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5-3.森の探索(5日目)

果物を手に入れて満足していたのもつかの間、まさかの温泉発見か? どうなる5日目!?

 丘は陽当たりが良く日中体を動かしていると暑いくらいだったが、森の中に入ると木漏れ日程度となり背の高い木々に遮られて肌寒くなってくる。 まぁ山降り(くだり)をしている最中なのでじきに体も温まってくるだろう。

 

 ズルッ・・・ザ― ドスンッ ザザ――ッ  パラパラ・・・・・・


 「うぉっ!? いってぇ―、あっぶね。。。」


 露出した木の根に、落ち葉が覆いかぶさっていた所を踏んでしまったようだ。 足を滑らせて木の根か何かで尻を打った挙句に傾斜を少し滑り落ちて何とか止まったが、もう少しで崖から落ちるところだった・・・。 足から30cm程度先で小石が落ちていくさまは恐怖だった。


 (ちょっと軽率だったな・・・)


 連日大きなトラブルも無かったので、3日前にイノシシ(?)(ナニカ)に襲われた事もあったのに森の中で考えが甘かった。 怪我をしていない事が救いであり、意識を正すには有難かった。


 崖によって簡単には南下できなくなったので、崖の上から木々を支えに周囲を確認する事にした。

 (足場が崩れませんように・・・)


 崖は西側へ伸びており、東側は降る事が出来そうだった。

 滑ってからは石槍を杖に使いつつ早々に崖から離れて、東の山肌を降っていった。 一度休憩できる所を探そうと思ったが中々平地が無く、探すくらいなら進んでしまおうとなったのだ。


 降り終えると、森が途切れ岩場が現れた。

 盆地のような影響もあるだろうが、湿度と気温が上がっているように感じる。 硫黄臭も感じるので期待が持てる。 南西に目をやると、まだ上空に向かって水飛沫が上がっているので目印にも困らない。


 一度休憩を取ろうと、バックパックを下ろそうとしたらファスナーの隙間から顔だけ出した紅葉(もみじ)と目が合った。 いつの間にか起きていたようだが、想定していたとはいえ顔だけ出している状況は、ぬいぐるみでも入れているようでシュールだ。 だが可愛い。


 「おはよう紅葉(もみじ) 良く眠れたか?」


 バックパックに一度潜ったと思ったら、紅葉(もみじ)の下に入れてあったペアーチを咥えつつ器用に抜け出してきて、俺に渡してくれた。 お寝坊さんだが、この辺りの機転はすごいんだよなぁ・・・受け取ったのと反対の手で頭を撫でてやり、顎の下や首の後ろにかけてもわさわさしてやった。 手を離すとクゥーン・・・と名残惜しそうに鳴いている。

 「また夜ね、今はダメ」


 そう一言伝えると諦めてくれたようで、ビシッとお座りの状態となった。

 俺は受け取ったペアーチを半分に切り分け、紅葉(もみじ)が食べやすいようにくし型ぎりにしていく。 ナイフを片付けた後、紅葉(もみじ)にペアーチを食べさせつつ俺も半球にかぶりついた。 口いっぱいに広がる瑞々しい果汁を感じるには、かぶりつきが一番だと思っている。 手抜きとかでなく、こぼれる果汁を最小限に抑えつつ・・・何か野生的で気分がのってくるんだよ!(ワイルドだろう?なんていう幻聴が聞こえた気がするが気のせいだ)


 ワイルドな小休憩を経て、紅葉(もみじ)も進行に加わりつつ慎重に岩場を進んでる。 紅葉(もみじ)は崩落に巻き込まれた経験があり、俺もさっき崖から落ちそうになった経験を活かしつつ危なげなく進んでいく。


 時刻は14時に差し掛かっていた。 水飛沫を上げる噴水のゴーゴーという音に周囲の音はかき消されてしまっている。 あれだけの水が噴出しているのだから川か湖でもありそうなものだが、まだ見当たらない。

 噴水はここから丁度真西に見える。 ここからは西へ進もうと伝え、岩場を進み続ける。


 更に30分岩場を進んだところ、湖の真ん中から噴出する水柱を目の当たりにした。

 これも素晴らしい景色だ、絶景だな・・・


 湖に指先入れ、問題無さそうだと分かると手を入れてみた。 温かいと言うか熱かった。 50℃以上はあるだろうか。

 噴水からはかなり離れているが、風に舞った水飛沫がここまで飛んできており、湿度と気温が高い。

 特に今は西から東に向かって風が吹いているようで最悪な状況である。


 さて・・・湖から流れる川を下って行けば良い場所があるかも知れない。

 紅葉(もみじ)に目配せをして、湖の外周に沿って南下する事にした。


 湖周囲は岩や砂利地となっており、森にぽっかり空いた場所と言った感じである。 直径2kmくらいの湖の南端へ着いたところでやっと川の流れを見つけることが出来た。

 手を入れると、まだ50℃は超えていると思われた。


 川に沿って南下し始めたが、川はだんだんと東に逸れているようだった。

 正面に森が見え、川が右手へ逸れていっているのだ。 これは・・・大滝からの川とつながっている可能性がありそうだ。

 

                          【丘】



   【大滝】   【大木】       崖―――――――――

    |                      湖

    |                    湖【噴水】湖

   |                       湖

   |                       |

  |                        |

  |        【家】            |

  ↓                      |

  川                     |

          温水の川は大滝と繋がる? ← 


 どこも家から近いとは言いがたいが、思ったほど悲観するような立地では無さそうだ。

 

 水飛沫が舞って来ないとはいえ、温水によって湯気が立ち昇っており岩場はとても滑りやすい。

 足元に気をつけながら川の下流を目指す。

 だんだんと大きな岩が減り歩きやすくなってきたので、川の中に改めて手を入れてみる事にした。

 もう少しぬるくても良いかもな。 更に下流へ進むことを決めこまめに手を入れながら、進んでいくとやっと良さそうなところまで辿り着いた。 大体41℃くらいだろうか、今後もっと寒い時期になると上流へ行く事になるだろうが、この世界に季節があるのなら時期によって入るお風呂の場所が変わるのも面白そうだ。


 早めにテント設営を行い、ズボンを(まく)って靴下を脱いだ。

 紅葉(もみじ)には自由に遊んできていいよと伝えておいた。 森の中へ入っていったが大丈夫だろうか・・・。 少し心配ではあるが、俺もやるべき事がある。


 川岸の石を退けて深さを確保していく。 正直重労働だが、入浴願望が打ち勝った。

 約2mの円形に石を積み、円の内部は水面から50cmの深さを確保した。 サバイバル用のスコップでかなり苦労した作業だ。 底には一面小石を敷いて土で足が汚れないよう配慮している。

 円形の岩風呂は北東からお湯が入り、南西に向かって流れ出ていく。 流出口は風呂の底までしっかりと石を退けてあるので、汚れた水が滞留する事は無いだろうと考えている。

 これを今後いくつも作るのは骨が折れそうだ・・・

 今は土汚れで濁っているが、その内に濁りは取れるだろうと川から出ると火照った体が冷めていく。


 晩御飯を作ろうと薪を集め、石を積んでかまどを作った。 火を起こすと冷えてきた体が再び温かくなる。 紅葉(もみじ)はどうしただろうか?と気にかけた時、森からひょっこりと出てきた。

 そして驚いたことに、イノシシ(?)(ナニカ)を咥えている。 俺が苦労して倒したアレだ。 もう仮名はイノシシで良いだろう、決めていなかった事に今更ながら気づいた。

 色々と問いたい事もあったが、俺もだが紅葉(もみじ)もきっとお腹がペコペコだろう。

 撫でて感謝の言葉を伝え、イノシシを受け取り精肉を行った。 今回も皮と肉しかなく、とても可食部の多い不思議生物だ。 心臓(ハツ)肝臓(レバー)腎臓(マメ)等の内臓系や、部位毎の肉質を楽しめないのはダメだという人も居るかも知れないが、ハラミやカルビが好きな自分にとっては十分満足できる素材である。

 問題があるとすれば肉を持ち帰るためのジップロックが1つしか余っていない事だろう。 まぁ仕方ないと、入るだけ詰めてバックパックに入れておく。

 他は食べれるだけ食べてしまおう。 紅葉(もみじ)の好きなレアで肉ブロックを焼き、食べやすい大きさに切っていく。 トレーに山積みにした肉を前に、火の灯りだけだが目が輝いているのが分かる。 というか尻尾振りすぎだ・・・


 「紅葉(もみじ)が取ってきた肉だし先に食べて良いよ。 まだまだ沢山あるから欲しかったら、足元においで」


 紅葉(もみじ)にしては珍しく、ガツガツと肉を頬張っていた。 相当お腹が空いていたようだな。

 俺も負けじと肉を焼きつつ食べていく。 しばらくして紅葉(もみじ)が股の間に乗っかってきた。


 「追加の肉が欲しい?」


 紅葉(もみじ)が頷いているのを確認し、レアで肉ブロックをもう一本焼いた。 俺よりも食べているかも知れないな・・・あの体のどこに・・・? 仲間の胃袋がブラックホールだった事に驚愕しつつも、満足できた食事だった。 食後にデザートもあるしな♪


 闇が深くなり、気づくと20時になっていた。

 崩して座った俺の脚の中にいる紅葉を撫でながら時間を過ごし、食後の満腹感が解消されてきた。

 それでは、今日のメインイベントと行きますか!


 「紅葉(もみじ)、ちょっとお風呂入ってくるよ。 そこのお湯のとこ。」


 立ち上がる俺に驚きつつも、サッと飛び降りて何事も無かったかのように着いて来る。

 誰も居ないので、無造作に服を脱ぎ捨てた。

 手でお湯をすくって顔を洗った。 更に夜風で冷える体に湯を掛けた。

 (温かい・・・、これだよこれ!)

 すぐさま湯船に腰を下ろした。 夜風から逃れた体は心地よい温度に包まれていく。 顔は夜風で冷やされているが、この温・冷が露天風呂の楽しみだ。 熱くなれば縁に腰を下ろして上半身を冷やすのもアリだ。 空を見上げれば、満天の星空。 川の流れる音というか既に川の中の気もするが、周囲には森もあり自然の中で俺だけの時間が流れていた。 この空間を独占できている事にとても満足していた。


 ドボンッ!


 露天風呂の魔力で完全に忘れていた。 紅葉(もみじ)が湯船に飛び込んできたのだ。

 俺の方へと必死に犬掻きで泳いでいるが、いかんせん足が短すぎる上に尻尾が水を吸って沈んでいる。 紅葉(もみじ)の弱点をまた1つ見つけたようだ。

 ぼーっと見ている訳にも行かず、手を伸ばすとしがみ付いてきた。 溺れないように胸に抱きかかえておく。 自分には必要ないが、在って困る事も無いなと風呂外の石を少しずつ浴槽内に沈めていった。 浴槽内へ入る際のステップを作った。 紅葉(もみじ)でも足の着く場所を確保してやる事で溺れる事を防げると考えたのだ。 紅葉も新たに出来た浅いエリアで縁に顎を乗せてゆったりとしている。 寝てしまわないか少し不安になるくらいに顔が緩みきっている。


 大好きな風呂を堪能できるようになって、一気に生活は豊かになったな・・・

 思い出したかのように、一度風呂から出てペアーチを2つ持って風呂に戻ってきた。 火照った体には、常温の果物も冷たく感じる。 湯船に浸かりながら、うまい果物を食べる。 優雅だ・・・こんな生活は中々できないぞ。 この世界も捨てたもんじゃない。

 ペアーチを丸かじりしつつ、紅葉(もみじ)にも丸々1つをあげたが食べ難そうだったのでナイフを取りに戻るという羽目にはなったが今日は良い日だとしみじみと感じていた。


 ゆっくり1時間半風呂を満喫し、火照った体のままバスタオルを取り出し紅葉(もみじ)を拭いてテントに入れておいた。 俺も湯冷めしないように手早くバスタオルを使い、脱ぎ捨てられた衣服を着込んだ。

 バスタオルは1枚しかなかった上に、紅葉(もみじ)を拭いた時ですでに搾れるレベルだった。 俺も早々にテントに逃げ込んで、乾ききっていない紅葉(もみじ)と一緒に水を飛ばし合った。


 時間が経ち次第に乾いたところで、寝袋を取り出し一緒に潜って眠ることにした。

 「おやすみ、紅葉(もみじ)


 目を閉じると直ぐに眠気がやってきた。  温かな川のおかげでこの辺りは気温が高い。 まどろみの中で明日はどうするかな・・・と考える暇もなく俺は寝付いてしまった。


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 ●生活基盤

   ・水事情   ⇒ 残り22本のスポーツドリンク

            空のペットボトル2本【New】

            ポリタンクの水36L(-4L)【New】

            家の西・南側にある川で給水可能


   ・食料事情  ⇒ 冷蔵庫の中や缶詰、乾麺等

            ジップロック3つ分の肉【New】

            入りきらなかったイノシシ肉【New】

            肉が現地調達できる可能性・・・再上昇【New】

            ペアーチの実7個(-3個)【New】


   ・露天風呂  ⇒ 最高の完成度【New】


 ●取得物

   ・イノシシ(?)ナニカの骨×1

   ・銅貨×2

   ・ぐちゃぐちゃな水餃子×1

   ・ペアーチ×7個(-3個)


 ●仲間

   ・紅葉もみじ ⇒ 薄黄色で紅色の目をした狐

            寝起きが悪い【New】

            泳ぐのが苦手というか泳げそうにない【New】

            異次元胃袋【New】

少々明日は仕事が忙しくなりそうなので、もしかすると明日は投稿出来ないかもしれません。

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