7-2.川再び(7日目)
再び川へ向かった結城。 今日の川はどうだかな~?
薄暗い森の中、周囲を見渡しながら足早に一輪車を押し進む。 家を出てから西にまっすぐ進むだけだ。
といっても、道は舗装などされておらず木の根や草が行く手を邪魔して進みにくい。
ただ、蚊や山蛭も蜂やムカデも出会っていない。 無菌状態で育てられた森と言えば良いだろうか? 生態系というものを感じられない森だ。 綺麗過ぎて違和感はあるが、寂しい森である。
リアルであるが、現実感が無い・・・ やはり異世界なのだろうと納得する。
今のところ危険な生き物とは遭遇していない。 昨日のように大型のイノシシに出くわした場合は逃げた方が良いだろう。 今回は秘策がありはするが、正直胸が痛い。 何も無い事を祈るばかりだ。
ほどなくして川の流れる音が聞こえてきた。
森を抜けて岩場に出ると、クーラーボックスとポリタンクを持って川へと向かった。
手で水をすくって何度か喉を潤した後、ポリタンクとペットボトルに水を入れ、クーラーボックスは近場に下ろしておいた。
周囲を見渡してみると、俺は頭が痛くなった。
予想はしていたが、やはり何かあったのだ。 こめかみを押さえつつも気を取り直して周囲を見渡す。
今回も茶色い物のように見える。 そして崖が近くにある。 しかし、最近崩れたような痕跡は遠目からでも無いと分かるほど崩落面は新しく無い。 それに前回も通った道なので、ここ数日の内に落ちたとしか思えない。 違和感しか無いが、今回もまた近づいて確認するしかない。
川辺を下流に向かって進みながら、慎重に近づいていく・・・
俺は言葉を失った。
(俺が置き忘れた、イノシシから剥いだ皮じゃねーか・・・)
ドキドキとワクワクを返してくれ! と言いたくもなるが、自業自得で悲しいだけなのでグッと堪えた。 せっかくなので回収しようと持ち上げると、またも絶句した。
毛皮の下に、斧が落ちていたのだ。
慌てて周囲を見渡したが特に変化は無く、ただ水の流れる音が続いているだけだった。 目の前の斧は銀色に輝いており、どう見ても金属製だ。 柄の部分は木製のようだがとても立派に見える。 金属製の刃の部分は60cm近くあるだろうか、かなり大きく重そうだ。
持ってみると、以外にもそこまでは重く感じない・・・。 重厚ではあるが、まるでアルミ製のような軽さだ。 だが、アルミのように簡単に石で傷ついてしまうような感じもない。 こんな物はどう考えても高度な技術で誰かが作成してここに置いていたのだと思われる。 俺の皮はこんなとこには置いていなかったはずで、風で飛んで偶然ここに被さったとは考えにくい。 近くに誰かが居て、生活している可能性が急浮上した。
高鳴る鼓動で胸が張り裂けそうだ。 嬉しいからでは無い。 友好的な関係を築ける保証が無く、製鉄できるような技術とその価値すら置いておける程度の物であること。。。
もし戦う事となったら、勝ち目は無さそうだ。 友好的である事を祈るしか出来そうに無い。。。
周囲に人影は無いが、盗むような事をして敵視されてはたまったものではない。
斧を元に戻し、皮を再び掛けておくことにした。
改めて周囲を確認するが、誰も居ない・・・。
長居するつもりは無かったが、想定以上に危険な場所かもしれない。
水場は生き物にとって重要であり、そして危険でもあるのだ。
手早く仕掛けていた竹籠を確認する。
何も。。。いや、入れたままの状態の肉が入っていた。 水に浸かり、数日経っているにもかかわらず何も変化が無い。 このまま焼いて美味しく食べれるだろう、そんな状態だった。
やはり川は不思議ワールドだった。 新たな事もいくつかあったし、今後川へ近づく時は今まで以上に警戒が必要だと思われる。
最大の目的である水を川で手に入れた俺は、逃げ帰るように水を持って森へと戻った。
森に入り15分程度経った所で、前方にイノシシが見えた。 獣道のようになった俺の一輪車道を、俺に背を向けて歩いていた。
(まだ、気づかれてはいない・・・)
一輪車を停めて、ナイフを手に取った。
ダダッ!
俺は一気にイノシシに向かって走り出し、ナイフを突き立てに行動した。 もちろんイノシシはこちらに気づいたが、逃げずに向かってきた。
(好都合だ!)
毎度のイノシシとの戦闘であり、慣れてきていた。 突進してきた所を躱して横っ腹を切り裂いていてやった。
イノシシは倒れ、キラキラと輝き始めやがて空へと散っていった。
俺は呆然とただ、状況を眺めていた。
現地調達した石槍でも、イレギュラーな俺の所持新のナイフでも、森で出会ったイノシシを食材とする事は出来なかった。 後に残ったのは銅貨1枚のみ。 拾い上げポケットに突っ込み、一輪車を押す作業に戻った。 帰り際にまたもやイノシシに遭遇したが、今度は石槍でも危なげなく倒すことが出来き、銅貨を更に追加する事となった。
陽は既に昇っている。 時計を見ると11時になっており、川で水を飲んだ以外何も食べていないので腹ペコだ。 早く昼飯の準備をしなきゃな。
毎度のコンロで焚き火をして、肉を焼く準備をした。
紅葉は特に出てこないので、まだ寝てる可能性が高い。 部屋に戻り、ベッドを確認すると膨らんでいる。
布団をめくると、卵を温め続けたまま寝続ける紅葉が居た。 起してしまうのも可哀想だし、先にご飯食べてしまうか。
俺は外に戻り、1人で焼肉を楽しんだ。 節約の為、ペアーチには手を付けずジップロック1/5の肉を食べて昼ご飯を終えた。
時刻は12時。 ペアーチの丘まで行って戻るのはギリギリ日の入までに帰ってこれるだろう。
今日は森を走り回る日だ。
俺は翌日の筋肉痛を覚悟しながら、バックパックにペットボトルを入れて森へと戻った。
今日は1時間半程度で打ったので、文字数少ないですがまぁいつも通りサクッと投稿。
水槽のエビ2匹が産卵してそれを眺めていた+長湯で打ってる時間が無くなると言う体たらくでごめんなさい。
おやすみーん。




