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真実の「愛」

異世界ファンタジーはたくさんありますが、こういうファンタジーも読んでいただけると嬉しいです。

   序章

「今日は人間界へ降りる日である」

 田崎係長尾は傲慢に話を切り出した。

 私たち下っ端は立って黙って話を聞かなければならない。

「練習通りに矢を放つこと。一日五カップルがノルマだ」

「そんなぁ。人間は腐るほどいるから一人ひとり捜すのが大変なのにぃ」

 誰かが情けない声を出した。

「誰だ今弱気な発言をした者は! 気合が足りん、気合が!」

「ひぃぃ」

 今度は悲鳴になった。確かに世界中を回って五カップルは大変だけど、人間界で言う郵便局みたいに地域担当が決まっているから、一日五カップルのノルマは軽すぎるのに。 

 何を、弱気になる必要があろう。

「それでは解散だ、解散! さっさと仕事に取りかかれ!」

「はい!」

 私たちキューピッドは天使界の中でも地位が低い。

 それでも、私たちは誇りを持って仕事をしている。

 人間たちの、一人ひとりを運命と言う名において巡り合わせるという、大事な役割を担っているのだから。

「行ってまいります、田崎係長」

 声をそろえて私たちがあいさつをしたあと、それぞれ地方に飛んで行った。

   第一章

   一

「ようし、今日はどの地域だ?」

 私は何歳かわからない。人間で言う、十六、七くらいの容姿であるのは確かだ。

「えーと、今日の担当地区は……」

 田崎係長に渡された地図を開く。

「日本か! 日本の……福岡県? どこだそりゃ。東京のほうが知ってるよ」

 私が天使界の出口辺りで地図を広げていると、同僚のセヴァンが話しかけてきた。

「よっ、サラン。何考えてるんだ?」

「日本っていう国の、福岡ってところが次の仕事の場所なんだけど、初めて行くところで。でも、なんか、懐かしい気持ちになるんだ」

 セヴァンは腕を組んで唸った。

「うーん。天使界に来る前にいたとか?」

「まっさかー。いやでも、ありえたりして」

「もし本当だったらすげーよな」

 私たちキューピッドは本当の天使様と違って人間の生まれ変わりであることが多い。

 でも前世の記憶なんかなくて。

 だから懐かしいというのは、デジャヴか昔仕事に行ったところの出来事を思い出しただけかもしれない。

「じゃ、先に行くよ、サラン」

「うん。がんばってね」

 私はセヴァンに手を振ると、地図を斜めがけのカバンにしまって、出口に向かった。

   二

 人間界に入った。

 空から舞い降りると、私は翼を羽ばたかせながら福岡県に来ていた。

 北九州市、小倉。ここの駅で、ホストのオオキマサルっていう男の人とカナザワユミコっていう女の人が運命の出会いを果たすことに決まっている。

 私は、その二人をくっつけるため、矢の羽に相手の名前を書いてハートを射抜く。

 もちろん、私の姿は誰も見られないだろうし、矢も刺さったからと言って死なない。

 キューピッドはそんな存在。今朝係長が練習通りにと言ったのは、矢を放つとき対象を間違えないためだ。まあ、間違っても、余分の矢はあるし、一人間違えても、二人間違わなければ、故意に落ちることはない。

 もっと分かりやすく言うと、AさんとBさんのカップルを作るとして、本来ならばAさんにBさんの矢を射るはずが、CさんとDさんになるカップルのDさんの名前の矢をAさんに射たとする。

 この場合だと、カップルは成立しない。

 だけど、AさんにDさんの矢を、BさんにCさんの矢を射たなら、カップルは成立してしまう。

 もしこんな失敗をしたら、一発で始末書どころか地獄行きだ。それで、永遠に生まれ変わりができなくなってしまう。

 説明はややこしいのでここまでにしておく。

 で、私はオオキマサルさんを(名前は人間を見たらわかるしかけになっている。どこぞの漫画の死神の目みたいだね)見つけた。

 小倉駅南口のエスカレーターを降りたところ。ホストだからか、スーツ着てそれっぽい格好をしている。

 ふんふん。俗に言うイケメンとやらか。いや、クールガイだっけ?

 ようやく顔が拝見でき……ん? 目が合って……る?

「いやいやまさか。身分が低いとはいえ天使なのに。人間に見えるわけが……」

「愛!」

 オオキマサルという人物が、私のほうに一直線に来る。

「愛! 愛だろ なんでんなとこいんだよ」

 誰? 私、知らないし。誰かと勘違いしてる? 

「何コスプレしてんの? どういう仕掛け? とか、やっぱり生きてたんだね!」

この人、周囲の目は気にしないの?

「あ、あの、誰かと勘違いされてるんじゃないかと……」

 恐る恐る言った。

「いいや! 俺が、愛を見間違えるはずはない! 愛、こっちへおいで」

 とりあえず可哀想な人になっているこの人を助けてから話を進めるようにしよう。

 私はそう決めると、言葉に気をつけながらゆっくり喋った。

「えーと、オオキマサルさん。話のできる場所へいきませんか?」

「よし、じゃあマックに行こうよ!」

 オオキマサルさんが私の手をひっぱろうとして、スカスカと空を切る。

「愛?」

 不思議そうに眉をひそめる。

「私に付いて来て」

 小倉駅のあまり人のいない道にオオキマサルさんを連れ込むと、話を進めることにした。

「あのね、オオキマサルさん。私は、キューピッド。天使なの」

「愛、そんな変な設定作って、どうしたいの? 愛は作家になりたいと言ってきたから、そういう設定を作るのが好きなのかな?」

「すみませんあなた、誰かと勘違いしてるんじゃ?」

「愛……! 俺を忘れたの? 俺は愛が姿を消してからも、愛だけのことを考えていたのに!」

 目に涙をためて私を見てくる。

「私はサラン。愛なんて人じゃないわ」

「それでもいい。愛が帰ってきてくれたなら……!」

 一人感動しているご様子ですが、あいにくこちらは混乱するばかりです。

 と告げるわけにもいかず、途方に暮れた。

時間がなくてここまでしか書けませんでしたけど、もっと読みたいと思う方が少しでもいらしたら、続きを書きたいと思います。

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