15-3.赤髪(15日目)
「紅葉どうした~? というかどこだー?」
「たけばやし~!」
河原ではなく、竹林の方へ目をやると紅葉と何か大きな物が見えた。
(獲物か!?)
俺は急いで紅葉のそばへ向かう。 足取りは軽くさっきまでのモヤモヤが消えたようだ。
俺は寂しかったのかもな。 少しだけ、昔の彼女の気持ちを汲む事が出来たような気がする。
思い通りにならなくて苛立つのは自分の考えとは違う思考を持った存在だから仕方ないこと。 それでも一緒に居たいと思えるなら、それが本物なのだろう。 お互いが想い合ってまたそれを伝えなきゃ、伝わらない。 気づいて欲しいと願って、気づいて貰えない事に挫折するような風では、いつか終わるのだ。
俺は伝える事もしなかった。 ただ、面倒だと時間に身を任せていた。 想って居ただろうか? 2次元ばかりを追いかけ、そして自分の好きなようにしていた。 それが噛み合った時に彼女が機嫌良く、そうで無い時に不機嫌だったのかな・・・。
今知る術は無い。 それにもうどうでも良い事だ。
今、思い至ったのなら紅葉やアリスへの接し方をもう少し見直すべきかもな・・・。 まぁ、今はまだ良いか。
「・・・サトシ・・・どうしよう。。。」
開口一番紅葉は悲痛な目を向けてきた。
「エルフ・・・だよな」
耳の形状やアリスとの出会いも合って、断定している。
だが・・・ 血色が悪いというレベルでは無く、血が通って居ない。 あざの様に変色した部分は多いが、引き裂かれたような傷は無く、アリスのように逃げていたところ事切れたといった感じだろう。
「紅葉、教えてくれてありがとう。 でも、この子は助ける事が出来そうにない・・・ごめん・・・」
何も出来ない自分が不甲斐なくて仕方なかった。
「ぅぅん、私が見つけた時からこの状態だったから・・・もっと早く見つけれてたら・・・」
「紅葉のせいじゃないよ・・・」
屈んで紅葉の頭を撫でる事しかできなかった。
「・・・アリスで時間を無駄にしなきゃこんな事には・・・っ」
「っ!? 」
紅葉のせいでは無い。 確かに朝からここへ来ていたら状況は違った可能性もある。 だが、アリスには無関係だ。 それにアリスもこうなる可能性だってあった。 この子の運命・・・そう受け入れる他無い。。。
俺は紅葉を撫でながら話し続けた。
「アリスのせいじゃ無いよ。 もちろん紅葉せいでも無い。 朝来ていても助けられたかは分からない。 それでも!って気持ちは俺にもあるけど、そうじゃない。 紅葉やアリスを助ける事が出来たのは奇跡だったんだよ・・・。 助ける事は出来なかったけど、それでも俺達に出来る事はしてあげようよ」
「ご・・・ごめんなさい。 ぅん、分かったっ!」
謝罪がアリスを責めた事に対してだと俺は思う事にした。
やれる事をやると、紅葉は涙を溜めた目をぬぐって俺を見上げていた。
(何ができる・・・か)
紅葉には、ああ言ったが何も考えて居なかった・・・。 何をすればいい?と聞いてくるような顔の紅葉の視線が痛い。
「ん~・・・紅葉は、急いでアリスを呼んで来てくれないか。」
「どうしてアリスを?」
怒っている訳では無く、純粋に意味が分からないといった感じである。
「んと、俺の考えでは森の土を掘って、彼女は埋めるか燃やすべきだと考えてる。それが俺の知ってる弔い方だから。でも、エルフの習慣は違うかも知れない。もし俺の弔い方がその習慣に合っていなかったら、知らなかったとはいえ彼女の冒涜にもなりえる。 せめて・・・彼女が望むであろう弔いを・・・とね」
「そっか・・・。うん! 急いで戻ってくるよ。 待ってて!」
紅葉は一目散に森へ向かってしまったので、慌てて俺は呼びかけた。
「紅葉! 今日は野営覚悟でペアーチ持ってくるようにして!」
・・・・・・
微かな返事が聞こえたような気はするが、吹き抜けた風で枯れ葉が河原を舞うカサカサという音と、水の流れる音で聞き取る事は出来なかった。 紅葉は立ち止まらず森へ飛び込んで見えなくなった。
俺は一人になった。
まだ陽は落ちていないが、紅葉が帰ってくる頃には辺りは暗くなってしまうだろう。
ゴクッ・・・
口の中に溜まった唾液を飲み込むと共に、こめかみを冷たい汗が流れ落ちた。
足元には、冷たくなった遺体がある。
紅葉と居る間は、正気を保てていたが一人になった今は無性に怖くなってきた。
遺体が突然立ち上がって襲われる恐怖心を感じているのではない。
周囲にゴブリンが居る可能性に恐怖しているのでもない。(警戒はしているが)
俺の目の前には死という現実がある。 今回亡くなったのは自分では無い。
いや、こんなハチャメチャな世界に居る時点で、俺もこうなっているのかも知れない。
今俺はこうして物事を考え、怯える事ができている。
だから、今自分が死んでいるとは思えない。俺は生きている!と断言できる程には、生を感じているからだ。
だが、いつか来るであろう未来だ。。 この世界を認識して以来、食料となるイノシシや敵対したモンスターを倒した経験はあるがそれらは霧散し消滅していた。
だが、目の前には明らかな遺体があるのだ。
死を恐れない何て俺には出来ない。 さっきからずっと嫌な汗が出続けている。
穴を掘っておいたり、汚れた彼女を拭く等いろいろやるべき事はあるはずだ、そう考えていたのに・・・。
俺の手足は彼女から離れ、川辺で吐いて顔を洗うを繰り返していた。
「あ゛~・・・ こんなつもりじゃなかったのにな。。。」
口の中がスッキリとした頃、気分も落ち着きを取り戻してきた。 もう胃から出る物は無いが、背後にあるモノの事は意識の外側へ追いやっている。 そうしないと1人で現状には耐えられそうになかったからだ。
「陽がだいぶ傾いてきたか・・・」
森の木々に太陽が掛かり始めている。 これから一気に暗くなってしまうだろう。 紅葉やアリスは夜目が効くようなので、俺よりも暗くなってきた森を安全に抜けれるだろう。
俺は、河原の石を重ねてかまどを作って、火起こしを始めた。
「メタルマッチくらい持っておくべきだったか・・・」
陽が沈む前に帰る予定だったから、食料含め色々と不足している。 おやつがてらにペアーチを1個持っているが、それだけではな。 非常食を俺一人で今消費するのは軽率だろう。
ただし、火くらいは何とかしたい。 川の水は直接飲んでも腹を下すような状況にはなっていないので、沸かして飲む必要は無さそうだと分かっている。 今、火を起こすのは紅葉が肉を持って来てくれる希望と、炎を見て安らぎを得たい気持ちからだ。
「まぁ・・・ここには竹がいっぱいあるか」
乾いた竹と、火口になるような枯草、薪を集めて久々のサバイバルを始めた。
剣で半割にした竹に小さな穴をあけ、竹の繊維と交差するように穴の位置に溝を設ける。 余っている半割の竹は、破断面を剣で削って尖らせ火起こし道具が完成した。
「これからが本番か・・・」
かまどに薪を並べ、火が付いたらすぐに燃やせる下準備をしておく。 火口用の枯草の上に穴を開けた竹を敷き、もう一つの竹を溝に合わせて擦り続ける。 ゆっくり擦っても意味が無いので、摩擦熱を起こすように激しく擦り合わせ続けた。 竹が焦げるような匂いに包まれる。 まだ煙は出ていないので火口が落ちたとは思えない。 気を抜かずに擦り続けると僅かな煙が出てきたのでスパートをかける。 竹を退けると枯草の上に黒い火口落ちており、微かな煙を上げていた。 手早く枯草で包み込み、息を吹きかける。
「ふー・・・ごほっ フーッ! フーーッ!」
息を吹きかける度、煙は強くなり咽るが躊躇していられない。 手早くやる事が重要なのだ。
そして枯草に火が付き、陽の落ちた周囲を赤い炎が照らす。 やり切った感動と、幻想的な炎で感傷に浸るのはまだ早い。 かまどに並べた薪に火をくべて細い枝や枯草を追加して炎を大きくしていく。
「よし! 安定したか」
パチパチと燃える薪は、時折風に乗って火の粉が辺りに舞う。 今は、川の流れと薪が燃える音に包まれている。 暗い森は葉擦れを奏でて恐怖心を煽ってくるが、温かな炎が俺を守ってくれている。
紅葉やアリスはまだ到着していない。 そろそろだろうが、火が付いた事の安堵感か腹が鳴った。
「あぁー腹が減った。。」
ザッ、ガラッ・・・ ガラッ・・・
河原を歩いているのだろう音が、耳に入ってきた。 紅葉達が来るであろう方角とは真逆からだ。 炎を見つめていたせいで、いつも以上に夜目が効かない。 焚火の明かりでは周囲を照らす事は叶わないので、立ち上がり剣を構えて音のする方へ目を凝らした。
「グフッ・・・グヘェ・・・」
姿は見えないが、嫌な声が竹林の方角から聞こえた。
紅葉やアリスや動物でも無いだろう、多分ゴブリン等のモンスターだ。 竹林へ俺も歩み寄っていく。 今、あそこにはエルフの遺体がある。 恐怖心から5mほど離れた位置にかまどを作っていたのが仇となった。 遺体のすぐ近くまで来たが、この辺りはもう明かりがない。 少しずつ闇夜に慣れてきたが、まだ月明かりも満足に出ておらず暗い。 そして、小石が転がるような足音も途絶えてしまった。
(・・・気を抜けない・・・)
竹林を風が通る音、水の流れる音・・・それ以外は静寂に包まれている。 自分の鼓動が最も大きな音を奏でていた。
「な、何者だっ!? 姿を現せっ!」
恐怖心から俺は叫んでいた。 自分を鼓舞する為、紅葉達に危険を知らせる為、あわよくば見えない相手が出てくる事を期待して・・・
・・・・・・
変わらない自然音と、自分の鼓動のみだった。
先に動いたら危険だろうか? 防具も武器も万全だ。 ゴブリン戦を考えれば、生まれ落ちたばかりの爪でミミズ腫れを起こした程度だった。 成長したゴブリン相手でも致命傷は負わないだろうと考え、俺は一歩後ずさった。
ザッ・・・ガラッ・・・
俺の後退に合わせ、何者かも動いたようだ。 小石が崩れ落ちた音が近くで鳴った。
周囲への警戒は怠っていない。 もちろん構えも解いてはいない。 見極めようとしているが、目視では見つけられていない。
(何が来ようとも対処してやる! 生き延びてやるっ!)
ポフッ!
背後から左肩に触れられた感触があった。
「う、うわっ!? クソッ!」
ブンブンブン、ドサッ ブンブンッ!
がむしゃらに剣を振り回しながら、俺は前に飛び退いた。
すぐさま向き直って、この事態の張本人を直視すると・・・
片腕を落とした遺体だったはずのエルフが立っていた・・・
(ど、どういう事だ!? 片腕は、さっき剣を振り回した時に切り落としたのだろうが・・・なぜ。。。)
焚火の明かりを目指してジリジリと相手を中心に回り込んでいく。
ザザッ・・・
焚火に近づいていくと相手がハッキリと目視出来るようになった。
(見間違いじゃないか・・・)
どう見直しても血の気が全く無く、青白い肌をした真っ赤な髪と真っ赤な瞳のエルフの女性が立っている。 ストレートパーマでも掛けたような滑らかな髪の毛は風になびき、揺れる炎で照らされた顔は微笑んでいるかのような表情で不気味さを醸し出していた。 腕を失った肩口の断面は、周囲の暗さによる影響では無い肉の黒さ、そして白い骨が見えているが血は流れていない。 腕を失った事に気づいていないのか、はたまた意に介していないだけなのだろうか・・・ジッと相手から目を離さず思考をフル回転させていた。
「あらあら・・・いきなり腕を切り落とすなんてビックリしちゃったわ~」
「っ!?」
突然、目の前のエルフの遺体から声が発せられた。
「お、お前は何者だっ!?」
陽が落ちて暗がりで揺れる炎のみが頼り・・・たった一人でこんな状況は正直怖い。 バクバクと心臓が鳴り響き、剣を握った手は小刻みに震えている。
「私は、ただのエルフよ~? そんなに怖がらなくても大丈夫よ~」
目を閉じて声だけ聴いていたら、おっとり系でほんわかした気持ちになる温かみがあるのだが・・・。
整った顔立ちではあるが、その姿を見てはほんわかしない。 土汚れ等だけなら、アリスと同じように俺は萌えただろう。 ただ、生気を感じられない肌というか、遺体だったはずの相手が立ち上がっている事の恐怖心が可愛さを超越していた。
「お前はなぜ・・・何故動いている? なぜ生きているっ!?」
赤髪のエルフに剣を突き付けながら俺は叫んでいた。
「ん~・・・言って信じてもらえるかしら? 私って生前すごい魔法使いだったのよね~。 集大成って感じ? 生前に準備しておいた魔法でこうなってるのよね~」
言っている事を真に受けるなら、俗に言うゾンビとして蘇ったって事のようだ。 この世界に来て、初めて魔法の存在が判明した。 恐怖半分、魔法にワクワク半分といった心境になっていた。
「・・・、分かった。。魔法か。 なら何故、俺の肩を叩いたんだ? それに、何故見つけた時に動かなかった・・・?」
「あら? すんなり信じてくれるなんてビックリ~。 あなたって変わってるのね~」
「お前を信じた訳じゃない。 理解できない事を放棄して、別の話へ変えただけだ。 そんな事より質問に答えろ」
「え~・・・だって、おろもしろそうじゃな~い?」
「は?」
赤髪のエルフは身も蓋も無い事を言ってきやがった。 面白そうだったから、俺達が発見した時に動かず、驚かしてビックリさせて遊ぼうとしたって事か? 恐怖心が段々とイライラに変わっていく。 のんびりした声色が煽っているかのように感じて、手の震えは別の感情に染まってきた。 真っ二つにしても良いだろうか?
「・・・よいしょっと。 その剣、よく切れるわね~」
赤髪エルフが切り落とされた右腕を拾い上げ、断面をマジマジと確認してから肩にぐりぐり押し当てている。
「右手だけじゃなく、体ごと真っ二つにしてやろうか?」
「それは歩く時、困るからや~め~て~」
左右の手のひらを前に突き出して、嫌々と振っている。
「・・・腕、繋がるのかよ・・・」
「すごいでしょ~?」
頭が痛くなってきた。
襲ってくる気は無いようだが、細かく切り刻んで焚火で燃やそうかと迷い始めていた。
「サトシー!」
「・・・おっ! 紅葉か。 おかえり」
「ただいまー って、どういう状況・・・?」
赤髪エルフと対面して剣を構えた俺の背後から、紅葉が話しかけてきている。 もちろんエルフからは目を離さない。 紅葉からは警戒というより、ナニコレ?といった疑問100%の発言だった。
「俺も・・・聞きたいくらいだ・・・」
「サトシ、大丈夫・・・?」
げんなりとした俺の発言に紅葉が心配してくれていた。 やはり紅葉は心の救いであった。
「あらあら~ キウィさまかしら~? とっても可愛らしくなっちゃってますね~」
「キウィ様・・・?」
俺と紅葉の声が重なり、隣に並んだ紅葉の顔を見てお互いに首を傾げた。
「キウィじゃないよ? 私は紅葉!」
「あら? 変ね~・・・」
俺は構えていた剣を鞘に仕舞って警戒を解く事にした。 警戒の必要は無さそうなのと、話が長くなりそうだった・・・
「・・・ママっ!?」
背後からアリスの声が響いた。 ハッキリと、ママと・・・。
「あら~ アリアちゃんひさしぶりね~、元気だった?」
「ちょ、ちょっと待って、ママ・・・どうして・・・」
赤髪エルフはアリスの母親のようだ。 アリスもかなり戸惑っているようだが、俺と紅葉は完全に置いてけぼりである。 アリス達は二人の世界に入っていくようだったので、取り残された俺と紅葉は茫然としていた。
「サトシ・・・どうしよっか・・・」
「まぁ・・・焚火にあたろうか・・・。 晩御飯用の肉とか持ってきた?」
置いてけぼりの俺達は、考える事をやめて晩御飯の事に注力する事に決めた・・・。
「どうして・・・ママは、パパを追って・・・死んじゃったはず・・・」
「アリアちゃん忘れたの~? ママは、すごい魔法使いだったでしょ~? 試行錯誤の結果よ~ 確かにパパは起こせなかったけど、わたしの時はしっかり準備していたから成功したのよね~」
「で、でもママの研究って魔宝石じゃなかったの・・・? 魔宝石の有効活用や、遺伝についてとか・・・」
「もぉ~アリアちゃん、魔法のお勉強苦手だからって避けてばかりいたのね~・・・」
「し、仕方ないじゃないっ・・・」
「ママは、村一番の攻撃魔法の使い手であり、回復魔法の使い手でもあり、新たな魔法の探究者でもあったんだからね~? 村の学校にも像が立ってたんだけどな~」
「・・・ごめんなさい・・・学校辞めちゃってたから・・・」
「そうだったの・・・ママが居なくなってから、色々大変だったのね・・・助けてあげられなくてごめんね。。ダメなママで・・・」
「そ、そんな事はもういいからっ! で、でも・・・ほんとにママなの・・・?」
「アリアちゃんったら疑り深いんだから~ ん~・・・それじゃぁ・・・。 8歳の頃に幼馴染のリュウ君に、“魔法使えないアリアとは付き合えない”ってフラれて、ママに1週間泣きついて離れなかった時は大変だったわ~・・・。 それに一緒に寝てて、12歳になっても頻繁にわたしをおしっこでベタベタにしてくれたわよね~・・・ 他にも~・・・」
「も、もうやめてっ!! わ、わかったから・・・ママに間違いないわ・・・信じるから。。」
アリスは崩れ落ちるように、河原に膝と手をついていた。
「なぁ、紅葉・・・アリス大変だな・・・そういえば、今何歳なんだろうな」
「というか、あの赤い人は死んでたんじゃなかったの・・・?」
「えっとね・・・」
紅葉の疑問に、俺は聞いた限りの内容を話しながら、晩御飯用の肉を焼いていた。
「でも、わたしが起きたら、家も村もボロボロだったから心配したわ~・・・アリアちゃんが無事で良かった~」
「生きてるって意味なら無事だけどね・・・ほら。。。」
「っ! アリアちゃん・・・その魔宝石の色は! あの人としちゃった~? 初めてはどうだった~? 痛かった? 優しくしてくれた~?」
「っ!? 違っ! あいつじゃなくて・・・そうじゃなくて・・・ゴブリンに・・・」
「まあ!? 家も村も・・・そういう事だったのね~ それでも、アリアちゃんとこうして会えてわたしは幸せよ~。 生きていてくれてありがと~」
「っ・・・ママ・・・」
俺と紅葉は二人を生暖かく見守り続けていた。
「紅葉・・・アリス達、遂に抱き合っちゃってるな・・・」
「家族の再会・・・だし?」
「家族の再会は良い事だよな・・・」
ゴブリンに犯された娘と、ゾンビになって復活した母親が生きている事に喜び合い抱き合っている。
母子の感動のシーンを前に、俺と紅葉はお互いに複雑な気持ちだった。
「・・・俺達だけ先にご飯食べててようか・・・」
「・・・うん・・・」
焚火で暖を取りながら、俺と紅葉は串焼肉を一本ずつ食べる事にした。 アリス用の串は、生焼けのまま熾火から離しておくことに。
どれだけ時間が過ぎただろうか?
月は頂点を超え、暗い森の陰に向かっていた。
「サトシさん、ありがと~ね 娘がお世話になったみたいで~」
赤髪エルフゾンビから感謝を受けて、焚火の前でウトウトしていたがまだ寝られないようだった。
「ふあぁ~・・・ たまたまですよ。 娘さんが生きようと諦めなかったからですよ」
眠い目を擦りながら俺は答えた。 河原に座り込んでいた俺の太股では紅葉が丸まっている。 俺が喋っていても起きる気配が無いようだ。 立ち上がって起こしてしまうのもあれなので、赤髪エルフゾンビとはこのまま話す事にした。
「あなたが居なかったら、娘は亡くなっていたはずだから、謙遜しなくていいのよ~」
「・・・ふぁ・・・そうですか、感謝受け取っておきますね・・・・そういえば、魔法があるんですよね・・・? 自分にも使えますかね・・・?」
「ん~・・・才能が重要だけど、大体の人は一つくらい使えるはずよ~」
「おぉ・・・! 教えて貰えますかね」
「アリアちゃんの恩人の頼みだし、断る訳ないわよ~ でも、今わたしは魔法使えなくなっちゃてるから、知識くらいしか伝えられないけど許してね~」
「・・・十分ですよ・・・そういえば、アリスにはどんな魔法が?」
「アリアちゃんはちょっと特別で~」
「アリスも実はすごい魔法使いだったりするんかな?」
「そんな事より、サトシさんはアリアちゃんの事どう思う~?」
「どうとは?」
「アリアちゃんって、結構人見知りする子だったのよね~。 でもわたしに似て、可愛いでしょ~?」
この人、自分の事を可愛いと言い切ってるな・・・。 すげー自信家だと呆れ半分といった心境だった。 確かに可愛いのだ・・・ゾンビだし、何歳なのかさっぱり分からないが娘が居るくらいだから結構な歳のはずだろう。
良くアニメの世界だと、娘より童顔で可愛い母親とかが居たりするが現実じゃあり得ん。 化粧でごまかしたりとある程度はカバー出来るだろうが、可愛いというより綺麗と言うべき領域なはずだ。 この母親はどう見てもすっぴんだ。 目元にシワ1本すら見当たらない。 生気の無い冷たい肌と言う事に目をつぶれば、青磁器のような透き通る白さと艶やかさがあり、赤い髪と目・肌とのコントラストが映える。 若干タレ目な感じが、ツリ目気味の娘以上に幼さを感じさせる。 胸部は娘のアリスの方が俺の趣味に合っているが、母親は小さく無く十分な主張をしている。 巨乳では無いが、整った均衡が素晴らしい。 布切れを巻いただけの簡素な服は、そのスタイルの良さを隠す事は出来ていなかった。 ロリで美乳とかレベルたけーなおぃ・・・と突っ込みたくなった。 ツンデレ少女も好きだが、この母親には庇護欲が湧いてくる。 娘とは違うベクトルの可愛さを纏っている上に、美乳というエロ要素まで持ち合わせている。 ゾンビだって事以外は。
「確かにアリスも、あなたも可愛いと思いますよ」
「あら! こんなわたしにまでありがと~ アリアちゃん! サトシさんが、可愛いって~」
「き、聞こえてるからっ!」
アリスと赤髪エルフゾンビが何か言い合っている・・・まぁどうでもいいか。 そんな事より・・・
「おーい、アリスー・・・」
あぁ・・・眠い・・・眠いぞ。。。どんどん頭はボーっとしてくる。 赤髪エルフゾンビへ顔を向けると、後ろに隠れるようにアリスが顔を真っ赤にしていた。
「アリス、どうした・・・? あー、串肉1本あるけど、まだ生焼けだからもう少し焼いて食べるといいよ。 お母さんと分けてな・・・」
「あ、え・・・ぅん・・・分かったわ・・・」
真っ赤になったアリスはボソボソと答えていたが、串肉を焼き始めたのを確認出来た事に俺は満足し、意識はそこで途切れた。
「アリアちゃんの事よろしくね~」
赤髪エルフゾンビの言葉は、夢の中に埋もれていったのだった。
不意にイメージが湧いてきたのでサクッと追記
Youtubeでディスカバリーチャンネル見つつ・・・(便って魚の餌になるんですね(ぉぃ)
思いついてるシナリオが2つあるのですが、どっちにしようか悩む・・・
まぁ寝て、夢にでも浮かんだ事を書くか~




