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暖かい思春期

作者: チゴロ

  昼休みのベランダ。中学1年の冬は暖かかった。目の前いっぱいに広がる校庭には、たくさんの知らない顔が走り回る。小学校を卒業して9ヶ月。慣れないセーラー服も少しは様になって来たように思う。

  全てが騒がしく、全てに勢いがあった小学校に比べ、中学校はとても乾いている。校庭も、教室も、水を絞りに絞った雑巾のようだ。潤いの跡は形として存在しているが全てが抜けきっている。触るともうなにも残ってないとすぐにわかってしまうような。そんな危うさがある。

  去年仲良かった友達も、今では彼氏持ち。恋愛で頭がいっぱいのようだ。今でも話すし、遊ぶけれど、どこか物足りない。

 私が変わったのか、みんなが変わったのか。去年までのように、日常の些細なことで飽きるくらい笑い転げられたら、どんなに満たされるだろう。芸能人の私生活、周囲への愚痴、好きな同級生。そんな話題の世界にどうしても入れないでいる。いつの間にか、誰もいないベランダであてのないどこかを眺めるのが日課となった。

  代わり映えのしない風景、相手のいない独り言。でも、変わってしまった同級生と過ごす瞬間より、ずっといい。

「加奈。またここにいたの?ねえ、この間遊馬くんがさあ。」

  こちらが振り返る前から一方的に話しかける同級生。勢いのある6年間を共に過ごして来た友達。でも、きっともうあの頃のようには笑えない。きっと今の私の顔には気遣いが作り出す、乾いた笑顔が広がっている。

「また、同じことやったの?もう別れればいいのに。」

  少しずつ自分の体がこの場所に染まって行くような気がした。


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