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11-1.目覚め(11日目)

遂に少女が目覚めるっ!

 陽は森の木々を越え始めカーテンの無い部屋にも眩しいほどの光が射し込む頃、女性は目を覚ました。


--------------------------------------------------------------------------

 「・・・ん・・・ここは・・・?」

 体中が痛い、だがあの頃より遥かに和らいでいる。 肩はまだ上げると激痛が走るが、見た事も無い白っぽい布が貼られていた。 独特の刺激臭があるようだが、腫れて熱を持っていた肩や腕がこの布のお陰で癒えてきているのだと直感が知らせている。


 (どんな理由で、誰がこんな事を・・・)


 治療されている事に感謝する気持ちはあっても、恨む気はさらさら無い。 ただ、謝礼として返せる物を何一つ持っておらず、そんな事は助ける時点で分かっただろうに何故・・・。 弱りきってボロボロだった自分を助けるメリットなど、ある2点を除いて他は考えられなかった。


 (ここが安全とは限らないか。 特に物音は無いし、警戒は怠らず周囲を確認しなきゃ・・・)


 立ち上がり、周囲を確認したが・・・


 「はぁっ!?」

 慎重かつ静かに行動するつもりだったが、あまりの驚きに声を発してしまい、慌てて口を手で覆った。 自分が寝かされていた状況を目の当たりにし、突っ込む部分が多過ぎて何から確認すれば良いのか皆目見当がつかなかった。


 自分が寝ていたのは、岩や砂地,草の上ではなかった。 寝ている時に地面の状態が把握できず、不思議な柔らかさだとは思っていたが、見た事も無い謎の袋状の物の上で寝かされていた。 麻や綿、絹とも違う。 これは一体・・・?


 まだある、目が覚める時にとても暖かく生まれて初めてだと感じられる程に気持ちよく目覚めていた。 正直あのまま寝ていたいと思えるほど。 森の民として生きてきた自分達にとって、起床は日の出と共にあった。 そんな自分が例え怪我や疲れがあったとしても、これほどまでに起床に苦しめられる事など無かった。 その力たるや、連日続いていた暴行での目覚めと同等か、自我がしっかりとある分こちらの方が強力かも知れない。 これは危険物なのではないだろうか・・・? 色は暗い灰色でモコモコとして、そしてフカフカとしていて・・・あぁぁぁーーー・・・っ!? 危ない危ない・・・また飲まれてしまう所だった。 これは間違いなく危険物じゃんっ!


 更にだ・・・。 目覚めた場所は、記憶が曖昧だが水音のする方へ逃げていた筈だから、川か滝だろうと想像していた。 だが、ここは周囲が真っ白な壁で覆われていて、所々に木目のような木の色合いを模してはいるが地面も含めて全てが本物の木では無い・・・。 それに風を全くと言って良いほど感じない。 光は嫌というほど射し込んで来ているのに、当たり前のようにあるはずの風が無い。 木々の葉が擦れる音すらもここではしない。


 まだあった、自分の纏っていた唯一のボロ切れは無くなり、身ぐるみ盗られた状態ではあったが全身とても綺麗な状態であった。 ここ数ヶ月は碌な水浴びも出来ず、自分から発せられる異臭すらも苦痛に感じていたのだ。 それがこうも綺麗になっているとは・・・よほど自分を高く買ってくれているのだろう。 


 極めつけは・・・数年に1回見られるかどうかという伝説的な果物が自分の寝ていた付近に置いてあったのだ。 もちろん水の入ったような透明な入れ物や、見た事も無いこれまた水の入ったような容器も同様にあったが、驚きは今までの全てをこの果物が圧倒していた。


 果物の周りに罠が無い事を入念に確認し、ゆっくりと手に取った。


 「・・・やっぱり、どう見ても神果(シンカ)だよね・・・」


 どうしてこんなところに・・・。 これ(神果)の価値は計り知れない。

 数年に1回見られるかどうか・・・というのは村の祭事での事だ。 それは村に住んで頂いている神の遣い様が村民に神託を授ける場であり、神果(シンカ)は村の安寧を願う神の遣い様が、何ヶ月も森に入り、苦労されてやっと数年に1個見つかるかどうかという代物だ。 それを不治の病に掛かった者や戦で功績を挙げた者に少しずつ分け与え、病は完治し更なる功績を約束する程の効力を持っている。 その為、全知全能,不老長寿の薬の源とも言われており、度々商人等がどこから嗅ぎ付けたのか村に踏み入っては来るが、神果(シンカ)は見つかる事も無く、森に入った商人や冒険家は皆一様に戻ってくる事は無かった。 極稀に祭事のタイミングに居合わせた商人へ、神の遣い様が金品で神果(シンカ)の一部をお売りになってはいたが、それも村の繁栄を願っての事だった。


 数年ぶりに見た神果(シンカ)によって、村で過ごしていた思い出が止め処なく溢れ、同じように涙が溢れてくる。

 だが・・・もう村に戻る事は出来ない。

 涙を痣だらけの腕で拭い、もう一度自分の周りを見渡した。


 そういえば・・・あまりに沢山の驚きがあって、もっとも重要な事を忘れていた。

 自分はゴブリン共に孕まされそうになった所を必死に逃げてきたが、昨夜だろうか? 目覚めたら自分のお腹がパンパンに膨らんでいて、その激痛と恐怖で気を失っていたような気がする。 あれはただの悪夢だったのだろうか?

 ゴブリン共は、多種族の雌に種付けをして孕ませ同族を増やす習性がある。 不思議な事に他種族の雌から生まれる子供は母親を受け継がずゴブリンとして生まれてくるという状況なのだ。 その上、種付けされてから数日で出産に至る程の成長速度を持っており、一般的に雌は監禁され僅かばかりの食料を与えられ続け、生きた繁殖道具と成り果てる。 数回の出産で多くの同胞はその急激な繁殖によって力尽きて死に至る。 また、死んだ後も食料として食い尽くされるのだ。 その上、生まれたばかりのゴブリンの子供と言えど一定水準の戦闘能力を有しており、武器としての爪もすぐに使用出来るほどに鋭い。 逃げようとする多くの同胞が、出産時に生まれたばかりの空腹なゴブリンに食料として殺され餌となる等、あの悪夢のような生活の中で嫌というほど聞かされていた。 ゴブリン共に掴まったら中々逃げる事は出来ない・・・今は亡き村の長老がゴブリンの暴行から逃げ延びた貴重な存在らしいが、それは奇跡的に通りかかった強力な冒険者の手によって命を救われたに過ぎない。 長老は亡くなるその日まで、ゴブリンの恐ろしさを伝え続けていたとされる。 


 今、自分が無事で居るという事は、当時の長老のような奇跡を体験できているとは到底思えない。 妊娠はただの悪夢だったと考えられる。 この場所はあまりにも清潔だ。 あれの出産が本当に起こっていればこんな状況では済まない。


 良かった・・・本当に良かった。


 悪夢だったと安堵し、自分の下腹部をゆっくりと撫でながら下を向いた時、私は絶望した。

 「イヤァァァーーーーーーーーーッ!?」

 夢ではっ!? 悪夢ではなかったのっ!?  現実だったっ!?

 立ち上がり肩幅ほど足を開いた時、股から萎縮したへその緒の残りが出てきたのだ。 気が動転し、冷静になどなれず悲鳴を上げ、先程危険物だと考えていたフワフワのモコモコに包まって頭を抱えた。


 (嘘だ! 嘘だ! 嘘だと言ってよ・・・ねぇっ! 誰か助けて・・・)

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 陽が頂点に達する頃、一際大きな悲鳴を聞いて俺は目が覚めた。


 「・・・っ!? 紅葉(もみじ)! 今の聞こえたか!?」


 「・・・なぁーにぃ・・・? まだねむぃ・・・zzZZ」


 毎度の事だが、紅葉(もみじ)は朝に弱い。 昨日というか、寝たのが早朝だったので6~7時間寝たって所だろうか? 以前なら十分寝ている時間だがここに来て以来、陽と共に生活する感が強かったので、遅くとも21時頃には寝て、そして早くても5時に起きるといった生活だった。 9~10時間は眠っている計算なのだ。 昨日は疲れたし、仕方ない気もするが紅葉(もみじ)の聴覚や嗅覚は頼りになるので何としても起こしたかった。

 「おぃっ! 眠いのは分かるけど、起きろって。 さっき悲鳴が聞こえた気がする」


 「・・・ん~・・・まだ寝たいのにぃ・・・今も何か泣いてるみたいなぁ~声が聞こえるぅ~・・・zzz」


 流石紅葉(もみじ)だ。 俺には聞こえないような微かな声が聞こえているようなのだ。 確実に彼女(エルフの少女?)が目覚めたという事だろう。 ただ、また悲鳴とは・・・ほんと大変な人生歩んでる子だな。 同情するよ・・・ってそうじゃない、起きたのならなお更紅葉(もみじ)が居た方が良さそうだ。 苦労してる彼女(エルフの少女?)の前に、男の俺が現れる事は悪夢のフラッシュバックに繋がる可能性が高い。 動物を使った心の治療って感じに、紅葉(もみじ)に活躍してもらう事を期待しているのだ。

 事前にその事を説明できていれば・・・


 嫌、嫌と目を閉じたまま断固として起きる気の無い紅葉(もみじ)を抱き起こしてくすぐる等して苦労して起こす羽目となった。

 ぷんすかだよっ!と言いつつ俺の肩に飛び乗り、首に巻きついては来るが、昨日の様に苦しくは無い。 不満はあるけど怒っている訳ではないのだ。 もう何度も経験しているから何となく紅葉(もみじ)の気持ちは理解しているつもりだ。


 身支度している猶予は無いと考えたが、紅葉(もみじ)だけは濡れタオルで血を落としておいた。 俺は血で汚れた装備のまま外に出る。


 (外には出ていないようだな)

 彼女(エルフの少女?)を寝かせていた部屋に向かう途中、さっきの俺の考えを紅葉(もみじ)に伝えておいた。 意図を理解してくれたようで、第一コンタクトは紅葉(もみじ)が行う事となった。


 ガチャリ・・・

 「紅葉(もみじ)、宜しくね。 扉は開けておくから、危険だと思ったらすぐに叫んで逃げて来い。 俺はここで待ってるから」


 「うん、任せて!」


 開けた扉から見える範囲には彼女(エルフの少女?)は居ないようだった。 早速紅葉(もみじ)は寝室へと向かったようだ。


 俺は紅葉(もみじ)の報告を待つか・・・。 俺は扉の横で剣と盾を握り締め、晴天の青空を眺めていた。


 開け放たれた扉から、室内へ昼間の暖かな風が入り込む。

--------------------------------------------------------------------------


 悪夢は()()()ではなかった。 あの忌々しい記憶も、昨夜の激痛も全て()()だったんだ・・・。

 

 私は、フカフカのモコモコに優しく包み込まれている。 自ら危険なものに触れ潜り込んだのだが、もうどうにでもなれ!という自暴自棄になっていた。


 自分が処女であれば、より安全で優位な立場で交渉できる可能性があったのだ。


 私達(エルフの女性)には、生まれた時から持ち得る魔宝石という物がうなじの部分にある。 これは適切な場所で適切な施術を施せば、私達から安全に取り得る事ができる。

 そして強力な魔法具としての素材や、不老長寿としての秘薬として珍重されている。 不老長寿については実態が定かではないが、私達種族の平均寿命は500歳であり、この事実が一人歩きして不老長寿の秘薬と噂されているのではないかと言うのが種族間でのもっぱらの話題である。 ただ、前者については一切偽りが無い。 強力な魔法具を得るには、年老いたエルフで処女の女性との信頼関係を得る事だとさえ言われる程のレベルである。

 私達は自然の魔力と感応が高く、特に女性はそれが秀でている。 長い年月を掛けて、本人の意識とは別にうなじの魔宝石には、魔力が蓄えられていく。 蓄えられる魔力量やその速度も個人差はあるが、一様に無色でどんな宝石をも凌駕する程美しいともされている。 陽の光にかざせば光を何十倍にも増幅したような輝きを放ち、放たれた光は周囲を虹色に染めるらしい。 宝石としての価値もあり、貴重で高価な物とされているのだ。


 (だけど・・・)


 妊娠を起点に、無色だった魔宝石はその色を変える。 色は千差万別だが、一般的に濁った色になってしまうのだ。 そして変色と共に、その魔宝石の持ちえていた魔力は失われ魔法具としての価値が無くなり、不老長寿としての秘薬や宝石としての価値も大きく下がるのだ。


 ただ、村で教えられていた子供への魔力の継承で、魔宝石の魔力が失われるという説に私は懐疑的であった。 種族存続の為に、当然複数の子を産む事がある。 だが、第二子以降に女の子が生まれようが同様に魔宝石を持って生まれてくるし、その魔力蓄積量や速度についても第一子との差は無いとされているのだ。 私はそれを解明するための研究を、両親から引き継いで調べていた。 だが・・・何も掴めないままだ。


 (もう、私の価値は・・・)


 私には、エルフとして妙齢な外見を長く保ち続けられる事による遊女の様な価値くらいしか残されていないだろう。

 ゴブリン共の暴行から命からがら逃げ延びたけど、場所は違えど余生は望まない相手に体を売り続けるしかないのだろうと絶望していた。


 そんな事を考え、自分の人生を憂いでいると突然物音がした。


 ガチャリ


 「っ!?」

 今、確実に物音がした。 驚きと警戒から全身が硬直している。 震えそうな手を押さえ付けて、息を潜め耳を澄ますと何やら話し声も聞こえるが、ここからでは聞き取れない。 何か物音が近づいてきた・・・軽い、とても軽い物音だった。 何だろうと顔を出したい気持ちもあったが、恐怖心の方が勝っていた。

 (これまで・・・かもな)

 半ば諦めて死を覚悟していると、予想外に軽い声が聞こえてきた。


 「私は紅葉(もみじ)だよ。 泣いている様だったけど大丈夫? 何か困った事があった?」


 私は混乱していた。 油断させる策略だろうか? 声からは危険性の欠片もないような軽い声音だった。 それに私の身を案じてくれているようだ。 そう言えば、神果が合った事を考えるともしかすると・・・あの時亡くなられてしまったものと考えていたが、まさか!?


 「神の遣い(キウィ)様!?」

 先程までの恐怖や不信感は全て消し飛んで、フカフカのモコモコから飛び出し、その名を叫んでいた。


 「キウィ様・・・?」


 目の前には、小さな子狐がちょこんと行儀良く座っており、私の発言に首を傾げていた。


 キウィ様も実体は狐であった。 だが、長い年月と持ち前の魔力によって変身を会得されており、私達と同じような姿で過ごされている事が多かった。 ただ、狐姿の愛くるしさも素晴らしく、村の中では秘密裏にファンクラブがあるほどだ。 日夜情報を交換し合い目撃情報や、中にはキウィ様を抱きしめてモフモフ(・ω・*)したなんて自慢をしてくる者も居た。 もちろん、私もそのファンクラブの一員である。


 「・・・は、はい・・・」

 当時のキウィ様より目の前の子狐は小さな方だったが、子狐の姿にも変身してファンクラブの面々を撒いて逃げてしまわれる時もあった。 何か大事な事を言っておられたような気もするが、間違いないだろう。 我が村の守り神であり、アイドルのキウィ様だっ!


 私は両手を広げて少しずつ子狐に近づいていく。

 息は荒く、手は震えている。 仕方ないだろう、ファンクラブの一員としてキウィ様を抱きしめる事は一生涯の夢なのだ。 私は夢を達成させた者達の自慢話を聞くばかりで、機会を得る事は叶わなかったのだ。 だが! 今その夢が叶うのだ! 高鳴る胸を抑えられず、どんどん近づいていった。


 「えっ・・・? えっ!? ちょ、ちょっと怖いんだけど体調は大丈夫みたい・・・?」


 「はい、もちろんです! 今元気になりました! 全てはキウィ様のお陰です♪」


 「・・・? あの・・・私は紅葉(もみじ)だよっ!」


 「何をおっしゃいますか、キウィ様♪ ただの村人ならいざ知らずファンクラブ会員002番の私を欺いたりは出来ませんよv」


 「た、多分、(ひと?)違いだと思うんだけど・・・」


 「可愛いと抱きしめられる事をキウィ様は苦手だと仰っていましたもんね・・・でも、後生です。 まだ私は一度も経験が無いのです。 どうかお願いします・・・」

 紅葉(キウィ様)は少しずつ私から後ずさり始めていたので、泣き脅しと言われても後悔は無い! 私もモフモフしたいのだ。 お願いします。 お願いします!


 「・・・っ!?」

 私の手がもう少しで紅葉(キウィ様)に届くという所で、紅葉(キウィ様)は一目散に逃げ出してしまった。 私の寝かされていた場所とは違う方へ向かわれたようで、今更ながら最初には無かった風を感じる事に気づいた。 紅葉(キウィ様)は外にお逃げになったようだ。 こんなチャンスは二度とない! 私は諦めないっ!


 「キウィさまーーーっ!」


--------------------------------------------------------------------------


 タタタッ トッ!


 「さ、サトシーっ! あの人大丈夫みたいだけど、ちょっと怖いっ!」


 走ってくる足音がしたので、玄関に近づくと紅葉(もみじ)が胸に飛びついてきた。 彼女(エルフの少女?)が大事無いと分かったので一安心であるが・・・ちょっと怖いとはどういう事だろうか? 紅葉(もみじ)を抱えつつ玄関口を覗くと、そこには天使が居た。


 「イヤアァァァァッ!? 大型ゴブリンっ!?」

 

 ダダダダダダッ ボフッ・・・


 天使は一瞬で消え去った。


 一瞬の事であったが、俺の脳内カメラは鮮明に彼女(エルフの少女?)を捉えていた。

 髪はプラチナブロンドと言うのだろうか? とても淡く黄色がかった銀髪のような輝く髪である。 栄養失調が原因と思われるが、毛先に近いほどボサボサとしてしまっているのが惜しい。 ただ、生え際の周りは天使の輪とも言うべき神々しいくらいの輝きを放っていたので、今後の展望は計り知れない・・・。 顔も痩せこけてしまってはいるが、小鼻で鼻筋が通っており童顔にありがちな丸顔になるだろう希望も持てた。 カサカサに切れた唇や、目の下のクマ等も今後の健康管理次第で改善するだろう。 そうそう、忘れてはいけない肝心な部分があった。

 目だ! とても綺麗な淡い青色、いや何と表現するべきだろうか・・・アクアマリン(宝石)よりも青みが強い透明感のある色の目をしていたのだ。 プラチナブロンドに水色の目! 素晴らしい組み合わせじゃないか! そして俺が大好きなロングへアーときたもんだ!


 まだまだあるぞ、既に確認済みだったが優しく濡れタオルで拭かれた体も予想通り今後の美しさを期待させるものである。 細く弱々しい首、狭い肩幅、女性らしさを示す胸部は慎ましくも確実にその存在はアピールしており、淡いピンク色の先端も可憐さを引き立たせている。 ここも栄養失調の影響だろうが、あばら骨が浮いてしまっているのは悲しい。 しっかりと栄養を取ってもらって早く肉付きを取り戻してもらいたい所である。 身長は140cmくらいだろうか? 小柄である。 可愛い・・・可愛いぞ! しかし、所々の痣はきっと癒えない部分もあるだろう、俺は彼女(エルフの少女?)を傷つけた輩を絶対に許さない! そう言えば、下腹部も毛髪と同じような色の毛があるようだ。 無毛だろうが剛毛だろうがどっちもいける口なので、今後じっくり見せてt・・・おっと思わず前かがみになってしまいそうだった。 危ない危ない・・・。


 (ん・・・? 脳内画像の閲覧に耽ってしまっていたが、ゴブリンがどうとか・・・)

 俺は、右を見た。 特にゴブリンや危険な者は居ないと思われた。

 俺は、左を見た。 右に同じく問題無さそうであった。

 俺は、更に後ろを見た。 左右に同じく森の中にも危険な気配は無いように感じた。


 俺の膝は、崩れ落ちた・・・。


 そりゃ、三十路過ぎて既に広くなってきた額は気になるし、年々厚みが無くなってきた気がする後頭部等色々と涙無くしては語れない部分も増えてきたさ・・・だが、奴らは無毛じゃん・・・。 まだ俺は・・・。 それに見た目だって、あそこまでグロテスクじゃないはずだ! はずだ・・・はずだよ。。うん・・・きっと・・・。 俺のガラスのハートは見事に砕け散っていた。


 「さ、サトシ・・・? 大丈夫だよ。 かっこいいよ! 私大好きだよ! あの人の感性がおかしいだけ! 大丈夫、大丈夫だから!」


 「・・・紅葉(もみじ)は俺の心のオアシスだよ・・・」

 遠い目をしたまま俺は紅葉(もみじ)に語りかけていた。 砕け散ったハートは、ガムテープで貼り合せて何とか形を保ったようだ。


 ひと悶着というか、大した事は無かったはずなのに色々とダメージを負って時間が経過していた。


 「さてと、前に進まなきゃだな」


 「うん、がんばろー!」


 やっと気力が戻ってきた俺は、立ち上がってこれからの行動を考える事にした。 というか、何とかしてあの天使(エルフの少女?)と会話が出来るくらいにはなりたいのだ。 色々な意味で切実なのである。


 今から行う事は、3点かな。

 ①彼女に安全である事を伝え、落ち着いてもらう。

 ②彼女の衣服を準備する。

 ③食事の準備をする。


 ②と③については、最悪前後しても良いだろう。 というか、腹減った・・・。 もう14時を過ぎていた。 朝御飯は寝過ごしたし、昼ご飯はバタバタだったし、これからやるべき事を考えればあっという間に夕飯時である。 ①、③を優先しよう。


 「紅葉(もみじ)、色々大変かも知れないけど俺じゃ彼女(エルフの少女?)を落ち着かせて話の場を設ける事は多分出来そうに無い。 だからここは安全であると分かってもらう事と、ご飯は肉を食べれるか? またはあの部屋に置いておいたペアーチなら食べれるかを確認してきて欲しい、俺は部屋に戻って彼女(エルフの少女?)の着れそうな衣服を探してくるよ」


 「むー・・・、分かったよ。 頑張ってみる。 私頑張るから、今日の夜は服の中に入って寝てもいい?」


 あまり乗り気ではない様だが、何とか引き受けてくれるようだ。 紅葉(もみじ)の願いは簡単なものだから即答した。 ただ、紅葉(もみじ)には要求してばかりなのでオマケも忘れない。

 「いいよ、朝もゆっくりしような」


 「やったー♪ 久しぶりにゆっくり起きれる!? サトシも一緒に!? わー♪」


 すごく嬉しそうでなりより。 ちょろいなぁ・・・と思いつつも、そんな紅葉(もみじ)がとても可愛かった。 というか、肝心な事全てを紅葉(もみじ)に丸投げしてしまっているので申し訳なさが多大に残っているが・・・。


 夜の約束を交わした後は、すぐさま互いに別行動となった。


 

うぉぉーやる気ビンビンだぜっ!(ぇ?

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