提案2
「ふむ、成る程。いいんじゃないか?」
坂倉先輩が提出した企画書に目を通した課長は了解してくれた。
「ありがとうございます。では、早速実施のために準備します。」
坂倉先輩はそう言い、私と一緒に席へ戻った。
「とりあえず僕は確定仕様にするから、早川さんはユーザーに伝えておいて。実施は明日ね。」
「わかりました。」
私は坂倉先輩から指示を受けた通りに報告のための文章を書き始めた。
『お知らせ:10月15日に10連ガチャ実施を行い、その中の1つをSR以上確定にします。』
これで良し。あとはユーザーからの反応を待つ。
坂倉先輩の方は…。
「…………。」
集中して作業しているようだ。無表情で作業している姿はとてもかっこよくて見惚れてしまいそうになる。と言ってもこんなこと私だけだろうけど。
私はぬるくなったオレンジジュースを飲みつつ、坂倉先輩の姿を見ていた。
オレンジジュースを飲み干した後、私はユーザーからの反応を確認する。
何件か来ている…。『SR以上は魅力的!』、『確定仕様は結構いい気がする』などがあれば、『課金者増やしたいだけだろ』、『無課金者に対して10連ガチャは厳しい。ガチャ券をもっと配布するべき』などもある。ガチャ券はゲームをしてくれているユーザーの方に1日1枚ログインボーナスとして配布していて、10枚で1回ガチャが引けるようになっている。そう考えると10連ガチャは厳しい気がする。いくら毎日配布していても100枚集めるのに100日かかってしまう。改善するべきかもしれない。
『貴重なご意見ありがとうございます。ガチャ券配布の方は検討させていただきます。』
私はそう書き込み、企画書を作成し始めた。
時計の針は進み、12時を回った。
「ふう、終わった、終わった。」
どうやら坂倉先輩の作業が終わったようだ。
「お疲れ様です、お昼どうします?」
「んー、なんか買いに行くかなー。ちょっと言ってくるね。」
そう言い、坂倉先輩は席を立った。
私はお弁当を持参しているので席で食べることにした。
「今日はパンにしようかな。坂倉さんに差し入れも買って行ってやるかな。」
コンビニに着いた僕はパンを手に取り、坂倉さんの差し入れを選ぶことにした。飲み物と何か甘い物でも買って行ってあげよう。
「よお、坂倉。」
1人の男性が声をかけてきた。この人の名は茅野涼、僕の同期だ。
「茅野も今からお昼か?」
「そうだよ、坂倉はパンか。じゃあ、僕はおにぎりにするかな。」
茅野はおにぎりが陳列されているとこに行き、4つほどおにぎりを手に取った。
とりあえず、僕は先にレジで会計を済ませて、茅野を待つ。
「お待たせ、さあ行こうか。」
茅野はそう言い、僕と茅野は歩き出した。
「その紅茶とプリンは早川に差し入れか?」
茅野は指を指して聞いてきた。
「そうだよ。」
「流石先輩だな。僕なんて逆に後輩から差し入れて貰ってるわ。」
茅野は笑いながらそう話す。実際茅野はいろんな人から貰っている。そういえば、この前はチョコレートを課長から貰ってたな。どうしてそんなに貰えるのかというと、凄く嬉しそうに受け取ってくれるから、可愛らしいのだとか…。あっ、そういえば、ポケットに飴が入ってたな。あげてみるか。
「じゃあ、僕からも飴あげるよ。」
僕は茅野に1粒の飴を手渡した。
「おおっ!くれるの!?やった、ありがとう!早速食べるわ!」
笑顔でお礼を言った茅野は飴を口の中に放り込む。うん、確かに可愛い、あげたくなる気持ちがよくわかる気がする。
ちょっとした可愛いが見られてラッキーだったな。