17-1.俺の魔法(17日目)
アリスとの関係性が一気に進んで、迎えた初日。
甘く温かな時間は今後どうなるのか。
・・・すぅ・・・すぅ・・・
(んぁ・・・?)
まどろみの中で寝息だけが聴こえてきた。
温かな布団からは出たくない。 起きたくない、後30分・・・紅葉も寝ているだろうし俺も体が怠い・・・
トントンッ
「・・・?」
玄関の扉が叩かれているようだ、アリスか。
諦めて時計を確認すると8時を回っていた。 隣で眠り続ける紅葉は昨日と変わり無いように見える。 枕元に置いていたペアーチも何も手が付けられていない。
トントントンッ!
さっきよりも、叩き方が強くなっていないか? 回数も増えてる・・・
それでも、まだ起きたくない気持ちと大声を上げて紅葉の眠りを妨げる事もしたくは無かった。
トントントンッ! サトシー、まだ寝てる・・・?
叩く音には変化なかったが、今度は声も聞こえてきた。 アリスで間違いないようだ。
起きないとこのまま続きそうだったので、仕方なく俺は起きる事にした。
「ふぁ~ 眠たい・・・」
ベッドがから出て、一応洗面台に向かう途中でアリスへ一声かけておく。
「アリス、おはよう。 ごめんね、ちょっと寝すぎちゃってたか」
玄関の郵便受けの小窓から指が出ているのが目に入った。 そこから話しかけていたのか・・・部屋に声が届く訳だ。。。
「おはよう、紅葉様は変わりない・・・?」
「昨日と変わらず・・・かな。 ちょっと待ってて、身支度して外出るよ」
「えぇ、外で待ってるわね」
郵便受けの小窓から指が抜けるのを確認して、俺は洗面台へ向かった。
鏡の前には髭面のおっさんが映り込んでいる。
この世界では、日常系アニメオタク万歳と言えるような可愛い人や動物に出会えている。 彼女達には毛穴やその汚れ、ムダ毛は一切見受けられず、くすみ一つ無い一色で表現されたかのような透き通る肌は見ていて美しい。 作り物・・・そう考えてしまうのは仕方が無いだろう。
だが・・・俺はどうだ? 変化を感じられない。
鼻には角栓が溜まり、俗に言うイチゴ鼻だ。 腕にも脛にも髭も・・・ムダ毛は変わらずに生え、そして伸びている。 今日も僅かばかりの水を使って、刃が劣化してきたカミソリで髭を剃る事から始まった。
「髭剃りもそろそろ刃を変えたいが、在庫が2個しかないもんな・・・」
替え刃を手に入れるのは不可能だろう。 なので限界まで同じ刃を使い続ける事にしている。
髭を剃り終え、もう一度鏡を確認する。 角栓がかなり溜まっていた。 指で軽く押すと、面白いようにニュルっと出てきたが、鼻が赤くなってしまった。 それでもまだまだ角栓はある。
(角栓が自ら出てきたり、毛穴をひっくり返して内側から洗ったりできたらなぁ・・・)
ため息を付きながら洗面台を後にしようと・・・
・・・?
鏡には、鼻をウニのようにしている俺が映っていた。
「こ、これは・・・」
鏡に顔を近づけてみると、鼻の毛穴が裏返って表に出てきているようだった。 角栓と細い毛によって鼻がウニのようになっていたのだ。
「サトシ・・・遅いみたいだけど大丈夫?」
「あっ! 新しい魔法見つけたみたいで、もう少し時間かかりそうだから! 大丈夫だからっ!」
玄関からアリスが心配してきたので無事を伝えつつ、洗面台に戻る。
鼻に軽く触れると、角栓や毛は指先にくっ付いて少々気持ち悪い。 シャワーや排水が無いので、濡れタオルで鼻を優しく撫でるように拭くとごっそり角栓と細い毛は消え去った。
(ただ、鼻には裏返ったままの毛穴が残っている。 取ったら血が出るだろう・・・という事は・・・)
毛穴が元に戻って、拡張した穴を収縮させる事をイメージしてみた。
「で・・・できた! できたっ!」
鏡には、角栓一つ見当たらツルツルとした鼻になった俺が映っている。 昨日の召喚魔法は狙った行使ではなかった。 毛穴を戻すこの魔法は、自分のイメージ通りに使えた最初の魔法だ! エイシャさんが言っていたように、適性のある魔法は容易に操作ができると言っていたがこういう事か…
調子に乗って、ムダ毛の処理も頭皮の角栓除去も行った。 5Lほど水を消費してしまったが、毛穴操作のコツを掴んできた事と、ムダ毛を排除したツルツルの感触に大満足である。 試して分かった事は、毛穴はひっくり返すだけでなく、毛を維持したまま角栓のみを毛穴から絞り出し、毛が抜けるのを防ぐように毛穴を収縮させるなんて芸当も行える事が分かった。 毛穴を操作する範囲は、手で触れながらイメージする事で精度良く調整する事が出来た。
ただ・・・この魔法って俺以外に意味無いよな・・・。
現実世界なら私生活で大活躍できるだろうし、痛みも伴わずただ洗顔するだけで除去も毛穴引き締め効果まであるんだから、ムダ毛に悩む全ての人の救世主になれただろう。 それに俺を含めた頭髪の薄毛に対してもケア手段としてはかなり有効だ。 現実世界ならば・・・
やはり昨日の召喚魔法を基軸とするべきか。
未だかつてないくらいに清潔になった俺は、服を着替えて玄関を開けた。
陽が眩しいが、その眩しさも心地いい。
「やっときたわね・・・新しい魔法どうだった?」
「遅くなってごめん。 分からないかな?」
クルっとアリスの前で一回転してみせた。 ジーンズとパーカーなので肌露出が少ないが、髭の青さが一切なく毛穴が引き締まったこの肌を見てくれ!といった気分だ。
「・・・ごめんなさい、本当に全く分からないわ」
さいですか・・・(´・ω・`)
急激にテンションが下がって、冷静さを取り戻していく。
そ、そうだよな・・・気づき難いよな・・・せめてハーフパンツや半袖なら。
それに地味だよな・・・ショボい魔法使いが最強に成り上がるって物語を作ろうとしても、こんな魔法じゃ発展の見込みがないもんな・・・。
毛穴を拡張したり、引き締め、角栓を絞り出すなどの細やかな操作は出来るが、毛根を活性化したり、髪の毛長さを変えれたり、肌を硬質化するなんて事も出来なかった。 純粋に俺の魔法は、“毛穴操作”で拡張と言っても1㎜程度だし、展望は見当たらなかった。
かまどの前で座り込んでいた俺の背中に、アリスがしなだれかかってきた。
「気づいてあげられなくてごめんなさい。 でも、私にはどんな小さな魔法だって羨ましく思うわ 私はまだ何も見つけられていないから・・・」
「まぁ、俺の魔法は毛穴を操作できたって程度の事だからね…。 ほら。鼻に黒い粒々とか無くて綺麗になったんだよ」
「今までそんな汚れていたか記憶が・・・」
あまり俺を見てはくれていなかったのかも知れないし、そんな部分を気にせず好意を持ってくれていたって事かも知れない。 悪い意味にとらえず、前向きに考えていこう。
それにアリスが俺を励ましてくれている。
背中に触れる慎ましくも女性を感じさせる双丘とその山頂は、昨夜の出来事もあって俺をドキドキさせてくる。
アリスの俺に対するスキンシップが、エイシャさんとの再会を機に大きく変わった。 すごく嬉しいのだが、どうにも慣れないし恥ずかしい。
まぁ、甘えたいって訳でも無かったけど、こういうものも良いな・・・新たなシチュ萌えを感じつつ気力を取り戻していった。
「ありがとう、元気出たよ」
「そう、なら朝食にしない?」
「おっ!?」
スキンシップも増えたし、まさかアリスが朝食を作って待っていてくれたからあんなに急かされたのか!? これはヤバい・・・すげーアリスが可愛く見えてきた・・・好意持ってもらえるとこうまで変わるのか…
「え? お腹空いたし、早く作って・・・よ?」
「あ・・・あぁ、任せろ・・・」
「だ、大丈夫・・・?」
俺の勝手な願望が暴走しただけだ・・・アリスに落ち度はない。。。 またもテンションが急上昇・急降下する俺を不思議そうにアリスは見ているようだった。
手早く朝食の準備をするが、いつもの焼肉しかないので流れるような手捌きで準備が整っていく。
紅葉が居れば、着火をお願いしたいところだが今は無理だ。 それにせめて俺に火が使えればな。 無い物ねだりをしつつも、火起こしをして肉を焼いていく。
肉を食べ終わるころ、森から出てくるエイシャさんが視界に入った。 昨夜は壁の周りで散策でもしていたのだろうか? こちらと視線が合った事に気づいたのか、壁をバンバンと叩いている。
「うるさくてごめん・・・お母さん、ずっと暇だったみたいでこちらを見つけるとあんな感じで・・・」
「いいさ、ちょっと聞きたい事もあったしね」
「・・・片づけは私がしておくわ」
「アリスありがとっ」
朝食を終え、現在進行形でバンバン叩いているエイシャさんに近づいて、見えない壁を通過して外に出ると、エイシャさんが飛び掛かってくるかのように話しかけてきた。
「ねぇ! サトシさん、サトシさ~ん! アリアちゃんから聞いたわよ~? 昨夜はお楽しみだったってね~? どうだった? うちの娘は~?」
お・・・おう・・・情報が早いというか、アリスこうなる事を予想して逃げたな・・・? 敷地内へ目を向けると、アリスが目を逸らすのが見えた。
「ま、まぁエイシャさん、落ち着いて、まずは落ち着こう・・・」
「これが落ち着けるわけないわよ~? 一人娘のことなんだから~」
あー・・・これは今後も疲れそうだがどうしたもんか・・・。 だが、ずっと外で仲間外れみたいなのは気が引けるしな・・・
「その件は、中でゆっくり話しますから、手を出してもらえませんか? 昨日忘れてたのですけど、多分自分を介して一度壁を通過すれば通れるようになると思うので・・・」
「まぁ~! それは楽しみだわ~♪」
エイシャさんの手を取ってゆっくりと壁と思われるエリアを抜けていく。 繋がれた手が壁を抜けたのを確認すると、エイシャさんが俺の背中に飛び乗ってきた。
「うわっと・・・」
油断を誘って俺を襲撃するって訳では無さそうだったので、ふら付きながらもエイシャさんを背負い直した。 軽くてそして冷たいな。 エイシャさんはアリスよりも小柄で、ゾンビなのだ。
エイシャさんをおんぶしたままアリスの傍に寄ると、鋭い目で睨まれる事に・・・。
「お母さん、何してるの・・・?」
「だって~ くっ付いていないとまた外に追い出されちゃう不安があるでしょ~?」
俺ではなくエイシャさんを、アリスは睨んでいたようだった。 一部始終を見ていたのか?
「追い出されたりしないので、降りてくださいね? 一度出ても入って来れると思いますよ」
「ほんと~?」
「試してみればいいじゃないっ!」
「アリアちゃん、冷た~い」
「はぁっ・・・」
エイシャさんを入れるべきでは無かったのかも知れない・・・。 エイシャさんが壁の出入りを確認しに向かったので、アリスの横に腰を下ろした。
「エイシャさんを中に入れなかった方が良かったか? ごめんな、勝手に決めちゃって」
「え? あー・・・そんな事ないわ・・・外にずっとってのも何かね・・・ありがと」
「本心から・・・言えてる?」
「ちょ、ちょっと!? 少し後悔しちゃったじゃないっ」
「あはは♪」
「もぅ・・・確かに私達だけの時間は中々取れないかも知れないわね・・・」
「寂しい?」
「いーえっ!」
ぷいっと横を向いたまま、アリスはこっちを見てはくれなくなった。 ちょっとイジリ過ぎたかな・・・急に接近した仲だし、楽しくなっちゃって距離感を間違えたか・・・難しいな。
「俺はさ・・・アリスの事も紅葉も含めて大切だし、こうやって落ち着ける時間が減るのは寂しい・・・かな」
「ばか・・・」
嫌がられている訳では無いよな・・・? アリスの肩を引き寄せてみると、肩に触れた瞬間は強張っていたが、体ごとこちらに持たれかかってきた。 アリスは頭もこちらに傾けてくれているので、プラチナブロンドの綺麗な髪が良く見える。 陽に照らされてキラキラと輝く髪は、本当に綺麗だ。
そう言えば、ここまで密着はしてなかったけど、髪の毛に触れて避けられた事があったな・・・。 今なら・・・触れさせてくれるだろうか? 避けないで居てくれるだろうか? 俺は肩を抱き寄せた手をアリスの背後でワキワキさせてしまっている。
秋の日中は暖かいが、それ以上に心が温かった。
こんな風に、アリスと甘々な時間が訪れるなんて思いもしなかったな・・・。 紅葉と3人で一緒に楽しく過ごせたらとずっと考えていた。
(紅葉・・・、早く元気になってくれよ? 3人で笑っていたいんだ・・・)
「サトシさ~ん! 出入りできたわ~ 不思議ね~どんな魔法なのかしら~?」
エイシャさんが走って戻ってくると、アリスはさっと離れてしまった。 髪に触れるのはまたの機会か・・・ワキワキしていた手は、何も触れる事無くアスファルトに戻した。
「魔法何でしょうかね? 自分が来た時からこの壁はあったのですよ。 無意識に魔法を行使するって事はあり得るんですか?」
「知っている限りでは無いわね~ 先天的な魔法は聞いた事が無いわ~ 」
そうすると、これは魔法では無いのかも知れない。 そもそもアパートに俺しか居ないってのも変な状況だが。
「ただ・・・魔法はイメージを具現化すると言ったけど、具現化した物はイメージの強度やその種類にもよるんだけど、無くならない場合がほとんどよ~ 例えば、水を出したらそれは現実の水と全く同じ物だし、紅葉さんが作った石のドームや物見櫓も、魔力切れを起こしてしまっても無くなったりしないでしょ? 破壊されたりしても、その残骸は残るのよね。 行使者が解除すれば跡形もなく消えるけど~」
なるほど・・・放出や発生させる魔法は、物質を魔法によって具現化するからこそ魔力消費が大きいと。 物理現象とかを無視して顕現させるのだから、それは仕方のない事なのだろう。
そう考えると、あの壁は俺以外の誰かによって展開された魔法と考える事は出来る。 それは誰だ? 何のために・・・? 謎に一歩近づいた気がする。
「そう言えば、自分も魔法が使えるようになったのでちょっと聞きたいことが・・・」
「わ~♪ サトシさんはどんな魔法が~?」
「アリスからは聞いてないのですか?」
「そこは話してないわ」
「それは初耳~」
「そっか・・・一つは、今朝見つけたもので自分の毛穴を開いたり閉じたりするこれといって意味の少なそうな魔法が一つ。 二つ目は、俺の部屋にアリスを召喚した魔法でこっちはどう行使するのかまだはっきりしていない。 それと、今朝は何かいつも以上に怠さを感じているんだが魔力消費の影響と考えられるのかな? 」
「そうね~。 魔力消費で倦怠感を感じるのは十分可能性あるわ~。 相手の魔力量を可視化する魔法が使えれば簡単なんだけどね~・・・。 」
そんな魔法もあるのか。 属性って単純な考え方じゃなく、もっと自由で柔軟なイメージを持つべきなのか。 俺にも使えるか・・・?
「それと、サトシさんの一つ目の毛穴って・・・な~に?」
おぅ・・・そこからか。
「えっと、髪の毛とか毛が生えてるその元部分の事・・・かな?」
「それって~、開いたり閉じたりして何か便利になるの~?」
「自分には少しだけ・・・」
どんどん惨めになってきたぞ・・・この世界じゃ毛穴という概念が無いのか? ムダ毛処理って概念無さそうだもんな・・・。
「二つ目の魔法は、面白そうね~。 二つも魔法使えるなんてサトシさんは、中々優秀よ~。 まぁ、一般的な火や水のような属性魔法が何一つ使えて無いのも珍しいけど、大半の人が属性魔法の何か一つって事を考えれば、サトシさんはレア魔法ね~」
「・・・ありがとうございます」
うち一つが、毛穴操作魔法って誇って良いのだろうか?
「わたしも使えたけど、ワープ系統の魔法は無い物を作り上げる魔法じゃないから、比較的魔力消費は小さい方なのだけど、倦怠感があるならそれが解消されるまでは練習は控えた方が良いかもね~ まぁ、もし寝ちゃっても、アリアちゃんがきっと付き添ってくれるだろうから気にせず練習してみて自分の限界調べるのも良いかも~」
「わ、私はやらないからねっ!?」
「してくれないのか・・・」
「サトシさんかわいそ~・・・」
「・・・ずるいわ。。。」
アリスは俺やエイシャさんに振り回される役回りからは逃れられないようだった。
「でもまぁ、俺まで眠っちゃったら生活ままならなくなっちゃうかもだしな。 それに今日はペアーチを取りに行こうと思う。 在庫がもう尽きそうだし」
「私もついていくわ、紅葉様と一緒に行ったこともあるし」
「わたしもいきた~い」
「アリスは、紅葉の事見ていてくれないか? 紅葉を一人にはして置いていきたくないんだ」
「わたしは~?」
「エイシャさんは、一緒に行きましょう」
アリスがむぅーっとしているが、何も言ってこないのは俺の気持ちを汲み取ってくれているからだろう。 出発する前にすこし二人で話せるかな・・・誤解されたくないしな。。
「それじゃあ、ちょっと準備してきますのでエイシャさんは待っててくださいね。 アリス、ちょっと来てくれないか?」
「うん・・・?」
アリスを連れて自分の部屋に戻った。
アリスは紅葉から部屋の中に入る事を嫌がられていたので、恐る恐るといった感じで草履を脱いで部屋に上がっていた。 俺は本当に準備したかったので防具など着用しつつアリスに話しかけた。
「連れていけなくてごめんな」
「・・・紅葉様を一人にしたくない気持ち分かるから仕方ないわ・・・」
「それでも・・・だ。 エイシャさんをここに入れたら何されるか分かったもんじゃないしな・・・」
「確実に大惨事でしょうね・・・」
「だよなぁ・・・」
「はぁー・・・」
お互いにため息が重なっていた。 ふふっと軽い笑いも同じように重なっていた。
「でも、私が部屋に上がる事を紅葉様は快く思わないわ・・・」
「それは考えたけど、これが最善だと思ったんだけどな・・・もう一つの選択肢は。。。」
「私とママが行ってくるのはダメなの? サトシがここに居れば紅葉様はそれを間違いなく望むわ」
「だろうな。 でも、俺が行って現地を見たいし、何だかんだでエイシャさんにもあの丘の違和感や実についても話が聞きたいんだ。 帰ってきてから話をするのも手だけど、やはり現地で現物を見ながら話ができればそれが一番効率的なんだよな。。。」
「そう・・・よね」
「嫌か・・・?」
「ううん・・・私が待つのも、ママと行ってくるのも納得できるから良いの。 でも、サトシがそういう事を調べてるのは、突き詰めれば元居た世界に戻りたいからよね・・・?」
「ん~・・・」
昨日エイシャさんの話を聞く際に、俺の事も二人に話していた。 この世界から俺が居なくなる事に寂しさを感じているのかな。 俺はどうしたいか・・・か。
「戻るかどうかは決めてないよ。 今の生活が俺も好きだし、帰りたい気持ちは大きく無いけど、どうしてこうなったかを突き止めてはみたいかな」
「勝手に居なくなったりしないでよ・・・?」
「もちろん! 俺はアリスを愛してるよ。 だから、アリスのとこにちゃんと居るから」
「・・・ぅ゛―――・・・」
アリスは紅葉が寝ている布団に顔を埋めていた。 ちょっとクサ過ぎたかな・・・
そのまま出発の準備が整ったので、一言声を掛けておく。
「行ってくるね」
「・・・ぅん、私もだから。。。」
「ああ、続きは返ってきたらちゃんと聞かせてもらいたいかな」
「・・・ぅ゛ぁ―――・・・」
さっきよりもアリスの顔が布団に沈み込んでいた。
ガチャッ
「アリアちゃん、納得してくれた~?」
「お、聞いてたんですか?」
部屋を出るとすぐにエイシャさんが話しかけてきた。
「ううん、アリアちゃんすぐ顔に出るし、性格知ってたらすぐ分かるわ~」
「あはは、自分も段々と分かってきた気がしますね」
「それは良かったわ~ あの子、不器用だから色々と失敗多いでしょ~?」
「どうでしょうか・・・そんなに困った時は無いですかね」
「これから何か失敗する事もあるだろうけど、あまり怒らないであげてね~? ちゃんと分かってるんだけど見栄張っちゃったりして、後で後悔してばかりだから~」
「それは・・・何度か見た感じはしますねぇ」
今俺の表情はは笑っているだろう。 アリスの事を思い出しつつってのもあるが、エイシャさんはちゃんとアリアの母親なんだろうな。 そんな事で、アリスを嫌になる事は無いけど、心配は尽きないのだろう。 もしかすると復活する目的自体が、アリスの為だったりするのかも知れない・・・
「まぁ、自分は娘さんのそんな面も含めて好きですよ」
「あら~♪」
無駄話はここまでだという事で、俺はペアーチの丘を目指して北北東へ向かって森へ踏み入った。
「もう行くの~? まって~」
「のんびりしてたら日が暮れちゃいますよ。 エイシャさんなら体力あるでしょうからちょっと走りますよ!」
「しゅっぱ~つ♪」
俺は装備一式の効果で身体能力上がっているが、それに難なくついて来られるんだから、この人はチートだなぁ・・・。
剣で邪魔な蔓を切り落としながら、最短ルートでエイシャさんと俺は森を突き進んで行った。
内容が薄いでしょうが、あと数話でもうすぐ20万文字かぁ




