序章 俺はこの世界が大嫌いだ
俺はカッターシャツのボタンを縫い付けながら考えていた。
俺こと御剣 颯志は全てにおいて落ちこぼれである。
普通だったら……これは訂正しよう。
普通なんて俺はわからないし多分誰に聞いても誰一人としてちゃんとした明確な回答を出せないだろう。
だから、ここは「他の奴らだったら」にしよう。
何においても他の奴らだったら認めたくなくて頑張ってその落ちこぼれと言うレッテルをつけられないようにするだろうしまた、なくそうとするだろう。
それでも、努力が実らず挫折し悔いる人は沢山いる。
だから、俺は思った。
「努力をするだけ無駄なんだ」っと
そりゃ~努力して成功し実績を残した人はいる。
例えばの話。有名なスポーツ選手がインタビューで
「この試合のために精一杯練習をしてきてこういう結果として出せた事はすごく嬉しいです。」
それはすごい事だと思う。その練習は無駄に終わらずちゃんと実績として残りみんなは褒めたたえ喜んでくれるだろう。
でも、成功しなかったものはどうなる?
練習をした事は無駄に終わり実績にも出ず。ましてやその頑張ったことが誰かに褒めてもらえたり喜んでくれたりしてくれるわけでもない。
練習に使った時間も……
汗水垂らして思考錯誤した苦労も……
そして、何よりその時のやる気に満ち溢れた気持ちも……
全て結果に出なければ、後悔に変わるだけだ
それでも
「そんな事はない。次があるさ」っと言って
そいつを励ましてあげようとしているやつをよく見るが多いと思う。あれは俺からしてみれば偽善でしかないと思っている。
次があるさっと言うが絶対に次で成功するなんて限らない。そんないつ成功するかわからないものをなぜ頑張らなければならない。
もし、そんな事を嘘偽りのない善意で言っている奴がいるのならそんなやつを俺は見てみたいと思う。
そういう全ての物をひっくるめて俺は努力をしようとは思わない。
努力をして報われないのは嫌だし他人に同情されてそんな根も葉もない事を信じるのはまっぴらだ
そして、そういう考えをして努力をしようと思わない
自分をひっくるめて……
「俺はこんな世界大嫌いだ……
やっと制服治った。そろそろ家に帰るか」
っと言いながら制服を着て教室を後にした
学校の正面玄関を出ると真っ赤な夕日が差し込み目を開けれないほど眩しかった。
「早く帰らないと用事に間に合わないな」
っと言って夕日に照らされた学校の校舎を背に目の前の大きな坂をダッシュで駆け降りてった。
俺は毎日帰る道のりを今日は小走りで帰っていた。
「はぁ~……やばい~……
今日はいつもより早く帰るってオカンに言ったのにいつもより遅くなってしまう……
一応メールは入れといたから大丈夫やと思うんやけどな」
今日は御剣家にとって大切な日である。
俺の家族は父親、母親、俺、弟、妹の五人家族で生活している。今の父親は本当の父親ではない。
俺の両親はどちらもバツイチで再婚した。俺と弟は母親の連れ子でもちろん血は繋がっている。妹は俺の母親と今の父親との間に出来た子どもだから半分しか血は繋がっていないが俺も武瑠も別に気にすることなく普通に暮らしている。
後付けすると俺は今の父親は物凄く嫌いである。
そんな御剣家は月に一度だけ家族全員で外食をするのが決まっている。
そう、今日がその日なのだ。
「やばいな、これは……
まだスピード上げられそうやからもう少し上げるか」
っと言い走る速度を上げ人が行き交う道を走り抜けて行った。
俺が渡ろうと思っていた信号機が青から赤に変わってしまい俺は渋々走るのを止めて信号機が赤から青に変わるのを待っていた。
「まじか……早く家にかっ……」
その時、突然頭に鈍器で殴られたような痛みがした。
そのあまりの痛さによろめいてしまい横で俺と同じように信号を待っていたスーツ姿の男の人にぶつかってしまった。
「君、大丈夫かい?」
「……あっ!大丈夫です。すみませんでした」
少しその男の人に肩を借りて俺はおでこに右手を当てながら体勢を立て直した。
「今のは何だったんだろうか……」
(「酸欠だろうか……いや、でも酸欠でこんな痛みを感じたんは初めてだし。あっ!青に変わった。
今は何ともないみたいやし家に帰ってからでいいや」)
っと横断歩道を渡ろうとしたその時である。
急に車のクラクションの音が自分のすぐ近くで鳴り響いた。
俺はそのクラクションがなった方に顔を向けるとあまりの眩しさに目を閉じてしまった。
その直後に何かよくわからないが物凄く重くて大きなもので体中に叩きつけられたようなと痛みが二度あった。そのあまりの痛さに目を開けると
「……」
(「アレ?なんで空なんか見てるんだ俺……」)
俺は空を見上げる形で地面に転がっていた。
意味がわからないことが起きていたから体を起き上がらせて確認をしようと試みたがあまりの痛さに体は言う事を聞かず俺は地面に転がっていた。
それでも、自分の今の状態を確認したかったので見える範囲だけを見るとそこにいる人はガヤガヤと騒いでいた。
そんな色んな声や音が入り交じっている中に
「君大丈夫か?しっかりしろ!!」
「誰か救急車を大至急呼んでください。君、意識をしっかり持って!!」
俺の薄れていく意識の中でその誰かもわからない声がすぐ傍から聞こえていた。
目を覚ますと俺は真っ白な世界に一人立っていた。