異世界に行くためには、女神様と会え
俺は、真っ白色な世界で一人横になっていた。
本当に何もないただの白い世界。
「あれ?なんでこんな所にいるんだ?」
起き上がり思いつく限り今日1日の事を思い出した。それでも、自分が思い出せたのは大急ぎで家に帰っている途中で一瞬目の前が、光に包まれた事。そして、気がついた時には、青空を見ながら地べたを転がっていた所までだった。
それだけしか思い出せなかった俺は、自分の記憶が一部欠けている事と今自分が置かれている状況に呆れ帰り、ため息をついた。
「さて、ここからどうやって帰ろうか。こんなところでずっといるのは、嫌だしな」
「何かないか」と見落とさないように慎重に周りを見渡したが何もなかった。
むしろ、何か物があったりしたらすぐに視界の中に入ってくるような世界だ。だから、ゆっくり見渡してもないのならここには何もない。
断言出来るほど『何もない』っという言葉に薄気味悪さを感じてしまい、鳥肌が立っち身震いをした。
「どうしたものだろうか……
まぁ、いいか。このままここで消えてしまうのもいいかもしれない」
やる気をなくした俺はその場で寝転がり目をつぶる事にした。
他に思い付く事と言えば、誰かに助けを求めると言った事だろうが、こんな訳も分からない所に人なんかがいる訳もない。だから、俺は必然的に『諦めてその場にいる』っという結論に至った。
俺は、いつものように『希望を持つのは、もうやめたのだから潔く諦めろ』と自分に言い聞かせて……。
そんな時、俺は何故か見覚えのある風景をを見ていた。
(「これが走馬灯って奴なのかな。とても懐かしいな。」)
見ていると楽しかった事、悲しかった事、自分という人間に期待し目標や希望をもって生きていた事。
そして、目標を失い、希望を失い、自分を捨てた事……
その後、胸の辺りから熱く何とも言えない気持ちが込み上げて疼くのがわかった。
それでも、俺は気にしないようにした。
何故ならそれは、その時の自分が、感じ、想い、抱いた物。
それは、俺が、今まで捨ててきた気持ち。
今更それを受け入れてしまうと今まで歩いて来た道を……自分が決めて来た物事や出来事を全て、根こそぎ否定され崩れ去ってしまうのではないかと怖くなってしまったからだ。
(「これでよかったんだ。」)
目を開けて白い世界を見上げた。
「ここは本当に白色しかないんだな。せめて、上の方ぐらいには別の物があってもいいと思うのにな。
例えば、星空とかさ」
などとくだらない事を言って気を紛らわせようと思ったが全く紛らわせそうになかった。
むしろ、失望した時に苦しめられ捨てた感情である虚しさや悲しみが募るだけだった。
「消えたくないなぁ〜」
笑いながら言ったつもりだっだのだが、体はそうはしてくれなかった。
俺は、目の辺りが熱くなり涙が、頬を伝って行くのがわかっり慌てて服の袖でその涙を拭き取り、また目を閉じた。
「……さい。……てください。起きてください‼︎」
結構な時間の間眠りについていたのだろう。耳元で大きな声でそう叫ばれたのが聞こえ驚きのあまり飛び上がった。
「うわぁ‼︎誰だよ急に‼︎」
声が聞こえた方に振り向き叫びながら言ったがそこには誰も居らず、俺は、さらに驚き周りを見渡したが、どこにも人らしき物は、居なかった。
「あれ?気のせいだったのかな。まぁ、いいや。」
気にしない事にして、また夢の世界へ逃げるように目を閉じようとしたら
「また寝ようとするのはやめてください‼︎」
間髪入れて俺の頭に響いた。
あまりのデカい声にまたしても飛び上がり周りを見渡した。しかし、さっきと変わらずどこを見渡しても誰も居なかった。
「さっきから誰なんだよ。俺は、寝たいんだよ!!」
怒りを込め最後の言葉を強調し叫んだ。
俺は、自分の眠りを邪魔されるのが一番嫌いなんだ。
ホントに睡眠を大切にしている俺からしてみれば非常に目障りで腹立たしい。そして、寝起きの俺は非常に機嫌が悪い。これは、俺も自負するぐらいに……
あ、そう言えば、何度か授業中で寝ている時に、先生に起こされた事でキレて先生に怒鳴った事があったっけな。その後、かなり怒られてしまったけど。あぁ、懐かしい。
「ごめんなさい。それでも、あなたが一声で起きてくれないのがいけないのですよ。」
「まぁ、そこは、俺も悪かった。てか、アンタはどこに居るんだ?さっきから姿が見えないんだけど」
姿は見えないけど、声を聞く限り女の人だとわかった。
てか、姿が見えなって幽霊なのか?もし幽霊だとして今その人と話せてると言うことは、俺は、もう死んだのかな。その前に、幽霊と平常心で話してる自分に驚かない自分が、怖い。めっちゃ怖い。
考えながら、口元に手を当てた。
「すみません。私は、今いる場所から動いては、行けないというか、出られないのです。そして、今私の声が聞こえているのは、私が、あなたの脳に直接話しかけている状態なのです。」
「なるほどな。それで、見えない貴女からの声が、聞こえるってことなのか。って事は俺になんか伝えたい事があるから話し掛けてきたって事でいいんだよな?」
「はい。もちろんです。
ですので、今から私の所まで来てもらえないでしょうか?もちろん、ここまで来れるように道標となる道を出しますので」
見えない人が言い終えた直後、俺の周りが水色の光で照らされた。そして、その光が物凄い速さで、まさに、白紙の上を定規を当て真っ直ぐ引くように地平線の向こうまで伸びていくのがわかった。それを見たおれは、正直に言うと行きたくなかったのだが……
「わかった。これを辿れば貴女の所まで行けるんだよな。」
何故、そう答えたのか自分でもわからなかった。
ここで、消えてなくる事を選んだ筈なのに……
そんな事を考えている内に、俺は足は水色に光る道を歩き始めていた。
今自分が、抱いている気持ちもわからないまま。
「ここは、いったいどういった場所なんだ?」
ずっと気になっていたこの場所の事について見えない人に訪ねた。
多分、誰しも何の脈略もなく知らない場所に居たのなら、知りたいと言う気持ちに駆られてその場所に居る住人に質問するだろう。俺もその1人だ,
「そうですね。貴方はこの場所をどんな風に見えていますか?」
「どんな風にってどういう事ですか?」
自分の問いかけた質問が、まさか、答えじゃなくて質問で返されるとは思っていなかった。それに、質問の内容もまた不思議な物だったので驚いた。
まだ、『自分もわからないです』とかであったら百歩譲るとしても、『俺から見てどういう風に見えますか?』っておかしくないか?
いや、どっちもおかしいか
「白色しかないです。真っ白な世界」
見えない人に返された質問を不思議に思いながら、自分の目が、見ているありのままの世界を伝えた。それは、何一つ嘘偽りがないものだ。
「そうですか。貴方が、そう見えているのならここは、真っ白な世界なのでしょうね」
俺は、その言葉に違和感を感じた。そして、その違和感を感じた答えの真意を聞こうと思い。
「俺が、そう見えるのー」
「それは、私の前に来られた時にお話いたします。今は、深く詮索しないでください。そして、急ぎ私の所に来てください。」
俺が、質問をしようとした時に見えない女の人は、俺の言葉を今までとは、明らかに違う刺のあるよな口調で遮った。
俺は、その事を言われすぐに詮索するのを辞め歩きから少し小走りで目的地を目指した。いつ辿り着くかわからない目的地へ。
「なんだよ。この扉……」
俺は、大きく真っ黒な扉の目の前で立っていた。
その扉は、この真っ白な世界では、すごく目立ち、異様な存在で「不吉」や「不気味」っと言う言葉を見た瞬間に、連想される様な物に思えた。そして何より俺が、この扉に近づくまで全くと言っていいほど気付かなかった。
「何か……入りたくないな」
この扉の中に入りたくないと言う気持ちが、脳にあるフィルターを使わず、呟いてしまった。
最初は、失言だったと思ってしまったが、すぐにそうは思わなくなった。何故なら、扉の隙間から黒い霧のようなものが、漏れ始めてきて不吉さと不気味さが一層に増したからだ。
「すいません。この扉に入らないと行けないんですか?」
多分、こんな危なそうな所に入ろうとは、誰も思わないだろう。
何回も言うけど……不吉で不気味なオーラ出てるもん!!
こんな所に入ろうとか、言うやつは、正直に言ってバカだ。
「はい。入らないとダメですよ。」
微笑みながら言ったのが、あからさまに分かるような言い方をしてきた。
「……っ」
「(もっと、俺が、わからないような言い方を何故しなかった。
しょうがない…。行くか。)」
覚悟を決め、目の前にある黒い扉の取手に手を伸ばし、ゆっくり開けた。
「なっー」
開けた扉から出てきた大量の黒い霧に飲み込まれた。
「ここは、一体どこなんだ?」
「(出ました。本日2回目の自分がどこにいるのか分からない宣言)」
次は、真っ暗な世界にいた。
真っ暗と言っても自分の所にだけ円状のように光が降り注いでいて、光が当たっているところだけ見えた。
それでも、地面も真っ黒だから、またしても自分が居場所がわからない状態になっていた。
「すみません。誰か居ますか?!」
大きな声で叫んだ。
まぁ、「誰も居ないだろう」と高を括っていたのだが……
まぁ、人生、自分が思ったどおりにならないって言うのは、分かっていたし知ってもいた。
「お待ちしておりました!!」
やはり、今回も尽く俺の思った事とは、真逆な事が起きた。
俺が、その言葉を言うのを待っていたかの様なタイミングでその声とともに1人の女性が目の前に現れた。しかも、声を聞く限りさっきまで話していた「見えない人」に間違いなかった。
さらに、登場の仕方は、劇場とかでよく見る。真っ暗なところから突然現れたかのように見せる様な表れ方をして。しかも、バンザイをしている。
その姿を見て思ったことは、「アホだわ」。
「(気付かないフリをしとこ)」
口元に手を当てながら顔を伏せて見て見ぬ振りをした。
てか、しないと色々面倒な事になる事は、目に見えている。そりゃ、来いと言われて来たのは、俺だ。あの時には、多く分けて二つの選択肢があった。その二つの内、行くことに決めたのは、俺自身なのだから、どんな末路が待っていようが、それを受け入れる義務が、あると思っている。
でも……でもね、これは、流石に受け入れたくない。
「あのぉ、聞こえてますか?っと言うか、聞こえてますよね?
あれ?本当に聞こえてないんですか?
もしかして、立ちながら寝てしまっているのですか?」
銀髪碧眼の美女が、俺に声を掛けてもらいたいと言う気持ちが、ヒシヒシと伝わってくるような猛アタックでこちらの視界に入り込むように顔をのぞき込む。
「(チッ、ウザイ。でも、可愛すぎる。もうちょっと無視してみるかな)」
その美女の反応があまりにも可愛いくイタズラ心を燻らされもう少し無視をする事にした。
この時の俺は、もっとやったらどんな反応を見してくれるのかと言う期待に胸踊る気持ちだったのだが……
これまた、俺を裏切った。
「痛ってぇ…」
謎の痛みに驚き声を上げた。
痛みがあった方に振り向くと銀髪碧眼の美女が、握り拳を作りながら俺を半泣きした顔をで見ている
「(少しやりすぎたみたいだな)」
「ふざけてしまって悪い。許して欲しい。」
俺は、彼女に頭を深々と下げて謝った。
「別に気にしてませんよ。貴方に会えてよかったです。
自己紹介が、まだでしたね。
初めまして。フィルミナっと申します。
貴方達、人間が言うところの女神というものをやらせて頂いています。」
「えっ?女神様?」
あまりの突拍子もない事を言われて頭がフリーズしてしまった。