉が起きてくれたならそれで十分だよ。 それよりも、もっと食べるか?」
「ぅん」
俺は、紅葉に熟れたペアーチを全て食べさせるのであった。
「お腹は空いてないか? 新しいご飯作ったんだよ」
「ほんと? 食べたいな」
「ちょっと待ってて、温めたら持ってくるよ」
「私も行くよっ」
「まだ起きたばかりでしょ? ゆっくりしてて良いからね」
「・・・ぅん、ありがと、サトシ」
俺は、かまどでポトフを温めていく。
周囲を見渡すが、アリスはまだ居ないようだ。 あんまり遅くなるのは不安だな。 紅葉にポトフを食べさせたら探しに行くか。
陽が傾き始めたが、アリスやエイシャさんは戻って来ていない。 不安が増えて来るが、まずは紅葉にご飯を届けよう。
「紅葉、ただいま。 お? アニメ見てたのか」
「うん、面白いよね」
「あぁ、でもそろそろ発電力不足で切れるかもな」
プツンッ・・・
あ、切れたか。
「続きはまた明日だね。 ポトフって新しいご飯持ってきたから食べよっか」
「うんっ!」
ソファーに座ると、紅葉が太股の上に乗ってきたので、食べさせていく。
「どうかな?」
「うん! 美味しい♪」
「そうか、そうか♪ まだまだあるけど、俺はちょっとアリス達を探しに行ってくるよ。 まだ帰って来てないんだ」
「私も行っちゃだめ・・・?」
「仕方ないな。 おいで。 でも、無理はしないでくれよ?」
「はーいっ♪」
部屋を出て、一応アリスの部屋も確認したがやはり帰っていなかった。
陽は落ちて辺りは暗くなっているので、ヘッドライトとモバイルバッテリーを携帯しておく。
「出発する?」
「いや、たいまつを作って持っていこうと思う」
狼の遭遇率が高かったのもあり、アリス達に渡せれば自衛にもなるだろう。
長い棒の周りに薪を針金で巻き付けて完成だ。 かまどで、たいまつに火を点けて森へ捜索開始だ。
「アリス、エイシャさん、どこですかー?」
暗い森の中で耳を澄ますが、特に返事は返って来ない。
「紅葉、二人の声が聴こえたり、何かあったら教えてね」
「任せてっ!」
帰りの遅い二人を探しに、俺と紅葉は夜の森へ入っていくのだった。
ん~、一旦分けるかなぁ




